法人成りは、現在の事業をより大きくする上で効果的な手段の1つです。
個人事業主から法人成りをすることで、税負担を抑えられたり決算のタイミングを自由に設定できるなどのメリットがあります。
これらのメリットを最大限に活かすためには、会社設立を最適なタイミングで行うことが大切です。
本記事では会社設立に適したタイミングの具体例や、適切なタイミングを計るために押さえたいポイントを紹介します。
会社設立のタイミングとあわせて検討したい事項として、会社の設立日が挙げられます。
会社設立日の決め方は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
会社設立に適したタイミングの例
はじめに、会社設立に適したタイミングの例を3つ紹介します。
所得に関するタイミング
1つ目は、事業による所得が一定を超えるタイミングです。
個人事業主の場合、事業によって発生する所得は所得税の対象となります。
所得税は一定を超えた部分に高い税率を適用する超過累進課税を採用しているため、所得が上がるほど税負担も大きくなる仕組みです。
一方、法人の所得に対して課せられる法人税は、所得額に関係なく税率が一定です。
そのため所得が一定を超える場合、所得税よりも法人税の方が税額を低く抑えられます。
したがって、所得が大きくなったタイミングは法人成りの検討・実施に適した時期です。
あくまで1つの目安ですが、事業による所得が600~800万円を超えたあたりは法人成りを検討するべきタイミングといわれています。
売上に関するタイミング
2つ目は、事業による売上が一定を超えるタイミングです。
こちらに関しては、売上が1,000万円を超えたタイミングが法人成りに適していると明確にいえます。
個人事業主と法人は、いずれも課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の納税義務が生じます。
(基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納付義務が発生する仕組みです。基準期間とは、前々事業年度を指します)
たとえば令和5年度に個人事業主として課税売上高が1,000万円を超えた場合、令和7年度から消費税の課税事業者になるイメージです。
一方、法人は会社設立時の資本金が1,000万円以下であれば、設立1期目は消費税の納付義務が生じません。
また、設立2期目も前々事業年度である基準期間が生じないため、設立1期目に続いて消費税が免除されます。
先ほどの例のように令和5年度に課税売上高が1,000万円を超えた場合、令和6年度の末までに法人成りをすれば、消費税の免税期間が長くなるのです。
以上の理由から、課税売上高が1,000万円を超えたタイミングでの法人成りもおすすめです。
事業拡大を検討している、または進めたいタイミング
事業拡大を検討している、もしくは事業拡大を実際に進めたいと考え始める時期も、会社設立に適したタイミングです。
事業内容や理念が同じでも、個人事業主よりも法人の方が社会的信用を得やすい傾向にあります。
社会的信用を得やすいことで、以下のようなメリットがあります。
- ・金融機関からの融資を受けやすくなる
- ・取引先や案件を獲得しやすくなる
- ・求人への応募が集まりやすくなる
いずれも事業拡大を有利に進める要素です。
事業拡大を本格的に進めたいと考えるのであれば、最初のステップとして会社設立を実施しても良いかもしれません。
適切なタイミングで会社設立をするためのポイント
前章で会社設立に適したタイミングを3つ紹介しましたが、あくまでも一例です。
会社設立の最適なタイミングは状況によって異なるため一概にはいえません。
自身に合った適切なタイミングを判断するためには、タイミングを計る上でのポイントを押さえることが大切です。
そのためのポイントを3つ紹介します。
法人成りのメリット・デメリットを比較した上で検討する
法人成りにはメリットとデメリットの両方があります。
前章で「一定以上の利益が出ている場合は所得税よりも法人税の方が税額を抑えられる」と紹介しました。税負担を抑えられる点は、法人成りをする大きなメリットです。
しかし、人によっては税負担を抑えられるメリットよりも、法人成りによって発生するデメリットの方が大きく感じるかもしれません。
実際、所得税と法人税の大きさが逆転するギリギリの時期では、浮いた税金による得よりも発生するデメリットの方が大きくなる可能性が高いです。
このような事態を防ぐため、法人成りのメリット・デメリットの両方を比較する必要があります。
そして、メリットが勝る、またはデメリットに関係なく法人成りをするべきだと判断した場合に法人成りをするのが良いでしょう。
法人成りのメリット・デメリットの具体例を紹介します。
メリット
個人事業主が法人成りをすることで得られる大きなメリットは以下の3つです。
- 個人事業主よりも節税できる可能性がある
- 前章で紹介したように、所得額によっては所得税よりも法人税の方が税額を抑えられます。
- 社会的信用を得やすくなる
- 金融機関や取引先からの信用を得やすくなるため、事業活動がスムーズになります。
- 事業拡大がしやすくなる
- 「事業拡大を検討・進めたい時期」で紹介した通りです。
- 事業を一定以上の規模まで拡大したい場合、法人成りは必須といえるでしょう。
デメリット
続いてデメリットを3つ紹介します。
- 会社設立や会社の維持に手間とコストがかかる
- 株式会社の場合、設立費用の相場は25~30万円程度です。
- また、会社設立に必要な作業も多いため、手間とコストの両方がかかります。
- 従業員の人数に関係なく社会保険の加入義務がある
- すべての会社には社会保険の加入義務があります。社長一人の場合も加入が必須です。
- 手続き・コストともに負担が増大します。
- 必要な手続きが増える、複雑化する
- 社会保険関連や決算作業、複雑なルールに基づく会計処理などにより手間が大きくなります。
売上のピークや季節性も考慮する
会社設立を最適なタイミングで行うためには、売上のピークや季節性の考慮も必要です。
前提として、売上が伸びているほど法人成りによる節税効果が期待できます。
売上がピークになる前に会社設立をすれば、ピーク時に発生する大きな売上を会社のものにでき、個人の事業所得を抑えられるためです。
売上に明確なピークがある・季節性事業で売り上げが出るタイミングが明確である場合、会社設立に適したタイミングを計りやすいといえます。
ただし売上のピーク、すなわち忙しい時期と会社設立が重なってしまうと、会社設立の手続きに追われて事業に支障が出る恐れが大きいです。
また、決算期と繁忙期が被ってしまうリスクもあります。
売上のピークに入ったタイミングではなく、ピークを迎える前に法人成りをするのが理想です。
自身の営む事業で大きな売り上げが発生する時期がいつであるか、事前に把握しておく必要があります。
法人成りのタイミングについて税理士に相談するのが安心
会社設立に適したタイミングの例や、タイミングを計るポイントについて解説しました。
今回紹介した内容を上手く活かせれば、最も適したタイミングで会社設立ができる可能性が高いのは事実です。
しかし実際のところ、会社設立に最適なタイミングを判断するのは容易ではありません。
所得額が一定を超えるタイミングのように予測が必要な要素が多い上、メリット・デメリットの比較にも高度な知識が必要なためです。
最も効果的なタイミングで法人成りができるよう、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
節税面やメリット・デメリットを考慮した上で、法人成りのタイミングについて最適なアドバイスがもらえるでしょう。
まとめ
会社設立は自分の好きなタイミングでできるからこそ、時期について十分検討する必要があります。
会社設立に適したタイミングの例を3つ紹介しましたが、最適なタイミングはケースによって異なるため一概にはいえません。
今回紹介したポイントを押さえた上で、自身に合うタイミングを選ぶ必要があります。
ただし、会社設立に最適なタイミングを専門知識のない人が判断するのは容易ではありません。
自身ですべて対応しようとせず、プロである専門家に相談するのがおすすめです。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士