会社設立を妻名義でするメリットとデメリット、注意点を解説!

2023.11.27

「会社設立を自分ではなく妻名義で行うと良い」このような意見を見聞きした経験がある人は多いのではないでしょうか。

妻に限らず、会社設立を家族や親戚名義で行うケースはたくさんあります。

妻名義での会社設立にはさまざまなメリットがあり、仕組みを上手く活用すれば節税などの恩恵を受けられる可能性があります。

一方で自身の名義を使わないことによるデメリットもあり、ケースによってはかえって損失が大きくなる可能性もあるため注意が必要です。

 

今回は会社設立を妻名義でするメリットとデメリット、注意点について詳しく解説します。

 

会社設立の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

自分名義の会社で妻に支払う給与を経費にする方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

CONTENTS

会社設立を妻名義でするメリット

はじめに、会社設立を妻名義で行うメリットを3つ紹介します。

夫が本業に専念できる

妻名義で会社設立をする大きなメリットが、夫が本業に専念できる点です。

 

会社運営では事業活動以外にもやるべきことが多くあります。

特に銀行や税務関係の手続きは代表者による手続きが必要なものが多く、本業に割ける時間を短くする原因にもなります。

せっかく会社設立をしても、本業以外の作業に時間をとられてしまっては思うような事業活動ができない恐れがあります。

 

妻名義で会社設立をすれば、会社の代表者は妻となります。

そのため、妻が代表者として運営に必要な各種作業をこなし、夫が本業に専念するといった役割分担が可能です。

夫が本業に集中できる体制にしたい・本業以外の作業は他者に任せたいという場合、妻名義での会社設立は有用な手段といえます。

会社に副業がバレない

妻名義で会社設立をすれば、夫の会社に副業がバレるリスクが低くなります

 

会社に副業がバレる理由として多いのが、住民税の金額です。

会社から支払う給与額に対して住民税の額が大きすぎるため、給与所得以外にも所得があるとバレてしまうのです。

しかし、確定申告の際に「給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税の徴収方法」を「自分で納付」にすれば、副業分にかかる住民税は普通徴収になります。

副業禁止の会社に勤める人は、副業分にかかる住民税を普通徴収にするケースが多いです。

 

ただし、副業で会社を設立する場合、会社の代表者名は誰でも調べられる状態になります。

そのため、会社に副業をしていることがバレる可能性が高くなってしまいます。

 

会社設立を妻名義で行えば、登記簿謄本に夫の名前が出ることはありません。

そのため、夫の会社が副業禁止の場合でも、副業の会社設立がバレるリスクを抑えられます。

プライベートカンパニーを活用した節税ができる

妻名義で会社設立をすることで、プライベートカンパニーを活用した節税が可能です。

 

プライベートカンパニーとは、個人の事業収入や資産管理のために設立する会社を意味します。

主に節税目的で設立されます。

 

プライベートカンパニーが節税につながる理由として、所得税と法人税の税率の違いが挙げられます。

所得税は超過累進課税制度を採用しており、一定を超える所得部分にはより高い税率が適用される仕組みです。

一方で法人税は所得額に関係なく税率が一定であり、所得が年800万円以下の部分には15%、800万円超の部分には23.3%が適用されます。

※資本金1億円以下の普通法人に限ります。

そのため、所得が一定を超える場合、所得税よりも法人税の方が税額を抑えられる可能性が高くなります。

したがって、副業による事業所得が大きい個人事業主が節税目的で法人成りをするケースが多くみられます。

 

プライベートカンパニーは、本人名義の設立でも大きな節税効果を得られますが、妻名義にした場合、以下の理由からより大きな節税効果を得られる可能性が高いです。

  • 1.プライベートカンパニーからの役員報酬が妻の収入になる
  • 2.夫は本業である会社からの給与に課税され、妻は副業のプライベートカンパニーから得る役員報酬に課税される状態となり、夫と妻での所得分散が実現する

所得税は所得が増えるほど税率が上がり税額が高くなる仕組みのため、プライベートカンパニーの活用による所得分散は節税に効果的な手段といえます。

妻名義で会社設立をするデメリット

続いて、妻名義で会社設立をするデメリットを3つ紹介します。

妻の事業経験によっては創業融資が通りにくい

妻名義で会社設立をするデメリットの1つが、妻の事業経験によっては創業融資が通りにくい点です。 

創業融資とは、創業直後でも利用できる融資制度の総称です。

一般的な融資制度では審査に際して会社の事業実績を重視しますが、創業融資では代表者の経歴や創業計画を用います。

そして、創業融資の審査では代表者の事業経験が重視される傾向です。

 

妻名義で会社設立をする場合、創業融資の審査では妻の経歴がチェックされます。

代表者である妻に事業経験がない場合、創業融資に通りにくくなる恐れがあるため注意が必要です。

 

なお、「夫の事業経験が豊富なため代表者である妻のサポートが可能」という説明は可能です。

ただしその場合、事業経験が豊富な夫ではなく妻が会社設立をした理由や、妻に会社運営ができるのか等の説明が求められます。

いずれにせよ、妻名義で会社設立をした場合には創業融資のハードルが高くなるのは事実といえるでしょう。

 

創業融資の審査について以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

贈与税の問題が生じる恐れがある

妻名義で設立した会社の収入がそのまま夫の手元に入る場合、贈与税の問題が生じる恐れがあります。

 

妻名義で会社を設立したものの、実際の会社経営や事業活動はすべて夫が行っており、妻は名義だけ貸している状態とします。

この場合、会社の収入が最終的に夫の手元に入るとしても、一度妻を経由するために贈与税の問題が生じる恐れがあるのです。

夫婦間でも生活費や教育費以外で年間110万円を超えるお金を渡した場合は贈与税の課税対象となります。

プライベートカンパニーによる節税効果よりも、贈与税の負担が大きくなってしまう恐れがあるため注意が必要です。

 

なお贈与税が発生するか否かはケースによって異なるため、専門家である税理士へ相談するのが確実です。

妻が扶養から外れる可能性が高くなる

妻名義で会社を設立することで、妻が扶養から外れる可能性が高くなります

 

扶養から外れる条件は税金と社会保険で異なります。それぞれ以下の通りです。

  • 税務上:年収103万円超 ※ただし150万円以下であれば配偶者特別控除の適用は可能
  • 社会保険:年収130万円超

設立した会社から妻に支払う役員報酬が上記を超える場合、扶養から外れる必要があります。

 

扶養から外れる場合は妻自身が納税や社会保険の加入をする必要があり、妻の支出は増大します。

金額によっては世帯全体の支出が増える恐れもあり、節税効果よりも増大分の支出額が大きい可能性もあるため注意が必要です。

妻名義で会社設立をする際の注意点

妻名義で会社設立をする場合、名義上は妻が代表者である以上、会社運営に際して妻が対応しなければならない部分が多く存在します。

しかし単なる名義貸し状態の場合、妻は事業について正しく把握しておらず、適切な対応をできないリスクが高くなります。

デメリットで紹介したような創業融資の審査だけでなく、法人口座の開設・税務調査等でも不利になる恐れが大きいです。

 

妻名義で会社を設立する場合、単なる名義貸しにならないよう注意する必要があります。

基本的な事業活動は夫が行う場合でも、妻も事業内容や経営状態について把握する・事業に携わる時間を持つ等の対応が必要です。

まとめ

妻名義での会社設立には、夫が本業に集中できる・大きな節税効果を得られる等のさまざまなメリットがあります。

節税対策だけでなく、会社に副業がバレるのを防ぐために会社設立を妻名義で行うケースも多くみられます。

妻名義での会社設立は、上手く行えば大きな恩恵を受けられるテクニックといえるでしょう。

ただし、創業融資の審査で不利になる恐れがあったり、妻が扶養から外れる等のデメリットもあります。

また、トラブルを防ぐためには単なる名義貸し状態にならないよう注意も必要です。

妻名義での会社設立および運営には大きなメリットがあるものの、場合によってはトラブルにつながる恐れもあります。

トラブルのリスクを抑えるためには、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心です。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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