資本金1円で会社設立は可能なのか?リスクと資本金の適正な決め方について解説!

2024.01.28

現在の会社法には、会社設立時の資本金に関する特別な定めはありません。

そのため、理論上は資本金1円での会社設立が可能です。

しかし、1円での会社設立には様々なデメリットがあります。そのため、特別な理由がない限り資本金1円で会社設立をするのは避けるのが無難です。

会社設立時の資本金は、将来のことを考えた上で適切な金額に設定する必要があります。

 

今回は資本金1円で会社設立をするリスクや、会社設立時の資本金の決め方について詳しく解説します。

 

以下の記事でも資本金について詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

資本金1円での会社設立の可否

はじめに、資本金1円での会社設立の可否について解説します。

資本金1円での会社設立は理論上可能

結論から言えば、資本金1円での会社設立は理論上可能です。

 

そもそも資本金とは、出資者によって払い込まれるお金のことです。

資本金には返済義務がなく、貸借対照表の純資産の部に計上されます。

 

現行の会社法には最低資本金制度がありません。資本金の額に下限はなく自由に設定できます。

そのため、理論上は資本金1円での会社設立は可能です。

【参考】最低資本金制度とは

前項で紹介した最低資本金制度とは、新会社法の施行前に存在した制度です。

最低資本金制度が存在していた頃、株式会社は設立時の資本金が1,000万円以上、有限会社は300万円以上必要でした。

必要な資本金が高額であったため、会社設立のハードルも高かったのです。

2006年5月に施工された新会社法には最低資本金制度がなく、出資の最低額が1円であるため、資本金1円でも会社設立が可能となっています。

資本金1円で会社設立をするリスク

前章で紹介したように、資本金1円での会社設立は理論上可能です。

しかし実際のところ、資本金が少なすぎる中での会社設立には様々なリスクがあります。

この章では、資本金を1円または平均よりも遥かに少額に設定する際に考えられるリスクを4つ紹介します。

対外的な信用度が得にくくなる

資本金1円および少額で会社設立をすると、対外的な信用を得にくくなる恐れが大きいです。

 

資本金は事業の元手となるお金であり、会社の体力を表す指標の1つでもあります。

資本金があまりに少額の場合、以下のような印象を与えてしまう可能性があります。

  • ・体力がない会社で将来性がないのではないか
  • ・事業拡大や投資に使える資金力がない、そもそも大きな取引ができないのではないか
  • ・資本金が少ない代わりに借入金が多いのではないか
  • ・起業に向けた資金の用意や貯蓄をしてこなかった、すなわち計画性がないのではないか

会社の資本金は登記事項証明書に記載される内容であり、誰でも確認可能です。

簡単に確認できる情報である上、相手に与える印象を大きく左右する要素でもあります。

資本金の低さは、それだけで信用を下げる原因になり得るのです。

法人口座を開設できない恐れがある

資本金が1円など著しく低い金額の場合、法人口座を開設できない恐れもあります。

 

法人口座は開設の前に必ず審査が行われますが、審査の主な目的はマネーロンダリング対策です。

マネーロンダリングとは、悪質な行為によって得た資金を正当な手段で得た資金に見せかける行為です。資金洗浄とも呼ばれます。

 

法人口座は、法人のビジネス目的で用いられる口座です。

法人口座に入金された資金は正当なビジネスによって得た資金のように見えますが、実際には投資詐欺をはじめとした各種犯罪行為で得た資金を法人口座に入金し、マネーロンダリングを図る業者も多く存在します。

銀行はこのようなマネーロンダリング目的の口座開設を警戒し、法人口座の開設では厳しいチェックを行うのです。

 

設立時の資本金が1円とは、それだけ簡単に設立された会社と表現できるため、審査の際に悪印象を持たれ警戒される恐れがあります。

このように、極端に少額な資本金は法人口座の開設がスムーズに進まなくなる原因となります。

融資を受けにくくなる

資本金が1円および極端に少額の場合、融資を受けにくくなる恐れもあります。

 

すでに紹介したように、資本金は会社の体力を表す指標の1つです。

融資の審査では会社の財政状況や資金力がチェックされますが、資本金が少額では財政状態や資金力に懸念有りと判断されやすくなります。

結果として融資を受けられなくなったり、融資額が希望よりも少なくなる可能性があります。

 

また、会社設立時の資本金が少ない場合、外部から調達した資金で事業を進めることになります。

外部から調達した資金が増えるということは、それだけ返済義務のある借入金が増えるとも表現できます。

既に他からの借入金がある場合も、金融機関から新たに融資を受けるのは難しいケースが多いです。

 

資本金が1円では融資のハードルが上がる、つまり資金調達のハードルが上がってしまいます。

採用がスムーズに進まない

資本金1円で会社設立をすると、採用がスムーズに進まなくなるリスクも高いです。

 

資本金は登記事項証明書に記載される情報であり、外部の人でも自由に確認できます。

求職者が会社の資本金を確認するケースも珍しくありません。

 

既に紹介したように、資本金は会社の体力を表す指標の1つです。

資本金が極端に少額の場合、体力がなく将来性に不安があると判断され、求職者がエントリーに至らない恐れがあります。

会社設立時の資本金の適切な決め方

これまで紹介したように、資本金を1円や極端に少額にするのはおすすめできません。

この章では、会社設立時の資本金の適切な決め方について紹介します。

初期費用として必要な額を見積もる

まずは初期費用として必要な額を見積もりましょう

 

会社設立時の資本金は、開業費や設備投資、当面の運転資金の元手となるお金です。

初期費用の一部を創業融資で賄うケースも多く、必ずしも初期費用以上の資本金が必要なわけではありません。

しかし、創業融資の審査では自己資金の額がチェックされるため、いずれにせよある程度の資本金・自己資金を用意する必要はあります。

 

資本金を適切な額にするため、まずは初期費用として必要な額を見積もりましょう。

融資を受けずに用意できそうな金額であれば、必要な初期費用に少し上乗せした額が資本金の目安の1つとなります。

 

創業融資を受ける場合、融資を検討する額の3割ほどの自己資金を用意するのを目指しましょう。

日本政策金融公庫総合研究所の「2022年度新規開業実態調査」によると、創業資金のうち、自己資金の平均は金融機関等からの借入の3割程度の額となっています。

もし初期費用として1,000万円が必要な見積もりの場合、自己資金は300万円程度が1つの目安となります。資本金の額も300万円を目安にしましょう。

 

なお、資本金と自己資金はイコールではありません。

資本金と自己資金の違いや、創業融資を受ける際に必要な自己資金の目安については以下の記事で詳しく解説しております。

 

 

許認可や税務面を考慮する

資本金を決める際、許認可や税務面を考慮するのも大切です。

 

設立した会社の業種によっては、事業のために許認可を受ける必要があります。

許認可の中には資本金に一定の要件が存在するものもあり、資本金が少額では許認可を受けられず事業ができない恐れがあります。

許認可が必要な事業の場合、資本金要件の有無や金額を必ず確認しましょう。

 

また、資本金は会社の信用度につながると紹介しました。

そのため多ければ多いほど良いと考えるかもしれませんが、資本金が一定を超えると会社に課される税金が高くなるというデメリットもあります。

主な例は以下の通りです。

 

  • 法人税
  • 資本金1億円以下と1億円超の会社で適用される税率が異なります。
  •  
  • 法人住民税
  • 法人住民税の均等割部分は会社の規模に応じて発生し、資本金が一定を超えると税率も上がります。
  •  
  • 消費税
  • 資本金1,000万円未満の新設法人は設立1期目の消費税が免税です。
  • 資本金1,000万円以上の場合は1期目から消費税の課税事業者となります。

平均や相場を参考にする

資本金を決める際、平均や相場を参考にするのも1つの手段です。

令和3年経済センサス‐活動調査」によると、資本金階級ごとの事業所数は以下のようになっています。

 

  • 300万円未満:202,914
  • 300~500万円未満:578,975
  • 500~1,000万円未満:254,141
  • 1,000~3,000万円未満:554,806
  • 3,000~5,000万円未満:72,750
  • 5,000万円~1億円未満:52,100
  • 省略

 

設立時資本金に限らず増資分も含まれますが、1つの参考になるでしょう。

他にも資本金の平均を知るのに役立つ様々な情報が存在します。

平均や相場を知り、自身の中で大まかな基準を作るのもおすすめです。

まとめ

現行の会社法には最低資本金制度がありません。そのため資本金1円での会社設立は理論上可能です。

しかし、1円や極端に少額な資本金での会社設立には様々なデメリットがあります。

対外的な信用を獲得しやすくし事業をスムーズに進めるためにも、適正な資本金に設定しましょう。

 

適正な資本金の決め方として3つの方法を紹介しました。

これらの方法を上手く取り入れながら、自社に合う資本金額を設定しましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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