富裕層向け節税対策とは?基本&最新の節税スキームについて解説!

2024.02.02

富裕層は所得額や財産価額といった課税対象金額が高額なため、税額も高くなります。

 

所得税は所得額が大きくなるにつれて税額が高くなる累進課税制度を採用しています。

相続税は基礎控除額の枠が大きいですが、富裕層のように保有財産が多い場合は控除しきれないケースが多くみられます。

結果として、納税者である相続人の税負担が大きくなります。

富裕層は所得税および相続税の節税対策が欠かせないといえるでしょう。

 

今回は富裕層向け節税対策について、基本的な事項と最新の節税スキームの両方を紹介します。

 

高所得者の節税対策については以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

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CONTENTS

富裕層が活用する節税スキームは大きく2つ

富裕層の節税対策は、大きく「資産を守るための対策」と「所得税などの税金対策」の2つに分類されます。どちらの対策も、資産の維持・拡大や税負担の軽減を目的として活用されています。

資産を守るための具体的な対策

資産の価値を維持・向上させるための節税スキームとして、以下のような方法が挙げられます。
  • ・タワマン節税(相続税評価額を抑える)
  • ・海外資産の保有(通貨分散によるリスク軽減)
  • ・高級車や美術品の購入(資産価値の維持や減価償却による節税)
  • ・プライベートバンクの利用(富裕層向けの資産運用)
日本円は、円安が進むと外貨に対して価値が下落するため、日本円のみを保有すると資産が目減りするリスクがあります。 そのため、タワーマンション、海外資産、高級車などの実物資産へ投資することで、インフレによる資産価値の上昇を狙うことが可能です。

所得税を含む各種税金の節税方法

所得税や住民税の負担を軽減するための節税対策として、以下の方法があります。
  • ・保険(生命保険など)(相続税対策・所得控除の活用)
  • ・実物資産の運用(不動産や金などを活用した所得分散)
  • ・各種控除の活用(寄附金控除・生命保険料控除など)
  • ・NISA・iDeCo(イデコ)(非課税枠を活かした資産形成)
  • ・海外移住(税率の低い国への移転)
  • ・オフショア法人の設立(海外法人を活用した節税策)
日本の所得税と住民税の最高税率は55%と非常に高く、富裕層はこの税率が適用される可能性が高いです。そのため、保険や実物資産の活用、各種控除制度を駆使することで、所得税の負担を軽減する対策が重要となります。

富裕層向け節税対策 所得税編

この章では、富裕層向けの所得税節税対策を4つ紹介します。

各種控除制度を最大限に活用する

所得税を最小限に抑えるため、各種控除制度を最大限に活用することが大切です。

 

所得税には所得控除と税額控除という2つの控除制度があります。

所得控除は、所得額から引くことで課税対象となる所得額を減額する制度です。

税額控除は、課税対象所得に税率を乗じて算出した税額から直接差し引きます。

 

所得控除と税額控除はそれぞれ適用要件が設定されていますが、要件を満たせば自動で適用されるわけではありません。年末調整や確定申告での手続きが必要です。

控除制度の要件を満たしていても手続きをせずにいては控除を受けられず、必要以上に税金を払う結果になってしまいます。

税額を最小限に抑えるため、適用対象となる控除制度の有無を必ず確認しましょう。

 

また、生命保険料控除や寄附金控除など、納税者自身がある程度支出額を決められる制度も存在します。

富裕層で金銭的に余裕がある場合、生命保険料の額を増やす・寄附を多く行う等、控除制度を活用するために意識して行動するのもおすすめです。

資産運用を行う

資産運用も富裕層におすすめの節税対策です。

株式売買によって発生する所得は譲渡所得に該当します。譲渡所得で損失が出た場合は他の所得との損益通算が可能なため、節税につながります。

利益が出た場合、トータルの税額が増えるものの、現預金をそのまま持っているだけより資産額も増えるため、結果プラスとなります。

 

また、2024年1月から開始された新NISAもおすすめです。

新NISAは2023年12月までのNISAに比べて非課税投資額が大きい上、非課税保有期間が無期限に設定されています。

通常の投資と違い運用益に課税されないため、税負担を抑えながら資産運用が可能です。

 

資産管理会社を活用する

資産管理会社とは、名前の通り資産の所有や管理運用を目的とした会社です。

資産を多く保有している富裕層の方は、資産管理会社の活用によって大きく2つのメリットが期待できます。

 

1つ目は、収益の分散ができることです。

不動産や配当のある株式等から得る収益は、資産の保有者が個人の場合はすべて個人の者になります。一方、保有者が会社であれば会社のものです。

そして、自身の家族や親族を資産管理会社の役員等にして会社から役員報酬を支払えば、資産から発生する収益を分散する形になります。

資産にかかる収益が1人に集中して所得税の負担が大きくなるのを防げます。

 

2つ目は、所得にかかる税額を抑えられることです。

資産管理会社を活用すれば、資産から得られる収益は会社の所得となります。

所得が一定を超えると所得税率よりも法人税率の方が低くなり、所得額が同じでも会社の方が税額を抑えられます。

そのため、保有資産が多い場合資産管理会社を活用して法人として資産の管理運用を行う方が節税につながるのです。

不動産投資を行う

不動産投資・不動産運用が所得税の節税につながるのは、不動産所得の赤字は損益通算が可能なためです。

「資産運用を行う」で紹介した譲渡所得と同様、不動産所得で出た赤字を他の所得と相殺すれば、課税対象所得を抑えられます。

不動産投資は以下の理由から赤字になりやすいため、損益通算を狙いやすいともいえます。

  • ・不動産関連の支出は経費にできる
  • ・減価償却費を計上できる

なお、不動産投資は所得税だけでなく相続税の節税にも効果的な方法です。

詳しくは次章で解説します。

高級車や美術品を活用した減価償却の仕組みを活用する

高級車や美術品の減価償却を活用する節税スキームも、有効な手段の一つです。

 

例えば、720万円の高級車を減価償却する場合、新車の耐用年数は6年のため、「720万円 ÷ 6年」=120万円を毎年の減価償却費として計上できます。これにより、課税対象の所得を抑えることが可能になります。

 

美術品も資産として計上されますが、2015年以降に取得した美術品であれば、100万円以内の範囲で減価償却が適用されます。ただし、100万円未満であっても、時間の経過で価値が減少しないと判断されるものは減価償却できません。

一方で、100万円以上の美術品でも、価値が減少する可能性が明らかであれば、減価償却資産として扱われるケースもあります。

ただし、この節税手法を活用するには、事業での使用が前提です。例えば、オフィスの玄関や応接室に飾ることで、事業用途とみなされる可能性が高くなるでしょう。

海外移住する

富裕層の節税スキームの中で最も注目されているのが海外移住です。国内に固定資産を持たず、拠点を国外に移しても支障がない人に向いている対策といえます。

世界には、日本よりも税率が低い国が数多く存在し、これらの国々はタックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれることもあります。実際、多くの個人や法人が、税負担の軽減を目的に海外移住を選択しています。

特に注目されているのがシンガポールやケイマン諸島です。

  • シンガポール:住民税や相続税がなく、所得税も最大45%の日本に対し、約23%と大幅に低い。
  • ケイマン諸島:インカムゲインやキャピタルゲインに対する課税がなく、所得税や不動産税も発生しない。

ただし、海外移住にはビザの取得や現地での生活基盤の確保といった手続きが必要です。さらに、日本ではタックスヘイブン対策税制が強化されており、課税リスクを十分に考慮する必要があります。

オフショア法人を設立する

オフショア法人の設立も、国際的な節税対策として活用される方法の一つです。

 

主に、ケイマン諸島、セーシェル、バミューダなどのタックスヘイブンで法人を設立するケースが多く、これにより法人税の負担を軽減することが可能となります。ただし、タックスヘイブンに対する国際的な規制が強化されており、日本を含む各国が監視の目を強めています。

 

特に、共通報告基準(CRS)により、オフショア法人を通じた資産の流れが日本の国税庁に把握される仕組みが整っています。そのため、日本に居住している限り、オフショア法人を設立するだけでは大きな節税効果を得られない可能性があります。

 

前述の海外移住と組み合わせることで、より効果的な節税対策となるため、総合的なプランニングが重要になります。

富裕層向け節税対策 相続税編

続いて、富裕層向け相続税の節税対策を4つ紹介します。

生前贈与を行う

生前贈与とは、文字通り存命中に行う贈与です。

生前贈与という呼び方をする場合は相続税の節税を目的とした行為を指し、通常の贈与とは区別するのが一般的です。

生前贈与によって相続税の対象となる財産価額を減らすことで、相続税の節税につながります。

 

生前贈与の方法として、主に以下の4つが挙げられます。

 

  • 暦年贈与
  • 年間の贈与額が110万円以下(贈与税の基礎控除額以下)の場合に贈与税がかからない仕組みを活用した生前贈与です。
  • 1年で贈与できる額には限りがありますが、早いうちから毎年生前贈与をすればトータルで高額の財産移転ができます。
  •  
  • 住宅取得等資金の贈与
  • 直系尊属から受けた住宅取得等資金の贈与のうち一定額が非課税になる制度を活用した節税対策です。
  •  
  • 教育資金の一括贈与
  • 所定の手続きを行った上で行われた直系尊属からの教育資金の一括贈与は、最大1,500万円まで非課税になります。
  • 事前に金融機関での手続きが必要かつ要件がやや複雑なため、制度に対する深い理解が必要です。
  •  
  • 結婚・子育て資金の一括贈与
  • 「教育資金の一括贈与」と同じく、金融機関で所定の手続きを行う必要があります。

生命保険等を活用する

生命保険料の非課税枠を活用した相続税の節税対策です。

 

生命保険の加入者である被保険者が亡くなった場合、保険金受取人に保険金が支払われます。

死亡保険金は被保険者である被相続人の財産ではないものの、みなし相続財産として相続税の計算対象に含まれます。

しかし、死亡保険金は「500万円 × 法定相続人数」が非課税枠として設定されているため、全額が相続税の対象になるわけではありません。

生命保険の活用により、相続税の負担を抑える効果が期待できます。

 

なお、死亡保険料の受取人は法定相続人以外にも設定可能です。

生命保険の活用は単に節税対策として有用なだけでなく、資産分散の効果も得られます。

不動産を購入する

不動産投資は、所得税と相続税両方の節税につながる方法です。

 

不動産投資が相続税の節税につながる理由として、不動産価値の評価方法が挙げられます。

相続税の課税対象となる遺産総額を計算する際に用いる不動産評価額は、一般的に購入価額や時価よりも2~3割ほど下がります。

つまり、同額の現金をそのまま有しているよりも不動産を購入した方が、かかった金額は同じでも遺産総額が少なくなるのです。

 

不動産投資による節税については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

 

 

事業承継を行う

事業承継とは、経営者の事業や会社を後継者に引き継ぐ行為です。

事業承継によって後継者が引き継ぐ自社株式や事業用資産には、贈与税や相続税が課されます。

一見すると事業承継は相続税の節税どころか、税負担を重くする行為に移るかもしれません。

しかし、事業承継には特例措置が設けられており、一定の要件を満たすことで課税対象となる株式や納付猶予割合の拡充を受けられます

この仕組みが、事業承継税制です。

事業承継税制を活用すれば税負担を抑えられるため、将来的に事業承継を検討しているのであれば、早いうちから準備を始めるのが良いでしょう。

実物資産を購入する

土地や建物、金銀などの実物資産の購入は、金融資産に比べて価値が安定しているため、富裕層にとって魅力的な投資対象となります。

例えば、コロナ禍において金融市場が不安定化した際、金の価値が高騰するケースが見られました。このように、金融資産が変動しやすいのに対し、実物資産は相対的に価値が安定しやすいという特徴があります。

代表的な実物資産には以下のようなものがあります。

  • 土地・不動産:賃貸収入やキャピタルゲインを狙える
  • 金・銀・貴金属:インフレヘッジとしての資産価値を持つ
  • 宝石・美術品:市場価値が安定しやすく、資産継承にも活用できる

ただし、実物資産の種類は多岐にわたるため、適切な投資対象を選ぶには専門的な知識が求められるでしょう。

まとめ

富裕層は所得額や相続税の対象となる財産価額が高額なため、税負担が重くなるケースが多くみられます。

そのため、税負担を抑えるための節税対策が必須です。

節税対策をするか否か、そもそも知っているかどうかで税額が大きく変わるケースは珍しくありません。

 

今回、富裕層向けの所得税・相続税の節税対策を紹介しました。

課税の仕組みや節税スキームに対する理解を深め、効果的な節税対策を実施しましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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