会社設立時の公告義務とは?3種類の公告方法と選び方について解説!

2023.10.03

公告義務とは、決算時の貸借対照表や会社の合併や分割等の債権者に不利益が生じる恐れのある事態を公告しなければならないという義務です。

公告方法は全部で3種類があり、会社設立の際に決める必要があります。

公告方法を定款に記載しない限り、自動的に官報公告が適用されます。

 

公告方法にはそれぞれ異なるメリット・デメリットが存在するため、違いを押さえた上で自社に合う方法を選ぶことが大切です。

今回は会社設立時に決める公告方法について、それぞれの特徴や選び方を紹介します。

 

公告方法は、定款における任意的記載事項の1つです。

定款については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

会社の公告義務とは

公告義務とは、決算時の貸借対照表や会社の合併や分割等、債権者に影響を及ぼす恐れのある事態を公告しなければならないという義務です。

そもそも公告とは、特定の事項を広く一般に知らせる行為を意味します。

会社の公告義務は、会社の重要事項を株主や取引先等に広く知らせる義務と言い換えられるでしょう。

 

公告の内容は大きく2種類に分けられます。

 

1つは決算公告です。

文字通り決算に関する事項で、貸借対照表およびその要旨を記載します。

定時株主総会の後、すみやかに公告する必要があります。

 

もう1つは法定公告です。

決算以外で、株主に影響を与える恐れのある事案があった場合に行います。

具体的な例として、資本金の減少や会社の合併・分割などが挙げられます。

こちらも重要事項の発生後すみやかな公告が必要です。

 

なお、合同会社には公告義務がありません。

公告方法は3種類

公告方法は定款における任意的記載事項の1つであり、必ずしも明記が必要なわけではありません。

そのため、公告方法の決定は後回しにしても良いと考える人も多いでしょう。

 

しかし、会社法第939条において、定款に公告方法の記載がない場合は自動で官報公告が適用される旨が定められています。

定款に公告方法を記載しておらず、会社設立後に「電子公告にしたい」となった場合に手続きをするのは非常に大きな手間です。

以上の理由から、任意的記載事項ではあるものの、実際は会社設立時に決める必要があります。

 

この章では、公告方法3種類についてそれぞれ詳しく解説します。

官報公告

官報とは、国が発行する機関紙です。

企業の公告のほかにも、法律や条約の制定・改正など、さまざまな重要事項を扱います。

 

官報公告の値段は、掲載する行数や使用する枠数によって異なります。

東京都官報販売所公式サイトに記載されている決算公告掲載料金は以下の通りです。

  • ・2枠:74,331円
  • ・3枠:111,497円
  • ・4枠:148,662円

5枠以上の掲載料金も定められていますが、記載事項が多くても3枠でおさまるのが一般的です。

なお、販売所によって掲載料金が異なるケースがあるためご注意ください。

 

官報に公告を掲載するには、官報販売所へ連絡して手続きを行います。

来店のほかにも、インターネット・郵送・FAXで申し込みが可能です。

 

また、官報掲載には漢数字について以下のように細かなルールが定められています。

  • ・番地を記載する際に漢数字「千」「百」「十」は使用しない
  •  ただし、丁目に限り「十」を使用する
  • ・日付は「十」を使って記載する

 

なお、官報公告は貸借対照表のすべてではなく、要旨のみの掲載が認められています。

日刊新聞紙

会社法で定められている日刊新聞紙の要件を満たす新聞に公告を掲載する方法です。

各々で新聞社への依頼が必要となります。依頼の方法や手続きの流れは新聞社によって異なります。

日刊新聞紙は全国紙に限らず、地方紙でも問題ありません。

ただし、隔日・週刊誌のように日刊ではない新聞やスポーツ新聞は要件を満たさないため注意が必要です。

 

日刊新聞紙への公告には、50~100万円と高額の費用がかかります。

前項で紹介した官報公告の10倍以上と、かなりのコストです。

そのため、日刊新聞紙で公告をする会社はそれほど多くありません。

 

なお、日刊新聞紙は官報公告と同様、決算公告は貸借対照表等の要旨のみの掲載が認められています。

電子公告

Web上で公告を行う方法です。

自社サイトに掲載するのが一般的ですが、帝国データバンクを利用することもできます。

 

電子公告の最も大きなメリットは、手間やコストを最小限に抑えられる点です。

自社サイトに掲載すれば費用が一切かからず、外部への申し込みや手続きも必要ありません。

 

ただし電子公告には、決算公告の要旨のみの掲載が認められておらず、財務諸表全文の掲載が義務付けられています。

また期間についても5年間と定められています。

すなわち、自社のホームページで貸借対照表・損益計算書を5年間公開し続けなければならないのです。

会社設立時 公告方法はどれを選ぶべき?

公告方法として最もコストがかからないのは、決算公告は電子公告、法定公告は官報で行う方法です。

 

前提として、日刊新聞紙による公告方法は50~100万円と高額のコストがかかります。

そのため、日刊新聞紙を選ぶ会社はあまり多くありません。

 

最も費用を抑えられる方法は電子公告です。

こちらの方法であれば会社のホームページ等に掲載するだけで済むため、費用がかからないだけでなく手間も最小限で済みます。

しかし、法定公告(債権者保護手続きに関する公告)を電子公告で行う場合、法律で定められた期間中は公告が継続的に掲載されていた旨を証明する必要があります。

この証明のためには専門機関へ調査を委託する必要がありますが、官報公告よりも高額になるケースがほとんどです。

そのため、法定広告は電子公告ではなく官報公告で行った方が結果としてコストを抑えられます。

 

このように、内容によって公告方法を変えるやり方は法的に問題ありません。

決算公告・法定広告ともに費用を最小限に抑えられます。

 

ただし電子公告を行うにはURLの登記を行わなくてはならず、URLが変わるたびに変更登記が必要です。

また、電子公告の場合は貸借対照表の全てを5年間開示し続ける必要があります。一方、官報公告の場合は要旨のみの掲載で済みます。

財務情報をネット上に開示し続けることは心理的な負担になりやすいです。

 

電子公告と官報公告、どちらにもメリット・デメリットがあるため、どの方法が良いか一概にはいえません。

費用、手間、心理的負担のどれを抑えたいかを考えた上で公告方法を選ぶ必要があります。

 

費用を抑えたいのであれば決算公告を電子公告で行い、法定公告を官報で行う方法が良いでしょう。

手間と心理的負担を抑えたいのであれば、官報公告が適しています。

 

とはいえ、これまで紹介した方法はあくまで考え方の1つです。

自社に適した方法がどれであるか、客観的にしっかり考える必要があります。

当事者のみでの検討が難しい場合、外部の専門家によるアドバイスやサポートを受けるのも1つの手段です。

まとめ

会社における公告とは、会社に関する重要事項を広く一般に公開することを意味します。

そして、公告方法は定款への記載事項でもあるため、会社設立時に決めるべき要素の1つです。

 

公告方法は3種類あり、最もコストを抑えられる方法は電子公告です。

ただし、電子公告では貸借対照表のすべてを5年間掲載し続ける必要があります。

財務情報を自社サイトで開示し続けることは心理的な負担になりやすく、心理的なコストは大きいといえるでしょう。

費用面だけでなく、心理的な負担も考慮する必要があります。

 

公告方法それぞれのメリット・デメリットを押さえた上で、自社に合う方法を選びましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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