医療法人化するのに最も適切なタイミングとは?失敗しないポイントを解説!

2023.02.13

個人クリニックを医療法人化すると、課せられる税金をはじめとしてさまざまな面で違いが生じます。医療法人化によるメリットを最大限に享受するためには、適切なタイミングを選ぶことが大切です。

今回は医療法人化に適したタイミングや、医療法人化のタイミングを判断するポイント・注意点を紹介します。

医療法人化のメリット・デメリットやクリニックを医療法人化するための手続きについて解説した記事もありますので、ぜひご覧ください。



CONTENTS

医療法人化に適したタイミングの例​

医療法人化に適したタイミングとして、4つの具体例が挙げられます。

それぞれのタイミングについて、なぜ医療法人化に適しているのか詳しく解説します。

所得が1,800万円を超える

医療法人化に適したタイミングのひとつが、所得が1,800万円を超えるときです。

 

個人の所得に課せられる所得税は、所得が大きくなるほど税率も大きくなる累進課税制度が採用されています。

個人の課税所得が1,800万円を超えると税率40%、4,000万円を超えると最高税率である45%が適用されます。

また個人の所得には10%の住民税も課せられるため、課税所得1,800万円以上の場合、所得の大部分を税金として支払う必要があるのです。

 

一方で法人税の税率は最大で23.3%です。

要件を満たした中小法人の場合、所得800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%となります。

 

税率の違いから、所得額が一定を超えると、所得税よりも法人税のほうが税額を小さくできます。

 

所得が1,800万円を超えるときは、クリニックが医療法人化をするのに適している可能性が高いタイミングです。

年間の収入額が一定を超える

クリニックにおける年間の収入額が一定額を超えるときも、医療法人化を検討・実施するタイミングとして適しています。

基準となる金額は以下の2つです。

 

  • 年間の社会保険診療報酬が5,000万円超
  • 自由診療を含めた年間の収入が7,000万円超

 

報酬額・収入額が上記を超えたタイミングが医療法人化に適している理由として、個人クリニックで適用できる概算経費制度の仕組みが挙げられます。

 

概算経費とは年間の社会保険診療報酬額に対して、所定の割合を乗じた金額を経費として計上できる制度です。

実際にかかった経費の細かな集計が必要ないため、計算の手間を抑えられます。

 

また実際にかかった経費よりも計上できる金額が大きくなるケースも多く、節税にも効果的です。

一概にはいえませんが、個人クリニックで実額経費が概算経費を上回るケースはそれほど多くありません。

 

概算経費の適用を認められるのは、年間の社会保険診療報酬が5,000万円以下の場合のみです。

また年間の社会保険診療報酬が5,000万円以下であっても、自由診療を含めた年間の収入が7,000万円を超える場合も対象外となります。

 

実額経費での申告および納税が必要になると、節税効果が得られない・手間が大きくなるといったデメリットがあります。

したがって、収入が大きくなり概算経費の適用を受けられなくなるタイミングも、医療法人化に適しているのです。

クリニックの開業から6年以上が経過する(開業7年目を迎える)

クリニックの開業から6年以上が経過する(開業7年目を迎える)時期も、医療法人化に適したタイミングとして挙げられます。

医療機器の償却期間は6年間です。

すなわちクリニックの開業に際して購入した医療機器の減価償却費は、開業7年目には計上できなくなります。

減価償却費の計上ができなくなると経費が小さくなり所得が大きくなるため、税額も大きくなる可能性が高いです。

クリニックの開業に際して医療機器を多く購入していた場合、償却期間が終わるタイミングで医療法人化するのもひとつの選択肢です。

なお、医療機器を購入ではなくリースによって導入する場合、クリニックでは減価償却の処理を行わないため減価償却費の支払いもありません。

すなわち開業7年目から減価償却費の支払いがなくなり経費が少なくなるという事態も起こりません

開業時にリースで医療機器を導入している場合は、開業7年目を迎えるタイミングが医療法人化に適しているとは限らないため注意しましょう。

クリニック開業時の医療機器の導入については、以下の記事で詳しく解説しています。



事業拡大・事業承継を検討している

事業拡大・事業承継を検討している場合も、医療法人化を考えて良いでしょう。

個人クリニックが開設できる施設は1ヶ所のみで分院はできません。

一方で医療法人は分院が可能であるため、分院のためには医療法人化が必須となります。

また医療法人は社会保険の加入義務などルールが厳しい分、制度が整備された医療機関として、求職者にとって魅力的に映りやすいです。

事業承継を検討している場合も、医療法人化をおすすめします。

個人クリニックよりも医療法人のほうが事業承継の手間が少なく、発生する税金も少ない可能性が高いためです。

医療承継については、以下の記事で詳しく解説しています。



医療法人化のタイミングを判断するポイント・注意点

医療法人化に適したタイミングを4つ紹介しましたが、当てはまるケースがあるからといって、必ずしも医療法人化するべきとは限りません。

医療法人化を行う前に、本当に適したタイミングであるか、しっかり判断する必要があります。

 

医療法人化のタイミングを判断する際のポイント・注意点を3つ紹介します。

医療法人化のメリットがデメリットよりも大きいか検討する

適切なタイミングで医療法人化するためには、メリットがデメリットよりも大きいか検討が必要です。

 

医療法人化には以下のように、さまざまなメリット・デメリットが存在します。

 

メリット

  • ・所得が大きい場合、所得税より法人税のほうが税率が低いため節税につながる
  • ・事業拡大や事業承継がしやすい
  • ・社会的信用が高まる
  • ・地域医療への安定的な貢献が可能になる

 

デメリット

  • ・必要な手続きが多くなる
  • ・社員総会や理事会の開催が必要であり、管理運営の負担が増大する
  • ・個人事業主に比べ個人の可処分所得が減少する
  • ・簡単に解散できず、個人事業主へ戻ることや閉鎖することが難しい

 

メリットとデメリットのバランスによっては、医療法人化をする意味や必要性がないケースもあります。

医療法人化に必要な手続きや準備について早めに把握する

医療法人化を少しでも検討しているのであれば、医療法人化に必要な手続きや準備について早めに把握することが大切です。

 

医療法人化に必要な手続きとして以下の例が挙げられます。

  • ・必要書類の準備や作成
  • ・設立総会の開催または議事録の作成
  • ・医療法人の申請
  • ・認可後の設立登記
  • ・税務署、都道府県、年金事務所など各所での手続き

また大前提として、医療法人化に必要な要件を満たす必要もあります。

 

医療法人化の着手から認可までにかかる期間の目安は6ヶ月です。

必要な手続きが多く時間もかかるため、医療法人化はすぐにできるものではありません。

 

医療法人化について理解が不十分だと、適切なタイミングでの医療法人化に間に合わない恐れがあります。

将来的に医療法人化を考えているのであれば、実行に移すよりも前に、医療法人化について事前に確認するのが安心です。

医療法人化について専門家に相談しておく

医療法人化の適切なタイミングや判断基準を紹介してきましたが、最適なタイミングがいつになるかは結局のところケースによって異なります。

医療法人化をするべきか、専門知識がない人が正しく判断するのは難しいでしょう。

 

医療法人化に興味がある・検討しているのであれば、早い段階で一度専門家に相談するのがおすすめです。

専門家のアドバイスを受けることで、医療法人化の最適なタイミングを判断できる可能性が高くなります。

 

また実際に医療法人化を進める際にも、正確かつスムーズな対応のため、専門家へのサポート依頼をおすすめします。

まとめ​

個人クリニックと医療法人にはさまざまな相違点があります。

特に税金面での違いが大きく、所得や収入が一定額を超えたときは、医療法人化に適したタイミングといえます。

医療法人化に適したタイミングや判断基準について押さえることで、より良い判断ができるでしょう。

 

ただし、専門知識のない人が医療法人化の最適なタイミングを判断するのは容易ではありません。

医療法人化に興味がある・医療法人化を検討しているのであれば、一度専門家に相談するのがおすすめです。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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