会社法の中に、会社設立に関する年齢の定めはありません。
しかし、未成年者は1人で法律行為ができないため、未成年者のみでの会社設立は不可能です。
また、会社設立に必要な印鑑証明書を発行できるのが15歳以上であるため、会社設立ができるのは実質15歳以上となります。
15歳以上で親権者の同意があれば会社設立は可能ですが、未成年者の会社設立には注意するべき点が数多くあります。
今回は会社設立の年齢要件や、未成年者が会社設立をする際のポイントについて解説します。
会社設立の流れは以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
会社設立は何歳からできるのか
はじめに、会社設立は何歳からできるのかを解説します。
会社法で年齢の定めはなし
前提として、会社法には会社設立について年齢の定めがありません。
会社法だけを見れば、会社設立は何歳からでも可能という結論になります。
ただし、民法で未成年者は1人で法律行為ができない旨が定められています。
会社設立も法律行為の一種です。したがって、未成年者1人では会社設立ができないということになります。
未成年者が会社設立を行うには、法定代理人である親権者の同意が必要となります。
実際には15歳以上
前項で、会社設立は法律行為に該当するため未成年者1人ではできないと解説しました。
未成年者が法律行為をするためには、法定代理人である親権者の同意が必要です。
これらの情報を整理すると、親権者の同意があれば何歳からでも会社設立ができると考えられます。
しかし、実際には会社設立ができるのは15歳からです。
会社設立時には、発起人全員の印鑑証明書を提出する必要があります。
発起人とは会社設立に必要な準備・手続きの全般を担う役割の者で、会社設立を行う人=発起人というイメージです。
印鑑証明書を発行できるのは印鑑登録が済んだ人のみですが、印鑑登録をできる年齢が15歳以上と定められています。
そのため、印鑑登録ができない14歳以下では印鑑証明書の発行は不可能であり、発起人になることもできません。
会社設立について会社法には年齢の定めがないものの、実質として15歳以上という定めが存在しています。
15歳未満でも取締役になることは可能
15歳未満では印鑑証明書の発行ができないため、発起人になることができません。つまり会社設立はできません。
しかし、発起人にはなれなくても、取締役に就任する方法はあります。
取締役は、設立した会社の運営を行う者のことで、会社における経営者のポジションです。
株式会社には「所有と経営の分離」という特徴があり、会社の所有者は株主である発起人ですが、会社を経営するのは取締役となります。
所有者である発起人は会社の運営や重要事項に関する意思決定権を持ち、経営者である取締役は所有者の意向に従って会社経営を進めます。
取締役は役員の一種であり、役員登記には原則として本人の印鑑証明書が必要です。
しかし、取締役会設置会社であれば代表取締役以外の役員登記に印鑑証明書が必要ありません。
そのため、印鑑証明書を発行できない15歳未満の未成年者でも、取締役会設置会社の取締役に就任することは可能です。
15歳未満の未成年者が会社設立を行うことはできませんが、取締役として会社経営に携わるのも1つの選択肢といえるでしょう。
未成年の会社設立に関するポイント・注意点
続いて、未成年者の会社設立に関するポイント・注意点を紹介します。
必要な書類
未成年者が会社設立をする際は、会社設立に必要となる基本的な書類に加えて以下の書類も必要です。
【定款認証時に必要な書類】
- ・本人および親権者の印鑑証明書
- ・戸籍謄本など、親権者とのつながりがわかる書類
- ・親権者の同意書
また、定款には未成年者である本人だけでなく親権者の印鑑も必要となります。
【法務局での登記申請に必要な書類】
- ・親権者の同意書
法務局によっては定款認証と同じく印鑑証明書や戸籍謄本を求めるケースがあります。
なお、会社設立に必要となる基本書類として以下が挙げられます。
- ・定款
- ・登記申請書
- ・登録免許税納付用台紙
- ・発起人の決定書
- ・発起人全員分の印鑑証明書
- ・役員の就任承諾書
- ・資本金の払込証明書
- ・「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R
- ・法人実印(代表者印)の印鑑届出書
会社設立の必要書類については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
未成年者が会社設立をする流れ
続いて、未成年者が会社設立をするまでの流れを紹介します。
- 1.会社の概要を決める
- 商号・本店所在地・事業目的・資本金の額・会計年度といった基本事項を決定します。
- 2.会社の実印を用意する
- 法人実印を作成するタイミングに明確なルールはありませんが、会社概要が決まったら用意するのが一般的です。
- 法人実印とあわせて銀行印や角印も作成すると効率良く進みます。
- 3.定款の作成および認証を受ける
- 定款は会社のルールをまとめたものです。会社の憲法とも呼ばれます。
- 株式会社を設立するためには登記申請の前に公証役場で定款認証を受ける必要があります。
- 未成年者が会社設立をする場合、定款には未成年者である本人だけでなく親権者の印鑑も必要です。
- また、前項で紹介したように、親権者の印鑑証明書や戸籍謄本なども用意する必要があります。
- 4.資本金の払込を行う
- 会社設立前の段階では法人口座を持たないため、発起人の個人口座に振り込みます。
- 資本金の払込人を証明するため、現金預入ではなく必ず振込で行いましょう。
- 5.法務局での登記申請を行う
- 必要書類をそろえて法務局で会社設立の登記申請を行います。
- 法務局での登記申請時には親権者の同意書が必要です。
- 法務局によっては親権者の印鑑証明書や、戸籍謄本など関係性を証明できる書類が求められます。
会社設立の流れそのものは、未成年者・成人ともにそれほど大きな違いはありません。
定款認証や法務局での登記申請時に必要な書類が少し増える程度です。
なお、一般的に会社設立は法務局での登記申請までを指しますが、会社運営のためにはほかにもやるべきことが多数あります。
ルールや期日が厳格な手続きが多いですが、法人登記のあとに必要な作業も漏れなく行うよう注意しましょう。
未成年者でも成人と同じだけの責任を負う
未成年者は成人に比べて責任が軽減されるのが原則です。
しかし事業については例外で、未成年者でも成人と同じだけの責任を負うことになります。
民法第6条1項で、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と定められているためです。
つまり、親権者の同意を得て起業した未成年者は、事業に対して成人と同じように責任が求められます。
会社設立をした未成年者に、子供だから・未成年だからという言い訳は通用しません。
未成年者は学生であるケースがほとんどです。
会社設立をしたからといって学業が免除されることはなく、会社運営と学業の両方に励む必要があります。
資金調達・学業との両立・責任のある事業活動等、未成年者が行うには難しい部分も多いのが事実です。
未成年者でも会社設立はできるものの、学業との両立や責任ある事業活動等ができるかしっかり考慮、検討する必要があります。
まとめ
会社法において、会社設立の年齢要件は特に定められていません。
ただし、会社設立に必要である印鑑証明書を発行できるのが15歳以上となります。
年齢要件は存在しないものの、会社設立ができるのは15歳からといえるでしょう。
また、未成年者が会社設立をするためには、法定代理人である親権者の同意も必要です。
成人の会社設立よりも必要な書類が多いため、事前にしっかり確認する必要があります。
会社設立の流れ自体は、成人・未成年者ともに大きな違いはありません。
なお、会社設立をした未成年者は、成人と同じだけの責任を負うことになります。
資金調達・学業との両立・責任のある事業活動等、未成年者の会社運営には難しい要素が多いのも事実です。
未成年のうちに会社設立をするべきか、本当に両立できるのか、事前に十分検討する必要があるでしょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士