一般社団法人を活用した節税対策とは?税制改正前後の変更点について解説!

2024.02.24

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立される非営利法人です。

株式会社等と比較した場合の特徴として、持分がない点や設立時に必要な人数が多い点が挙げられます。

一般的な会社と同様、設立するには法人登記や定款の作成が必要です。

 

一般社団法人はかつて相続税の節税テクニックとして多く用いられていた方法でした。

しかし2018年の税制改正により、以前のように一般社団法人を活用した節税はできなくなっています。

そのため、一般社団法人を節税目的だけで設立するのは必ずしも推奨できません。

 

しかし、一般社団法人の設立には節税以外にも様々なメリットが存在します。

一般社団法人について理解を深めることで、メリットを最大限に享受できる可能性が上がるでしょう。

 

今回は一般社団法人について、税制改正前後の変更点や設立するメリットを中心に詳しく解説します。

 

相続税の節税対策は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

一般社団法人とは

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立される非営利法人です。

一般社団法人の特徴として以下の3点が挙げられます。

 

  • 非営利法人である
  • ここでいう非営利とは「利益を出してはいけない」ではありません。
  • 「余剰利益を分配しない」ことを意味します。一般社団法人で余剰利益が出た場合、翌事業年度へ繰り越す必要があります。
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  • 持分がない
  • 持分がない、つまりオーナーがいない点も一般社団法人の特徴です。
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  • 設立に必要な人数が多い
  • 一般社団法人の設立時には、2名以上の社員と1名の理事が必要です。
  • 法人が社員に就任することもできます。
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一般社団法人の具体的な業種の事例として、芸術、学術、医療、介護、福祉、地域振興、人材育成などが挙げられます。
なお、一般社団法人を設立するには、一般的な会社と同じく法人登記や定款の作成が必要です。

一般社団法人を活用した節税対策とは

2018年の税制改正によって、一般社団法人の節税スキームは大きく変わりました。

この章ではかつて行われた一般社団法人を活用した節税対策と、税制改正による変更点について解説します。

税制改正前の節税スキーム

2018年の税制改正より前は、個人の財産を一般社団法人に移転することで相続税をゼロにすることが可能でした。

 

相続税は被相続人個人から相続人個人への財産移転によって発生する税金です。

相続発生時、つまり被相続人が亡くなった時に保有していた財産が相続税の課税対象になります。

そのため一般社団法人を設立し、自社の株式や自身が運営する賃貸不動産の譲渡を済ませておけば、対象の財産は相続税等の課税対象ではなくなります。

 

前章で紹介したように、一般社団法人は持分がなくオーナーが存在しない点が特徴です。

よって、一般社団法人の財産はあくまでも法人のものであり、特定の個人のものにはなりません。

しかし後継者(相続人)が一般社団法人の代表理事に就任すれば、事業や賃貸不動産の実質的な支配が可能になります。

 

このように、一般社団法人を活用すれば相続税を課されることなく資産の支配権を譲渡できる仕組みでした。

2018年度税制改正による変更

2018年度税制改正によって特定一般社団法人の概念が登場し、特定一般社団法人に該当する場合は相続税の課税対象になると定められました。

 

通常、相続税は個人に対して課せられるものであり、法人には納付義務が発生しません。

しかし、一般社団法人を活用した相続税逃れを防ぐため、特定一般社団法人は例外的に「人」とみなされ、相続税の納税義務が課されることになったのです。

 

以下のいずれかに該当する一般社団法人が特定一般社団法人となります。

  • ・相続開始直前の時点で全役員の2分の1超が同族役員である
  • ・相続開始前の5年間のうち、同族役員が全役員の2分の1を超えている期間が3年以上

特定一般社団法人に課される相続税の課税対象額の計算方法は以下の通りです。

 

相続税の課税対象額=特定一般社団法人の純資産額÷死亡時の同族役員数

 

なお、以下のいずれかに該当する人および法人が同族役員とみなされます。

  • ・被相続人本人
  • ・被相続人の配偶者
  • ・被相続人の三親等以内の親族
  • ・被相続人と特別な関係を持つ者(被相続人が役員を勤める会社の役員・従業員等)
  • ・被相続人が役員である法人
  • ・被相続人の同族会社

相続税回避の目的で設立される一般社団法人はほとんどの場合に特定一般社団法人に該当します。

そのため、以前のように一般社団法人を活用した相続税回避は不可能となりました。

 

また、以下のすべてを満たさない限り、一般社団法人に対する贈与が相続税・贈与税の不当な減少につながる行為とみなされます。

  • ・運営組織が適正であり、理事の数のうち親族の割合が3分の1以下である
  • ・一般社団法人の解散時には残余財産を国や地方公共団体等に移す
  • ・理事等に対して特別な利益を与えた事実がない
  • ・3年以内に重加算税を課せられた事実がない

相続税・贈与税の不当な減少につながる行為とみなされた場合、贈与を受けた一般社団法人に対して相続税や贈与税が課されます。

一般社団法人を設立するメリットとは

前章で紹介したように、2018年の税制改正によって以前のような相続税の節税はできなくなりました。

しかし、特定一般社団法人に課せられる相続税の課税対象額は「特定一般社団法人の純資産額÷死亡時の同族役員数」であり、場合によっては通常の相続より少額で済む可能性もあります。

したがって、特定一般社団法人を活用した節税が完全に不可能になったわけではありません。

節税目的での設立は以前よりも注意して行う必要がありますが、設立するメリットがないとは言い切れないでしょう。

 

また、一般社団法人の設立には節税以外にもメリットがあります。この章では一般社団法人を設立するメリットを4つ紹介します。

設立が容易

一般社団法人は、株式会社等に比べて設立が容易です。

 

現行制度において、一般社団法人を設立する際に都道府県等からの認可を受ける必要はありません。

法務局への登記申請のみで設立が可能です。

また、資本金のような出資金のシステムがないため、定款認証手数料や登録免許税といった法定費用のみで設立できます。

事業内容の制約がない

一般社団法人には事業内容の制約がありません。公益事業・共益事業・収益事業と自由に事業展開ができます。

 

一般社団法人と同じ非営利法人の1つであるNPO法人は、活動範囲が20分野に特定されています。

一般社団法人は非営利法人でありながらも、株式会社等と同じように自由な活動ができるのが特徴です。

収益事業以外は非課税

一般社団法人の場合、収益事業から生じた所得以外は非課税となります。

前項で紹介した例でいうと、公益事業や共益事業による所得は法人税の課税対象外です。

収益事業をまったく行わない一般社団法人であれば、所得にかかる税金を払う必要はありません。

社会的信用を得やすい

一般社団法人は、個人事業主や法人格を持たない任意団体よりも社会的信用を得やすいです。

一般社団法人が信用を得やすい大きな理由として、以下の3点が挙げられます。

  • ・代表者にトラブルがあっても事業の継続が可能なため、急に廃業になるリスクが低い
  • ・法務局での登記を経て設立するため、外部の人が登記簿謄本から情報を確認できる
  • ・法人として法律行為が可能で、権利義務の主体になれる

まとめ

一般社団法人は、かつて相続税の節税手段として多く活用されていましたが、2018年の税制改正により特定一般社団法人の概念が生まれ、一般社団法人を活用した相続税の節税対策は不可能になりました。

ただし、特定一般社団法人に課せられる相続税の課税対象額は「特定一般社団法人の純資産額÷死亡時の同族役員数」のため、通常の相続よりも税額を抑えられる可能性はあります。

 

現在は以前のような節税対策はできませんが、一般社団法人には他にも多くのメリットがあります。

一般社団法人についての理解を深め、節税以外の面でも上手く活用しましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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