会社設立時の発起人とは?概要と注意点について解説!

2023.09.12

発起人とは、簡単に言うと資本金の拠出や定款の作成など会社設立手続きを行う人を指す用語です。

しかし、会社設立に携わった人が必ず発起人になるわけではなく、会社設立に携わった上で定款への署名等も行う必要があります。

発起人については他にも細かなルールや注意点があるため、会社設立の前に深く理解しておくことが大切です。

 

今回は発起人について、概要や注意点を解説します。

 

なお、発起人の氏名・住所は定款の絶対的記載事項の1つです。

絶対的記載事項に漏れがあると定款の認証ができないため、定款作成に際して注意する必要があります。

定款については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

CONTENTS

会社設立時の発起人とは

はじめに、発起人の概要を解説します。

発起人とは

発起人とは、株式会社の設立に際して出資(資本金の拠出)および会社設立の各種手続きを行う人を意味する言葉です。

会社法第26条1項では「設立時発行株式の引受人であるとともに、設立に関する事務を行う者」と記載されています。

 

発起人という言葉が単に「会社設立をした人」の意味で使われることもありますが、この用法は厳密には誤りです。

発起人として扱われるのは、定款に発起人として署名押印をした人のみです。

 

会社設立時に出資をした・会社設立の準備や手続きに携わった場合でも、定款への署名等をしなければ発起人にはなりません。

後述する「発起人の責任」についても対象外となります。

 

逆に言えば、会社設立の準備自体には深く携わっていなくても、出資および定款への署名押印をすれば発起人として扱われます。

発起人の役割

発起人は会社設立に必要な準備・手続きの全般を担います。

発起人の役割について具体的に紹介します。

 

  • 出資
  • 株式会社設立時の資本金の拠出は、発起人のメインといえる役割です。
  • 会社設立後、発起人に対して出資金に応じた株式が発行され、発起人は株主となります。
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  • 会社概要の決定
  • 商号・本店所在地・事業目的・資本金の額・会計年度・設立日等を決定します。
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  • 定款作成および認証
  • 定款作成および認証の手続きは、発起人の重要な役割の1つです。
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  • 設立時取締役の選任
  • 取締役は会社の運営や経営をする人です。次項で詳しく解説します。
  •  
  • 設立時発行株式の引き受け
  • 発起人には出資金に応じた株式が発行され、会社設立後は会社の株主となります。

取締役との違い

前章で、発起人の役割の1つとして「設立時取締役の選任」を挙げました。

取締役は設立した会社の運営を行う人であり、会社の経営者と呼べる存在です。

 

株式会社の特徴として、所有と経営の分離が挙げられます。

会社の所有者は株主である発起人ですが、会社の経営者は発起人によって指名された取締役です。

会社の運営や重要事項についての意思決定権を持つのは所有者であり、経営者は所有者の意向に従って経営を進めます。

このように、両者は全く異なる性質・役割を有する立場です。

 

ただし、小規模の会社では発起人と取締役が同一のケースが多く見られます。

特に個人事業主の法人成りによって設立された株式会社は、発起人と取締役が同じことが多いです。

会社設立 発起人について押さえたい事項

これまで紹介したように、発起人は会社設立における重要な役割を担う存在です。

そんな発起人について、会社設立に向けて事前に押さえておきたい事項を解説します。

発起人の要件

法律において、発起人の要件は特に定められておりません

外国籍の人や未成年の人、さらには法人が発起人になることも可能です。

人数の上限もないため、複数人になるのはもちろん、数が多くなっても法律上の問題はありません。

 

ただし個人の場合、発起人となれるのは15歳以上の人に限ります。

定款認証時には発起人全員の印鑑証明書を提出する必要がありますが、15歳未満では印鑑登録ができません。

発起人の要件について法的な決まりはないものの、実際には年齢要件が存在している状態です。

 

15歳以上で印鑑登録が済んでいれば発起人になれますが、未成年の場合は親権者の同意が必要です。

発起人の役割である定款認証は法律行為に該当します。

そして、未成年者が法律行為を実施するためには、法定代理人の同意が必要と民法で定められています。

未成年者の法定代理人は基本的に親権者と同一であるため、未成年者が発起人になるためには親権者の同意が必要と考えて良いでしょう。

 

このように、会社法以外のルールが絡む場面も多く見られます。

発起人が複数いる場合の注意点

前述したように、発起人の数についてのルールはなく複数となっても法的には問題ありません。

ただし、発起人が複数いる場合ならではの注意点を押さえる必要があります。

 

まず、各々の発起人が異なる意見を持つ場合、すり合わせのために話し合いが必要です。

1人の場合は意見の相違は起こり得ず、話し合いは必要ありません。複数人の場合でも、少数であればすり合わせの難易度は下がるでしょう。

人数が多ければ多いほど意見の相違が起こりやすくなり、すり合わせに要する時間や話し合いの場面も多くなってしまいます。

結果として、必要事項の決定を始めとした話し合いに時間がかかってしまいます

 

また、会社設立に必要な書類の数も増えることで手間や労力が大きくなる点も押さえる必要があります。

 

さらに、発起人ごとの出資金に差があれば、株式の保有割合に偏りが生じます。

結果として、特定の発起人が実質的な支配権を握ってしまうケースも起こり得るでしょう。

 

発起人が複数になる場合、スムーズな会社設立に向けた準備や対策、株式の保有割合に関する検討が必要といえます。

法人が発起人になる場合の注意点

前述のように、法人が発起人になることも可能です。

ただし、発起人となる法人には、定款に記載された事業目的の範囲内でなければ権利能力が認められません

たとえば「飲食店の経営」を事業目的とする会社を設立する場合、発起人になれるのは定款に関連する事業目的を記載している法人に限ります。

「IT事業の開発」「不動産業」のように、関連性のない事業目的の法人は発起人になれません。

発起人の責任

発起人には会社設立までの行為に責任が伴います。

責任の具体的な内容を紹介します。

財産価額填補責任

金銭以外の出資により会社を設立する場合に関係する内容です。

現物出資や財産引受けによる財産価額が定款に記載された価額より著しく不足する場合、発起人は不足分を支払う義務があります。

仮装出資履行責任

資本金の払込みを仮装した場合、仮装した分全額の支払いが必要です。

任務懈怠責任

会社設立手続きにおける役割を怠り会社に損害を与えた場合、与えた損害について賠償する責任を負います。

会社不成立の責任

会社設立登記に至らなかった場合、設立に関する行為について連帯責任を負うという内容です。

会社設立のために支出した費用の負担や、罰則・過料が科されます。

第三者への損害賠償責任

会社設立の任務・役割を怠り第三者に損害を与えた場合、第三者に対する損害賠償の責任を負います。

ただし、第三者への損害賠償責任が生じるのは、発生した損害が悪意や重過失によるものと認められた場合のみです。

まとめ

発起人は出資や定款の作成・認証など、会社設立を実現させるための様々な役割を担います。

特別な要件は定められておらず、年齢・国籍・個人と法人のどちらであるか等に関係なく、誰でも発起人になれます。

人数の上限もありませんが、発起人が複数の場合はトラブルの懸念もあるため注意が必要です。

 

今回紹介したように、会社設立を成功させるためには、発起人について深い理解が必要不可欠となります。

とはいえ、発起人に関する内容を含め、会社設立のルールや注意点は非常に複雑です。

専門知識や経験がない当事者のみで完璧に対応するのは容易ではありません。

会社設立を成功させる・トラブルのリスクを最小限に抑えるため、専門家のサポートを受けるのが安心です。

本格的な準備を始める直前の人はもちろん、会社設立の検討段階である・まずは気になる事項を解消したいという人も、ぜひお気軽にご相談ください。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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