会社設立時の株主構成はどうする?出資比率の注意点について解説!

2023.11.10

株主構成とは、その会社の発行済株式を誰がどの程度保有しているかを示したものです。

株式会社において株式を保有している人を株主と呼び、株主はその会社に対してさまざまな権利を有します。

 

株主が持つ権利の中でも特に重要なのが議決権、すなわち株主総会に出席し決議に参加する権利です。

株式会社における意思決定の多くは株主総会の決議が必要ですが、出資比率が高ければ実質的に自身の自由な意思決定が可能となります。

言い換えると、他者の出資比率が高いと単独での可決ができません。

出資比率によっては自分の意思ではなく、他者の意向に従う必要も生じます。

このように出資比率によって意思決定の進め方や自由度が変わるため、会社設立時の株主構成に注意が必要です。

 

本記事では会社設立時の株主構成・出資比率の決め方について詳しく解説します。

 

なお、発起人はその性質上、会社設立後に必ず株主となります。

発起人については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

会社設立時の株主構成に関する基本事項

はじめに、会社設立時の株主構成に関する基本事項について解説します。

株主

株主とは、株式会社における出資者のことです。

株主は出資金の額や出資割合に応じて株式会社の株式を保有するため、株主=株式保有者とも言い換えられます。

株主は株式を保有している会社について、以下のような権利を持ちます。

  • 配当請求権
  • 保有株式数に応じて配当金を受領する権利です。
  •  
  • 議決権
  • 株主総会に出席し決議に参加する権利です。
  • 1株ごとに1の議決権を有します。
  •  
  • 残余財産分配請求権
  • 会社が解散・清算するとき、債務返済後に残った財産について残余財産分配を請求できる権利です。

出資比率に応じた額が分配されます。

株主構成

株主構成とは、その会社の発行済株式を、誰が、どの程度保有しているかを示したものです。

株主の分布状況とも言い換えられます。

 

前提として、会社設立時に株主となる者として発起人と出資者の2パターンが挙げられます。

会社設立における発起人の役割は複数ありますが、そのうちの1つが出資金の払込です。

発起人は株式会社に出資をするため、会社設立後は自動的に株主となります。

 

会社設立時の株主構成はそれぞれの出資金に応じて決まります。

会社設立に際してAさんが250万円、Bさんが150万円、Cさんが100万円を出資した場合を例にしましょう。

この場合、設立時の株主構成はAさんが50%、Bさん30%、Cさん20%となります。

出資比率

出資比率とは、株式会社における株主の出資割合です。

その株主が発行済み株式のうち何割の株式を有するかを示したものを意味します。持株比率とも呼ばれます。

 

前項でも用いた例を再度使い、出資比率について紹介します。

 

会社設立時の出資金

  • ・Aさんが250万円
  • ・Bさんが150万円
  • ・Cさんが100万円

この場合、出資比率はAさんが50%、Bさん30%、Cさん20%となります。

 

前項で紹介した株主構成と全く同じ結果ですが、株主構成=出資比率ではありません。

出資比率は株主の出資割合のみに着目した情報です。

一方で株主構成は所有株式数や保有割合だけでなく、株主の性格・状態・動向等、株主に関するさまざまな情報を考慮します。

株主構成は単純な比率だけでなく、「誰が」という株主自身に関する情報も重視されるのです。

株式会社における株主構成・出資比率による権利の違い

株主は出資比率が高いほど強い権利を有します。

具体的にどのような権利を有するのか、境目となる出資比率ごとに紹介します。

出資比率100%

株主が1人だけの状態です。この場合、会社の意思決定をすべて自分だけで行うことができます。

社長1人で設立・運営する会社は出資比率100%になります。

出資比率66.7%以上(3分の2以上)

株主総会の特別決議を単独で行えるだけの出資比率です。

 

特別決議の決議要件は出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成によって可決されます。

出資比率66.7%以上とは1人での議決権の3分の2以上を有していることになるため、特別決議を単独で実施できます。

会社経営を単独で行いたいと考える場合、設立時の発行済み株式数のうち3分の2以上を保有するのが理想です。

 

特別決議を必要とする決議事項の具体例を紹介します。

  • ・定款の変更
  • ・事業譲渡の承認
  • ・譲渡制限株式の買取
  • ・株式の併合
  • ・会社の解散

出資比率50%超

株主総会における普通決議を単独で行えるだけの出資比率です。

普通決議を必要とする決議事項として、以下の例が挙げられます。

  • ・役員および会計監査人の選任・解任
  • ・株主総会の議長の選任
  • ・剰余金の処分
  • ・剰余金の配当
  • ・計算書類等の承認

 

なお、普通決議を単独で行えるだけの出資比率は50%ぴったりではなくではなく過半数です。

たとえば発行済み株式総数が100株の場合、51株以上が必要となります。

第三者が出資比率50%超になってしまうと、自身ではなく第三者の意思で普通決議が行われてしまいます。

第三者の出資比率が50%超にならないよう注意しましょう。

出資比率33.3%超(3分の1超)

出資比率33.3%超の株主がいれば、出資比率66.7%以上となる株主(株主総会の特別決議を単独で行える株主)は存在し得ません。

つまり、出資比率33.3%超の株主は、単独で特別決議を阻止することが可能です。

出資比率3%以上

出資比率3%以上で、以下の権利を有します。

  • ・株主総会の招集請求権
  • ・会計帳簿の閲覧権
  • ・謄写請求権

意思決定への影響は小さいものの、会社の重要な資料を閲覧する権利を持つ株主です。

出資比率1%以上

株主総会における議案提出権を有します。

会社設立時の株主構成・出資比率に関する注意点

会社設立時の株主構成・出資比率に関する注意点を2つ紹介します。

複数人で設立する場合は誰か1人が過半数の株式を有するべき

出資者が複数人の場合に出資比率を同一にするのは避けましょう

特に出資者が2人もしくは3人の場合に注意が必要です。

 

出資者が2人の場合に出資比率を50%ずつにしてしまうと、どちらも議決権の過半数を持ちません。

そのため、意見が割れた時に決議ができず経営がとまる恐れがあります。

 

3人以上の奇数の場合は意見が割れてもどちらかの意見が過半数になるため経営が止まる恐れはありません。

ただしすり合わせや話し合いの必要性が生じるため、経営が停滞することはあり得ます。

4人以上の偶数の場合、2人の場合ほどではないものの意見が割れて経営が止まる恐れがあります。

 

上下関係をつけたくない・軋轢の発生を避けたいといった理由から、出資比率を均等にしたいと考える人も多いかもしれません。

しかし過半数の株式を持つ人がいない場合、意思決定がスムーズに進まない恐れがあります。

最終的な決定権を持つ人を決め、その人が過半数の株式を保有するのが安心です。

株式を渡すのは慎重にする

出資比率が低くてても、第三者に株式を渡すのは慎重になるべきです。

 

株式を与えるとは、会社に関する権利を渡す、会社に対して行使できる力を与える行為とも表現できます。

つまり、自身以外にも会社の意思決定や重要事項に関わる人物が存在することになります。

 

前章で紹介したように、持株比率が33.3%を超えれば単独で特別決議を阻止できる力を有します。

半分より小さい割合とはいえ、強い権利を有する出資比率です。

 

出資比率3%では会社の重要な資料を閲覧できる権利を有します。

小さい割合とはいえ会社の情報が流出する恐れがある以上、安易に渡すのは危険です。

 

出資比率ごとに有する権利や自身への影響を慎重に考えた上で株式を渡すよう注意しましょう。

まとめ

株式会社における株主は、出資比率に応じた権利を有します。

会社経営を単独で行う場合は、発行済み株式数のうち3分の2以上を保有するのが理想です。

複数人で会社設立をする場合は、意見割れによる経営の停滞を避けるために過半数の株式を有するのが安心です。

また、株式を与えるのは会社に対する権利を与える行為ともいえるため、少ない株式数でも安易に与えないよう注意しましょう。

 

会社経営を続ける上で出資比率が変わる可能性もありますが、会社設立時の株主構成が基本になります。

出資比率ごとの権利や影響について考慮した上で、株主構成を慎重に決めることが大切です。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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