M&Aで起業するメリットとは?成功のコツとデメリット・注意点も解説!

2024.03.20

M&Aとは、買収や合併など、企業の組織再編や会社・事業の売買取引の総称です。

M&Aによる起業とは、会社を買い取り対象企業の経営権を取得する手法を意味します。M&Aのうち買収に該当します。

 

近年、経営者の高齢化および後継者不足の深刻化から、M&Aによる起業が増加傾向です。

M&Aによる起業には様々なメリットがありますが、デメリットや注意点も存在します。

M&Aを成功させるには、メリット・デメリットおよび注意点をしっかり理解した上で、成功のためのコツを押さえることが大切です。

 

今回はM&Aでの起業について詳しく解説します。

 

一般的な会社設立の流れについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらをご覧ください。

 

 

CONTENTS

M&Aによる起業の概要

はじめに、M&Aによる起業の概要を紹介します。

M&Aとは

M&Aとは、買収や合併など、企業の組織再編や会社・事業の売買取引の総称です。

M&A手法として、以下の具体例が挙げられます。

 

  • 株式譲渡
  • 株式の売買により買い手企業が経営権を取得する方法です。買収に該当します。
  •  
  • 事業譲渡
  • 会社の事業の一部もしくは全部を売買する方法です。取引法上の契約に該当します。
  • 売却対象は事業であり、譲渡後も会社は存続し、株主構成にも変化はありません。
  •  
  • 会社分割
  • 既存の事業を切り離し、対象事業を包括的に別の法人へ承継する行為です。
  • 前述した事業譲渡と違い組織再編行為に該当します。
  •  
  • 合併
  • 複数の法人を1つに統合する行為です。

M&Aによる起業とは、会社を買い取り対象企業の経営権を取得する手法を意味します。

前述したM&A手法のうち、株式譲渡や事業譲渡として行われるのが一般的です。

M&A起業が増えている理由

近年M&Aによる起業が増加傾向ですが、その前提にはM&A需要の増加が挙げられます。つまり、M&Aを行いたいと考える売り手側企業が増えているのです。

M&A需要が増している理由として、経営者の高齢化および後継者不足の深刻化が挙げられます。

 

近年、少子化および状況の変化による親族内承継の減少により、後継者不足に悩む企業が増えています。

後継者がいなければいずれ廃業せざるを得ませんが、自社の技術やノウハウを失いたくないと考える企業は多いです。

そのような後継者問題を解消する手法として、外部から後継者を探せるM&Aが注目を集めています。

 

また、M&A需要の増加に伴い、M&Aの環境も整いつつあります。

現在はM&A仲介会社の選択肢が豊富で、かつ中小規模の案件を扱うサービスも多いため、個人でもM&Aを行いやすい環境となってします。

 

このような需要の増加と環境の整備によって、M&Aによる起業が増加しています。

M&A起業のメリット

M&Aによって起業するメリットを3つ紹介します。

短期間かつ低リスクで起業ができる

M&Aはすでに存在する会社や事業をそのまま承継する方法です。

起業に向けて一からすべて準備する必要がないため、一般的な会社設立よりも比較的短期間で済みます。

また、会社の状況や実績を確認した上で買収を進められるため、全く見通しがない状態よりもリスクを抑えられます。

基盤が整った状態で事業を開始できる

M&Aによる起業では基盤が整った状態で事業を開始できるため、一般的な起業のような開業準備が必要ありません。

そのため、起業後すぐ本業に集中できるようになります。

人材やノウハウの引継ぎができる

M&Aでは売り手側企業が有していた人材やノウハウの引継ぎができます。

起業直後の時点で、事業活用に必要な財産を保有した状態といえるでしょう。

ただしM&Aの手法や従業員の考えによっては、人材の承継ができないケースがあります。

M&A起業のデメリット

続いて、M&A起業のデメリットを3つ紹介します。

自由な会社経営ができない恐れがある

M&A起業は、ゼロベースで会社を立ち上げるのではなくすでに存在する会社や事業の経営者になるイメージです。

買収元の商品やサービスはもちろん、風土や理念も承継します。

承継後に会社の方向性を大きく変えてしまえば、元々いた従業員の反発を買う恐れや、現場の混乱により生産性が低下する恐れがあります。

そうなってしまった場合、自身が代表者であっても自由な会社経営はしにくいでしょう。

取引先や従業員との関係構築に時間がかかりやすい

M&Aにおいて、買収元の取引先や従業員との関係構築に時間がかかるケースは多いです。

M&Aを契機に人が離れてしまうケースも珍しくありません。

許認可や雇用等、すべてをそのまま引き継げるとは限らない

M&Aにおいて、許認可や雇用等、すべてをそのまま引き継げるとは限りません。

たとえば事業売却では権利義務について個々の移転手続きが必要なため、従業員との雇用契約も結びなおす必要があります。

株式譲渡は包括承継のため雇用契約も引き継がれますが、M&Aのタイミングで退職するケースもみられます。

M&Aによる起業の注意点

M&Aによる起業の注意点を3つ紹介します。

簿外債務のリスクを考慮する

簿外債務とは、貸借対照表上に表示されない債務です。

具体例として、第三者への債務保証や未払残業代、訴訟リスクなどが挙げられます。

 

簿外債務のある会社や事業を買い取ってしまうと、思わぬ損失を被ってしまう恐れがあります。

M&Aによる起業のリスクを最小限に抑えるため、簿外債務のリスクを考慮しましょう。

 

なお、簿外債務のリスクを避ける方法として、デューデリジェンスの実施が挙げられます。

デューデリジェンスとは、売却対象の会社や事業について行う徹底的な調査のことで、日本語で買収監査と呼ばれます。

デューデリジェンスは公認会計士や弁護士など、M&Aに詳しい専門家に依頼するのがおすすめです。

相手方との協議や従業員のケアにリソースを割く

M&Aによる起業の失敗を防ぐため、相手方との協議や従業員のケアに十分なリソースを割きましょう

 

M&Aの失敗事例で多くみられる原因として、従業員のケア不足が挙げられます。

従業員のケアが不十分では、M&A後に従業員が離れてしまう恐れや、社内での反発により事業や経営が上手く進まなくなる恐れが大きいです。

M&A後の変化について従業員にしっかり説明する、従業員からの質問に答えるための時間を確保する等、従業員への対応は欠かせません。

買収後の従業員の待遇についても、相手方と十分に協議する必要もあります。

資金を十分に用意しておく

M&Aによる起業に向けて、資金を十分に用意しておくことも大切です。

M&Aでは資本金や会社設立費用はかかりませんが、会社を買収するためのお金や各種税金の支払いが発生します。

買収先企業の状況によっては想定よりも費用がかかる恐れもあります。

スムーズなM&Aのためには、十分な資金を用意しておくことが大前提です。

M&Aを成功させるためのコツ

最後に、M&Aを成功させるためのコツを2つ紹介します。

事前に予算や希望条件を決めておく

自分に合う会社を選ぶためには、事前に希望条件を明確にする必要があります。

 

特に大切なのが予算です。

どれほど良い企業や事業でも、金額が高すぎる会社を買収するのは大きな負担になります。

また、万が一失敗した時の損失が大きい点もデメリットです。

魅力的な会社は金額が高くなるのが自然とはいえ、高すぎる買収は避けるべきでしょう。

 

一方、予算内に収まるものの、自身の希望に合わない条件の会社を買収するのもリスクがあります。

M&Aの案件選びでは、予算とその他の条件のバランスを上手く取ることが大切です。

案件の探し方についての選択肢を知っておく

M&Aの案件の探し方には複数の選択肢があり、方法によって特徴やメリット・デメリットが異なります。

どのような企業を探しているか、どれだけの予算を出せるか等の要素から、自分に合う探し方を選ぶのが大切です。

 

M&A案件の探し方の選択肢として、以下の例が挙げられます。

 

  • 銀行に相談する
  • 案件数の多さや、資金調達の交渉を同時に進められる点が魅力です。
  • ただし小規模の案件はあまり多くありません。
  •  
  • M&A仲介会社を利用する
  • フルサポートを受けられますが、手数料が高い点に注意が必要です。
  •  
  • M&Aプラットフォーム(マッチングサイト)で探す
  • 費用は抑えやすいものの、マッチング以外のサービスは受けにくい面があります。
  •  
  • 事業引継ぎ支援センターに相談する
  • 公的機関のため安全性が高く、無料で利用できる点がメリットです。
  • ただし、M&A全体のサポートは受けられません。

まとめ

M&Aによる起業のメリットとして、開業までにかかる時間が短い点や、基盤が整った状態で事業を開始できる等が挙げられます。

一方、自由な会社経営ができない恐れがある点や、関係構築に時間がかかりやすい等がデメリットです。

 

M&Aは手間や費用を抑えて起業できる方法ではありますが、成功させるためにはポイントや注意点を理解しておく必要があります。

今回紹介した内容を押さえ、M&Aによる起業を上手く進めましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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