マイニングマシンとは、暗号資産のマイニングを行うために用いる機械です。
マイニングは暗号資産の計算や各取引に関する処理等の膨大な作業が必要なため、マイニング用にスペックの高いマシンを用意するのが一般的です。
そんなマイニングマシンに中小企業経営強化税制を適用して節税を行う手法を、マイニングマシン節税と呼びます。
しかし2023年度の税制改正によって、マイニングマシン節税できる範囲が非常に狭くなってしまいました。
現在はマイニングが副業であり、かつ、マイニングマシンの管理の大部分を外部に委託する場合は中小企業経営強化税制の適用を受けられません。
従来のようなマイニングマシン節税ができない以上、マイニング事業を節税目的で行うのはおすすめできません。
今回はマイニングマシン節税の概要や税制改正による変化、今後マイニング事業を行う際の注意点について解説します。
暗号資産(仮想通貨)については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
マイニングマシン節税の概要
はじめに、マイニングマシン節税の概要を解説します。
【前提】マイニングマシンとは
マイニングマシンとは、暗号資産のマイニングを行うために用いる機械です。
マイニングはもともと「採掘」を意味する言葉です。
暗号資産におけるマイニングとは、仮想通貨等の取引内容を承認して取引を成立させる作業を指します。
暗号資産の取引内容を確認(暗号を解読)して新しいブロックを構成し、既存のブロックチェーンにつなげる作業をマイニングと呼びます。
暗号資産のマイニングをするには、暗号資産の計算処理や各取引に関する処理等、膨大な作業が必要となります。
そのため、マイニング用にスペックの高いマシンを用意するのが一般的です。
このようなマイニングに使うマシンをマイニングマシンと呼びます。
また、マイニングマシンを購入しマイニング事業に投資する行為をマイニング投資と表現します。
マイニングマシン節税とは
マイニングマシン節税とは、文字通りマイニングマシンを用いた節税スキームです。
マイニングマシンに中小企業経営強化税制を適用して節税を行います。
中小企業経営強化税制とは、以下の要件をすべて満たす法人が適用を受けられる税制です。
- 1.青色申告書を提出する中小業者等である
- 2.一定規模以上の新品の特定経営力向上設備等を取得し、指定事業の用に供する
- 3.中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受けている
2の「特定経営力向上設備等」について、中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引きでは以下のように案内されています。
■類型
- A類型:生産性向上設備
- 生産性が旧モデルと比較して平均1%以上向上する設備
- B類型:収益力強化設備
- 投資収益率が年平均5%以上となる投資計画にかかる設備
- C類型:デジタル化設備
- 可視化・遠隔操作・自動制御化のいずれかに該当する設備
- D類型:経営資源集約化設備
- 修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上の投資計画にかかる設備
■規模
- 機械および装置の場合:1単位あたりの取得価額160万円以上
- 工具、器具および備品:1単位あたりの取得価額30万円以上
- 建物附属設備:一の取得価額60万円以上
- ソフトウェア:一の取得価額70万円以上
マイニングマシンで中小企業経営強化税制の適用を受ける場合、B類型になるのが一般的です。
マイニングマシンで中小企業経営強化税制の適用を受ければ、以下いずれかの優遇措置を受けられます。
- ・特別償却:取得価額の全額を取得した年に減価償却できる
- ・税額控除:対象設備の取得価額の7%相当額を税額から直接控除できる
2023年度税制改正 マイニング節税に影響を与える要素
2023年度税制改正により、マイニングマシンのうち、中小企業経営強化税制の適用対象になるのは以下いずれかの要件を満たす場合のみになりました。
- ・暗号資産のマイニングを主要な事業として行う
- ・マイニングマシンが「管理の大部分を外部に委託する」ものに該当しない
管理を外部に委託して利益の獲得のみを行いつつ、中小企業経営強化税制を適用して節税効果を得るという手法がNGとみなされます。
特に問題視されていると考えられるのが「利益の獲得のみを行う」という部分です。
マイニングが主要事業の場合は従来通り税制の適用を受けられる点からも、利益の獲得のみを狙うという手法が問題視されていることがうかがえます。
節税を主な目的としている場合、前述した2つの要件を満たさないケースが多くみられます。
そのため、2023年度の税制改正以降マイニングマシン節税は実質として不可能になったといえるでしょう。
税制改正後 マイニング事業(マイニング投資)の注意点
前章で紹介したように、現在はマイニング事業において、税制改正前のような中小企業経営強化税制による節税はできなくなりました。
そのため、節税目的でマイニング事業をするのはおすすめできません。マイニング事業は純粋な収益化を狙って行うのが良いでしょう。
ただし、暗号資産への投資はリスクが高く大きな損失が出る恐れがあるため、マイニング事業を安易に行うのは危険です。
税法上の扱いについても、有価証券のような他の資産とはやや異なるルールが設定されているため注意が必要です。
この章では、マイニング事業を行う上で押さえるべき注意点を紹介します。
暗号資産の相場は不安定でリスクが高い
暗号資産は他の投資商品と比べて相場が不安定です。
そもそも投資自体が絶対的な安定や収益を保証されたものではありませんが、中でも暗号資産は特にリスクが高い商品といえるでしょう。
参考として、ビットコインの相場変動について紹介します。
2020年1月時点、1ビットコインは8,000ドル台でした。
それが2021年11月上旬には1ビットコインが6万4,000ドル台に急騰しています。
たった2年弱で、ビットコインはドルベースで約8倍になったのです。
しかし2022年の年初、1ビットコインは5万ドル台でした。この時点で相場が急激に落ちていることがわかります。
そして2022年の12月には、なんと1万6,000ドル近くにまで暴落しました。
このような短い期間での急騰・暴落が今後も起こりうる恐れがあります。
ビットコインのような暗号資産の相場変動が読みにくい理由として、以下が挙げられます。
- ・取引量が他の投資手法に比べて少ないため、一部の大口取引が全体に大きな影響を及ぼすことがある
- ・株の「ストップ高」「ストップ安」のような、1日あたりの値動きの上限がない
- ・国による規制や認可、暗号資産に関するニュースに左右されやすい
確定申告が必要になる要件や評価方法を確認しておく
確定申告を正しく行うには、暗号資産の利益について確定申告が必要になる要件や評価方法の確認が必要です。
確定申告を間違えたり怠ってしまうと、追徴課税の対象になり高額の納税が必要になる恐れがあります。
暗号資産で確定申告が必要になる要件および評価方法について、個人と法人それぞれ解説します。
個人の場合
個人のマイニング事業で確定申告が必要になるのは、暗号資産を手放したタイミングです。
具体的には以下の3つが挙げられます。
- ・暗号資産の売却により利益が発生した時
- ・暗号資産で決済をし、商品やサービスを購入した時
- ・暗号資産を使って別の暗号資産を購入した時
- (暗号資産を別の暗号資産と交換した時)
上記の取引により20万円を超える利益が発生した場合は、確定申告が必要です。
暗号資産による所得額は以下の式で求めます。
- 売却時の価額-取得時の1単位当たりの価額×売却数量
また、取得時の1単位当たりの価額は以下いずれかの方法で計算します。
- 移動平均法:暗号資産の購入の都度、取得価額を計算する方法です。
- 総平均法:その年の終わりにまとめて出した平均額を用いる方法です。
法人の場合
法人の場合、すべての事業の益金および損金を法人税の計算時に含める必要があります。
つまり、マイニング事業による利益の有無や金額に関係なく、暗号資産による収益(時価)が益金に、マイニング等に要した費用が損金に算入されます。
まとめ
マイニング節税とは、マイニングマシンに中小企業経営強化税制を適用する節税手法です。
マイニングマシンの取得価額の特別償却もしくは取得価額の7%の税額控除を受けられます。
しかし2023年の税制改正により、マイニング事業が副業かつ設備の管理運用を外部に委託している場合、中小企業経営強化税制の適用を受けられなくなりました。
従来のような節税手法をとれなくなったため、現在は節税目的でマイニング事業に参入するのはおすすめできません。
今後マイニング事業を行うのであれば、事前に暗号資産のリスクや確定申告について入念に確認しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士