FXで海外の業者を利用して取引を行う「海外FX」の人気が高まっています。 しかし、海外FXの利益は国内FXとは異なる課税方法が適用されるため、確定申告の際には注意が必要です。
本記事では、海外FXの利益に対する税金の仕組みや、確定申告の方法、節税のポイントなどを詳しく解説します。
また、会社にバレずに確定申告を行う方法や、法人化のメリット・デメリットについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
仮想通貨の節税対策については下記の記事で解説しています。ぜひこちらもご覧ください。
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CONTENTS
海外FXでも日本国内で税金が!合法的な節税対策は?
海外FXで利益を得ても、税金を合法的に免れる方法はありません。
投資で得た利益には、居住している国で税金を納めるのが原則です。 つまり、海外FXの利益についても、日本国内で税金を納付しなければなりません。
海外FXの利益は、所得税と住民税の課税対象となります。これらの税金は、確定申告を行うことで納税する必要があります。 ただし、一定の控除額と必要経費を差し引くことができるので、最大限に活用するのがおすすめです。
また、海外FXの利益について確定申告を行わないことは、脱税に該当します。
海外の口座を利用していれば税務署にバレないと考えがちですが、金融機関の取引履歴は追跡可能です。 必ず発覚するため、確実に確定申告を行いましょう。
脱税が発覚した場合、その程度に応じて様々なペナルティが科されます。 未納の税金や無申告加算税の支払いを求められたり、重加算税が課されたりします。 悪質な場合は、逮捕される可能性もあるので十分に注意が必要です。
海外FXで税金が発生するタイミング
海外FXで税金が発生するのは、年間の利益が確定する12月31日です。
海外FXでは、利益が出るたびに都度課税されるわけではありません。 1年間の利益の合計額に対して、税金が課されます。
ただし、含み益が発生しているポジションについては、決済を行わない限り課税の対象にはなりません。 ポジションとは、通貨の売買は成立しているものの、まだ決済が完了していない状態を指します。
FX取引では、まずポジションを持ち、その後に決済を行うことで損益が確定します。ポジションを保有している間は、利益ではなく、まだ確定していない含み益として取り扱われます。
つまり、12月31日の時点で含み益があっても、決済を行わなければ利益とはみなされません。
含み益と利益の違いについて、具体的な例を用いて説明します。
仮に、1ドル100円の時点でポジションを保有したとします。 その後、円安が進行して1ドル105円になったとすると、105円−100円=5円の含み益が発生します。 しかし、この時点ではまだ利益にはなりません。 このポジションを決済することで、初めて5円の利益が確定することになります。
海外FXの利益に対する税金はいくらから発生する?
海外FXで得た利益に対して課税される税金の発生時期は、給与所得者であるかどうかによって異なります。
給与所得者と非給与所得者のそれぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
会社員など給与所得者の場合:年間所得が20万円以上
会社員などの給与所得者は、給与所得以外の所得が年間20万円以上になると確定申告が必要になります。 副業などで得た所得がある場合は、海外FXの利益とあわせて計算します。
所得とは、利益から必要経費を差し引いた金額のことです。 例えば、30万円の利益があり、20万円の経費がかかっていた場合、所得は10万円となります。 この場合、確定申告を行う必要はありません。
ただし、給与以外の年間所得が20万円未満の場合に課税されないのは所得税のみであり、住民税については別途申告が必要です。 1円でも利益が出ている場合は、居住地の市町村に住民税の申告を行ってください。 なお、確定申告を行った場合は、税務署から市町村に情報が提供されるため、住民税の個別申告は必要ありません。
また、確定申告の有無に関わらず、会社から支払われる給与に対する税金は、年末調整で精算されます。
自営業者・専業主婦・無職など非給与所得者の場合:年間所得が48万円以上
非給与所得者(自営業者・専業主婦・無職など)は、年間所得が48万円以上になると確定申告が必要です。 所得税の基礎控除額は48万円なので、48万円未満の場合は所得が0円とみなされます。
基礎控除とは、全ての人が所得から控除できる金額のことです。 所得が2,400万円以下の場合は基礎控除額が48万円、2,400万円超2,450万円以下の場合は32万円、2,450万円超2,500万円以下の場合は16万円、2,500万円超の場合は0円と定められています。
年間所得が48万円未満で確定申告が不要な場合でも、1円でも利益が出ていれば住民税の申告は必要です。 忘れずに申告を行うようにしましょう。
海外FXと国内FXにおける税金の違いについて
海外FXと国内FXのどちらで利益を得ても、「雑所得」として課税の対象となります。 ただし、課税方法や税率が異なるため、それぞれ別々に計算する必要があります。
多くのケースにおいて、海外FXの方が国内FXよりも高い税率で課税されることになります。
具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。 国内FXと海外FXの順に、詳しく説明していきます。
国内FXの利益に対する税金:申告分離課税・税率約20%
国内FXの利益は、税制上優遇されています。
他の所得とは区別して計算する「分離課税」が適用されます。 税率は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)です。
つまり、国内FXの利益は、他の所得とは異なり、超過累進税率の適用を受けません。
海外FXの利益に対する税金:総合課税・超過累進税率
一方、海外FXの利益(雑所得)は、他の所得と合算して計算されます。 これを「総合課税」と呼びます。
日本の所得税は、所得が高くなるほど段階的に税率が上がる「超過累進税率」を採用しています。
他の所得と合算されることで、高い累進税率が適用されることになります。
具体的には、所得税は所得が上がるごとに税率が段階的に高くなる「超過累進税率」であり、最高税率は45%です(地方税を除く)。 特に、課税所得金額が900万円以上の部分については、899万9,000円までは最高でも23%だった税率が、33%に上昇します。
所得(1,000円未満切り捨て) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
海外FXを行える経済的な余裕がある人は、少なくとも所得税だけで20%以上の税率がかかると考えられます。 したがって、実質的に海外FXは国内FXよりも高い税金がかかると言えるでしょう。
【5つのステップ】海外FXの確定申告を行う手順
- 1. 申告方法を決定する
- 2. 確定申告に必要な書類を揃える
- 3. 国税庁のホームページ上の「確定申告書等作成コーナー」を活用する
- 4. 作成した確定申告書と必要書類を税務署へ提出する
- 5. 所得税の納税を行う
1. 申告方法の決定
確定申告を行う方法には、大きく分けて2つの選択肢があります。
- 1. 書類を作成し、税務署へ提出する方法
- 2. e-Tax(インターネット経由)での申告
e-Taxでの申告は、インターネット上で完結するため便利ですが、ICカードリーダライタもしくはマイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンが必要となります。 また、利用開始前に手続きが必要なため、複雑な作業が苦手な人にはおすすめできません。
一方、Webサイトや税務署で確定申告書の書類を作成し、郵送や税務署の窓口で提出する方法もあります。
2. 確定申告に必要な書類の準備
確定申告を行う際には、以下の書類を用意する必要があります。
- ・海外FXの年間取引報告書
- ・FXのために使用した経費の領収書やレシート
- ・マイナンバーカード
- ・源泉徴収票
- ・医療費や保険料などの控除証明書
まず、FXのために使用した経費の領収書やレシートは、月ごとにまとめておくのが良いでしょう。
その後、各海外FX業者のMT4などの取引プラットフォームから「年間取引報告書」をダウンロードします。この期間は1月1日から12月31日として設定してください。
既に口座を解約している場合でも、FX業者によっては、サポートにメールで口座番号や名前を伝えることで、年間取引報告書を発行してもらえることがあります。
3. 国税庁ホームページ上の「確定申告書等作成コーナー」の活用
国税庁のホームページには、確定申告書の作成に役立つ「確定申告書作成コーナー」が用意されています。 このコーナーでは、以下の手順に従って書類を作成することができます。
- ・「印刷して提出」を選択する
- ・「所得税」を選択する
- ・質問に回答する
- ・雑所得の入力を行う
- ・所得控除の入力を行う
- ・住所・氏名の入力を行う
複数の海外FX業者で取引を行っている場合は、それぞれの収入金額や海外FX業者の運営企業などを入力する必要があります。
4. 作成した確定申告書と必要書類の税務署への提出
確定申告書の作成が完了したら、印刷を行います。 そして、郵送にて税務署へ提出するのがおすすめです。
郵送で提出する場合、期限内に書類が到着している必要があります。 余裕を持って送付するようにしましょう。
税務署に直接提出しようとすると、混雑のためにかなりの時間待たされることがあるため、おすすめできません。
提出の際、年間取引報告書や必要経費の証明資料の添付は不要ですが、税務調査に備えて5年間は保管しておかなければなりません。
5. 所得税の納税
確定申告書の提出が完了したら、確定申告の期限日(通常は3月15日)までに所得税の支払いも済ませなければなりません。
税務署から支払い用の請求書は届かないため、口座引き落としやコンビニ払いなどの方法で自分自身で支払いを行う必要があります。
納税方法には、現金納付以外にも、振替納付(銀行等)、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマートフォンアプリでの納付、コンビニ納付(QRコード)などがあります。
海外FXの利益に対する確定申告時の注意点
海外FXで得た利益について確定申告を行う際、国内FXの利益に対して利用可能な節税策が適用されないことがあります。
海外FXでは、どのような制度が利用できないのかを順を追って説明します。
海外FXでは過去の損失を繰り越すことができない
海外FXでは、国内FXのように損失を繰り越すことができません。 損失繰越とは、過去に発生した損失を当年度の利益と相殺する方法のことです。
損失の繰り越しについて、国内FXと海外FXの違いを、以下のようなケースで考えてみましょう。
- 1年目に100万円の損失が発生
- 2年目に300万円の利益が発生
1年目には損失が出ているため、海外FXおよび国内FXの両方に対して税金は発生しません。では、2年目の税金はどのように計算されるでしょうか?
海外FXの場合、過去の損失を2年目の利益と合算して計算することはできません。 つまり、300万円の利益をもとに税金を計算することになります。
一方、国内FXでは過去3年間の損失繰越が認められているため、300万円の利益から1年目に発生した100万円の損失を引くことが可能です。
国内FXの場合、2年目は200万円の利益をもとに税金を計算できるのです。
実際に、個人事業主の2年目の所得が300万円と200万円のケースにおける税金の計算結果は以下の通りです。
項目 | 国内FX | 海外FX |
---|---|---|
損失繰越 | できる | できない |
所得税の計算式 | FXの所得は(300万円-100万)×20.315=40万6,300円 | 300万×10%-9万7,500円=20万2,500円 |
住民税の計算式 | 上の計算に含まれる | 300万×10%=30万円 |
所得税と住民税の合計 | 40万6,300円 | 50万2,500円 |
国内FXの方が、前年の損失を当年の利益と合算できるため、税金が安くなっています。
国内FXの損益と相殺することができない
- ・複数の海外FX業者で取引を行っている場合
- ・副業で雑所得を得ている場合
会社に知られずに確定申告を行う方法はある?
給与以外の収入を会社に知られたくない人は、住民税の徴収方法で「普通徴収」を選択するのがおすすめです。 確定申告の際、住民税の入力時に「自分で納付」のチェックを入れるだけで大丈夫です。 心配な場合は、提出時に窓口の担当者に普通徴収を希望する旨を伝えておきましょう。
副業などが会社に知られるケースのほとんどは、会社に通知される住民税額が原因となっています。 「特別徴収」を選択すると、給与+FXの利益に対する住民税額が会社に通知されるため、副業がバレる可能性があるのです。
なお、FXを始める際はFX会社へのマイナンバーの提出が義務付けられていますが、マイナンバーが原因で会社にFX取引が知られることはありません。
海外FXにおける節税方法
海外FXの節税方法は限られていますが、以下のようなものが挙げられます。
【海外FXの節税方法】
- ・経費を漏らさずに計上する
- ・他の副業所得(雑所得)がマイナスの場合、通算する
- ・所得税の各種所得控除制度を活用する
これらについて説明した上で、よく節税方法として挙げられる「法人化」について補足します。
経費を漏らさずに計上することの重要性
海外FXの利益は雑所得として扱われ、収入金額から必要経費を差し引いて算出されます。
ここで必要経費に算入できるのは、海外FXで利益を上げるために直接必要と言える金額に限られます。
実際のところ、海外FXは海外のFX業者に多くを委ねるため、必要経費として認められるものは限られています。 そのため、経費として計上できるものは漏れなく把握し、記録することが重要です。
主なものを挙げると以下の通りです。
【海外FXで必要経費に算入できる費用の例】
- ・インターネットやスマートフォン等の回線使用料
- ・取引に使用するパソコンやソフトウェア等の購入費用
- ・取引のために専用で使用する文具、デスク・椅子等の購入費用
- ・取引にかかる各種手数料
- ・VPSサーバーのレンタル費用(自動売買の場合)
- ・関連セミナー等への参加費用(交通費・宿泊費も含む)
- ・関連書籍の購入費用
インターネットやスマートフォン、パソコン等は、海外FX取引に使用する分を他と明確に区別すれば、必要経費に計上できます。 そのためには、毎日パソコンの使用時間と、そのうち海外FX取引を行った時間を記録しておく必要があります。
暗号資産の取引に使用するためにパソコンやソフトウェアを購入した場合、購入代金が10万円以上であれば減価償却の処理を行うことになります。 購入代金額を複数年にわたって費用計上していくのです。
他の副業所得(雑所得)がマイナスの場合、通算することができる
他に雑所得を生じる副業を行っていて、そこでマイナスが発生した場合、海外FXの利益からそのマイナス分を差し引くことができます。
ただし、前述したように、国内FXの利益は同じ雑所得であっても申告分離課税の対象となるため、マイナスが発生しても通算することはできません。
所得税の各種所得控除制度を活用することの重要性
海外FXに限らず、所得税の節税対策としては、さまざまな所得控除制度を利用することが考えられます。
本記事では詳細には立ち入りませんが、特に「医療費控除」「雑損控除」「小規模企業共済等掛金控除」「寄附金控除」については、条件を満たしていないか確認することをおすすめします。
補足:「法人化」はおすすめできない理由
一般に、「法人化」することで節税が可能になることがあるとされていますが、年間所得が「約900万円以上」が一つの基準と考えられています。
これは、所得が900万円以上になるあたりから、個人の所得税の税率が法人税の税率より高くなるからです。
さらに、法人化には、損失を最大10年間繰り越せるといった利点があるとも言われています。
しかし、海外FXの場合、非常に安定して多額の利益を上げ続けられない限り、メリットはありません。
法人の場合、期末に含み益が存在すると、その含み益に対して課税されることになります。
また、法人を設立する際には、設立や維持にかかる費用が発生します。
以下の通りです。
【設立にかかる費用】
- ・登録免許税
- ・法務局に支払う手数料・収入印紙代
- ・不動産を資産管理会社に移転(現物出資)する場合の登記費用
- ・司法書士への報酬
【維持の費用】
- ・税理士への報酬
- ・法人住民税(年7万円)
- ・社会保険料
さらに、海外FXの利益を引き出す際には、まず法人口座に入金し、その後役員報酬として支給する手続きが必要になります。役員報酬は「定期同額給与」または「事前確定届出給与」の要件を満たさなければ、会社の経費(損金)として認められず、その結果法人税が発生します。
また、それに加えて個人の側でも給与所得として課税されることになります。
まとめ
海外FXの利益は、国内FXとは異なる課税方法が適用されるため、注意が必要です。 損失の繰り越しや、国内FXの損益との通算ができないなど、節税の手段は限られています。
確定申告の際は、「普通徴収」を選択することで、会社に副業がバレるリスクを減らすことができます。 また、経費の計上漏れがないよう注意し、他の副業所得がマイナスの場合は通算するのがおすすめです。
海外FXで多額の利益を安定して上げられない限り、法人化のメリットはあまりありません。 設立や維持にかかる費用、二重課税の問題などを考慮すると、個人で確定申告を行う方が賢明でしょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士