
寄付金控除とは、要件を満たす寄付金の支出がある場合に受けられる所得控除です。
所得額から寄付金控除が差し引かれるため、所得税の節税につながります。
また、寄付金のなかには所得控除ではなく寄附金特別控除という税額控除の適用を選択できるものもあります。
寄付金控除と寄附金特別控除はどちらか好きな方を選択できるため、自身にとって有利な方を選ぶことが大切です。
寄付金による節税効果を高めるためには、寄付金控除の仕組みや注意点をしっかり押さえる必要があります。
今回は寄付による節税に際して知っておくべき情報を詳しく解説します。
寄付の中でも特に身近な制度として、ふるさと納税が挙げられます。
ふるさと納税については以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
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CONTENTS
寄付が節税につながる?寄付金控除の仕組みを解説

寄付が節税につながるのは、寄付金控除という制度があるためです。
この寄付金控除について、詳しく解説します。
所得を計算する方法・仕組み
寄付金控除の仕組みを詳しくみる前に、まずは前提として所得の計算方法を解説します。
所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。
所得税は収入額ではなく、所得に対して発生します。
したがって所得税を計算するためには、まずは所得を計算する必要があります。
収入から経費を引いた額に所得税の税率を乗じるわけではありません。
所得から所得控除を引いた額が課税所得金額となり、この課税所得金額に税率を乗じて所得税の額を算出します。
所得控除とは納税者の個人的事情を加味し、税負担を調整するために用意されている制度です。
所得控除には以下の15種類が存在し、それぞれ一定の要件が定められています。
- ・基礎控除
- ・扶養控除
- ・配偶者控除
- ・配偶者特別控除
- ・社会保険料控除
- ・生命保険料控除
- ・地震保険料控除
- ・小規模企業共済等掛金控除
- ・医療費控除
- ・寄附金控除
- ・障害者控除
- ・寡婦控除
- ・ひとり親控除
- ・勤労学生控除
- ・雑損控除
所得から所得控除を差し引いた課税所得金額に税率を乗じて所得税額を算出します。
そして、ケースによっては所得税額から税額控除を差し引くことも可能です。
税額控除は所得税額から一定額を直接控除できる仕組みです。
税額控除には複数の種類がありますが、中でも特に適用例が多いものとして寄附金特別控除や住宅ローン控除が挙げられます。
所得税額から税額控除を差し引いた額が、最終的な納税額です。
寄付金控除とは
寄付金控除は、寄付金の支出があった場合に受けられる所得控除です。
すべての寄付金が対象になるわけではなく、一定の要件を満たす特定寄付金のみが寄付金控除の対象となります。
※特定寄附金については後述します。
寄付金控除による控除額の計算式は以下の通りです。
その年中に支出した特定寄附金の合計額-2,000円=寄付金控除の額
特定寄附金の合計額は所得の40%相当額が限度となっています。
寄付金全額を寄付金控除の計算に含められるとは限らない点に注意が必要です。
なお、単に寄付金控除と呼ぶ場合は所得控除の一種である寄付金控除を指すケースが一般的です。
しかし、寄付金の支出によって利用できる控除には、税額控除に該当する制度も存在します。
税額控除に該当するものを寄附金特別控除と呼びます。
以下いずれかに該当する寄付金の場合、所得控除である寄付金控除と税額控除である寄附金特別控除のどちらか有利な方の選択が可能です。
- ・政党等寄附金
- ・認定NPO法人等寄附金
- ・公益社団法人等寄附金
寄付金の種類によって控除額の計算方法が異なるため、事前にご確認ください。
寄付額がよほど高額な場合を除き、税額控除の方が高い節税効果を得られるケースが多いです。
ただし、寄付金控除と寄附金特別控除のどちらが有利であるかはケースによって異なるため、事前にシミュレーションを行うことをおすすめします。
「所得控除」と「税額控除」の違いと選び方
寄付金控除には「所得控除」と「税額控除」の2つの方式があり、納税者が有利な方を選択できます。
所得控除は、寄付額から2,000円を引いた額が所得金額から差し引かれる仕組みで、所得税率が高い高所得者ほど節税効果が大きくなります。
一方、税額控除は、(寄付額 – 2,000円)× 40%の金額が所得税額から直接差し引かれます。
一般的には、税額から直接控除される「税額控除」の方が多くの人にとって節税効果が高くなる傾向があります。ご自身の所得状況を確認し、どちらの控除がよりメリットが大きいか検討しましょう。
寄付で節税できる税金の種類
寄付金控除を活用することで節税できる税金は、主に「所得税」と「住民税」の2つです。
所得税については、確定申告で「所得控除」または「税額控除」を適用することで税額が軽減されます。
住民税については、お住まいの自治体が条例で指定した寄付先である場合に控除の対象となり、寄付額の最大10%が翌年の住民税額から控除されます。ただし、住民税の控除対象となる寄付先は自治体によって異なるため、事前にウェブサイトなどで確認しておくことが大切です。
【参考】法人が寄付をした場合
法人が寄付をした場合、寄付した金額のうち一定額を損金算入できます。
寄付金の支出によって、所得額が直接減るイメージです。
法人が損金算入できる寄付金の額には上限があり、特定の計算式によって算出します。
個人の税額控除と同様に、寄付金の種類によって計算式が異なります。
限度額を超える部分については損金に算入できません。
個人と法人では、寄付金の扱い方や控除の仕組みが大きく異なります。
法人の寄付金については仕組みが複雑で正確な計算が難しいため、専門家のサポートを受けるのが確実です。
寄付で節税するための具体的な3つの手順

寄付を通じて節税効果を得るには、所定の手順を正しく踏むことが重要です。寄付先の選択から、必要書類の保管、そして最終的な申告まで、一連の流れをあらかじめ理解しておくことで、控除の適用をスムーズに進めることができます。ここでは、その具体的なステップを3つに分けて解説します。
STEP1: 控除対象となる寄付先を選んで寄付する
STEP2: 寄付金の受領証(領収書)を受け取り保管する
寄付を実行した後は、寄付先から送付される「寄付金の受領証」や「領収書」を必ず受け取り、大切に保管してください。この書類は、あなたが寄付を行ったことを証明する唯一の公的な証拠であり、後の確定申告で提出が求められます。
受領証には寄付者の氏名、金額、年月日などが記載されていることを確認し、申告時期まで絶対に紛失しないよう管理することが不可欠です。
STEP3: 確定申告で寄付金控除の手続きを行う
寄付による節税を行う際の注意点

寄付金の支出は所得控除または税額控除の対象になるため、寄付が節税につながるのは事実です。
そして、寄付による節税を効果的に行うためには、控除制度の仕組みや利用方法を正しく抑える必要があります。
この章では、寄付による節税を行う際の注意点を2つ紹介します。
控除の対象となるのは特定寄附金のみ
すでに触れたように、控除の対象となるのは要件を満たす特定寄附金のみです。
すべての寄付金が控除の対象になるわけではありません。
特定寄附金に該当する寄付金の例を紹介します。
- ・国や地方公共団体に対する寄付金
- ・公益社団法人や公益財団法人などに対する寄付金
- ※一定の要件を満たすものとして財務大臣が指定したもの
- ・独立行政法人
- ・国立大学
- ・日本私立学校振興・共済事業団
- ・日本赤十字社
- ・社会福祉法人
- ・更生保護法人
ほかにも特定寄附金に該当するものは多数あるため、詳しくは国税庁の公式サイトをご確認ください。
特定寄附金に該当せず、寄付金控除・寄付金特別控除の対象外となる寄付の例を紹介します。
- ・募金箱への寄付
- ・神社やお寺のお賽銭
- ※寄付金控除・寄付金特別控除の適用には寄付の事実を証明する書類が必要です。
- そのため領収書が発行されない寄付金は控除の適用を受けられません。
- ・商業団体や個人へのクラウドファンディング
- ※自治体やNPO法人主体のものは控除の対象になるケースもあります。
寄付による節税を考えている人は、控除対象となる寄付金の種類を必ず押さえておきましょう。
控除を受けるには年間2,001円以上の寄付が必要
寄付金控除には、2,000円の自己負担額が設定されています。これは、年間の寄付金合計額のうち、2,000円を超える部分が控除の対象になるという意味です。したがって、年間の寄付合計額が2,000円以下の場合は、控除を受けることができず、節税効果は得られません。
複数の団体に寄付している場合は、その合計額で判断します。節税を目的として寄付を行う際は、年間の合計寄付額が2,001円以上になるように計画することが重要です。
控除額には上限があることを理解する
寄付金控除によって無制限に税金が安くなるわけではなく、控除額には上限が定められています。所得税の寄付金控除(所得控除の場合)の対象となる寄付金額は、その年の総所得金額等の40%が上限です。
また、住民税の控除対象となる寄付金額は、総所得金額等の30%が上限とされています。高額な寄付を検討している場合は、ご自身の所得金額から控除上限額がいくらになるのかを事前に把握しておくことが大切です。上限を超えた分の寄付には控除が適用されないため注意しましょう。
寄付金控除の適用には確定申告が必要
寄付金控除の適用を受けるためには確定申告が必要です。
寄付金の支出が控除の適用対象に該当する場合でも、自動で控除が適用・計算が行われるわけではありません。
所得が給与所得のみの会社員は原則として確定申告が不要ですが、確定申告をしなければ適用を受けられない控除制度もあります。寄付金控除もその一つです。
確定申告で必要な手続きを行わなければ寄付金による控除を受けられないため注意しましょう。
確定申告は翌年の2月16日から3月15日まで(土日祝にかぶる場合は翌平日)の間に実施する必要があります。
確定申告の方法は以下の4種類です。
- ・確定申告書を税務署に持参
- ・確定申告書を税務署の時間外収集箱に投函
- ・確定申告書を税務署に郵送
- ・e-Taxで提出する
- ※e-Tax :Web上で実施できる国税電子申告・納税システム
なお、寄附金控除の一種であるふるさと納税の場合、ワンストップ特例制度を活用すれば確定申告が不要です。
ふるさと納税の詳細は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
寄付と節税についてよくある質問

ここでは、寄付による節税に関して多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式で解説します。ふるさと納税との関係や、よりお得な控除方法の選び方など、具体的な疑問にお答えしますので、ぜひ参考にしてください。
ふるさと納税も寄付金控除の対象ですか?
はい、ふるさと納税は地方自治体への寄付であり、寄付金控除の対象となります。ふるさと納税の大きな特徴は、自己負担額2,000円を除いた全額が、所得税からの還付と翌年の住民税からの控除によって実質的に戻ってくる点です。
さらに、寄付先の自治体から返礼品を受け取れるメリットもあります。
ただし、控除される金額には所得や家族構成に応じた上限があるため、事前にシミュレーションサイトなどでご自身の上限額を確認することが重要です。
「所得控除」と「税額控除」はどちらがお得ですか?
どちらが有利になるかは個人の所得税率によって異なりますが、一般的には「税額控除」の方が節税効果は高くなるケースが多いです。
所得控除は所得税率が高い人ほど還付額が大きくなるため、課税所得金額が900万円を超えるような高所得者の方は所得控除が有利になる可能性があります。
一方、税額控除は所得税率に関わらず一律で計算されるため、多くの方にとってメリットが大きくなります。迷った場合は、まず税額控除で計算してみることをお勧めします。
寄付金の領収書をなくしてしまった場合、どうすればよいですか?
確定申告で寄付金控除を受けるには、原則として寄付先が発行した領収書の原本が必要です。もし紛失してしまった場合は、まず寄付先の団体に再発行が可能かどうかを速やかに問い合わせてください。団体によっては再発行に応じてくれる場合があります。
ただし、再発行が難しいケースも少なくありません。領収書は控除を受けるための最も重要な証拠書類ですので、受け取ったら確定申告が終わるまで、紛失しないように厳重に管理することが何よりも大切です。
まとめ
個人が支出した寄付金について、一定の要件を満たすものは寄付金控除または寄付金特別控除の適用対象となります。
寄付金控除は所得控除、寄付金特別控除は税額控除に該当する制度です。
寄付金の中には、所得控除と税額控除どちらか好きな方を選べるものも存在します。
どちらの方が有利になるかはケースによるため、事前にシミュレーションするのがおすすめです。
なお、すべての寄付金が控除対象になるわけではありません。
寄付による節税を検討している方は、事前に控除対象となる寄付金の種類の確認が必要です。
また、ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用する場合を除き、寄付金による控除を受けるためには確定申告が必須です。
寄付金の仕組みやルールをしっかり押さえ、節税に上手く活用しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士





