富裕層の節税対策、タックスヘイブンとは?対策税制と注意点について解説!

2024.03.19

タックスヘイブンとは、法人税や所得税等の税率が低い国および地域を意味する言葉です。

税率が著しく低いこと以外にも、税制の適用を受けるにあたって現地を拠点とする必要がない、秘匿性が高い等、様々なメリットがあります。

 

タックスヘイブンを活用した節税スキームは大きく4種類です。

全く違法性のない節税スキームもあれば、違法とみなされて日本の税制の適用対象になってしまう手法もあります。

堅実な節税対策を行うには、タックスヘイブン対策税制の対象となる要件や注意点の確認が必要不可欠です。

 

今回はタックスヘイブンを活用した節税スキームや対策税制、タックスヘイブンの注意点について解説します。

 

富裕層向け節税対策は以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

タックスヘイブンとは

タックスヘイブンとは、法人税や所得税等の税率が低い国および地域の総称です。日本語で「租税回避地」とも表現されます。

タックスヘイブンに該当する国・地域の特徴として以下が挙げられます。

  • ・個人や法人にとってインパクトの大きい税金の税率が低い
    もしくは税金がかからない
  • ・税制の適用を受けるにあたって現地を拠点とする必要がない
  • ・銀行口座の開設に際して個人情報の詳細の提示が不要
  • ・法人代表者の氏名や住所の公開が必要ない等、秘匿性が高い
  • ・行政機関等の透明性が低いため外部に情報が漏れにくい

単に税率が低いだけでなく、秘匿性が高く情報が漏れるリスクが低い点も、節税対策を行う場所として選ばれやすい理由です。

 

タックスヘイブンに該当する国や地域として、以下の例が挙げられます。

  • ・パナマ(国外で発生した所得が非課税)
  • ・香港、台湾、シンガポール(法人税率が低い)
  • ・バハマ、バミューダ、マーシャル諸島(税金が課されない)

タックスヘイブンを利用した節税スキーム

タックスヘイブンを利用した節税スキームを4つ紹介します。

タックスヘイブンで事業を行う

タックスヘイブンに会社を設立し、現地へ移住して事業を行う方法です。

現地での事業実態が存在するため、問題なく現地の税法の適用対象になります。

タックスヘイブンと呼ばれる場所は、法人税だけでなく所得税も低いケースが多いです。

そのため、会社の利益はもちろん個人の所得に課される税金も抑えられるでしょう。

 

ただし、生活および事業の拠点を海外に移し現地でビジネスを行うのは容易ではありません。

最もリスクが低い方法であると同時に、かなりハードルの高い方法ともいえます。

タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立する

タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、日本の会社からタックスヘイブンに設立した会社へ送金することで節税対策を行う方法です。

大まかな流れを紹介します。

  • 1.タックスヘイブンに、日本にある会社の子会社としてペーパーカンパニーを設立する
  • 2.タックスヘイブンの子会社に著作権等の無形固定資産や船舶等を出資する
  • 3.日本の本社から子会社へ、無形固定資産のライセンス料や船舶リース料の名目で支払いをする

現地の子会社は日本の会社に対してサービスを提供し、売り上げを出すというイメージです。

この方法により、日本の会社は支出が増えて利益が減るため法人税の課税対象も少なくなり、税額を抑えられます。

そして子会社には現地の低い税率が適用されるため、節税対策ができます。

 

ただし、この方法では現地の税制の適用を受けられず、日本の税制に従った納税義務が発生する可能性が高いです。詳しくは後述します。

タックスヘイブンに設立した会社を経由して贈与をする

タックスヘイブンの会社を経由して個人へ贈与をし、個人にかかる税負担を抑える方法です。

個人から個人への贈与は贈与税の対象となり、高い税率が課されます。

一方、法人から個人への贈与は一時所得に該当し、所得税の課税対象になります。

贈与額によって課される税率は異なりますが、贈与税より所得税の方が少なく済むケースがほとんどです。

 

会社経由で贈与をする場合、まずは贈与者である個人から会社へ財産の移転が行われます。

その際会社には法人税が課されますが、タックスヘイブンは法人税率が低いため、日本国内で同じことをするよりも税額が少なく済みます。

タックスヘイブンへ移住する

現地での会社設立は伴わずにタックスヘイブンへ移住する方法です。相続税の節税効果が得られます。

 

現地への移住により相続税の節税効果を得るには、以下の条件を全て満たす必要があります。

  • ・相続人、被相続人ともにタックスヘイブンへ移住、海外で10年以上暮らす
  • ・相続税の計算対象になる資産を海外へ移す

 

日本に置いてある資産は日本の相続税法の適用対象です。

また、海外移住していた期間が10年よりも短い場合、国内財産・国外財産ともに日本の相続税の対象になります。

タックスヘイブンを活用した節税の注意点

前章で紹介した4つの節税スキームのうち、「タックスヘイブンで事業」「タックスヘイブンへ移住」には全く違法性がありません。

タックスヘイブンに移住または会社を設立し、現地での事業実態があれば、問題なく現地の税制が適用されます。

 

一方、2つ目のペーパーカンパニーを活用した方法は違法になる恐れが大きいです。

タックスヘイブンを用いた節税対策を規制する税制改正(タックスヘイブン対策税制)も施行されており、現在この方法はほぼ不可能といえます。

 

3つ目のタックスヘイブンの会社を経由して贈与をする方法も、税務調査によって指摘を受けるリスクが高いです。

現地での事業実態がある会社からの贈与でも、租税回避行為とみなされる恐れがあります。

3の方法で確実な節税を行うには、税務の専門家によるサポートを受けるのが安心です。

 

タックスヘイブンを活用した節税が違法になるのを避けるためには、現地の会社がペーパーカンパニーに該当してしまうのを防ぐ必要があります。

設立した会社がタックスヘイブン対策税制の対象になるか否かの判定基準を紹介します。

ペーパーカンパニーに該当するか

最初に行われるのは、該当の会社がペーパーカンパニーに該当するかの確認です。

判定基準として、以下の2つが挙げられます。

  • ・会社に実態がない(事業に必要な固定施設を有していない、事業活動がない等)
  • ・会社の所得が受動的所得のみであり、資産保有目的の会社とみなされる

 

該当の会社が以下の条件を満たす場合、タックスヘイブン対策税制の対象になります。

  • ・持ち株比率が50%以上
  • ・会社を設立した国または地域の法人税率が20%以下
  • ※法人税率が20%以下は、タックスヘイブンと呼ばれる場所のほぼすべてに該当する条件です。

 

対策税制の対象になった場合、当該現地法人の利益は日本での所得に合算され、日本の税制が適用されます。

現地で事業を営んでいるか

前述の基準によってペーパーカンパニーに該当しないと判断された場合、続いて経済活動基準による判定が行われます。

経済活動基準による判定でチェックされる要素は以下の4つです。

 

  • 事業基準
  • 主たる事業が株式等の保有や無形資産の提供、船舶・航空機等のリースではない
  •  
  • 実態基準
  • 本店所在国に、事業を行うのに必要な固定施設を有している
  • (事務所、店舗、工場等)
  •  
  • 管理支配基準
  • 本店所在国において自ら事業の管理、支配および運営を行っている
  •  
  • 所在地国基準
  • 主に本店所在国で事業活動を行っている

 

いずれか1つでも基準を満たしていない場合、当該法人の利益全額が日本での所得に合算される仕組みです。

 

4つの基準をすべて満たす場合、さらに特定所得の有無を判定されます。

特定所得とは、どの国でも営める事業によって発生する利益です。

例として配当や利子、無形資産等の使用料等が挙げられます。いわゆる受動的所得に該当する部分です。

 

特定所得がない、もしくは以下のいずれかを満たす場合はタックスヘイブン対策税制の対象外となります。

  • ・特定所得が2,000万円以下
  • ・特定所得が所得全体の5%以下

上記の両方を満たさない場合、特定所得部分は日本での所得に合算されます。

まとめ

タックスヘイブンは法人税や所得税等の税率がかなり低いため、現地の税制を上手く活用すれば大きな節税効果を得られます。

実際、かつては現地のペーパーカンパニーを活用した節税対策が多く行なわれていました。

 

現在はこういった租税回避を規制するタックスヘイブン対策税制により、ペーパーカンパニーを活用した節税はほぼ不可能です。

その他の方法についても実施するハードルが高い上、少しでも条件を満たさなければ日本の税制が適用される恐れがあります。

タックスヘイブン関係は非常に複雑なルールとなっているため、必ず専門家のアドバイスを受けましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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