会社設立は相続税対策として活用されるテクニックの1つです。
法人の仕組みを上手く活用すれば相続財産の額を減らし、相続税額を抑えられる可能性があります。
ただし、会社設立が必ずしも相続税の節税に効果的とは限りません。相続財産の額によっては、会社設立による節税効果を得られないケースもあります。
また、会社設立および運営に手間やコストがかかる点にも注意が必要です。
今回は相続税対策として会社設立するメリットと注意点を解説します。
相続税の節税対策は以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
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CONTENTS
相続税対策として会社設立するメリット
会社設立は相続税対策として活用されるテクニックの1つです。
この章では相続税対策に会社設立するメリットを3つ紹介します。
相続税の課税対象になる資産が少なくなる
相続税対策として会社設立し、設立した会社を上手く活用すれば、相続税の課税対象になる財産を減らすことが可能です。
前提として、個人が所有している財産は相続税の課税対象になります。
亡くなった人が保有している財産が多い場合、高額の相続税を課せられる恐れがあります。
一方、法人が所有する財産には法人税が課されません。
そのため、資産管理のためのプライベートカンパニーを設立し、個人の財産を設立した会社に移せば、対象の資産は相続財産から外れます。
相続財産となり得る財産を法人の所有物にすることで、相続税の課税対象になる資産を減らせる仕組みです。
相続税の額を抑えられるだけでなく、課税対象資産の種類や数が減るため、財産調査や税額計算の手間が少なくなるというメリットもあります。
なお、会社設立するだけで相続税対策ができるわけではありません。
相続税を抑える効果を得られるのは、相続財産になり得る資産を会社に移した場合のみです。
たとえ会社設立しても、資産の移転手続きを行う前に被相続人が亡くなってしまえば節税効果はありません。
相続税の節税を確実に行うため、会社設立後なるべく早いうちに財産の移転を済ませましょう。
役員報酬の支給によって所得の分散が可能
相続財産になり得る資産に現預金が多い場合、会社設立して家族を役員にし、役員報酬を支給する方法も効果的です。
個人の現預金をそのまま保有しているだけでは、相続税の課税対象になり、現預金の額によっては高額の税が課される恐れがあります。
しかし、生前に現預金を贈与する方法では贈与税が課せられ、相続税よりも税額が高くなるケースも有り得ます。
贈与税の基礎控除額110万円以内で生前贈与をする方法は効果的です。しかし、贈与したい額が大きい場合、非課税で贈与を済ませるのには長い時間がかかるでしょう。
その上、相続開始の7年以内に行われた贈与については、贈与税の基礎控除の範囲内でも相続財産に含めて相続税の計算が必要です。
生前贈与を開始する時期によっては、節税効果を得られない可能性があります。
しかし、会社から役員報酬を支給する方法であれば現預金を給与として分配できます。贈与税や相続税の課税対象にはなりません。
給与を受け取った家族には所得税が課されますが、相続税や贈与税よりも低い税率で済む可能性が高いです。
このように、会社を設立して家族を役員にすれば役員報酬の支払いという形で所得の分配ができます。
税負担を最小限に抑えながらも、相続税の課税対象になる現預金を減らせる方法として有用です。
死亡退職金の非課税枠を有効活用できる
会社設立をすれば、死亡退職金の非課税枠を有効活用できるようになります。
死亡退職金とは、被相続人の死亡によって会社から相続人に支払われる退職手当金や功労金です。
本来亡くなった人が受け取るはずであったお金を、その家族が受け取るというイメージです。
死亡退職金はみなし財産として相続税の課税対象になりますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。また、死亡退職金は所得税の課税対象外です。
被相続人が亡くなる前に会社に属していない、もしくは会社に死亡退職金の制度がない場合、死亡退職金の非課税枠を活かせません。
このように会社設立をして死亡退職金の制度を導入する方法も、相続税の節税につながるといえます。
相続税対策で会社設立をする際の注意点
続いて、相続税対策で会社設立をする際の注意点を3つ紹介します。
すべてのケースで有効なテクニックとは限らない
会社設立が必ずしも相続税対策として効果的とは限りません。相続財産の合計額や事業運営の実態によっては、かえって税負担が大きくなる恐れもあります。
会社設立による相続税対策の効果を得られないケースの代表例が、相続財産の額が相続税の基礎控除より小さい場合です。
相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。
相続財産の額が前述の基礎控除額以下であれば、そもそも相続税が発生しません。
相続税が発生しない以上、会社設立による節税効果もゼロとなります。
また、会社設立後に赤字状態が続く恐れが大きい・設立後に放置する予定等、事業実態が不健全になりそうな場合もおすすめできません。
会社としての事業実態がなければ、過度な節税(脱税)目的の会社設立として、追徴課税となるリスクがあります。
事業活動の結果として赤字状態が続く場合、実態面で指摘を受ける恐れはないものの、会社の財産は流出し続ける一方です。
確かに税負担は軽くなりますが「節税」というよりは「そもそも財産が減っただけ」といえるでしょう。
会社設立が相続税対策として有用な方法であるか、事前に十分な検討が必要です。
赤字でも税金の支払いが必要
法人は赤字でも法人住民税の支払いが必要です。
個人事業主は所得が赤字であれば住民税が発生しませんが、法人は赤字でも税負担が発生する点を押さえる必要があります。
厳密には、赤字でも支払いが必要なのは法人住民税のうち均等割のみです。
法人住民税は法人税額に一定の税率を乗じた法人税割と、法人規模によって決まる均等割の2つによって構成されます。
赤字の場合は法人税がゼロになるため、必然的に法人税割も発生しません。
一方、均等割は所得の有無に関係なく課税されます。均等割の額は資本金等の額と従業員数によって決まりますが、最低でも7万円と決して小さくありません。
赤字でも税負担をゼロにはできない旨を考慮し、それでも会社設立をするべきか検討しましょう。
会社の設立および運営に手間やコストがかかる
会社設立および運営には手間やコストがかかる点にも注意が必要です。
ケースによっては、会社設立による相続税の節税効果よりも、会社関連の手間・コストの方が大きくなる恐れもあります。
会社関連の手間・コストの具体例を紹介します。
会社設立手続き
会社設立には以下のような作業が必要です。
- ・会社概要の決定
- ・定款の作成
- ・(株式会社の場合)定款認証
- ・資本金の払い込み
- ・法務局への登記申請
会社設立は思い立ってすぐに実施できるわけではありません。会社設立手続きのために、ある程度の時間を確保する必要があります。
会社設立手続きについては、以下の記事をご覧ください。
会社設立時にかかる費用
会社設立時には以下のような費用がかかります。
- ・定款用収入印紙代(電子定款の場合は不要)
- ・定款認証手数料
- ・謄本手数料
- ・登録免許税
合計額は定款の形式や専門家への依頼の有無によって異なりますが、20~30万円程度が目安であり、決して安くありません。
会社設立により相続税の節税効果が期待できるとはいえ、そのために支出を伴う点を押さえる必要があります。
会社設立費用については、以下の記事をご覧ください。
会社設立後の手続き
会社設立手続きは法務局での登記申請までを指すのが一般的です。
しかし申請が受理され登記が完了した後も、会社に関する様々な手続きを行う必要があります。
会社設立後の手続きとして以下の例が挙げられます。
- ・社会保険の加入手続き
- ・税務署への届出
- ・自治体への届出
これらの手続きに漏れがあると罰則の対象になる恐れがあります。
会社設立後の手続きについては、以下の記事をご覧ください。
社会保険への加入義務
法人は社会保険への加入が義務付けられており、従業員を雇わないペーパーカンパニーでも社会保険への加入が必須です。
社会保険料は被保険者と会社の折半となります。したがって、社会保険料というランニングコストが必ず発生します。
会計処理や決算作業の複雑化
法人は個人事業主に比べて、会計や決算、税務申告に関するルールが厳しく設定されています。
必要な処理も多くなるため、会計・税務関連の手間は増大するでしょう。
まとめ
法人の保有する資産は相続税の課税対象になりません。また、法人から家族へ役員報酬を支払えば、所得の分散が可能です。
法人の設立により死亡退職金の枠を有効活用できるようにもなります。
会社設立をすれば、相続税の節税につながる様々なメリットを享受できるでしょう。
ただし、会社設立が必ずしも相続税対策として有効とは限りません。会社を設立しても節税面で無意味なケースも有り得ます。
また、赤字でも税金の支払いが必要・会社設立および運営には手間とコストがかかる点にも注意する必要があります。
会社設立のメリットと注意点の両方を押さえた上で、相続税対策として会社設立を実施するか検討しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士