アパート経営は節税対策に有効?仕組みとポイントについて解説!

2023.05.01

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アパート経営は節税対策に有効と聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

確かに、相続税や贈与税のようにアパート経営によって節税できる税金もあります。

所得税や住民税についても、単純に不動産を保有しているだけの状態よりもアパートを経営した方が節税になります。

しかし、アパート経営による節税効果を最大限に得るためには、ポイントをしっかり押さえる必要があります。

今回は節税対策の観点からアパート経営について詳しく解説します。

不動産投資全般については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

CONTENTS

アパート経営によって節税対策が可能な税金とは

アパート経営を行うことで、単に不動産を保有しているだけの状態よりも税務上有利な制度を多く活用できます。

そのため、アパート経営をしていない場合よりも節税ができる可能性が高くなります。

この章ではアパート経営によって節税対策が可能な税金の種類を紹介します。

所得税・住民税

所得税・住民税の2つは、その年の所得額に応じて金額が決まります。

また、アパート経営による所得は不動産所得に該当し、給与所得や事業所得との損益通算が可能です。

 

不動産所得の計算に際して、アパート経営に関する支出を経費として計上できます。

詳しくは後述しますが、アパート経営は計上できる経費の種類が多く、赤字になるケースも珍しくありません。

 

もしアパート経営が赤字となった場合、不動産所得は赤字になります。

不動産所得の赤字と給与所得などの黒字を損益通算すれば、課税対象となる所得額が減ります。

所得が減れば所得税額も抑えられるため、アパート経営は所得税・住民税の節税になるのです。

相続税・贈与税

アパート経営は、相続税および贈与税の節税対策としても効果的な方法です。

 

アパート経営が相続税対策に効果的な理由は、他者に貸し出している不動産は通常よりも評価額が下がるためです。

 

賃貸物件を建てた土地は貸家建付地に該当し、評価額が2割ほど軽減されます。

そして、建物部分は取得価額や時価ではなく固定資産税評価額で計算する上、賃貸物件の場合は借家権割合30%が差し引かれます。

他者に貸し出している不動産は自分の名義であっても自由には扱えないため、評価額を減額するべきという考えに基づく仕組みです。

 

相続税評価額が下がれば相続税の課税対象額も下がり、結果として相続税の額も下がります。

したがって、アパート経営は相続税の節税対策として明確に有効といえます。

 

贈与税の節税対策テクニックとしては、以下の2つが挙げられます。

 

  • 生前贈与
  • 非課税枠の範囲内(年間110万円)で賃料分の生前贈与を行えば、相続財産の額が下がり相続税の節税になります。
  •  
  • 相続時精算課税制度
  • 子や孫に対して合計2,500万円までの贈与であれば贈与税が発生せず、贈与者が亡くなったときに相続税の計算対象に含める仕組みです。

贈与税ではなく相続税の対象となるため、正確には節税ではなく課税の先送りに近いイメージですが、アパートのような収益物件については相続時精算課税制度で贈与税を発生させずに早めに贈与し、受贈者が賃料を受け取れるようにするのもひとつの手段です。

 

贈与税そのものの節税というよりは、贈与税の仕組みを利用して将来の相続税を抑える方法です。

固定資産税および都市計画税

保有している不動産を賃貸物件としている場合、固定資産税および都市計画税について住宅用地の特例の適用を受けられます。

住宅用地の特例対象となる物件は、評価額が以下のように軽減されます。

 

  • 固定資産税
  • 土地の面積に対して住宅の戸数×200平方メートル以下の部分:課税価格の6分の1
  • 土地の面積に対して住宅の戸数×200平方メートルを超える部分:課税価格の3分の1
  •  
  • 都市計画税
  • 土地の面積に対して住宅の戸数×200平方メートル以下の部分:課税価格の3分の1
  • 土地の面積に対して住宅の戸数×200平方メートルを超える部分:課税価格の3分の2

アパート経営の節税対策で押さえたいポイント

アパート経営に際して、特に注意やテクニックの活用が必要なのが所得税および住民税の節税対策です。

所得税・住民税の節税対策で押さえたいポイントを3つ紹介します。

青色申告にする

アパート経営の節税効果を最大限に発揮するためには、青色申告にすることが大前提です。

青色申告には以下のようにさまざまな優遇措置が用意されています。

 

  • 青色申告特別控除
  • 青色申告の場合、最大で65万円の特別控除が受けられます。
  •  
  • 青色事業専従者給与
  • 家族や親族に支払った給与を全額経費計上できます。
  •  
  • 赤字の繰り越し
  • 青色申告では赤字を最大3年間繰越できます。
  • たとえば前年に100万円の赤字、当期に150万円の黒字が出ていた場合、相殺して当期の黒字を50万円として計算できます。

白色申告との大きな違いは以下の3点です。

  • ・複式簿記による記帳が必要
  • ・仕訳帳や総勘定元帳などの保管が必要
  • ・確定申告に際して青色申告決算書(損益計算書と貸借対照表)の提出が必要

白色申告より青色申告の方が経理上の手間は大きくなりますが、それ以上に大きな節税効果を得られるため、節税対策は青色申告にすることが大前提です。

経費にできる支出を漏れなく計上する

経費にできる支出を漏れなく計上することも大切です。

 

不動産所得の計算に際して、アパート経営に関連する支出を経費として収入から差し引くことができます。

経費の額が大きければそれだけ所得額が小さくなり、結果として節税につながります。

 

アパート経営で経費にできる支出として、以下の例が挙げられます。

  • ・不動産に関する各種税金
  • ・借入金利子(不動産購入時にローンを契約している場合)
  • ・修繕費
  • ・修繕積立金
  • ・各種手数料
  • ・損害保険料
  • ・減価償却費

中でも特に重要なのが減価償却費です。

減価償却とは、固定資産の購入価額を耐用年数に応じて按分し費用計上する行為であり、減価償却によって計上する費用を減価償却費といいます。

 

アパートを含めた不動産は減価償却資産であり、減価償却費として高額の経費を計上できます。

減価償却費をしっかり計上することで、不動産所得を減らすことができます。

減価償却費は実際の支出を伴わない経費であり、キャッシュ的な負担がない点もメリットといえます。

所得額によっては法人成りも検討する

アパート経営による所得が大きい場合、法人成りを検討するのもひとつの手段です。

 

所得税は所得額が大きくなるにつれ税率が高くなる累進課税制度を採用しています。

一方で、法人税は利益に関係なく税率が一定です。

そのため、所得額が高い場合、個人が支払う所得税額よりも法人が支払う法人税額の方が低くなります。

 

あくまでひとつの目安ですが、課税所得800万円を超えるあたりから法人成りを検討しても良いでしょう。

アパート経営で節税対策を行う際の注意点

アパート経営によって節税が期待できる税金を複数紹介しました。

中でも特に、相続税の対策としてアパート経営を行うのは効果的です。

不動産は価値が大きくなりやすいため、評価額を下げる方法はなるべく実施するべきといえます。

固定資産税・都市計画税についても、賃貸物件の方が評価額を下げられるため節税に効果的です。

 

一方で、所得税・住民税の節税対策を目的にアパート経営を行うのはおすすめできません。

 

アパート経営による節税効果は時が経つにつれ薄れていきます。

アパート経営を始めたばかりのうちは、大きな出費や減価償却費の計上などによって経費が大きくなり、所得を抑える効果が高いです。

しかし、ある程度出費が落ち着くと計上できる経費が減り、不動産所得が増大します。

一概にはいえませんが、ケースによってはかえって税負担が大きくなる恐れもあります。

 

アパート経営が赤字であれば損益通算が可能ですが、節税のために無理やり赤字にするのは本末転倒です。

赤字の状態が続けば損失が大きくなり、税金はかからなくてもそれ以外の支出や負担が大きくなってしまいます。

このように、所得税および住民税の節税目的でアパート経営を行うのは非効率です。

節税につながるテクニックは活用しつつ、あくまで利益の追求を前提にしましょう。

まとめ

相続税や固定資産税などは、賃貸物件に対して評価額を下げる制度を用意しています。

これらの税額を抑えたいと考える場合、早めにアパート経営を開始するのが良いでしょう。

 

所得税や住民税についても、単に不動産を保有しているだけの状態よりアパート経営を行う方が税負担を軽減できるのは事実ですが、そのためにアパート経営による利益を無理やり赤字にするのは本末転倒です。

節税につながるテクニックは活用しつつ、あくまで利益の追求を前提にする必要があります。

 

アパート経営を上手く行いつつ税負担を最小限に抑えるためには、専門家のアドバイスやサポートを受けるのがおすすめです。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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