個人年金保険の節税効果はどれくらい?個人年金保険料控除について解説!

2023.11.03

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個人年金保険は、老後資金の準備を目的とした民間の貯蓄型保険です。

支出した掛金は公的年金に上乗せする形となります。

 

個人年金保険において支出した掛金は一定の要件を満たせば所得控除の対象になります。

個人年金保険を活用して節税効果を得るには、所得控除となる要件や具体的にどれほどの節税効果を得られるかの理解が欠かせません。

 

今回は個人年金保険について、節税という面から詳しく解説します。

 

なお、節税対策のためには大前提として所得税の仕組みについて知っておく必要があります。

以下の記事で所得税の仕組みを詳しく解説しています。

 

 

国民年金保険料の追納については以下の記事で解説していますので、ぜひこちらもご覧ください

 

 

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CONTENTS

個人年金保険の節税効果を見る前に

個人年金保険の節税効果を見る前に、まずは個人年金保険の概要を紹介します。

個人年金保険とは

個人年金保険とは、老後資金の準備を目的とした民間の貯蓄型保険です。

公的年金に上乗せする形で、自分で老後資金の準備ができます。

 

個人年金保険では、あらかじめ決めた年齢から毎年年金を受け取れます。

年金を受け取れる期間は一定期間または一生涯等、ケースによって異なるため確認が必要です。

 

個人年金保険の主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • ・一般的な投資商品と比べて目的が明確で資金の準備をしやすい
  • ・一定年齢に達すると定期的にお金を受け取れる
  • ・老後に資金不足となるリスクを軽減できる

要件を満たせば所得控除の対象となる

個人年金保険は要件を満たすことで、所得控除(個人年金保険料控除)の対象となり節税効果を得られます。

要件は以下の3つです。

  • ・年金の受取人が契約者または契約者の配偶者である
  • ・個人年金保険料の払込期間が10年以上である
  • ・年金の種類が確定年金に該当する場合、年金の支払いが開始される日に被保険者の年齢が60歳以上、年金支払期間が10年以上である

個人年金保険による節税効果

個人年金保険料控除の額は、契約を結んだ時期によって異なります。

この章では、契約締結の時期ごとの控除額と控除額の計算例を紹介します。

平成24年1月1日以後に契約を締結した場合

前提として、個人年金保険の掛金全額が控除対象になるとは限りません。

所定の計算式に当てはめて控除額を計算する必要があります。

 

個人年金保険の契約を平成24年1月1日以後に締結した場合、新契約(新制度)に該当します。

新契約は後述する旧契約よりも控除額の上限が低く設定されています。

 

控除額の計算で用いる式は払込保険料の額によって異なります。

また、所得税と住民税でも控除額が異なる点に注意が必要です。

 

【所得税の控除額】

  • 年間の払込保険料20,000円以下:払込保険料の全額が控除対象
  • 20,000円超40,000円以下:払込保険料÷2+10,000円
  • 40,000円超80,000円以下:払込保険料÷4+20,000円
  • 80,000円超:40,000円

【住民税の控除額】

  • 年間の払込保険料12,000円以下:払込保険料の全額が控除対象
  • 12,000円超32,000円以下:払込保険料÷2+6,000円
  • 32,000円超56,000円以下:払込保険料÷4+14,000円
  • 56,000円超:28,000円

平成23年12月31日以前に契約した場合

個人年金保険を平成23年12月31日以前に契約した場合は旧契約(旧制度)となります。

払込保険料の額によって控除額の計算式が異なる・所得税と住民税で控除額が異なる点は新契約と同じです。

ただし前項でも少し触れたように、旧契約は新契約よりも控除額の上限が高く設定されています。

 

【所得税の控除額】

  • 年間の払込保険料25,000円以下:払込保険料の全額が控除対象
  • 25,000円超50,000円以下:払込保険料÷2+12,500円
  • 50,000円超100,000円以下:払込保険料÷4+25,000円
  • 100,000円超:50,000円

【住民税の控除額】

  • 年間の払込保険料15,000円以下:払込保険料の全額が控除対象
  • 15,000円超40,000円以下:払込保険料÷2+7,500円
  • 40,000円超70,000円以下:払込保険料÷4+17,500円
  • 70,000円超:35,000円

個人年金保険料控除の計算例

個人年金保険料控除の計算方法および控除の適用有無による税額の違いについて、具体的な例を用いて解説します。

※住民税は自治体によって適用される税率が異なるケースがあるため今回は割愛します。

 

今回用いる具体例の条件は以下の通りです。

  • ・基礎控除、社会保険料控除、給与所得控除適用後の所得が500万円
  • ・個人年金保険は新契約、年間の払込保険料は50,000円
  • ・ほかには所得控除がない

まずは個人年金保険料控除を適用しない場合です。

条件で提示しているように、基礎控除・社会保険料控除・給与所得控除以外に適用される所得控除はありません。

そのため、各種控除適用後の所得500万円が課税される所得金額となります。

 

課税される所得税額が500万円の場合、税率は20%、控除額は427,500円です。

したがって所得税の額は以下のようになります。

  • 500万円×20%-427,500円
  • =1,000,000円-427,500円
  • =572,500円

所得税の額は572,500円となりました。

 

続いて個人年金保険料控除を適用する場合の計算例を紹介します。

すでに紹介したように、個人年金保険料控除は払込保険料全額が適用されるわけではありません。

そのため、まずは控除額を計算する必要があります。

 

新契約かつ年間の払込保険料が50,000円の場合、所得税の控除額は払込保険料÷4+20,000円で計算します。

したがって、今回の例における個人年金保険料控除額は以下の通りです。

  • 50,000円÷4+20,000円
  • =12,500円+20,000円
  • =32,500円

最終的に、課税される所得金額は以下のようになります。

  • 5,000,000円-32,500円=4,967,500円
  •  

課税される所得金額4,967,500円の場合、適用される税率は20%、控除額は427,500円です。

したがって、所得税の額は以下のようになります。

  • 4,967,500円×20%-427,500円
  • =993,500円-427,500円
  • =566,000円

個人年金保険料控除を適用しなかった場合の税額572,500円と6,500円の差額が出ました。

個人年金保険で節税をする際の注意点

個人年金保険で節税をする際の注意点を2つ紹介します。

年末調整または確定申告での手続きが必要

個人年金保険料控除を受けるためには、生命保険料控除のように年末調整や確定申告で申請が必要です。

個人年金保険に加入しており要件を満たしているからといって、自動で控除が適用されるわけではありません。

 

年末調整の場合、会社に以下の書類を提出します。

  • 保険料控除申告書
  • 会社から受け取る空欄の申告書に必要事項を記入して提出します。
  • ただし会社によっては記入不要のケースもあるため、会社の指示をご確認ください。
  •  
  • 控除証明書
  • 保険会社から届く控除証明書を、申告書とあわせて提出する必要があります。

 

確定申告の場合、確定申告書の必要箇所に自身で記入が必要です。

保険会社から届く控除証明書に、払込保険料等の必要な情報が載っています。

確定申告をe-tax(電子申告)で行う場合、控除証明書の添付は省略が可能です。

節税を最優先にしない

個人年金保険の契約において、節税を最優先にしないよう注意しましょう。

 

前章で紹介したように、個人年金保険に節税効果があるのは事実です。

しかし、個人年金保険はあくまでも老後資金の準備を目的とした制度であり、節税は副次的な効果といえます。

 

個人年金保険を契約する際は、節税効果ではなく以下のポイントを押さえる方が大切です。

  • ・老後資金としてどれぐらいの上乗せが必要か
  • ・拠出できる保険料の額はどれぐらいか

個人年金保険を上手く活用するには、節税ではなく、保険制度そのものに対する十分な理解や自分に合う使い方の検討が必要です。

まとめ

個人年金保険の払込保険料は、要件を満たせば所得控除の対象になります。

ただし、払込保険料の全額が控除対象になるわけではなく、所定の方法で控除額を計算する必要があります。

個人年金保険料控除を正しく適用するためには、個人年金保険という制度および控除額計算の仕組みについて正しい理解が必要です。

 

また、個人年金保険料控除の適用を受けるためには、年末調整または確定申告の際に手続きを行う必要があります。

要件を満たしているからといって、自動で適用されるわけではありません。

また、あくまで老後資金の準備を目的とした制度であり、節税は副次的な効果という点も押さえることが大切です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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