定款の原本証明とは?必要シーンと作成方法について解説!

2023.07.07

定款の原本証明とは、定款の写しが原本の内容と同じであることを証明する書類です。

実務で定款の提出が求められる場面は複数ありますが、会社には原本が1通しかないため、原本の実物を提出するわけにいきません。

そのため、原本が必要な場面では代わりに定款の写しと原本証明を提出することになります。

定款の提出が求められたときに慌てないよう、定款や原本証明に関する情報を知っておくと安心です。

本記事で定款の原本証明が必要になるシーンの具体例や作成方法について詳しく解説します。

以下の記事で定款自体について詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

CONTENTS

定款の原本証明とは

定款の原本証明とは、定款の写しが原本の内容と同じことを証明する書類です。

定款の写しとあわせて原本証明を提出することで、写しと原本の内容が同じと証明できます。

 

大前提として、定款原本は公証役場と会社がそれぞれ1通ずつ保管します。

つまり、会社には定款原本は1通しか存在しない状態です。

 

実務において、定款原本が必要とされる場面は複数存在します。

しかし定款には保存義務があり、1通しかない定款原本の実物を提出することはできません。

そこで定款の写しを定款の原本証明をあわせて提出し、定款の写しを定款原本の代わりとして利用します。

 

そもそも定款の提出が求められるのは、定款の内容を確認する必要があるためです。

原本内容さえ同じであれば、提出する書類が写しであっても問題ありません。

 

とはいえ、定款が必要とされる重要性の高い場面において、写しでは正確性の面で懸念があります。

そのため、定款原本の内容と同じであると保証・証明する手段として、原本証明が求められるのです。

 

なお、定款が必要な場面において、必ずしも原本証明が必要とは限りません。

必要書類として「定款の写し」と明記されている場合は、基本的に原本証明は不要です。

特に指定がなく「定款」と記載されている場合、原本証明が必要か否かはケースによって異なります。

原本証明を添付するのが確実ではありますが、提出先に直接問い合わせて確認するのが安心です。

定款の原本証明が必要になる場面

原本証明が必要なシーンの例を紹介します。

法務局での手続き

会社設立登記や変更登記など、法務局での手続きは定款が必要なものが多いです。

法務局での手続き時は、基本的に定款の写しとあわせて原本証明も必要となります。

金融機関での手続き

金融機関での手続きのうち、定款が必要なものの例として法人口座の開設が挙げられます。

原本証明は不要で定款の写しのみで良いケースもありますが、金融機関によって異なる可能性があるため事前にご確認ください。

行政機関での手続き 

行政機関での手続きとして、許認可申請や助成金・補助金申請などが挙げられます。

申請する内容や申請先によって必要な書類の違いが大きいです。

定款の原本証明の作成方法

続いて、原本証明の作成方法を詳しく解説します。

定款の原本証明のフォーマット

大前提として、定款の原本証明に特定のフォーマットはありません。

基本的には必要事項の記載や基本的なルールの遵守のみが必要とされています。

ただし、提出先によってルールが異なる可能性があり一概には言えないため、必ず事前にご確認ください。

今回は作成方法の一例を紹介します。

 

  • 1.定款をコピーする
  • 2.写しの最終ページに必要事項を記載する
  •  記載事項の詳細は後述します
  • 3.定款コピーを順番通りに並べ、すべてのページをホチキスでとめる
  • 4.全ての綴じ目に代表者印で契印する
  •  袋とじ(製本テープを使った製本)にする場合は帯部分と定款の本体部分にかかるように契印します
  •  

提出先によるルールの違いがみられやすい部分は契印の方法です。

袋とじの場合、表裏両方に契印が必要な場合と、表紙のみ・裏表紙のみで問題ないケースがあります。

どのような方法でも問題ないケースもあれば、特定の方法が定められているケースもみられます。

不要な手間をなくすため、事前に必ず提出先へ確認しましょう。

定款の原本証明の記載事項

原本証明は別紙を用意するのではなく、コピーの最終ページ余白部分に必要事項を記載します。

 

記載する必要のある項目は以下の通りです。

  • 該当の定款の写しが原本と相違ない旨の一文
  • 日付
  •  書類を提出する日ではなく、原本証明を行った日付を記載します。
  • 会社住所
  • 社名(商号)
  • 代表者名
  •  会社住所・社名・代表者名はゴム印で問題ないケースもあります。
  •  提出先によっては手書き以外不可のこともあるため、こちらも提出先に確認が必要です。
  • 代表者印
  •  代表者名の右あたりに代表者印を押印しましょう。

なお、近年は押印が必要な場面について見直しが進んでおり、提出先によっては代表者印が必要ないケースもあります。

電子定款の場合

これまで紹介した内容は、定款が紙の場合です。

電子定款の場合は、同一情報の提供の請求を行う必要があります。

 

同一情報の提供は紙の定款謄本に該当するものの交付を受けるイメージで、申請先は公証役場です。

一般的にはPDFデータをプリンタアウトしたものが交付されます。

交付された書類は電子定款の内容と同じであるため、定款が必要な場面で提出できます。

 

申請の流れは以下の通りです。

  • 1.電子公証事務を取り扱う公証人へ電話やFAXで連絡を行う
  •  交付に際して公証人が請求内容に不備がないか確認を行うため、事前連絡が必要です。
  • 2.登記・供託オンライン申請システムを利用するための事前準備や申請者情報登録を行う
  • 3.申請用総合ソフトのメニューで「申請書作成」→「同一の情報の提供の請求」を選択
  • 4.必要事項を入力後、申請書等の保存を行う
  • 5.電子署名の付与後、請求情報を送信する
  • 6.「処理状況表示」画面を開き、「到達」を選択
  • 7.請求をした本人が公証役場へ行き審査を実施、問題がなければ手数料を納付して同一情報の提供を受ける

同一情報の提供にかかる手数料は1通700円プラス1ページにつき20円です。

定款自体のページ総数にプラスして認証文1枚分の手数料も払う必要があります。

たとえば定款のページ数が10ページであれば、手数料は以下のようになります。

700円+20円×(定款10ページ+認証文1枚)=920円

定款の原本証明 注意点

最後に、原本証明に関する注意点を紹介します。

すでに触れた内容もありますが、ルールやポイントのまとめとしてご確認ください。

 

  • 定款の写しはA4サイズで印刷
  • 基本的にサイズはA4で印刷をします。
  • カラー印刷の必要はなく、白黒で問題ありません。
  •  
  • 原本証明を行った日付を記載
  • 記載する日付は、定款の写し等を提出する日ではなく、原本証明を行った日付です。
  •  
  • 会社名や代表者名などは登記事項と同じよう正確に記載
  • 会社名や代表者名などを記載する際は、登記事項と同じよう正確に記載しましょう。
  • 多少の違いは問題ないケースもありますが、登記事項通りに書くのが無難です。
  •  
  • 全てのページの綴じ目に割印をする
  • 基本的には全てのページの綴じ目に割印(契印)をする必要があります。
  • 袋とじの場合の押印については提出先によってルールが異なる可能性があるため、事前にご確認ください。
  •  
  • 提出先ごとに原本証明の形式があれば指示に従う
  • 原本証明に特定のフォーマットはありませんが、提出先によっては形式が指定されていることもあります。
  • 記載事項や押印についても提出先のルールと異なるものでは受理されない恐れがあります。
  • 今回紹介した内容は原則的なものとして押さえつつ、提出先の指示を優先してください。

【参考】定款の原本を紛失してしまった場合

これまで紹介したように、定款の原本証明を作成するためには定款の原本が必要です。

定款原本は会社設立時に公証役場と会社が1通ずつ保管するため、通常であれば会社に定款の原本があるはずです。

 

しかし、何らかの理由で会社に定款の原本がないこともあります。

特に会社設立から期間が空いている場合、定款の原本を紛失してしまっているケースも十分起こり得ます。

 

ここからは、定款原本が見つからない場合の対処法について解説します。

会社設立時から定款の内容が変わっていない場合

会社設立時に作成する定款は、公証役場と会社が1通ずつ保管します。

そのため、会社設立時から定款の内容が変わっていない場合、定款認証を受けた公証役場で定款の謄本を発行してもらえます。

ただし、公証役場で定款を保存する期間は20年であり、それより古い定款は残っていない可能性があるため注意しましょう。

 

また、法務局では登記申請書および添付書類を登記申請から5年間保存しています。

そのため、会社設立から5年以内であれば法務局でも定款の確認が可能です。

会社設立後に定款の内容を変更した場合

会社設立後に定款の内容を変更した場合、公証役場での定款発行ができません。

定款の内容を変更したときには公証役場での定款認証が不要で、公証役場に変更後の定款が存在しないためです。

定款の内容を変更した場合は、以下いずれかの方法で内容を確認する必要があります。

  • ・定款変更の決議をした株主雄会の議事録を確認する
  • ・法務局で登記事項証明書を発行する

なお、どちらの方法でも定款そのものを発行できるわけではありません。

定款の内容を確認し、現行の定款を復元することになります。

現行定款の内容を確認できない場合

これまで紹介した2つの方法どちらも不可能で定款を復元できない場合、定款を作り直すのが良いでしょう。

ただし、一から新しい定款を作るのではなく、定款変更をするイメージです。

現行の定款の内容を推測した後に株主総会を開催、決議の上で定款変更を行います。

まとめ

定款の原本証明は、定款の写しの内容が原本と同じであると証明する役割を担います。

特別なフォーマットはありませんが、記載事項や押印箇所などの決まりをしっかり守る必要があります。

提出先によっては特別なルールが設定されている可能性があるため、必ず事前にご確認ください。

 

定款を直接扱う場面はあまり多くないため、実際にそのような場面に遭遇した際は戸惑ってしまう人も多いかもしれません。

スムーズな手続きのため、疑問や不安があれば専門家に相談することをおすすめします。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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