マッチング拠出とは?iDeCoと併用できる?ポイントと注意点を解説!

2023.09.08

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マッチング拠出とは、企業型DC制度において、会社が拠出する掛金に加えて加入者本人が掛金を上乗せして拠出できる制度です。

マッチング拠出で加入者が上乗せする掛金は全額所得控除の対象となるため、節税効果が期待できます。
通常の企業型DC制度と同様に、資産運用によって生じた利益も非課税です。

 

マッチング拠出には大きなメリットがある一方で、無視できないデメリットも存在します。

また、iDeCoとの併用ができない点にも注意が必要です。

 

本記事ではマッチング拠出の節税効果や注意点など、実施する上で押さえておきたい内容について解説します。

 

iDeCoの詳細は以下の記事で解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

CONTENTS

マッチング拠出の概要

はじめに、マッチング拠出の概要を紹介します。

マッチング拠出とは

マッチング拠出とは、企業型DC制度において、会社が拠出する掛金に加えて加入者本人が掛金を上乗せして拠出できる制度です。

企業型DCの加入者だからといって利用を強制されるわけではなく、マッチング拠出を利用するか否かは加入者が自由に選択できます。

 

マッチング拠出として上乗せする掛金の額は、自由に設定できるわけではありません。

掛金として上乗せできる金額には以下の条件が定められています。

  • ・マッチング拠出で設定できる掛金の額は、企業型DCとして会社が拠出する掛金の額が上限
  • ・マッチング拠出の掛金と会社拠出の掛金の合計額上限は月額55,000円
  •  

企業型DCはあくまでも会社が主たる拠出者であるという考えから、マッチング拠出の上乗せ額が会社掛金を超えることはできないのです。

 

なお、企業型DC制度を導入していても、マッチング拠出制度は導入していない会社も存在します。

そもそも|企業型DCとは

企業型DCとは、企業が掛金を毎月積み立てて、加入者である従業員が年金資産の運用を行う制度です。

 

企業型DCの特徴として、以下の3つが挙げられます。

  • ・掛金を負担するのは企業だが、運用の結果はあくまで従業員の自己責任
  • ・運用によって発生した利益は非課税
  • ・企業型DCによる年金資産の引き出しができるのは原則として60歳以降

企業型DCは大きく2つのパターンに分けられます。

  • ・会社の役員、従業員は無条件で自動的に加入する
  • ・企業型DCに加入するか従業員が選択できる(選択型企業DC)

企業型DCとして拠出される掛金の額は、会社での役職等に応じて決まるケースが多いです。

掛金の上限額は、企業型DC以外の企業年金の有無によって以下のように異なります。

  • ・他の企業年金がある:月額27,500円
  • ・企業型DCのみ:月額55,000円

マッチング拠出の節税効果とは

続いて、マッチング拠出の節税効果について解説します。

マッチング拠出は節税につながる

結論として、マッチング拠出は節税効果が期待できる手法です。

 

マッチング拠出で加入者が上乗せする掛金は、全額所得控除の対象になります。

マッチング拠出を行うことで課税対象となる所得額が減り、結果として所得税および住民税の軽減効果を得られます。

 

資産運用によって得た利益は原則として課税対象です。

しかし、マッチング拠出に限らず企業型DCの資産運用によって生じた利益は非課税となります。

税負担なく投資運用を行える点もマッチング拠出の大きなメリットであり、節税につながる要素といえるでしょう。

 

なお、マッチング拠出として従業員が上乗せする掛金は給与から天引きされます。

所得控除は会社の年末調整で済むため、マッチング拠出に関する従業員の手間はほとんどありません。

 

このように、マッチング拠出は節税効果と手軽さの両立を実現している制度です。

マッチング拠出のデメリット

マッチング拠出には注意するべきデメリットが3つ存在します。

 

1つは、積立額を60歳まで引き出せない点です。

企業型DCは年金制度の一種であり、老後の資産形成を大きな目的としています。

そのため、どれほど大きな積立額になっても、60歳まで解約・引き出しはできません。

マッチング拠出として上乗せした掛金も、一度拠出した以上は60歳まで引き出せない点に注意が必要です。

 

2つ目のデメリットとして、掛金の額は年に1回しか変更できない点が挙げられます。

やむを得ない理由により掛金の拠出が難しい場合、掛金の拠出を0円にするしかありません。

変更できるタイミングと回数に限りがあるため、掛金の額は慎重に決める必要があります。

 

3つ目のデメリットは、拠出額に上限がある点です。

すでに紹介していますが、マッチング拠出として上乗せできる掛金の額には以下の条件が定められています。

  • ・企業型DCとして会社が拠出する掛金の額を超えてはいけない
  • ・マッチング拠出の掛金と会社拠出の掛金の合計額上限は月額55,000円

会社が拠出する掛金の額によっては、マッチング拠出として上乗せできる金額がかなり少なくなってしまう可能性があります。

iDeCoとの併用は可能?

企業型DCとiDeCoの併用自体は可能ですが、マッチング拠出とiDeCoの併用はできません

 

iDeCo(個人型確定拠出年金)は個人で積み上げる年金制度です。

企業型DCと同様に、掛金を使った資金運用が行われ、積み立てたお金は60歳以降で引き出し可能になります。

マッチング拠出と同様に、掛金は所得控除の対象であり、運用益は非課税です。

iDeCoの掛金は自動引き落としが行われるため、運用にあたって特に手間はかかりません。

 

企業型DCとiDeCoを併用する場合、iDeCoの掛金額として以下の要件を満たす必要があります。

  • ・月額上限は20,000円
  • ・企業型DCとiDeCoの掛金合計の上限は月55,000円

他の企業年金を利用している場合、上限額はさらに低くなります。

マッチング拠出とiDeCoどちらを選ぶべき?

マッチング拠出とiDeCoはどちらか一方しか実施できないため、自分にとってメリットが大きい方を選ぶ必要があります。

 

判断基準のひとつとして、拠出できる掛金の大きさが挙げられます。

前述したように、マッチング拠出で加入者が上乗せする掛金は全額所得控除の対象です。

そのため、拠出できる掛金の額が大きいほど所得控除の対象となる金額も大きくなります。

 

たとえば会社が拠出する掛金が5,000円の場合、マッチング拠出として上乗せできる額は5,000円が上限となります。

一方で、iDeCoの場合は20,000円までの拠出が可能です。

したがってこの場合、iDeCoの方がより大きな節税効果を得られるでしょう。

 

一方で、会社の掛金額が25,000円の場合、マッチング拠出として上乗せできる額の上限は25,000円です。

iDeCoは上限が20,000円のため、iDeCoよりもマッチング拠出の方が支出できる掛金の額が大きくなります。

この場合、iDeCoよりもマッチング拠出の方が節税効果が高いといえます。

 

ただし単純な掛金の額だけでなく、手間や手数料なども確認した上で総合的に判断する必要があります。

 

企業型DCとして提供されている投資商品を確認することも大切です。

マッチング拠出は企業型DCに付随する制度であるため、選択肢が企業型DCとして提供されている投資商品に限ります。

勤務先で選べる投資商品の品ぞろえが悪い、魅力的なものがないといった場合、iDeCoのメリットが大きいといえるでしょう。

 

手間の少なさを最優先とする場合、マッチング拠出がおすすめです。

マッチング拠出の掛金は給与から天引きされるため、自身が支払いや振込の手続きを行う必要がありません。

また、所得控除の手続きは年末調整で済む上に口座管理も不要です。

 

単純な節税効果だけでなく、自身が優先する要素を考慮した上で、マッチング拠出とiDeCoどちらを利用するか判断する必要があります。

まとめ

マッチング拠出は、掛金が所得控除の対象になる上に運用益は非課税と、節税につながる嬉しい要素が複数あります。

加入者である従業員にほとんど手間がかからない点も大きなメリットです。

一方で、積立額を引き出せるタイミングや掛金として支出できる金額の上限など、注意するべきデメリットも存在します。

 

マッチング拠出とiDeCoは似た性質を持つ制度ですが、それぞれ異なるメリット・デメリットを有します。

どちらか一方しか利用できないため、自分に合う方法を選ぶことが大切です。

 

マッチング拠出とiDeCoどちらにするべきかわからない・自分の判断が正しいか不安とお悩みであれば、ぜひ専門家である税理士へご相談ください。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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