個人事業主が会社設立・法人成りを検討すべき売上の目安は?

2024.01.30

「個人事業主としてそれなりに売上が出てきたから、そろそろ法人成りを検討するべきか」「個人事業主の会社設立に適したタイミングを知りたい」

このような疑問や悩みをお持ちの人も多いのではないでしょうか。

 

個人事業主の会社設立や法人成りに適したタイミングには様々な基準があり、そのうちの1つが売上です。

一般的に、個人事業主としての売上が一定を超えると法人成りを検討するべきといわれています。

 

今回は個人事業主が会社設立・法人成りを検討すべき売上の目安や、売上以外の面で法人成りに適したタイミングについて解説します。

 

法人成りに適したタイミングについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

一人社長のマイクロ法人については、以下の記事をご覧ください。

 

 

CONTENTS

会社設立を検討すべき売上の目安は1,000万円

結論として、個人事業主が会社設立を検討すべき売上の目安は1,000万円です。

なぜ売上1,000万円を超えたタイミングが会社設立に適しているのか、理由を詳しく解説します。

売上1,000万円が会社設立を検討するべき目安の理由

売上1,000万円が会社設立を検討するべき目安となる理由として挙げられるのが、消費税の仕組みです。

 

個人事業主と法人のどちらも、売上が1,000万円を超えると、その翌々年から消費税の課税事業者になります

たとえば個人事業主がX2年に売上1,000万円を超えた場合、X4年度から消費税の課税事業者になる仕組みです。

 

個人事業主が法人成りをすると、個人事業主が行っていた事業はそのまま法人に引き継がれます。

しかし、個人事業主と法人は別人格として扱われます。
個人事業主の売上1,000万円を超えた実績も法人とは無関係であり、法人の消費税納付義務の判断には使われません。

したがって、設立1期目は原則として消費税の免税事業者となります。

また、設立2期目も消費税の課税要件を判断する基準期間である前々事業年度が存在しないため、基本的には消費税の納付義務がありません。

 

このように、売上1,000万円の個人事業主が法人成りをすれば、消費税の課税事業者となる時期を遅らせることができるのです。

前述の例でいうと、X2年に売上1,000万円を超えた個人事業主がX3年末までに法人成りをすれば、消費税の免税期間が長くなります。

 

なお、消費税の免税は自動で適用されるため、特に何か手続きを行う必要はありません。

消費税の免税を受けるための注意

法人の場合、消費税の免税事業者となるのは資本金が1,000万円未満の場合のみです。

資本金が1,000万円以上の場合、売上に関係なく消費税の課税事業者になります。

会社設立時の資本金が1,000万円以上の場合、設立1期目から消費税の課税事業者になってしまう仕組みです。

消費税の免税を受けるには、会社設立時の資本金を1,000万円未満にする必要があります。

【参考】設立2期目も消費税の免税事業者になる要件

「設立2期目も消費税の課税要件を判断する基準期間である前々事業年度が存在しないため、基本的には消費税の納付義務がありません。」と紹介しました。

厳密にいうと、設立2期目も消費税の免税事業者でいるためには以下いずれかの要件を満たす必要があります。

  • ・特定期間における課税売上高が1,000万円以下
  • ・特定期間における給与の支払額が1,000万円以下

 

特定期間とは前事業年度の開始の日以後6ヶ月間です。会計期間が4月1日から翌3月31日の法人の場合、4月1日から9月30日が特定期間となります。

 

基準期間(全然事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合は、消費税の課税事業者になります。

ただし、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高ではなく給与等支払額の合計で行うことも可能です。

そのため、特定期間の売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額の合計が1,000万円以下であれば免税事業者のままとなります。

売上以外に会社設立を検討するべきタイミング

売上1,000万円を超えたタイミング以外にも、個人事業主が法人成りを検討するべきタイミングが存在します。

この章では、売上以外に会社設立を検討するべきタイミングについて紹介します。

事業所得が600万円~800万円を超えた・超えそう

個人の事業所得が600万円~800万円を超えた、もしくは超えそうなタイミングは、法人成りを検討するべきタイミングの1つです。

 

個人事業主の所得に対して課される所得税は、所得が一定を超えた部分に高い税率が適用される超過累進課税を採用しています。

税率は5%~45%の7段階に区分されており、所得が大きくなるほど税負担が重くなる仕組みです。

 

一方、法人の所得に課される法人税は以下の通りです。

  • ・年800万円以下の部分:15% ※適用除外事業者は19%
  • ・年800万円超の部分:23.2%

※上記税率は資本金1億円以下の法人に適用されます。

 

適用される税率は年800万円以下の部分と800万円超の部分で多少異なるだけで、ほぼ一定といえます。

 

所得税は超過累進課税で法人税は税率が一定のため、所得が一定を超えた場合は法人税の方が税額を抑えられるのです。

 

所得税と法人税で税額の大きさが入れ替わるタイミングの目安として、事業所得600~800万円を超えたあたりが挙げられます。

所得税の額は適用される控除や他の所得の大きさによっても変わるため一概にはいえませんが、法人成りを検討しても良いでしょう。

事業拡大をしたい

事業拡大をしたいと考えている、もしくは事業拡大に向けた取り組みを始めようとするタイミングも、法人成りを検討しても良いでしょう。

 

事業内容や理念が全く同じものでも、個人事業主と法人では法人の方が社会的信用を得やすい傾向です。

たとえば、案件の受注や取引の契約を法人限定としている事業者は珍しくありません。

他にも個人事業主と法人で社会的信用の得やすさが違うといえる理由として、以下の例が挙げられます。

  • ・個人事業主よりも法人の方が金融機関からの融資を受けやすい
  • ・求人への応募が集まりやすい

これらは事業拡大をスムーズに進めるために欠かせない要素といえます。

 

法人よりも個人事業主の方が、事業の開始や継続、閉業が容易です。

また、個人事業主は事業者に万が一のことが起きたときに事業が消滅するというリスクもあります。

このような理由から、どうしても法人より信用面が劣るといえるでしょう。

 

事業拡大を進めたいと考えるのであれば、より社会的信用を得やすくするため法人成りするのも1つの手段です。

【参考】法人成りを保留した方が良いケース

個人事業主の法人成り・会社設立に適したタイミングの例を3つ紹介しました。

いずれも法人成りに適したタイミングといえる明確な理由が存在します。

しかし、法人成りに適したタイミングといえる時期であっても、必ずしも会社を設立するべきとは限りません

 

法人成りを保留するべきケースとして、以下の例が挙げられます。

 

  • 法人成りする明確な理由がない
  • 会社運営は個人事業主としての活動よりも負担が大きく責任も重いため、軽い気持ちで行うのは避けるべきでしょう。
  •  
  • 資金面での余裕がない
  • 会社は個人事業主よりも費用が高額になる面が多いです。また、会社設立時にもまとまった支出が発生します。
  •  
  • ビジネスが安定していない
  • ビジネスが安定していない状態での会社設立にはリスクがあるため、不安定で将来の展望がない状態での会社設立はおすすめできません。
  •  
  • 会社経営に関する知識がない
  • 特に事業拡大や従業員の雇用を考えている場合、会社経営に関する知識は必須です。
  • しっかり勉強して知識をつけてから改めて法人成りを検討しましょう。

まとめ

個人事業主の法人成り・会社設立に適したタイミングの1つとして、売上が1,000万円を超えたタイミングが挙げられます。

個人事業主・法人ともに前々事業年度の売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。

しかし個人事業主と法人は別人格として扱われるため、個人事業主の免税期間中に法人成りをすれば、消費税の免税期間を延ばせるのです。

 

売上1,000万円を超えたタイミングだけでなく、事業所得が600~800万円以上となったタイミングや事業拡大を検討する時期も、法人成りに適しています。

会社設立や会社経営について理解を深めつつ、自身の状況をしっかり把握することが、最適なタイミングでの法人成りにつながります。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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