会社設立時の事業年度はどう決める?考え方とポイントについて解説!

2023.11.22

事業年度とは、決算の対象となる一定期間を指します。

事業者は事業年度における財務状態や経営成績を計算して明らかにする必要があります。

個人事業主の事業年度は業種や事業内容を問わず毎年1月1日から12月31日と定められていますが、法人は自由に設定が可能です。

しかし、自由に設定できるとはいえ守るべき決まりがいくつか存在します。

会社設立時の事業年度も同様にルールを守る必要があるため、事業年度の考え方についてしっかり押さえることが大切です。

 

今回は事業年度を決める上で知っておきたい考え方やポイントについて解説します。

 

会社設立日の決め方については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

会社設立時に決める事業年度の概要

はじめに、事業年度の概要を紹介します。

事業年度とは

事業年度とは、決算の対象となる期間のことです。

事業者は一定の期間で区切った事業年度について、期間内における財務状態や経営成績を計算して明らかにする必要があります。

 

個人事業主の事業年度は業種や事業内容に関係なく、毎年1月1日から12月31日と一律で決まっています。

確定申告および納付期日も翌年の3月15日と定められており、各々が自由に決めることはできません。

 

一方、法人は一定のルールを満たせば事業年度を自由に決められます。

事業年度を好きに設定できる点は、会社設立をするメリットの1つといえるでしょう。

 

なお、事業年度の最終月を「決算月」、最終日を「決算日」と呼びます。

事業年度に関するルール

事業年度に関するルールとして、大きく以下の3つが挙げられます。

事業年度が1年を超えてはいけない

いかなる理由があっても、1年を超える事業年度には設定できません

逆に、事業年度を1年未満の期間にすることは可能です。実際、事業年度を数ヶ月に設定しており、年に複数回決算をする会社も存在します。

ただし、事業年度が1年未満の場合はその分決算の回数も多くなります。

決算作業や各種納税の負担が増えてしまうため、実際には1年とするケースが多いです。

法人税および消費税の申告・納付期日は決算日の翌日から2ヶ月後

事業年度をいつに設定しても、法人税および消費税の申告・納付期日は決算日の翌日から2ヶ月後となります。

会社の繁忙期と各種税金の申告・納付のタイミングが被ると業務量が多くなってしまうため、決算期と繁忙期を避けるのが無難です。

会社設立後に事業年度を変える場合は所定の手続きが必要

事業年度の変更をする場合、以下の手続きが必要です。

  • 1.株主総会を開催して定款変更の特別決議を行う
  • 2.株主総会の議事録を作成する
  • 3.定款の変更を行う
  • 4.税務署・都道府県税事務所・自治体に届出を提出する

会社設立 最初の事業年度に関するルール・考え方

事業年度のルールについて、会社設立後の最初の事業年度は考えるべき事項が少し増えます。

会社設立時の事業年度に関するルールおよび事業年度を決める上で押さえたい考え方について解説します。

最初の事業年度も1年を超えてはならない

すでに紹介したように、1年を超える事業年度は設定できません。このルールは会社設立後の最初の事業年度にも適用されます。

 

会社設立後、最初の事業年度は会社設立日から事業年度の末日となります。

事業年度末日を月の途中に設定することに問題はありませんが、実際には事務手続き等の都合から月の末日にするケースが多いです。

したがって基本的に、事業年度の開始日は月の初日、事業年度末日は月の末日になります。

 

しかし、会社設立日が月の初日になるとは限りません。

また、タイミングによっては事業年度の開始の月と会社を設立する月が異なるケースもあります。

このように、最初の事業年度は本来の事業年度とは異なるケースが多くみられます。

 

設立のタイミング等による都合から、最初の事業年度が本来の事業年度と違うこと自体には問題ありません。

ただし、最初の事業年度も1年を超えるのは厳禁です。

 

以下のケースを例に紹介します。

  • ・事業年度:4月1日から翌年3月31日
  • ・会社設立日:11月5日

この場合、最初の事業年度は11月5日から翌年3月31日です。

最初の事業年度は5ヶ月未満の短い期間になりますが、この事業年度で決算をする必要があります。

たとえ最初の事業年度が短くなってしまう場合でも、事業年度は1年以下というルールは絶対的なものです。

最初の事業年度について定款への記載方法

事業年度は任意的記載事項であり、定款への記載は必須ではありません。

しかし、定款に記載しない場合は会社設立から2ヶ月以内に事業年度について税務署へ届出が必要です。

事業年度は会社設立時に必ず決めるべき事項であり、定款を作成するタイミングでは既に定まっているのが一般的です。

したがって、任意的記載事項ではあるものの実際には事業年度を定款に記載するケースがほとんどとなります。

 

以上を踏まえた上で、事業年度を定款へどのように書くかを紹介します。

 

基本的なルールは以下の2点です。

  • ・基本的には「当会社の事業年度は、毎年○月○日から翌年○月○日までとする。」と具体的な日付を記載します。
  • ただし、決算日が2月末日の場合のみ、「2月末日」という書き方にします。
  • ※うるう年の都合により、2月末日の日付が異なる年があるため
  • ・1月1日から12月31日の場合は年を跨がないため、「翌年」という書き方はしません。

続いて、最初の事業年度に関するルールを紹介します。

  • ・基本的な書き方は「当会社の最初の事業年度は、当法人成立の日から翌年○月○日までとする。」です。
  • ・会社の事業年度と整合性がとれている必要があるため、事業年度の末日は合わせます。
  • ・前述のように、事業年度の末日が2月の場合は具体的な日付ではなく「末日」と書きますが、最初の事業年度については2月末日が何日になるか明確なため、具体的な日付を記載します。

会社設立 事業年度を決める際のポイント

最後に、事業年度を決める際のポイントを2つ紹介します。

繁忙期を避ける

すでに少し触れたように、繁忙期と決算月は避けるのが無難です。

繁忙期を避けるべき理由として、以下の2つが挙げられます。

 

  • 繁忙期は売上の変動が大きく売上高や利益の予測がしにくい
  •  業績予測が立てにくいため、節税対策が難しくなってしまいます。
  • 作業量が多くなりすぎる
  •  繁忙期は本業の作業量が多い時期です。
  •  そこに決算作業も加わると負担が大きくなりすぎる恐れがあります。

資金繰りを考慮する

前述のように、法人税および消費税の納付期日は決算日の翌日から2ヶ月後です。

資金繰りの面を考えると、各種税金の納付時期とその他の高額な支払いが発生する時期は避けるのが無難といえます。

 

税金の納付時期と高額な支払いが発生する時期が重なると、短期間に多額の支払いが発生する事態になります。

短期間のうちに必要となる資金が高額なため、資金繰りに影響が出る恐れが大きいです。

支出の合計額自体は同じでも、複数回に分けて支払う方が資金繰りに余裕が生まれやすいでしょう。

 

大きな支払いが発生する時期の代表例は7月です。

7月は労働保険料や夏季賞与、納期特例の適用対象である場合は源泉所得税の支払いが発生します。

法人税と消費税の納期は決算日の翌日から2ヶ月後です。もし決算月が5月の場合、7月に納税をするケースが多くなり高額の支出が重なってしまいます。

したがって、事業年度を決める際は5月以外を決算月にするのが良いでしょう。

業種によっては特定の時期に高額の支出が集中するケースがあるため、資金繰りの都合も考慮するのが理想です。

まとめ

法人は事業年度を自由に決められるとはいえ、守るべきルールもいくつか存在します。

中でも特に重要なのが「事業年度は1年以内」という点です。

事業年度に関するルールは最初の事業年度にも適用される点を押さえた上で、事業年度をいつにするか決める必要があります。

 

今回、事業年度を決める際のポイントや定款への書き方についても紹介しました。

会社設立に際して事業年度を考える上での参考にしていただければ幸いです。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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