一時所得の確定申告はどうやる?流れと節税のポイントについて解説!

2024.02.17

所得税の対象となる所得は、一時所得を含めて全部で10種類に分類されます。

所得の種類によって課税対象額の計算式や課税方法が異なるため、確定申告を行うためには自身の所得を正しく理解する必要があります

 

一時所得とは、営利目的の継続的行為から生じた所得以外の所得のうち、労務や役務の対価としての性質や、資産の譲渡による対価としての性質を有しない所得です。

一時所得の確定申告におけるポイントとして、一時所得に当てはまる支出の種類と特別控除額の存在、収入から差し引ける金額が挙げられます。

「収入を得るために支出した金額」は一時所得の計算で間違えやすいポイントであり、計算を誤ってしまうとペナルティが課される恐れがあるため注意が必要です。

反対に、一時所得の仕組みを上手く活用すれば節税につながる可能性もあります。

 

今回は一時所得について、確定申告の流れや節税のポイントを紹介します。

 

所得税の仕組みについては以下の記事で解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

一時所得とは

一時所得とは、営利目的の継続的行為から生じた所得以外の所得のうち、労務や役務の対価としての性質や、資産の譲渡による対価としての性質を有しない所得です。

 

一時所得に該当する所得として、以下の例が挙げられます。

  • ・懸賞や福引きの賞金品 ※業務に関連して取得するものを除く
  • ・競馬や競輪の払戻金 ※営利目的の継続的行為から生じたものを除く
  • ・生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等 ※業務に関連して取得するものを除く
  • ・法人から贈与された金品 ※業務関連や継続的に取得するものを除く
  • ・遺失物の拾得者や埋蔵物発見者が受ける報労金等
  • ・資産移転等の費用に充てる目的の交付金のうち、目的の支出に充てられなかったもの

一時所得 確定申告で押さえたいポイント

一時所得について、確定申告を行う際に押さえたいポイントを解説します。

一時所得の計算方法

一時所得の計算方法は以下の通りです。

 

一時所得=総収入金額 -収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)

 

計算におけるポイントとして、「収入を得るために支出した金額」が挙げられます。

こちらは当該収入を発生させる行為のため、もしくは当該収入の生じた原因に伴い直接要した費用です。

 

たとえば競馬や競輪の払戻金の場合、結果が当たったレースの購入費は当該支出に含まれます。

しかし、外れたレースに関する購入費は一時所得の計算時に含めることができません。

当たり・はずれの結果に関係なく、競馬場や競輪場までの交通費も対象外です。

このように、あくまで該当の収入を生む上で直接関係した支出のみが認められる点に注意する必要があります。

一時所得にかかる税金の計算方法

一時所得は原則として、所得金額の2分の1に相当する金額を他の所得と合計して総所得金額を求め、それから税額を計算します。

つまり、一時所得のうち総所得金額に含めて課税対象となる金額は半分です。

 

ただし、以下のような一時所得は源泉分離課税が適用されるため確定申告ができません。

  • ・懸賞金付預貯金等の懸賞金
  • ・一時払養老保険、一時払損害保険等の差益

源泉分離課税の対象となる一時所得には、所得税および復興特別所得税と地方税の計20.315%が課されます。

一時所得の確定申告が不要なケース

前提として、一時所得を含め所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

一時所得を含めた所得が20万円以下の場合、一時所得に該当する収入が発生しても確定申告が不要になる可能性があります。

一時所得の確定申告が不要になるケースの例として以下の2つが挙げられます。

 

  • 給与所得者で給与所得以外の所得が一時所得を含めて20万円以下の場合
  • 勤務地で行う年末調整で所得税の精算が済むため別途確定申告を行う必要はありません。
  •  
  • 給与所得者で給与所得以外の所得が一時所得のみ、かつ、一時所得が90万円以下
  • 一時所得は計算の際に特別控除50万円を控除し、その上で所得金額の2分の1に相当する金額が課税対象となります。
  • 一時所得が90万円以下であれば、特別控除を引き、残額を2分の1した額が20万円以下になるため確定申告が不要です。

 

なお、上記に該当する場合でも、以下のような年末調整で適用を受けられない控除を受けるためには確定申告を行う必要があります。

  • ・医療費控除
  • ・住宅ローン控除1年目
  • ・雑損控除
  • ・寄付金控除

一時所得 確定申告の流れ

一時所得の確定申告の流れについて、以下の具体例を用いて解説します。

  • ・競馬の払戻金200万円
  • ・競馬の購入回数は10回、1回5万円で合計50万円。
  •  うち1回分で200万円の払い戻しが発生

 

今回のポイントは、支出の合計は50万円であるものの、200万円の払い戻しを受けるために直接かかった金額は5万円となる点です。

したがって、収入を得るために支出した金額として計上できるのは5万円となります。

計算式は以下の通りです。

 

200万円-5万円-特別控除50万円=145万円

 

一時所得のうち総所得金額に含める額は2分の1です。したがって、総所得金額に算入する額は以下のようになります。

145万円×2分の1=72.5万円

 

一時所得72.5万円を給与所得や他の所得と合算します。

あとは一般的な確定申告の流れと同じです。各種所得控除を差し引いた後の課税対象所得に所定の税率を乗じて所得税の額を計算します。

一時所得の確定申告をしないとどうなる?

一時所得の確定申告を怠ると、以下のようなペナルティを課される恐れがあります。

 

  • 無申告加算税
  • 本来納付する税額に一定率を乗じた額が課されます。
  •  
  • 延滞税
  • 税金が期日までに納付されなった場合に課されるペナルティです。期日の翌日から納税を行うまでの日数に応じて一定率が課せられます。
  •  
  • 重加算税
  • 所得の隠ぺいや意図的な過少申告など、悪質な脱税行為とみなされた場合に課されるペナルティです。

一時所得の節税対策3選

最後に、一時所得の仕組みを活用した節税テクニックを3つ紹介します。

「収入を得るために支出した金額」を漏れなく計上する

一時所得にかかる税金を抑えるには、「収入を得るために支出した金額」を漏れなく計上する必要があります。

 

一時所得の計算に際して収入から差し引ける金額は、ほかの所得に比べてわかりにくいかもしれません。

しかし節税対策において、収入から差し引ける支出を漏れなく計上するのは大前提といえます。

 

計上できる支出を判断できない・一時所得の計算について疑問がある等のお悩みをお持ちであれば、専門家である税理士に相談するのが安心です。

贈与は個人からではなく法人からとして行う

個人への贈与は個人からではなく法人からとして行うのが良いでしょう。

法人から個人への贈与は一時所得に該当し、贈与税ではなく所得税の対象になるためです。

 

贈与税は所得税に比べて、税額が高くなりやすい・ルールが複雑で計算および申告の手間が大きい傾向があります。

法人からの贈与にすれば、贈与を受けた側は節税になるだけでなく、税額計算や申告の負担が軽くなる可能性が高いです。

 

ただし、贈与税と所得税どちらの方が税額を抑えられるかは、贈与の内容や金額によって異なります。

確実な節税のため事前にシミュレーションを行うのがおすすめです。

保険金の受け取りは「一時金」にする

生命保険の満期時や解約時に保険金を受け取る方法は、一時金受け取り方式と年金受取方式の2種類があります。

節税という面で考えると、保険金の受け取りは一時金にするのがおすすめです。

 

一時金受け取りの場合、該当の受け取り保険金は一時所得とみなされます。一方、年金方式の場合は雑所得として扱われます。

一時所得は特別控除50万円が適用される上に課税対象になるのは2分の1であるため、雑所得よりも税額を抑えられる可能性が高いです。

 

ただし、保険の内容によっては年金方式の方が受け取れる金額が大きくなるケースもあります。

節税面だけでなく、受け取り金額の総額も考慮した上での判断が必要です。

まとめ

一時所得は、総収入金額から収入を得るために支出した金額と特別控除額を引いて計算します。

そして他の所得と合算して課税対象所得を計算しますが、合算する額は一時所得のうち2分の1となります。

つまり、総所得金額に含めて課税対象となる金額は半分のみです。

 

一時所得の仕組みを上手く活用すれば、所得税の大幅な節税ができる可能性があります。

ただし、どの節税対策やどのテクニックを活用できるかはケースによって異なります。

より確実な節税対策を行うため、専門家である税理士へ相談するのが安心です。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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