会社設立時に役員報酬はどう決める?ルールや注意点について解説!

2023.09.15

会社設立に際して決めるべき事項の1つとして、役員報酬の金額があります。

役員報酬は従業員への給与と違い、損金算入のためには一定の要件を満たす必要があります。

役員報酬はルールが非常に厳格であり、少しでもミスや認識の相違があれば、役員報酬として支払った額を損金に参入できない恐れがあります。

そのため、会社設立の前に役員報酬についても十分に理解を深める必要があります。

 

今回は役員報酬について、会社設立時に知っておくべき事項を解説します。

 

会社設立時に決めるべきその他の事項について解説した記事もありますので、ぜひご覧ください。

 

 

 

 

CONTENTS

役員報酬の概要

役員報酬とは名前の通り、会社の役員に対して支払われる報酬です。

従業員に支払う給与と違い、役員報酬を全額損金に算入するには一定の要件を満たす必要があります。

損金算入できる役員報酬は3種類です。それぞれ特徴やポイントを解説します。

定期同額給与

定期同額給与とは、役員に対して1ヶ月以下の一定期間ごとに支給する仕組みの報酬です。

従業員に支払う一般的な給与に近いですが、従業員への給与との大きな違いは、各支給時期における支給額が同額でなければならない点です。

従業員への給与は、残業代やインセンティブ代などにより、前月と変動するケースが頻繁に起こります。

昇給や手当の追加といった理由から、期中に給与額が変わっても問題ありません。

 

一方、役員の定期同額給与は支給額を税務署に届け出る必要があり、届出の内容より過大な支給分は損金不算入となります。

定期同額給与の額を変更できる時期・回数にはルールがあります。

 

このような決まりから、金額を自由に変えることはできず毎月同額を支払う必要があるのです。

事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、役員に対する賞与に似た報酬です。

支払日・支払額を事前に税務署に届け出た上で、届出の内容通りに支給する必要があります。

届出の内容と実際の支給内容に少しでも違いがある場合、該当の会計期間に支給する事前確定届出給与のすべてが損金不算入となります。

 

税務署への届出の期日は、以下のうちいずれか早い方です。

  • ・株主総会等の決議をした日から1ヶ月を経過する日
  • ・会計期間の開始日から4ヶ月を経過する日

業績連動給与

業績連動給与とは、業績に連動して金額が算定される役員報酬で、役員に対するインセンティブ制度のようなものです。

これまで紹介した定期同額給与・事前確定届出給与と違い、直前まで支給額が確定しない点が特徴です。

 

業績連動給与を損金算入するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • ・同族会社ではない内国法人である
  • ・業績連動給与の算定方法を有価証券報告書等の中で開示する
  • ・対象の業績連動給与について損金経理を行う

同族会社は要件を満たさない上、有価証券報告書の提出がない非上場会社も算定方法の開示が困難です。

そのため、業績連動給与の支給要件を満たす会社はそれほど多くありません。

会社設立時 役員報酬の決め方のルール

会社設立時に役員報酬を決める上でのルールを2つ紹介します。

会社設立から3ヶ月以内に決める必要がある

会社設立1年目の役員報酬は、会社設立から3ヶ月以内に決める必要があります。

設立から3ヶ月を超えてしまうと、その年の役員報酬を損金に算入できません。

 

役員報酬の決め方について「定款または株主総会の決議によって定める」と会社法に明記されています。

実際には定款で役員報酬について定めていない会社が多く、株主総会の決議によって定めるケースがほとんどです。

 

株主総会では役員一人ひとりの報酬額までは決める必要はなく、役員報酬の総額を決定します。

株主総会で役員報酬の額を決める際は、根拠資料として議事録を残すよう注意しましょう。

その後、取締役会で内訳を決めて税務署への届出を行います。

役員報酬の変更は原則不可

原則として、一度決めた役員報酬の額はその事業年度末まで変更できません

そのため、様々な要素を考慮した上で役員報酬として妥当な額を決める必要があります。

 

事業年度の途中に役員報酬の額を変更できる例外的なケースは以下の2つです。

役員の会社における職位や職務内容が変わった(臨時改定事由)

例として、取締役が代表取締役に昇格した、役員の退任により別の役員が業務を兼任するようになり業務量が増えた等のケースが挙げられます。

また、会社や役員が不祥事を起こしたために、役員報酬を一定期間減額することもあります。

経営状況が著しく悪化した(業績悪化改定事由)

業績悪化改定事由に該当する場合、役員報酬の減額のみ可能です。

なお、想定よりも利益が出なかった・経費を使いすぎてしまった等の単純な理由だけでは認められません。

業績の著しい悪化が原因で、株主・取引先・金融機関といった第三者との関係性が悪化する恐れがある場合に限り、役員報酬の減額が可能となります。

 

期の途中で役員報酬を変更する場合、どのような事由であれ臨時株主総会や取締役会による決議が必要です。

会社設立 役員報酬を決める際の注意点

最後に、役員報酬を決める上で注意するべき事項を3つ紹介します。

あまりに高額だと否認される恐れがある

会社法において、役員報酬の額に明確な上限はありません。

しかし、役員報酬が不当に高額である場合、損金算入が否認される恐れがあります。

期日までに必要な手続きをして届出通りに支給している場合でも、金額によっては損金不算入となる可能性に注意が必要です。

 

金額の明確な目安はありませんが、同業種や規模の近い他社と比較して、相場といえる範囲に収める必要があります。

役員報酬を確実に損金算入できるよう、金額について専門家によるアドバイスやサポートを受けるのが安心です。

法人税と所得税のバランスを考慮する

役員報酬の額を決める際は、法人税と所得税のバランスを考慮する必要もあります。

 

損金算入できる役員報酬の額が上がるほど会社の利益が減るため、法人税の節税という意味では効果的です。

しかし、役員報酬が高額になると役員個人にかかる所得税および住民税の負担が大きくなってしまいます。

社会保険料も役員報酬の額が上がるほど高額になる仕組みです。

 

逆に、役員報酬の額を低くしすぎると、法人税の節税効果も少なくなってしまいます。

また、役員が得られる収入が減り、生活に支障をきたす恐れもあるでしょう。

 

法人・役員個人それぞれにかかる負担を考慮し、バランスの良い報酬額に決定する必要があります。

損益予測を基に決定する

役員報酬の額を決めるにあたって、損益予測は重要な指標になる要素です。

 

役員報酬が高額すぎる場合、支出の負担が大きくなりすぎて会社の資金繰りが悪化する恐れがあります。

一方、役員報酬が低額では利益が大きくなりすぎてしまい、法人税の負担が増大します。

このように、役員報酬は高すぎても低すぎても、会社に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。

 

前述の通り、原則として事業年度の途中に役員報酬の変更はできません。

そのため、損益予測を基に妥当な金額を決定する必要があります。

 

なお、役員報酬の上限額については、前年の利益額または想定利益額から2か月分の運転資金を引いた額という考え方があります。

2か月分の運転資金とは、法人の剰余金として確保したい金額の目安です。

まずは前述の計算式を用いて役員報酬の上限額を決め、その上で様々な要素を考慮して役員報酬を決定するという進め方も良いでしょう。

まとめ

「会社設立1年目の役員報酬は設立から3ヶ月以内に決めれば良い」と聞くと、時間的に余裕があると感じるかもしれません。

しかし、会社設立直後はやるべきことが非常に多く忙しい時期です。

役員報酬の決定を後回しにしてしまうと、期日に間に合わず損金算入ができなくなる恐れがあります。

最低限、会社設立の前に役員報酬の理解を深めておく必要があるでしょう。

 

役員報酬には法的なルールが多く存在し、金額を決める上でも注意するべき点がたくさんあります。

そのため、専門知識のない人が役員報酬の手続きを正確・適切に行うのは容易ではありません。

役員報酬について疑問や不安があれば、当事者のみで無理に対応しようとせず、専門家へ相談することをおすすめします。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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