家族への給与を経費にして節税!専従者給与について解説

2023.09.01

青色申告の個人事業主は、青色事業専従者給与という制度の適用を受けられます。

青色事業専従者給与とは、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を経費にできる制度です。

個人事業主の節税につながるだけでなく、専従者である家族の住民税や所得税の発生を抑える効果も期待できます。

 

青色事業専従者給与は大きな節税効果が期待できる制度ですが、適用を受けるために注意するべき点もあります。

制度に対する理解に誤りがあると、家族への給与が経費として認められなかったり節税効果が得られないことがあります。

 

今回は専従者給与の概要や、制度を活用する上での注意点について解説します。

 

専従者給与制度の活用以外にも、個人事業主の節税につながる方法はいくつかあります。

以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

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CONTENTS

専従者給与の概要

はじめに、専従者給与の概要を紹介します。

専従者給与とは

専従者給与とは、青色申告の個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を経費にできる制度です。

正式名称は青色事業専従者給与ですが、専従者給与と呼ばれる場面が多くみられます。

 

原則として、個人事業主の事業に携わった対価であっても、配偶者や親族に支払った給与は経費として計上できません。

しかし、一定の要件を満たす場合は例外的に専従者給与として経費計上が可能となります。

経費にできる支出が大きくなるため、節税対策として効果的です。

専従者給与の要件

専従者給与の適用を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 1.青色事業専従者の要件を満たす人に支払われた給与である
  • 2.青色事業専従者の適用を受けるために期日までに所定の手続きを実施している
  • 3.対象の給与が、届出書に記載した内容通りの方法および金額で支払われている
  • 4.労務の対価として適切な金額である

このうち、特に注意が必要なのが「1.青色事業専従者の要件を満たす人に支払われた給与である」です。

1の詳しい要件について紹介します。

  • 事業者と生計を一にする配偶者または親族である
  •  生活費を同じ財布から出している・事業主が養っている状態などが当てはまります。
  •  住んでいる場所が同じか否かは、直接の判断基準とはなりません。

  • 確定申告をする年の12月31日時点で15歳以上である

  • 確定申告をする年の6ヶ月超、または事業に従事可能な期間の2分の1超の期間、対象の事業に従事している

このように、配偶者や家族に支払った給与が必ずしも専従者給与に該当するわけではありません。

要件を満たしていない場合、配偶者や家族への給与は経費として認められず、税務調査で否認されてしまいます。

また、2で規定されている通り、専従者給与の要件を満たしている場合でも所定の手続きをしなければ経費計上できない点に注意が必要です。

専従者給与は節税につながる

前章で紹介したように、専従者給与は節税に効果的な制度です。

この章では、専従者給与制度の活用が節税になる理由について解説します。

専従者給与が節税になる理由

専従者給与制度の活用が節税につながる理由は、通常は経費として認められない家族への給与の経費計上が可能になるためです。

 

既に解説したように、個人事業主が家族に対して支払う給与は原則として経費計上ができません。

特に白色申告の場合、いかなるケースであっても経費計上は不可能です。

白色申告の事業者が配偶者へ給与を支払った場合、配偶者控除の制度を活用することになります。

 

専従者給与は、青色申告者かつ要件を満たした場合のみ認められる特別な制度です。

厳しいルールが定められている分、家族へ支払った給与の経費計上という大きな特典が認められています。

 

なお、専従者給与の額によっては専従者の住民税や所得税の発生を抑えることもでき、世帯全体の節税にもつながります。

専従者給与と配偶者控除を比較

専従者給与の要件を満たしている場合でも、手続きをしなければ専従者給与制度の適用は行われません。

言い換えると、専従者給与制度ではなく通常の控除制度の適用も可能です。

 

実際のところ、専従者給与の活用はどれほどの節税につながるのでしょうか。

ここでは簡単な例を使い、配偶者への給与を専従者給与として経費計上する場合と、配偶者控除制度を適用する場合それぞれの税額を比較します。

 

今回用いる要件は以下の通りです。

  • ・年間事業収入:500万円
  • ・配偶者への給与以外の経費合計額:100万円
  • ・配偶者へ支払った給与額の合計:80万円
  • ・基礎控除額:48万円
  • ・青色申告控除:65万円

※配偶者は青色事業専従者の要件を満たすものとします。

※今回は簡便的な比較のため、基礎控除・青色申告控除以外の控除制度は考慮しておりません。

通常は国民健康保険料・国民年金保険料の支払いによる社会保険料控除の適用があります。

 

まずは専従者給与を経費計上する場合の税額です。

  • 事業所得:年間事業収入500万円-(経費合計額100万円+配偶者へ支払った給与額の合計80万円)=320万円
  • 課税対象所得金額:事業所得320万円-(基礎控除48万円+青色申告特別控除65万円)=207万円
  • 所得税額:課税対象207万円×税率10%-控除額97,500円=109,500円

 

続いて配偶者控除を適用する場合の税額を計算します。

  • 事業所得:年間事業収入500万円-経費合計額100万円=400万円
  • 課税対象所得金額:事業所得400万円-(基礎控除48万円+配偶者控除38万円+青色申告特別控除65万円)=249万円
  • 所得税額:課税対象249万円×税率10%-控除額97,500円=151,500円

 

このようにまったく同じ条件の場合、配偶者控除よりも専従者給与制度の適用を受けた方が所得税額を抑えられます。

専従者給与の制度を使い節税を行う際の注意点

前章で行った税額シミュレーションの結果から、配偶者控除よりも専従者給与の方が節税効果が大きいことがわかりました。

このように、専従者給与が節税に効果的であるのは明確ですが、制度を活用する際に注意するべき点もあります。

この章では、専従者給与の注意点について解説します。

適切な給与額を設定する

節税を目的に専従者給与制度を活用するのであれば、給与額をいくらにするか入念な検討が必要です。

適切な給与額でなければ、専従者給与として認められない、または節税効果が得られないという事態が起こり得ます。

 

原則として、労務の対価にみあわない高額な給与は経費として認められません。

あくまで労働の対価として妥当な給与額にするよう注意が必要です。

 

また、専従者に所得税や住民税が発生するほどの給与額では、かえって世帯全体の税額が大きくなる恐れもあります。

源泉徴収の必要性が生じる場合、事業主の手間が大きくなるというデメリットもあります。

事業主の所得税額だけでなく、世帯全体の税額や給与支払いに際してかかる手間も考慮が必要でしょう。

 

なお、月額88,000円未満であれば源泉徴収の必要性がありません。

手間を最小限に抑えたい場合、専従者給与の額を月額88,000円未満にするのがおすすめです。

専従者に該当するか正しい判断が必要

専従者給与の適用を受けるためには、対象の家族が専従者に該当するか正しい判断が必要です。

特に判断が難しい例として、対象者が副業をしているケースが挙げられます。

 

「専従者給与の要件」で紹介したように、専従者給与制度の適用を受けるためには、対象の家族が青色事業専従者である必要があります。

専従とは文字通り、青色申告者の事業への専従が原則です。

たとえば本業が別にあり、空いた時間に青色申告者の事業の手伝いをしている場合は、青色事業専従者と認められません。

 

一方で、メインの仕事は青色申告者の事業であり、休みの日や空いた時間にアルバイトをしているといった場合は青色事業専従者と認められる可能性があります。

ただし明確な基準はなく、副業としてのアルバイトでも専従者給与の適用を否認される可能性もゼロではありません。

 

このように、副業をしている場合は青色事業専従者の要件を満たしているかの判断が非常に難しくなります。

専従者給与の要件を満たすか判断に悩んだら、専門家である税理士へご相談ください。

まとめ

専従者給与の要件を満たす場合、青色申告の個人事業主が家族や親族に支払った給与を経費として計上できます。

専従者給与制度を活用することで、通常の配偶者控除を適用する場合よりも大きな節税効果を得られます。

要件を満たしている場合は、制度の適用を受けるのがおすすめです。

 

ただし、給与額によっては思うような効果が得られなかったり、専従者に該当するかどうかの判断が難しいケースがあります。

専従者給与制度を正しく活用するために、疑問や不安があれば税理士へ相談するのがおすすめです。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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