個人事業主必見!青色申告特別控除の節税効果について徹底解説!

2023.11.14

「個人事業主の節税対策は青色申告が大前提」「開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出するべき」このような話を見聞きしたことがある人は多いのではないでしょうか。

 

青色申告は白色申告に比べて厳しいルールであるものの、税金面での優遇措置が複数設けられています。

中でも特に大きな節税効果につながる仕組みが、青色申告特別控除です。

青色申告特別控除は青色申告者であれば必ず適用される所得控除制度であり、最大で65万円の控除を受けられます。

青色申告特別控除による控除額は3パターンあり、ケースによって控除額が異なるため注意が必要です。

 

今回は、青色申告特別控除の概要や控除額、青色申告特別控除による節税効果について詳しく解説します。

 

以下の記事で所得税の仕組みについて解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

青色申告特別控除は節税対策のために活用必須の制度

青色申告特別控除とは、青色申告者が受けられる所得控除です。

収入から経費を引いた所得金額から、さらに一定の控除額を引くことができます。

白色申告者には、いかなるケースであっても特別控除の適用がありません。

 

青色申告特別控除を受けられる所得は以下の3種類です。

  • ・事業所得
  • ・不動産所得
  • ・山林所得

ただし山林所得の場合、控除額は最も低くなります。

 

青色申告特別控除によって所得額を抑えられるため節税につながります。

青色申告特別控除は節税対策のために活用必須の制度といえるでしょう。

青色申告特別控除を受けるための要件

青色申告特別控除による控除額は以下の3パターンです。

  • ・65万円
  • ・55万円
  • ・10万円

控除額がいくらになるかはケースによって異なります。

個人事業主が大きな節税効果を得るためには、青色申告特別控除について最も控除額が高くなるための要件を満たすことが大切です。

 

この章では青色申告特別控除を受けるために満たす必要のある要件について、控除額別に詳しく解説します。

55万円の青色申告特別控除を受けるための要件

55万円の青色申告特別控除を受けるためには、以下6つの要件をすべて満たす必要があります。

不動産所得または事業所得がある

55万円の青色申告特別控除を受けられるのは、不動産所得または事業所得がある人です。

前章で紹介したように、山林所得の場合に受けられる控除額は最も低い金額となります。

 

ただし不動産所得の場合、不動産の投資や運用が事業的規模であると認められる必要があります。

事業的規模であるかの判断基準は以下の通りです。

  • ・集合住宅の場合:10部屋以上の貸与可能な部屋数がある
  • ・戸建て物件の場合:5棟以上の貸与可能な戸建て物件がある

青色申告承認申請書を提出する

青色申告承認申請書とは、青色申告を利用するために提出が必要な書類です。

青色申告承認申請書を提出しなければ青色申告の適用を受けられず、当然青色申告特別控除も適用対象外となります。

申請書は、青色申告を受けたい年の3月15日まで(1月16日以降に開業した場合は開業から2ヶ月以内)に提出する必要があります。

複式簿記で記帳する

複式簿記とは1回の取引を複数の科目で記帳する方法です。

青色申告特別控除で55万円の控除を受けるためには、複式簿記で記帳しなければなりません。

 

「仕事で使う文房具を1,000円で買い、現金で支払った」を例に、単式簿記と複式簿記それぞれの記帳方法を紹介します。

 

【単式簿記】

現金出納帳の摘要欄に「消耗品」「文房具の購入」等と記載し、支出欄に「1,000」と記載します。

「摘要」「収入」「支出」「残高」のどこに何が記入されているかで、取引の内容や入出金を判断するイメージです。

 

【複式簿記】

仕訳帳に以下のように記帳します。

消耗品費 1,000 / 現金 1,000円

確定申告書とあわせて貸借対照表および損益計算書を提出する

青色申告で55万円の控除を受けるためには、確定申告書とあわせて貸借対照表および損益計算書の提出が必要です。

貸借対照表・損益計算書は青色申告決算書とも呼ばれます。

白色申告の場合は決算書の作成・添付は不要であり、青色申告ならではの要件といえます。

期日までに確定申告を行う

確定申告が期日後になった場合、青色申告特別控除を受けられません。

現金主義ではない

現金主義とは、現金の動きがあったタイミングで取引を記録する方法です。

現金主義で記帳をしている場合、これまでの条件をすべて満たしていても青色申告特別控除で55万円の控除は受けられません。

55万円の控除を受けるためには、取引が発生し収入や費用の額が確定したタイミングで記帳をする「発生主義」を採用する必要があります。

65万円の青色申告特別控除を受けるための要件

65万円の青色申告特別控除を受けるには、前項で紹介した55万円の青色申告特別控除を受けるための要件をすべて満たす必要があります。

その上で次のいずれかに該当する場合は青色申告特別控除65万円が適用されます。

  • ・その年の仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っている
  • ・e-Taxを使用して確定申告をする

電子帳簿保存とは、税法で保存が義務付けられている帳簿・書類を電子データで保存することです。

電子データでの保存が必要な帳簿の種類や保存方法については細かなルールが定められています。

そのため個人事業主が対応するには準備や要件を満たす上でのハードルが高いといえるでしょう。

e-Taxを使用して確定申告をする方法が手軽かつ効果的です。

e-Taxは国税に関する各種手続きをインターネット等で行えるシステムです。ダウンロード版・WEB版・スマホ版と複数の中から、自分に合った方法を選べます。

10万円の青色申告特別控除を受けるための要件

10万円の青色申告特別控除は、55万円または65万円の控除要件を満たさない青色申告者が該当します。

控除額10万円に該当するケースの具体例を紹介します。

  • ・事業所得および不動産所得がなく、山林所得のみである
  • ・単式簿記で記帳をしている
  • ・確定申告時に青色申告決算書を添付しない

青色申告特別控除による節税効果

この章では具体例を用いながら、青色申告特別控除による65万円の控除を受けた場合・10万円の控除を受けた場合・白色申告の場合の所得税額を紹介します。

今回使う具体例は以下の通りです。

  • ・所得の種類:事業所得
  • ・各種控除適用後の所得額:600万円
  • ・青色申告特別控除以外に考慮が必要な控除制度や要件は特になし

65万円の控除を受けた場合

まずは青色申告特別控除として65万円の控除を受けた場合の所得税額です。

各種控除適用後の所得額である600万円から青色申告特別控除65万円を引いた額に税率を乗じます。

600万円-65万円=535万円

課税所得3,300,000円 から 6,949,000円までの場合、税率は20%、控除額は427,500円となります。

したがって、税額は以下の通りです。

5,350,000円×20%-427,500円=642,500円

10万円の控除を受けた場合

続いて、青色申告特別控除として10万円の控除を受けた場合の所得税額を紹介します。

基本的な考え方は前項で紹介した内容と同じであり、まずは各種控除適用後の所得額である600万円から青色申告特別控除10万円を引きます。

600万円-10万円=590万円

今回の例の場合は、適用される税率および控除額が前項(控除額65万円の場合)と同じになるため、税額の計算式は以下の通りです。

5,900,000円×20%-427,500円=752,500円

 

控除額が65万円の場合と比べて、税額に110,000円もの差があります。

白色申告の場合(青色申告特別控除を受けない場合)

最後に、白色申告の場合の税額を紹介します。

青色申告特別控除を引く必要がないため、各種控除適用後の600万円がそのまま課税所得となります。

6,000,000円×20%-427,500円=772,500円

 

青色申告のような大きな控除を受けられないため、所得税額が高額になることがわかります。

まとめ

青色申告特別控除はケースによって控除額に違いがあるとはいえ、青色申告者で要件を満たせば必ず受けられる控除制度です。

青色申告には優遇措置が複数存在しますが、中でも青色申告特別控除は節税効果が大きい上に控除を受けるための手間がほとんどありません。

青色申告特別控除が存在する以上、個人事業主は必ず青色申告にするべきといえます。

 

なお、青色申告は白色申告よりもルールが厳しく、日々の会計記録や確定申告の手間が大きくなりやすいです。

そのため、会計・税務に関する専門知識のない人が正確に行うのは容易ではありません。

自身の手間を最小限にしつつも正確な確定申告を行うため、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心です。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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