
株式投資に関係のある所得として、配当所得と譲渡所得が挙げられます。
配当所得は株の配当があった場合に、譲渡所得は株式売買で利益が出た場合に発生します。
所得の発生要因や金額に関係なく、所得税の仕組みを理解した上で正しい方法を行えば、所得税の節税が可能です。
株式投資に関しても節税対策として効果的な手段が複数存在します。
今回は株取引で発生する所得の扱いや、株式投資における節税対策について詳しく解説します。
投資に関する節税対策については他の記事でも詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
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CONTENTS
株式投資にかかる税金の種類

株式取引に関連して発生する税金には、所得税、住民税、法人税の3種類があります。
さらに、2037年(令和19年)までは、復興特別所得税が適用される点にも注意が必要です。
株式譲渡の場合、株主が株式を売却して譲渡所得を得ると、その利益が課税対象となります。
個人株主の場合は所得税と住民税、法人株主の場合は法人税が課される仕組みです。
株式投資と税金の関係性を理解する
株式投資で利益を得る際には必ず税金の問題が発生します。投資家として成功するためには、利益を最大化するだけでなく、適切な税金対策を行うことが大切です。
株式投資における課税対象は主に配当所得と譲渡所得の2種類があります。それぞれに所得税・住民税が課されるのです。
標準的な税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)となっています。この税率は2037年までは復興特別所得税を含んだ数字です。
株式投資で得られる利益に対する税金を正確に理解することは、効果的な投資戦略を立てる上での基礎知識となるでしょう。特に長期投資を考える場合、複利効果を最大化するためにも税金の影響を最小限に抑える方法を知っておくことが資産形成の成功へとつながります。
株式投資で発生する所得と確定申告

株式投資で発生する所得として以下の2種類が挙げられます。
- ・配当所得
- ・譲渡所得
株式投資でややこしいのが、所得の種類によって計算方法や確定申告での扱い方が異なる点です。
株式投資によって発生した利益がどちらの所得に該当するか正しく理解しなければ、確定申告および税額の計算を誤ってしまう恐れがあります。
そのため、株式投資を行う際は節税対策以上に株式投資で発生する所得についての理解が重要です。
株式投資で発生する所得について詳しく解説します。
株式の配当・利子等|配当所得
株式の配当および利子等は配当所得の対象です。
配当所得の金額は以下の計算式で算出します。
源泉徴収税額差引前の収入額-株式等の取得を目的とした借入金の利子=配当所得
また、株式の配当や利子等は源泉徴収の対象であり、口座に入金されるのは源泉徴収後の金額です。
源泉徴収で適用される税率は、該当の株式が上場会社のものか否かによって異なります。
- ・上場株式等の配当や利子等:20.315%
- 所得税および復興特別所得税が15.315%、地方税が5%です。
- ・上場株式等以外の利子等:20.42%
- 地方税は課せられません。
上場株式等の配当等は、確定申告の方法として以下3つの選択肢があります。
- 申告不要
- 少額配当の要件を満たすものや上場株式等の配当等および投資法人からの金銭の分配は、確定申告不要制度の対象となります。
- 総合課税での確定申告
- 各種所得の金額を合計して所得税額を計算する方法です。
- 原則として配当控除の適用対象となります。
- 申告分離課税での確定申告
- 配当控除の適用対象外になりますが、上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能です。
株式売買による利益:譲渡所得
株式売買によって利益が出た場合の所得は譲渡所得と呼ばれます。
譲渡所得とは、資産の売却によって発生する所得の総称です。
株式に限らず、土地や建物といった不動産や、ゴルフ会員権などを譲渡した際にも発生します。
株式等にかかる譲渡所得等の金額は以下の計算式で求めます。
譲渡による総収入金額-必要経費=譲渡所得等の金額
株式売買による譲渡所得に課せられる税率は、上場株式・一般株式ともに20.315%です。
税率の内訳は、所得税が15%・地方税が5%・復興特別所得税が0.315%となります。
株取引で確定申告が不要となるケース
原則として、株取引で利益があれば確定申告が必要です。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は確定申告が不要となります。
上場株式等の配当等について「申告不要」を選んでいる
前述したように、配当等は源泉徴収された後の額が入金されます。
そして「申告不要」を選んでいる場合は確定申告の必要がありません。
申告不要以外を選んでいる・源泉徴収された分の還付を受けたい等の場合は確定申告が必要です。
株取引を「特定口座(源泉徴収あり)」で行っている
株式売却による譲渡益が発生していても、株取引を「特定口座(源泉徴収あり)」で行っている場合は確定申告が不要となります。
給与収入が2,000万円以下であり、かつ、株取引による利益と給与以外の収入の合計額が年間20万円以下である
給与所得者は勤務先で年末調整を受けるため、多くの人は確定申告が不要です。
給与所得者で確定申告が必要な人として、給与収入が2,000万円を超える人や、給与以外の収入が20万円を超える人が挙げられます。
株取引による利益がある場合でも、給与収入が2,000万円以下であり、かつ、株の利益を含めた給与以外の収入が20万円以下であれば確定申告が不要です。
また、株取引で損失が出ている場合は税金が発生し得ないため、確定申告をしなくても問題ありません。
ただし、所得税の還付を受けるためには確定申告を行う必要があります。
株取引の節税テクニック6選

株取引に関する税金を抑えるためのテクニックを6つ紹介します。
株取引による利益を年間20万円以下に抑える
主に給与所得者が活用しやすいテクニックです。
前章で、給与収入が2,000万円以下かつ株取引による利益と給与以外の収入の合計額が年間20万円以下である場合は確定申告が不要と紹介しました。
確定申告が不要とは、すなわち所得税が発生しないということです。
給与収入が2,000万円以下で他の収入がない場合、株取引による利益を20万円以下に抑える方法は、効果的かつ確実な節税対策といえます。
大前提として、株取引の利益として計上されるのは、売却によって実現した分のみです。
仮に2021年に30万円で購入した株式Aが2022年末時点で50万円になった場合、売却すれば20万円の譲渡益が発生します。
しかし、売却せずに保有し続けたままでいれば、利益が実現せず課税対象にもなりません。
売却しておらず実現していない利益のことを含み益、売却によって実現した利益を実現益と呼びます。
このように含み益が貯まった状態でも、年末時点での実現益が20万円以下の場合は、あえて売却せず実現益を20万円以下に抑えれば課税対象になりません。
逆に実現益が既に20万円を超えていても、含み損のある株式を年内に売却してトータルの利益を20万円以下に抑えられるケースもあります。
なお、株取引による利益が年間20万円以下であっても、給与を除くその他の収入との合計が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
副業による収入や家賃収入などがある場合は注意しましょう。
損益通算する
株式の売却による損失と配当等による配当所得の両方がある場合、売却損と配当金の相殺(損益通算)が可能です。
たとえば、2023年の配当等による収入が30万円、株式売却による損失が15万円とします。
この場合、所得税の課税対象になるのは30万円-15万円=15万円です。
配当等は源泉徴収された後の額が入金されるため、30万円に対してすでに所得税が控除された状態になっています。
したがって、今回の例では確定申告を行うことで、損失である15万円部分にかかる源泉徴収税額の還付を受けられます。
還付を受けるには確定申告が必須であるため、株式売却による損失がある場合は必ず確定申告を行いましょう。
損益通算の具体的な方法とタイミング
損益通算を効果的に活用するためには、具体的な方法とタイミングを押さえることが大切です。損益通算には「益出し」と「損出し」の2つの方法があります。
益出しは利益が出ている株式を売却して利益を確定させ、損失が出ている株式の損失と相殺する方法です。一方、損出しは損失が出ている株式を売却して損失を確定させ、利益と相殺する方法です。
特に年末(12月)は税金対策として損益通算を検討する最適な時期です。たとえば、A社株で100万円の利益、B社株で40万円の損失がある場合、両方を売却することで課税対象額を60万円に抑えられ、約8.1万円の節税効果が得られるでしょう。
ただし、相場状況も考慮し、単に税金対策だけでなく投資判断としても合理的かどうかを検討することが賢明です。
繰越控除を活用する
繰越控除は、株式投資で発生した損失を翌年以降の利益と相殺することで、税負担を軽減する制度です。以下のポイントに留意する必要があります。
- ・損失の繰越期間は3年間
- 繰越控除は、損失が発生した年の翌年から最大3年間、利益と相殺することができます。
- ・確定申告が必要
- 繰越控除を受けるためには、毎年確定申告を行うことが必須です。
- ・繰越控除の適用順序
- 適用順序は、古い年度の損失から順に差し引かれます。
たとえば、今年の株式投資で100万円の損失が出た場合、この損失は翌年以降の株式投資の利益から差し引くことができます。損失が3年間にわたり最大100万円ずつ控除され、税負担が軽減されるのです。
長期的な株式投資を行う場合、繰越控除は非常に有利な制度となります。
NISAやiDeCoで投資を行う
投資運用の方法として、株取引ではなくNISAやiDeCoを選ぶのもひとつの選択肢です。
NISAはNISA口座内で購入した金融商品について、一定期間、一定の投資枠内で発生した利益が非課税となる制度です。
すでに紹介したように、譲渡益と配当金はともに20%を超える所得税が課せられます。
NISAでは譲渡益・配当金どちらも非課税になるため、通常の方法による投資よりも手に入る利益が大きくなる仕組みです。
NISAについては以下の記事で詳しく解説しています。
iDeCoは個人で積み上げる年金制度です。
毎月一定の掛金を支払って積み立てていき、掛金は預金や投資信託等に運用されます。
発生した運用益は非課税であるため、NISAと同様に税負担なく投資運用ができる仕組みです。
iDeCoについては以下の記事で詳しく解説しています。
2024年からの新NISA制度を最大限活用する方法
2024年から始まった新NISA制度は、株式投資の節税において非常に強力なツールとなっています。新制度では成長投資枠(年間240万円まで)とつみたて投資枠(年間120万円まで)の2つの枠を併用できるようになりました。
非課税期間も無期限となったのが大きな特徴です。この制度を最大限に活用するには、まず自分の投資スタイルに合った枠の選択が重要でしょう。
長期投資を重視する場合はつみたて投資枠、個別株やアクティブ運用を行いたい場合は成長投資枠が適している点を覚えておきましょう。特に高配当株や値上がり期待の高い銘柄をNISA口座で保有することで、通常なら20.315%課税される配当金や売却益が非課税となります。
これにより、複利効果を最大限に活かした資産形成が可能になるのです。NISA口座と通常の課税口座をうまく使い分けることで、長期的な税引後リターンを大幅に向上させることができます。
申告漏れ、計算ミスをなくす
株式投資における税金を正確に申告するためには、まず取引内容をきちんと記録することが不可欠です。取引のたびに、日付、銘柄、数量、価格、手数料などの情報を記録しましょう。エクセルなどの表計算ソフトを使用すれば、管理が簡単になります。
また、証券会社から発行される取引報告書と自分の記録を照合することも重要です。報告書には売買損益や配当金、分配金の情報が記載されているので、これらが自分の記録と一致しているかを確認しましょう。
確定申告を行う際には、国税庁のホームページなどを参考にして必要な書類を整え、計算した税額に誤りがないか何度もチェックします。計算ミスを避けるため、慎重に確認して申告しましょう。
確定申告の期限を守ることも大切です。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課される可能性があるため、早めに準備を始め、余裕を持って申告を行うようにしましょう。
税務申告ソフトや記録管理ツールの活用
株式投資における税金の計算と申告を正確に行うためには、専用のツールやソフトウェアの活用が効果的です。市販の確定申告ソフトや投資管理アプリを使用することで、取引の記録から税金計算、申告書作成までの工程を効率化できます。
特に複数の証券会社で取引している場合や、多数の銘柄を保有している場合は、エクセルなどの表計算ソフトで独自の管理台帳を作成しておくと便利でしょう。取引ごとに日付、銘柄、数量、取得価格、売却価格、手数料などを記録し、年間の損益を一目で把握できるようにすることをお勧めします。
また、証券会社から発行される「年間取引報告書」や「配当金等の支払通知書」は必ず保管し、自分の記録と定期的に照合することが大切です。これにより、申告漏れや計算ミスを防止できます。
正確な記録管理は、将来の税務調査にも対応できる安心感をもたらすものです。
投資運用会社を設立する
株式取引で利益が増えた場合、税負担を軽減するために投資運用会社を設立する方法があります。特に投資資金が1,000万円を超える場合、会社を設立することで、個人での取引よりも税金の負担を軽減できる可能性があります。法人税率は個人の所得税よりも低く設定されていることが多いため、税額を抑えることが可能となるのです。
さらに、会社として経費を計上することで、課税対象となる所得を減らすことができる点も大きなメリットです。また、会社設立により社会保険料の負担を軽減できる効果もあります。例えば、サラリーマンが独立して会社を設立した場合、役員報酬を自分で設定できるため、報酬額を低く抑えることで社会保険料を節約できます。
ただし、会社設立には初期費用や運営コストがかかるため、十分な計画を立てて慎重に判断することが重要です。
株式投資の節税には税理士を活用しよう

株式投資の規模が大きくなってきた場合や、複雑な取引を行っている場合には、税理士の専門知識を活用することが効果的です。税理士は最新の税制に精通しており、個人の状況に合わせた最適な節税戦略を提案してくれます。
特に年間の取引量が多い場合や、海外株式への投資、他の所得との総合的な節税プランが必要な場合などは、税理士のサポートが大きな価値を持ちます。税理士に相談する際は、過去の投資履歴や確定申告書、証券会社の年間取引報告書などを準備しておくと効率的でしょう。
また、年度末の駆け込み相談ではなく、計画的に年間を通じた税務戦略を立てることで、より効果的な節税が可能になります。投資規模が1,000万円を超えるような場合は、投資運用会社の設立なども含めた専門的なアドバイスを受けることで、大幅な節税効果が期待できるでしょう。
まとめ
株式投資では配当所得と譲渡所得という2つの所得が発生し、それぞれ扱いや税率が異なります。
株取引に関する確定申告を正しく行うためには、所得の種類や違い、必要な手続きについて深い理解が必要です。
所得に対する正しい理解が、結果として効果的かつ正しい節税対策につながります。
今回、株式投資に関する節税テクニックを5つ紹介しました。
いずれも大きな節税効果が期待できる方法ですが、実施する上で知識が必要な部分や、ちょっとした手間が発生する部分が存在します。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士