絵画をはじめとした美術品は、一定の条件を満たせば減価償却資産の計上が可能です。そのため絵画購入は節税テクニックの1つといえるでしょう。
しかし、美術品による節税対策ができる条件は細かく定められているため、条件について事前に確認が必要です。
また、一見条件を満たしている美術品であっても、例外として減価償却ができないケースがあります。
美術品購入による節税効果を確実に得られるよう、節税方法やルールについて事前に十分確認しましょう。
今回は絵画をはじめとした美術品購入による節税対策について詳しく解説します。
減価償却資産に課される税金については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
絵画等の美術品を用いた節税対策の概要
はじめに、絵画等の美術品購入が節税対策になる理由や、節税対策ができる条件・できないケースの例を紹介します。
絵画等の美術品購入が節税になる理由
絵画等の美術品購入が節税になる理由は、一定の条件を満たす美術品は減価償却資産として計上できるためです。
減価償却資産とは文字通り減価償却の対象になる資産です。減価償却資産は取得価額を耐用年数にわたって按分して費用計上する必要があります。
取得価額を按分して費用計上する会計処理を減価償却、減価償却によって計上される経費を減価償却費といいます。
かつて美術品が減価償却資産に該当するかは、取得価額が20万円以上であるか、美術年鑑に掲載された作家の作品であるか等が判断基準でした。
しかし2015年の税制改正により、取得価額が100万円未満の美術品は原則として減価償却資産に該当するという扱いに変わりました。
税制改正により減価償却資産となる美術品の範囲が広くなったため、美術品の購入により節税できるケースが多くなったのです。
なお、減価償却資産は原則として耐用年数にわたって償却をする必要がありますが、以下のような制度を使えばより短い期間での減価償却ができます。
一度に計上できる減価償却費が高額になるため、大きな節税効果が期待できます。
- 一括償却資産
- 耐用年数に関係なく、3年間で均等に減価償却費を計上する方法をとる資産です。
- 取得価額が20万円未満の固定資産は一括償却資産として扱うことができます。
- 少額減価償却資産の特例
- 取得価額全額を購入した年に一括して経費計上できる制度です。
- 取得価額が30万円未満であり、かつ、一定の要件を満たす場合に選択できます。
美術品による節税対策ができる条件
美術品による節税対策ができるのは、対象の美術品が減価償却資産に該当する場合のみです。
具体的には以下2つの条件を満たす場合が該当します。
- ・取得価額が100万円未満である
- ・対象の美術品を事業の一部に用いる
例として、会社のロビーや会議室、店舗などの装飾用や展示用とする方法が挙げられます。
なお、取得価額が100万円以上の美術品でも、時の経過によって価値が減少することが明らかなものは減価償却が可能です。
取得価額100万円以上の美術品を減価償却できるケースとして以下の例が挙げられます。
- ・不特定多数が使用する場所に展示する
- 国税庁公式サイト「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」では、会館のロビーや葬祭場のホール等が具体例として挙げられています。
- ・移設が難しい品であり、特定の用途のみで用いることが明らかである
- ・他の用途に転用した場合に価値が著しく下がる見込みである
減価償却ができない美術品の例
取得価額が100万円未満でも、時間の経過に伴う価値の減少が起こらない美術品は減価償却資産に該当しません。
減価償却ができない美術品の具体例を紹介します。
- ・出土品
- ・遺物
- ・古美術品
- ・古文書
- ・その他国宝と呼ばれる美術品や工芸品
歴史的価値の高いものや代替品が存在しないものが当てはまるイメージです。
絵画等の美術品で節税対策をする際のポイント・注意点
絵画等の美術品で節税対策をする際のポイント・注意点を3つ紹介します。
事業の用に供することが大前提
絵画等の美術品で節税対策をするためには、美術品を減価償却資産として計上する必要があります。
つまり、対象の美術品を事業の用に供することが大前提です。
単に美術品を保有しているだけでは減価償却ができず、一切の節税効果を得られません。
オフィスや店舗等の事業関連施設で、装飾用や展示用に美術品を使うのが一般的かつ手軽な方法です。
なお、倉庫等に保管された状態の美術品が減価償却資産に該当するか否かは、以下の基準で判断します。
- ・展示や装飾を休止している美術品等について、休止期間中に必要な維持管理が行われている
- ・対象の美術品がいつでも展示可能な状態である
上記2点を満たす美術品は、展示や装飾を休止している状態でも事業の用に供しているとみなされます。
(参考|国税庁公式サイト「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」)
一方、美術品の必要な維持管理をせず、すぐに展示や装飾目的での使用ができない状態では、減価償却資産として扱うことができません。
事業の用に供しているとはいえず、単に美術品を保有しているだけの状態とみなされます。
取得価額には付随費用も含まれる
美術品が減価償却資産に該当するか否かは、取得価額100万円未満というのが主な判断基準となります。
そして美術品に限らず、固定資産の取得価額は本体価格だけでなく付随費用も含めて計算する点に注意が必要です。
国税庁公式サイト「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」では、美術品の取得価額に含まれる費用として以下の例を挙げています。
- ・美術品本体
- ・引き取り運賃
- ・購入手数料
- ・荷役費(荷役作業にかかるお金全般)
- ・運送保険料
- ・関税
- ・据付費
また、絵画の額縁も絵画の一部として取得価額に含めるものとされます。
仮に美術品そのものの価額が100万円未満でも、付随費用を含めて100万円以上になった場合、減価償却資産にできない恐れが大きいです。
節税目的で美術品を購入する場合、本体価格だけでなく付随費用を含めた合計額を確認しましょう。
少額減価償却資産として計上する場合は条件に注意
「絵画等の美術品購入が節税になる理由」で、少額減価償却資産の特例について簡単に紹介しました。
少額減価償却資産の特例とは、固定資産の取得価額を購入した年に全額費用計上できる制度です。
一度に高額の減価償却費を計上できるため、制度を上手く活用すれば大きな節税効果を得られます。
しかし、少額減価償却資産の特例には以下のように複数の条件が定められています。
- ・適用対象法人は青色申告の中小企業者または農業協同組合等に限られる
- ・適用対象資産は取得価額が30万円未満の減価償却資産のみ
- ・1事業年度あたり300万円が限度
- たとえば30万円の資産を11点購入した場合、11点すべてに少額減価償却資産の特例を用いることはできません。
- 同ケースの場合、特例の適用対象となるのは最大でも10点となります。
少額減価償却資産の特例は節税効果が期待できると人気の制度ではありますが、その分条件が厳しいです。
適用対象法人の条件を満たさないのに制度を利用してしまう・1事業年度の上限を超えて計上してしまう等、ミスが起こりやすい制度ともいえます。
そもそも、少額減価償却資産の特例の適用が必ずしも最善とは限りません。
少額減価償却資産の特例は、利用できるか否か・そもそも自社で利用するメリットが大きいかを検討した上で選択しましょう。
まとめ
2015年の税制改正により、絵画を含む美術品について減価償却資産にできる範囲が広くなりました。
現在の税制では、取得価額が100万円未満の美術品は原則として減価償却資産として扱われます。
美術品の購入や活用は、節税対策としておすすめできるテクニックの1つといえます。
美術品が節税につながるのは事業の用に供している場合のみです。単に保有しているだけの状態では節税効果を得られません。
また、取得価額は付随費用も含めた金額です。本体価格が100万円未満でも、付随費用を含めて100万円以上となる場合、減価償却資産として扱えないため注意しましょう。
美術品を用いた節税対策を確実に行うため、今回紹介した内容をしっかり押さえましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士