会社設立時、決算月はどう決める?考え方と注意点について解説!

2023.11.10

会社設立時に決めるべき事項の1つとして、会計年度、つまり決算月が挙げられます。

法人税や消費税の申告および納付期日は、決算日の翌日から2ヶ月後です。

決算作業を行う時期と繁忙期が重なってしまうと、作業量が多くなり負担が重くなってしまいます。

また、売上が大きく変動する時期を決算月にすると業績予測が立てにくく節税対策が難しくなりがちです。

このように、決算月をいつにするかによって負担の大きさが変わるため、さまざまな要素を考慮して慎重に決める必要があります。

 

今回は決算月の決め方について、会社設立時に押さえておくべき考え方や注意点を紹介します。

 

なお、決算日だけでなく会社設立日も会社運営に影響を与える可能性があります。

会社設立日の決め方については以下の記事で解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

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CONTENTS

会社設立時に決める決算月の基本事項

はじめに、会社設立時に決める決算月について基本的な事項を紹介します。

法人の決算月に関するルール

決算月とは、法人における事業年度の最終月です。決算日が含まれている月とも表現できます。

 

個人事業主の事業年度は1/1~12/31と一律であり、決算月は12月です。

また、確定申告の時期も翌年2/16~3/15と決まっています。

業種や事業内容によっては確定申告のタイミングと繁忙期が重なってしまい、負担が大きくなる恐れがあるでしょう。

 

法人の場合、事業年度は1年以内であれば自由に設定できます。1年に2回事業年度を設けることも可能です。

個人事業主と違い、決算月も好きなタイミングにできます。

決算日の決め方に関する決まりも特になく、事業年度を月の途中に設定することも法律上問題ありません。

しかし、一般的には月末を決算日とするケースがほとんどです。

 

中小企業の場合、事業年度は年に1回、決算日は月末のケースが多くみられます。

日本は3月決算の法人が多い

国税庁の公式サイトで公開されている決算期別の普通法人数をまとめたデータから、決算期としている法人数が多い月を上から3つ紹介します。

  • ・3月:515,359社
  • ・9月:308,972社
  • ・12月:297,963社

※令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間に事業年度が終了した内国普通法人に関するデータです。

 

一方、同資料において決算期としている申告法人数が最も少ない月は1月で、105,108社となっています。

 

3月決算の法人数が圧倒的に多い理由として、以下の3つが考えられます。

  • ・国や地方自治体が採用している会計年度が4月から翌年3月であり、公的機関に合わせる方が好都合な場面が多い
  • ・多くの法人と事業年度が合うことで安心感を得られ、取引がスムーズに進む場面が多いといったメリットがある
  • ・改正された法律の施行日は4月1日のケースが多く、決算月を3月末にすれば法律の施行と会計年度の開始を合わせやすい

会社設立時 決算月を決める上での注意事項

会社設立時に決算月を決めるにあたって押さえておきたい注意事項を3つ紹介します。

季節変動を考慮する

決算月を決める上で特に考慮したい要素が季節変動です。

事業における季節変動とは、1年における売れ行きの好不調の周期を意味します。

設立する会社の業種や事業内容から季節変動を推測し、売上の変動が小さい時期を決算月にするのがおすすめです。

 

売上の変動が大きい時期とは、売上高や利益の予想がしにくい時期とも表現できます。

つまり、事前に予測した利益が大幅に変わる可能性が高いのです。

売上が大きく変動する時期を決算月にしてしまうと業績予測が立てにくいため、節税対策も難しくなってしまうでしょう。

また、繁忙期と決算期が重なり作業量が多くなるため、負担が重くなりすぎる可能性もあります。

 

決算月におすすめできる時期として、大きな売上が見込める月の前月・前々月・閑散期が挙げられます。

事業年度の最初の方に大きな売上が出るように決算月を設定すれば、業績予測を立てやすく節税対策に時間をかけることができます。

 

また、閑散期は本業でやるべきことが比較的落ち着いており、決算作業が本業へ影響を与えにくい時期です。

本業への支障を最小限に抑えつつ、余裕を持って決算作業を進められるでしょう。

自社の実情を考える

決算月を決めるときは、自社の実情を最優先に考えましょう。

 

前章で、日本は圧倒的に3月決算の法人が多いと紹介しました。

3月に限らず、特定の月を決算期とする法人が多い業種もあるでしょう。

 

決算期とする法人が多い月には、その月を決算期にするのが好都合である理由が多く存在するのも事実です。

とはいえ、同業他社と決算月を合わせれば良いとは限りません。

業界・業種によって季節変動に傾向があるのは事実ですが、会社によって実情や考慮するべき要素は異なります。

同業他社の情報を重視し過ぎてしまうと、自社の実情にそぐわないタイミングを決算月としてしまう恐れがあります。

他社の例はあくまでも参考程度にし、自社がどうであるかを第一に考えることが大切です。

支払いが重なる時期は避けるのが無難

法人税や消費税を支払うタイミングと高額の支払いが発生する時期が重ならないように決算月を設定できるのが理想です。

 

各種税金の納期と他の支払いが重なると、短期間で多額の支払いが発生することになるため、資金繰りに影響が出る恐れがあります。

支出の合計額が同じであっても、短期間にまとめて支払う場合と複数回に分けて支払う場合では、後者の方が資金繰りに余裕が生まれやすいです。

 

大きな支払いが発生する時期の代表例として7月が挙げられます。

7月は労働保険料と夏季賞与、納期特例の適用対象である場合は源泉所得税の支払いが必要です。

法人税と消費税の納期は決算日の翌日から2ヶ月後のため、決算月が5月の場合、7月に納税をするケースが多くなるでしょう。

したがって、5月を決算月にするのは避けるのが無難です。

 

ただし、他の支払い時期と重ならないようにという考慮は、季節変動や自社の実情よりは優先度が下がります。

会社設立後の決算月変更も可能

決算月は会社設立時に決める事項ではあるものの、会社設立後の決算月変更も可能です。

 

これまで紹介したように、決算月のタイミングによっては本業に影響を与える可能性があります。

設立1期目からスムーズな会社運営や事業活動を実現できるよう、会社設立時点で最適な決算月を設定できるのが理想です。

 

とはいえ、実際に会社運営を始めなければわからないことも多いでしょう。

決算月を理想的なタイミングに設定できたと思っても、後に決算月としてより良いタイミングが発覚するケースもあるかもしれません。

そのような場合は、設立時に決めた決算月を無理に維持せず決算月を変えるのも1つの手段です。

 

会社設立後に決算月を変える流れを紹介します。

  • 1.株主総会を開催する
  •  定款に事業年度を記載している場合、決算月を変えるために定款を変更する必要があります。
  •  定款変更には株主総会の特別決議が必要です。
  •  そのため、決算月の変更に際してまずは株主総会の開催をします。
  •  
  • 2.株主総会の議事録を作成する
  •  株主総会の特別決議があった旨の証拠を残すため、議事録を作成しましょう。
  •  社長一人の会社の場合株主総会は不要なので、議事録の作成のみで済ませられます。
  •  
  • 3.定款の変更をする
  •  原始定款に直接変更を加えるのではなく、内容を変更した別紙を付け加えていきます。
  •  なお事業年度は任意的記載事項であり、法務局での登記申請は不要です。
  •  
  • 4.届出を提出する
  •  税務署・都道府県税事務所・自治体に「異動事項に関する届出」を提出します。

まとめ

法人は個人事業主と違い、決算月を自由に決められます。

法人税や消費税の申告・納付期日は決算日の翌日から2ヶ月後であり、この間は決算作業が必要なため忙しくなりやすいです。

また、事前の業績予測を上手く出来るかによって法人税の計算基礎となる所得額が大きく変わります。

そのため決算月は季節変動や業務量を考慮した上で決めるのが理想です。

 

決算月は会社設立後に変更することもできます。

決算月を変更するには株主総会や届出書の提出等さまざまな作業が必要なため、事前に流れを確認しておきましょう。

 

会社設立の時点で自社にとって最適な決算月を判断するのは難しいかもしれません。

決算月の決め方について疑問や不安があれば、専門家である税理士へ相談するのが安心です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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