会社設立時の祈祷料は経費になる?初穂料・玉串料の会計処理について解説!

2024.03.25

会社設立時の祈祷料は寄附金として経費計上が可能です。

会社設立時に限らず、法人としてのお参りで支払うお金は原則として寄附金に該当します。

 

寺社への支払いを経費計上できるのは法人のみであり、個人事業主の祈祷料は経費にできません。

また、法人が損金算入できる寄附金には限度があるため、法人でも寄附金全額の経費計上はできないケースがあります。

税金の申告や計算を正しく行うためにも、寄附金の扱いについて理解を深めておくのが安心です。

 

今回は会社設立時の祈祷料を中心に、会社が支払うお参り関連の会計処理について詳しく解説します。

 

会社設立にかかった費用の会計処理については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

会社設立時の祈祷料は「寄附金」として経費計上が可能

会社設立時の祈祷料は、「寄附金」として経費計上が可能です。

法人としてのお参りで支払うお金の多くは原則として寄附金に該当します。

 

少額の場合は寄附金ではなく、雑費勘定を用いての計上も可能です。

ただし雑費は勘定科目だけでは内容が判断できないため、なるべく使わないのが無難です。

お参り関連の支出 種類と意味

前述したように、法人が支出した場合は寄附金として経費計上が可能です。

一口にお参り関連の支出といっても様々な種類があります。ここでは支出の種類ごとに詳しい意味を解説します。

祈祷料

祈祷料は、神様への謝礼ではなく神職に対する謝礼の意味合いを持つ言葉です。

祈祷料という言葉は、神職に対する謝礼としてのお金とは別で神様へのお供え物を用意している場合に使うのが適しています。

初穂料

初穂料は、神様への謝礼としてお供えするお金のことです。初穂や初物の代わりとしての意味を持ちます。

本来「初穂」はその年にはじめて収穫されたお米を指す言葉です。

かつては神前に初穂もしくは初物をお供えし、収穫と豊作を感謝する習慣がありました。

しかしお米の生産者以外の人は初穂や初物を入手できない上、生産者も季節がずれれば初穂・初物をとれません。

そのため、初穂・初物のかわりにお金をお供えするようになりました。

その後「初穂」という言葉の「神様にお供えする物」の意味が強くなり、神様にお供えするお金は「初穂料」と呼ばれるようになったのです。

なお弔事で支払う時には初穂料という言葉は使いません。

玉串料

玉串料は初穂料と同様、神様にお供えするお金のことです。

玉串は神様にお供えするものの1つで、玉串料という言葉は「玉串に代わるもの」の意味も持ちます。

玉串料という言葉は初穂料と違い、弔事の場合にも使えます。

ただし、御守・御札などを受ける際にはあまり使わない表現です。

個人事業主の場合は経費計上できない

これまで紹介したように、法人の祈祷料は寄附金として経費計上が可能です。

一方で個人事業主の場合、商売繁盛のためのご祈祷でも経費計上できません

商売繁盛や事業関連を目的とした祈祷であっても「事業主貸」として経費とは区別する必要があります。

 

個人事業主の支払った祈祷料について「広島地方裁判所/平成9年(行ウ)第25号、判決 平成13年10月11日、 税務訴訟資料251号順号9000」の判例を紹介します。

同裁判の概要を紹介します。

  • ・所得税の計算にあたって計上した経費の一部が否認され、更正及び過少申告加算賦課決定がされた
  • ・納税者である原告が更正及び過少申告加算賦課決定の取消請求を行った
  • ・原告の請求はいずれも理由がないと棄却され、取消請求は認められなかった

否認された経費の中に、神社への玉串料・祈祷料・熊手の購入費用がありました。

これらについて、納税者の主張は以下の通りです。

  • ・商売繁盛や売上向上、従業員の交通安全を目的としたもの
  • ・個人の個人的な信仰や精神的安寧のためではない
  • ・法人の場合は必要経費として認められるもののため、個人事業主も同様に必要経費性が認められるべき

裁判所の回答は以下の通りでした。

  • ・祈祷料等の支払いや熊手の購入は宗教的色彩を強く持つ行為
  • ・業務との関連性および必要性がないのは明らか
  •  

このような判例が存在する以上、個人事業主が寄附金を経費計上するのはほぼ不可能と考えるべきでしょう。

会社設立 祈祷料やお参り関連の支出に関する注意点

会社設立時に限らず、法人として祈祷やお参りを行う機会は存在し得ます。

そこで、法人の祈祷料やお参り関連の支出に関する注意点を紹介します。

法人が損金算入できる寄附金には限度がある

法人が損金算入できる寄附金には限度があるため、祈祷料やお参り関連の支出全額を損金にできるとは限りません。

 

法人税法上、寄附金は大きく以下の3種類に分けられます。

  • ・国または地方公共団体に対する寄附金、および指定寄附金
  • ・特定公益増進法人に対する寄附金
  • ・一般の寄附金

祈祷料などは「一般の寄附金」に該当し、損金算入限度額が定められています。

 

普通法人の場合、一般の寄附金の損金算入限度額は以下の通りです。

(期末の資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1,000+所得額×2.5/100)×1/4

 

たとえば資本金500万円、その期の所得が300万円の会社の場合、一般の寄附金

のうち損金算入できる額は以下の通りです。

(500万円×12/12×2.5/1,000+300万円×2.5/100)×1/4

=(500万円×0.0025+75,000)×1/4

=(12,500+75,000)×1/4

21,875円

御札やお守りも「寄附金」として計上する

御札やお守りのような物品も、消耗品ではなく寄附金勘定を使います。

寺社仏閣のような宗教法人の物品販売について、法令解釈通達の内容を大まかに紹介します。

  • ・宗教法人におけるお守り、お札、おみくじ等の販売は、売買利潤ではなく実質は喜捨金と認められる
  • ・したがって、これらは物品販売業に該当しないものとされる

寄附金は消費税の課税対象外

寄附金は消費税の課税対象外です。祈祷料に限らず、御札・お守りの購入費等も同様に消費税は課されません。

国税庁の公式サイトでも「寄附金の支出は対価を得て行われる取引ではないため、課税仕入れとはならない」と明記されています。

 

ただし、寺社仏閣への支払いすべてが消費税の課税対象外になるわけではありません。

消費税が課されないのはあくまでも寄附金に該当する支出のみです。

寺社仏閣への支払いでも、消耗品等の寄附金以外に該当するものは消費税の課税取引となります。

 

寺社仏閣に対する支出のうち、寄附金扱いで消費税の課税対象外になるものと、消耗品に該当し消費税の課税対象になるものの例を紹介します。

 

消費税の課税対象外(寄附金扱い)

  • ・祈祷料、初穂料、玉串料
  • ・お守り
  • ・お札

 

消費税の課税対象

  • ・絵葉書
  • ・写真帳
  • ・供花
  • ・暦(カレンダー)
  • ・線香
  • ・ろうそく
  • いずれも「法令解釈通達 第2款 物品販売業」において、物品販売業に該当するものの例として挙げられているものです。
  • 宗教法人以外でも販売できる性質を有するものであり、かつ、一般の物品販売業者とおおむね同じ金額で販売している場合は物品販売業に該当します。
  • 寄附金とみなされないため、消費税の課税対象です。

まとめ

会社設立時に限らず、法人として支出する祈祷料は経費計上が可能です。

勘定科目は「寄附金」、消費税は非課税となります。

 

祈禱料のほか、お守りや熊手の購入費等も法人としての支出であれば寄附金として経費計上ができます。

ただし、寺社仏閣への寄附金は一般の寄附金に該当するものであり、一般の寄附金には損金算入限度額がある点に注意が必要です。

 

また、寄附金は対価性がないため消費税の課税対象外となります。

寺社仏閣でのお守りや熊手等の購入費用も、消耗品ではなく非課税である寄附金勘定で計上します。

寺社仏閣で購入するものでも、物品販売業に該当する品物の場合は消費税の課税対象であり、消耗品勘定での計上が必要です。

 

祈祷料を含め、寺社仏閣に対する支出の経費性や使用する勘定科目についてしっかり押さえましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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