給付金や助成金・補助金といった制度は、特定の目的によって運営されており、要件を満たした場合に受給できます。
給付金等の制度によって支給されたお金が課税対象になるか否かはケースによって異なるため一概にはいえません。
給付金等が課税対象になるかは一定のルールに基づいて決まります。
事前に課税対象になるか否かの基準を知っておけば、判断がしやすくなるでしょう。
なお、もし課税対象になる給付金等を受け取った場合は確定申告が必要です。
今回は給付金・補助金・助成金等の税務上の扱いや、所得税の課税対象になる給付金等を受け取った年の確定申告について詳しく解説します。
所得税の基本的な仕組みについては以下の記事をご覧ください。
※給付金等に課される可能性があるのは所得税や法人税です。消費税は原則として課税対象にならないため、本記事での解説は割愛します。
また、本記事では個人の所得税を中心に解説します。
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CONTENTS
課税対象となる給付金・補助金・助成金等
結論として、課税対象になる給付金等もあれば、所得税の対象外となる給付金も存在します。
給付金・助成金・補助金が課税対象になるか否かはケースによるため一概にはいえません。
ただし、特別に明記されている場合を除き、給付金・助成金・補助金は所得税の対象になるケースがほとんどと考えるのが良いでしょう。
そもそも所得とは「新たに取得する経済的価値」、すなわち利得のことです。
利得の発生要因によって所得区分や所得の計算方法は異なりますが、利得は原則として課税対象となります。
そして給付金・助成金・補助金も、基本的には利得とみなされます。したがって多くの場合は他の利得と同様に所得税が課されるのです。
ただし最初に紹介したように、課税対象になる給付金等もあれば、非課税の給付金も存在します。
確定申告を正しく行うには、課税対象になるか否かの確認が必要不可欠です。
まずは給付金・補助金・助成金等が課税対象になるケースの例を紹介します。
収入減少や必要経費の補てんを目的としたもの
収入減少や必要経費の補てんを目的としたものは、事業所得とみなされ所得税の課税対象となります。
該当する制度の具体例は以下の通りです。
- ・持続化給付金(事業所得者向け)
- ・経営継続補助金
- ・小規模事業者持続化補助金
- ・家賃支援給付金
- ・小学校休業等対応助成金、支援金
- ・雇用調整助成金
- ・都道府県の休業・時短要請協力金
- ・文化芸術・スポーツ活動の継続支援
「これらの給付金等の支給によって所得が出るのであれば担税力がある」と判断されるイメージです。
個人の生活を支援する目的のもの
個人の生活を支援する目的のものは一時所得とみなされ所得税の課税対象になります。
所得水準が一定以下の人を対象にした制度や、事業所得に該当しない制度が該当します。
該当する制度の具体例は以下の通りです。
- ・給与所得者向けの持続化給付金
- ・すまい給付金
- ・地域振興券
事業ではなく、あくまで個人の生活をサポートするための制度が該当するイメージです。
なお、一時所得は以下の計算式で求めます。
一時所得=総収入金額 -収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
給付金等の場合、基本的に「収入を得るために支出した金額」は0円ですが、特別控除額は差し引くことができます。
受け取った給付金等とその他の一時所得に該当する収入の合計が50万円以下であれば、一時所得に対する所得税額は0円になる仕組みです。
一時所得については以下の記事をご覧ください。
その他の制度
後述する非課税となる制度の条件に該当せず、これまで挙げた2つの条件にも当てはまらない制度も存在します。
このように他の条件に該当しない給付金等は雑所得に該当し、所得税の課税対象になります。雑所得は他の所得区分に当たらない所得のことです。
雑所得に該当する給付金等の代表例として、雑所得者向けの持続加給付金が挙げられます。
非課税対象となる給付金・補助金・助成金等
非課税となる給付金・補助金・助成金等の制度は非課税の根拠が法律に存在しますが、要件が厳しく利用できる人の範囲が課税対象の制度よりも狭く設定されています。
そのため、節税対策を目的に非課税対象の制度を選ぶという方法はほぼ不可能です。
この章では非課税対象となる給付金・補助金・助成金等について、根拠となる法律別に解説します。
所得税法が根拠となる制度
「所得税法第9条 非課税所得」では、非課税所得となる所得の条件が列挙されています。
所得税法で明確に定められている以上、所得税法第9条に該当する給付金等は所得税の課税対象になりません。
所得税法を根拠に非課税となる制度として以下の例が挙げられます。
- 学生支援緊急給付金
- 所得税法9条1項15号の「学資として支給される金品」に該当します。
- 低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金
- 低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金
- 新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
- いずれも所得税法9条1項18号「心身または資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金」とみなされるため非課税です。
- 企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
- 所得税法9条1項16号「国又は地方公共団体が保育その他の子育てに対する助成を行う事業その他これに類する事業で、認可外保育施設の届出に規定する施設等の利用に要する費用に充てるため支給される金品」に該当します。
新型コロナ税特法が根拠となる制度
所得税法第9条の内容には当てはまらないものの、他の法律を根拠に非課税となる制度も存在します。
代表的な例が、新型コロナ税特法が根拠となる制度です。該当する制度の具体例を紹介します。
- 特別定額給付金
- 住⺠税⾮課税世帯等に対する臨時特別給付⾦
- いずれも非課税の根拠となるのは新型コロナ税特法4条1項1号です。
- 子育て世帯への臨時特別給付金
- 新型コロナ税特法4条1項2号が根拠となります。
その他の法律が根拠となる制度
所得税法や新型コロナ税特法以外の法律を根拠に非課税となる制度の例を紹介します。
- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金
- 新型コロナウイルス感染症対応休業給付金
- いずれも雇用保険臨時特例法7条を根拠に所得税が非課税となる制度です。
- 雇用保険による失業等給付
- 雇用保険法を根拠としています。
- 被災者生活再建支援金
- 被災者生活再建支援法を根拠に非課税となる制度です。
所得税の課税対象になる給付金等を受け取った年の確定申告
所得税の課税対象になるか否かは、制度の募集要項や制度案内に記載されているケースがほとんどです。
所得税が課されるかを正しく把握するため、制度ごとの案内を十分に確認しましょう。
課税対象となる給付金等を受けた年は確定申告が必要です。
所得税の課税対象になる給付金等を受け取ったにもかかわらず確定申告および納税を怠ると、追徴課税の対象になる恐れがあるため注意しましょう。
所得税の確定申告および納付期間は、その年の翌年2月16日から3月15日までです。
3月15日が土日祝の場合、翌平日が期日となります。
所得税の基本については、以下の記事をご覧ください。
まとめ
給付金・助成金・補助金等は、非課税が明文化されている場合を除き原則として所得税の課税対象です。
所得税が非課税になる場合、非課税になる根拠が法律に存在します。
所得税の課税対象になる給付金等について、制度によって所得区分が異なるケースがあります。
確定申告を正しく行うため、どの所得区分に該当するか、どのように確定申告を行うべきか事前の確認が欠かせません。
給付金等の税務上の扱いについて理解を深め、確定申告を正しく行いましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士