売上ゼロ・赤字でも会社設立できる?メリットと注意点について解説!

2024.01.30

個人事業主の会社設立に適したタイミングには様々な基準があり、そのうちの1つに売上に関するものがあります。

一般的に、個人事業主としての売上が一定を超えたら法人成りを検討するべきといわれています。

反面、「売上が出ていないなら法人成りはしない方が良い?」「会社設立したいけれど売上が大きくなるまで待つべき?」とお悩みの人も多いのではないでしょうか。

売上が出ていないものの、何らかの理由で会社設立をしたいと考える人もいるでしょう。

 

今回は売上ゼロや赤字での会社設立について、メリットや注意点を紹介します。

 

以下の記事でも個人事業主の法人成りに適したタイミングについて解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

売上ゼロや赤字でも会社設立は可能

個人事業主としての売上がゼロもしくは赤字でも会社設立は可能です。

 

前提として、会社設立には売上高を含め特別な要件はありません。

自身のタイミングで自由に会社設立ができます。

 

そもそも、個人事業主の法人成りによる会社設立だけでなく、会社を退職してそのまま会社設立をするケース(脱サラ)も珍しくありません。

脱サラでは売上はもちろん事業実績や経験がゼロですが、問題なく会社設立ができます。

以上の内容からも、会社設立には売上に関する要素が全く関係ないことが明らかです。

 

なお、国内法人の過半数は赤字です。

国税庁の「令和3年度分 会社標本調査」によると、平成29年度から令和3年度の欠損法人割合はそれぞれ以下のようになっています。

  • ・62.6%
  • ・62.1%
  • ・61.6%
  • ・62.3%
  • ・61.7%

したがって、事業で赤字なのは全く不自然ではないといえるでしょう。

売上ゼロ・赤字で会社設立するメリット

売上ゼロ・赤字で会社設立をするメリットを4つ紹介します。

社会保険料を抑えられる

会社を設立するメリットの1つが、社会保険料を抑えられる点です。

 

個人事業主にかかる国民健康保険料は所得を基に計算されます。

売上ゼロ・赤字で事業所得以外の所得が少ない場合は、計算基礎となる所得額が低いため国民健康保険料も低額になります。

反対に、事業による売上が高く所得が多い場合、国民健康保険料も高額になる仕組みです。

売上の変動が激しい個人事業主の場合、前年の売上によっては国民健康保険料が大きな負担になってしまう恐れがあります。

 

一方で会社に在籍する役員や従業員の場合、会社から支給される報酬や給与の額を基に社会保険料が決定されます。

つまり、事業による売上や会社の所得は個人の社会保険料に直接の影響を与えません。

そして役員報酬を低めに設定すれば、社会保険料を抑えられます。

事業活動はこれまでと変わらずに行えますが、社会保険料として徴収される額には社長である自身の意思を反映できるのです。

資金調達がスムーズに進む可能性が高くなる

法人成りをすることで、資金調達がスムーズに進む可能性が高くなります

 

資金調達で多く用いられる手段の1つが、金融機関による融資です。

融資は申し込めば必ず受けられるわけではなく、審査に通過する必要があります。

審査の目的は返済能力があるかのチェックですが、こちらは事業者として信頼できるかのチェックとも言い換えられます。

そして、事業内容や理念が全く同じでも、個人事業主よりも法人の方が金融機関を含め外部関係者からの信用を得やすい傾向です。

つまり、法人成りして会社として事業を進める方が将来的に融資を受けられる可能性が上がるといえます。

 

ただし、赤字状態が続くようでは財政状況や事業内容に懸念があると判断され、審査に落ちる恐れがあります。

売上ゼロや赤字状態で会社設立をすること自体に問題はありませんが、いずれは売上や利益を出す前提としましょう。

売上ゼロや赤字の状態で会社を設立した後、なるべく早く実績を上げて財政状態を良くするのが理想です。

応募できる補助金や助成金の種類が増える

個人事業主の法人成りによって応募できる補助金や助成金の種類が増える可能性があります。

 

補助金と助成金はどちらも返済不要の資金が支給される制度です。

制度によって要件や目的は様々ですが、法人を対象とした制度が多く存在します。

事業内容や事業の進め方自体は同じであっても、個人事業主よりも法人の方が補助金や助成金に応募できる可能性が高いです。

赤字を最長10年繰り越せるため、将来的な節税につながる

会社は赤字を繰り越せる期間が長いため、将来黒字になった時に過去の赤字を活用できる可能性が高く、節税効果を得やすいです。

 

赤字の繰り越しは青色申告の特典の1つで、過去の赤字と当該年度の黒字を相殺し、当該年度の課税対象となる所得額を減らせる仕組みです。

法人の場合、欠損金(法人の赤字の呼称)を最長10年間繰り越せます。

一方、個人で赤字を繰り越せる期間は最長3年のため、赤字を相殺しきれないケースが法人よりも多くなります。

 

現時点では売上ゼロや赤字の場合でも、将来的に大きな売上や利益が見込めるケースの場合、早めに会社設立をするのがおすすめです。

法人の所得が高額になった場合でも、過年度から繰り越された赤字と相殺すれば、法人税の負担を最小限に抑えられます。

売上ゼロ・赤字で会社設立をする際の注意点

売上ゼロ・赤字で会社設立をする際の注意点を3つ紹介します。

当面の運転資金を確保する

売上ゼロ・赤字での会社設立は、しばらく売上入金がなくても事業活動ができるよう、当面の運転資金を確保した上で行う必要があります。

なるべく多くの資本金・自己資金を用意できてから会社を設立するべきです。

 

個人事業主の場合、事業用資金とプライベートの資金を区別しなくても事業活動が可能です。

一方で法人成りをすると、個人の資金と会社の資金が明確に区別されます。

会社の資金繰りが悪化した場合でも、社長である個人の資金を自由に使えるわけではありません。

「役員借入金」「短期借入金」等の勘定科目を使って役員が会社のお金を建て替えることもできますが、複雑な会計処理が必要です。

 

会社設立をした以上、基本的に事業活動は会社の資金のみで行う前提となります。

そのため当面の運転資金分のお金を確保し、しばらくは安定した会社経営が可能と判断できる状態になってから会社設立をしましょう。

赤字でも発生する税金が存在する点を押さえる

会社にかかる税金の中には、赤字でも発生するものがあります。それが、法人住民税の均等割です。

 

法人住民税は法人税割と均等割の2つから構成されています。

法人税割は名前の通り、法人税額を基準に算出される部分です。

売上ゼロや赤字の場合は法人税がかからないため、法人住民税の法人税割部分も発生しません。

一方、均等割はすべての法人に納付義務があります。均等割の額は会社の資本金や従業員数といった規模を基に算出されます。

均等割は都道府県民税と市町村民税に分けられ、最低でも合計7万円です。

 

法人には売上ゼロや赤字でも発生する税金がある点は必ず押さえましょう。

ペーパーカンパニーにならないよう注意

売上ゼロや赤字で設立した会社がペーパーカンパニーにならないようご注意ください。

 

ペーパーカンパニーとは、法人登記がされているものの事業活動を行っていない会社の呼称です。

売上が出ていない・会社としての活動をしていない会社全般を指します。

 

ペーパーカンパニーは以下の記事でも紹介しているように、脱税行為とみなされる可能性が非常に高いです。

 

 

事業活動をしていない・売上がなく経費だけが計上されている会社が、ペーパーカンパニーとみなされます。

事業活動をしているものの、結果として売上ゼロや赤字となっている場合は基本的に問題ありません。

しかし、売上ゼロや赤字状態が続くとペーパーカンパニーの疑いをかけられる恐れがあるのは事実です。

ペーパーカンパニーについての理解を深め、自社がペーパーカンパニーの疑いをかけられないよう注意しましょう。

まとめ

会社設立に、売上や実績に関する要件の定めはありません。

そのため、個人事業主としての事業活動で売上ゼロや赤字の場合でも、会社設立は問題なく行えます。

売上ゼロや赤字状態でも会社設立には様々なメリットがあるため、会社設立を視野に入れても良いでしょう。

 

ただし、売上ゼロや赤字での会社設立には押さえるべき注意点も存在します。

本記事で紹介した内容を確認した上、会社設立をする準備が整っているか、本当に会社設立をするべきかを慎重に判断しましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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