医療法人のM&Aを徹底解説!最新の動向から具体的な手法まで

2022.11.02

現在、後継者不足に悩む医療法人は多く、M&Aの必要性も必然的に高まると考えられています。
しかし、医療法人のM&Aは、一般企業とは違い少し特徴的です。
本記事では、そんな医療法人のM&Aについて分かりやすく解説します。

医療法人の売却を考えている方だけでなく、買収を検討中の方、クリニックの医療法人化を検討中の方にも役立つ情報をまとめていますので、是非参考にしてください。

 

医療法人の種類については下記の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

 

CONTENTS

医療法人M&Aの特徴​

医療法人のM&Aのスキームは、主に下記の3つです。

合併
事業譲渡
出資持分譲渡

この中でも、出資持分譲渡は、「持分あり」の医療法人の出資持分の譲渡と「持分なし」の医療法人の出資持分の譲渡に分けられます。
それぞれ具体的に解説します。

合併

合併とは、2つ以上の法人をひとつに統一することです。

合併には新設合併と吸収合併があります。

新設合併は、新しく医療法人を設立し、消滅する2つ以上の法人をすべて引き継がせます。

吸収合併は、存続する法人に消滅側のすべてを引き継がせます。

どちらかというと、吸収合併の方が一般的に用いられるスキームです。


合併は、医療審議会を経て行政の許可を得る必要があるため時間がかかります。

合併を検討する際は、約1年の期間がかかることを想定しておきましょう。

事業譲渡

事業譲渡は、医療法人すべてを手放すのでなく、一部の事業のみを譲渡するスキームです。

特定の事業に関する財産、負債、権利義務、従業員のみを売却することができます。

分院展開している医療法人でよく用いられる手法です。

医療法人のM&Aは手続きが非常に煩雑で、特に医療機関を廃止、開設する際には多くの手続きが必要となります。

しかし、事業譲渡であれば売り手は法人として存続するため、手続きが比較的簡単です。

「持分あり」の医療法人の出資持分の譲渡

持ち分ありの医療法人の社員は、辞める時の出資持分払戻請求権と法人解散時の残余財産分配請求権をもっています。

この特徴から、持ち分ありの医療法人では、財産である出資持分を譲渡することで、医療法人を譲渡することができます。

売り手が買い手に出資持分を売却して対価を得るパターンが一般的です。

M&Aでは出資持分の譲渡に加えて役員変更と社員変更を行い、立場も譲らなければなりません。

「持分なし」の医療法人の出資持分の譲渡

持ち分なしの医療法人の場合、出資持分の概念がないため、出資持分の代わりに基金を譲渡します。

その対価は、M&A後に退職金として支払われることが一般的です。

プロセスは持ち分ありの医療法人と同様、社員と理事の交代を行い、法人の所有権と経営権を第三者に承継させます。

医療法人M&Aの具体的な手続き​

医療法人のM&Aに関する手続きは、大きく2つに分類されます。

出資持分譲渡契約書の作成と締結
行政手続き


契約書の記載内容や、都道府県ごとに違う行政手続きの詳細を解説します。

出資持分譲渡契約書の作成と締結​

医療法人のM&Aでは、出資持分の譲渡に関する契約書を作成し、締結しなければなりません。

煩雑な内容のため作成は専門家に任せることをおすすめしますが、各構成の概要は理解しておきましょう。

 

出資持分譲渡契約書に記載される内容の一部は下記の通りです。

・出資持分や地位を書いてに譲渡する旨
・日付
・譲渡の対価
・条件
・表明保障
・実行後の義務
・一般条項

 

出資持分を譲渡するだけでは経営権まで譲渡されないため、契約書に全貌を記載する必要があります。

特に前提条件は、売り手や買い手が守るべき義務が書かれており、これをすべて満たさなければ譲渡は実行されません。

その他にも日付や対価などの重要な事項が記載されているため、単なる書面上の契約ではなく、重要な部分は双方で確認し十分理解した上で作成と締結を行いましょう。

行政手続き​

医療法人のM&Aでは、契約書の締結だけでなく行政の手続きも複数必要です。

医療法人の種類によって実施しなければならない手続きは異なりますが、いずれも複雑なため、M&Aを行う際はプロに相談した方がよいでしょう。

下記は一般的に必要となる行政手続きの例です。

・定款変更
・役員変更
・登記
・保健所へ開設届の提出
・厚生局へ開設届、施設基準届の提出

定款変更には各都道府県知事の認可が必要で、この手続きには約2~3か月かかります。

役員変更も、定款と同様に都道府県知事の認可が必要です。

登記は登記事項の変更が生じた際に必要になるため、本店所在地や資産総額が変わった場合は行いましょう。

保健所へ届出や構成局での手続きはほとんど発生しませんが、院長や理事長が変わる場合は必要です。抜け漏れがないように注意しましょう。

医療法人M&Aのメリットとデメリット​

医療法人のM&Aを行うメリットは多様化しています。

需要が高まっている今だからこそ、買い手にも売り手にもメリットがある状況です。

メリットを知り、M&Aをうまく活用しましょう。

併せてデメリットと成功事例を下記で紹介します。

買い手側のメリット​

買い手側は既存の医療拠点を買い取ることで、新規開業時の難しさをカバーでき、また初期費用を安く抑えることができます。

新規で開業する際は、医療スタッフを採用し、患者さんを集めなければなりません。

また、設備準備費や開業資金など、膨大な初期投資が必要です。

M&Aを行った場合、これらにかかる時間や労力、お金を省略できます。

医師や看護師の採用、法人設立時の許認可手続き、設備(病床等)の確保が不要な点は、医療法人M&A特有のメリットです。

売り手側のメリット​

売り手側の最大のメリットは、後継者不在問題を解決できることです。

最近は医療法人の後継者不在問題が深刻化していますが、M&Aによって後継者がいなくても法人を残すことができるため、職員の雇用も守れます。

また、経営難に陥っていたり施設が老朽化している医療法人の再建手段としても、M&Aは効果的です。

創業者は売却することで利益も獲得できるため、良い買い手が見つかれば双方が得をする仕組みです。

買い手が引き継いだ医療法人を再建するサイクルができれば、日本の医療業界全体が良い方向へ進むでしょう。

医療法人M&Aのデメリット

医療法人のM&Aのデメリットは、新しい経営方針が地域に根付かず結果的に経営破綻する可能性があることです。

病院経営は、その地域に根差した方法で行われていることがほとんどです。

このような地域では、経営者や方針が変わることで、経営が難しくなるリスクがあります。

買い手は売り手としっかり協議を重ね、発生し得る問題を事前に理解し対応策を講じておきましょう。

医療法人M&Aの成功例​

最後に、医療法人M&Aの成功例を紹介します。

NTT東日本が、NTT東日本東北病院を東北医科薬科大学へM&Aした事例です。


NTT東日本は、2016年に東北医科薬科大学へM&Aを実施しました。

当時医師不足問題を抱えていたことがM&Aに踏み切った要因です。

NTT東日本病院は、2011年の東日本大震災の際に緊急医療を提供した実績も持ち合わせています。

M&A後は若林病院に改名し、東北復興に向けた医療提供に積極的に関与しながら現在も運営を続けています。

まとめ

このように、医療法人のM&Aは手続きも煩雑で難易度が高いです。

しかし、高齢者の増加により病院の必要性が高まっているため、今後M&Aの数もますます増えることが予想されます。
医療法人のM&Aに興味がある方は、プロの意見も聞きながら最新の動向を注視しつつ、積極的に動いていきましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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