創業融資の申し込みにおける必要書類のひとつに、創業計画書があります。
創業計画書は、経営者や創業予定の事業に関する情報のほか、事業の見通しなども記載が必要です。
創業前や創業直後の段階では事業実績が存在しません。
そのため、創業計画書のように事業に対するビジョンや将来性などをチェックする資料を用いて返済能力のチェックを行います。
すなわち、創業計画書は創業融資の審査において非常に重要な書類です。
今回は創業融資の審査に向けて、創業計画書を作成する上で押さえておきたい内容を解説します。
創業融資の申し込みに必要な書類全般については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
CONTENTS
創業計画書の概要
はじめに、創業計画書がどのような書類であるかを紹介します。
創業計画書とは
創業計画書とは文字通り、創業予定のビジネスに関する計画をまとめた資料です。
日本政策金融公庫の創業融資で必要となります。
大前提として、創業融資とは創業前後の人でも利用できる融資制度の総称です。
そして、創業融資に限らず融資では審査が実施され、融資を実行するか、融資額はいくらにするかなどが決定されます。
融資審査の大きな目的は申込者の返済能力を測ることであり、主に過去数年分の決算書や現在の財務諸表など事業実績を用いるのが一般的です。
しかし、創業前や創業したばかりの時点では事業実績がありません。
そのため、事業実績の代わりに、申込者の現況や、創業予定のビジネスに関する計画・見通しといった情報を用います。
創業計画書はこれらの情報をまとめたものであるため、創業融資の審査において重視される資料です。
創業計画書に記載する内容
創業計画書に記載する内容を紹介します。
※2023年5月30日時点の情報に基づいた内容です。
- ・創業の動機
- 創業する動機や目的について4行程度で記載します。
- ・経営者の略歴等
- 過去の勤務先名や役職のほか、業務を通じて身につけたスキルなどの記入も必要です
- ・過去の事業経験
- 事業を経営していた経験があるか、該当する欄にチェックを入れます。
- ・取扱商品・サービス
- 創業予定のビジネスについて内容・セールスポイント・販売戦略・市場状況などを記載します。
- ・取引先・取引関係等
- 販売先・仕入先・外注先の名称やシェア、掛取引に関する事項を記載する欄です。
- ・従業員数
- 役員の人数のほか、創業に際して3ヶ月以上継続雇用を予定している従業員の数を記載します。
- ・借り入れ状況
- 現在他に借入があれば記載が必要です。
- ・必要な資金と調達方法
- 必要な資金の内訳や金額、調達方法(自己資金・知人からの借入・金融機関からの借入)などを記載します。
- ・事業の見通し
- 月の平均的な売上および経費のほか、金額の計算根拠の説明も必要です。
創業計画書のフォーマットは日本政策金融公庫の公式サイトに公開されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
創業計画書 審査に受かるための書き方のポイント
創業融資の審査に受かるために、創業計画書の書き方で押さえたいポイントを6点紹介します。
熱意や真剣さをアピールする
事業に対する熱意や真剣さをアピールできれば、創業融資の審査で有利に働く可能性が高いです。
大前提として「熱意があれば事業が上手くいく」とは言えません。
しかし「熱意がなければ事業が上手くいかない」恐れは非常に大きいでしょう。
熱意がなければ事業にかけるエネルギーが弱くなり、事業が発展する可能性が低くなります。
事業に対する熱意・真剣さは、事業を成功させるために必要不可欠な要素のひとつです。
熱意や真剣さのアピールとして、難しいことを行う必要はありません。
創業計画書を丁寧に、そして気持ちを込めながら書くことが大切です。
なるべく具体的な内容を書く
創業計画書の記載項目は複数ありますが、いずれも記載欄がそれほど広くありません。
そのため詳細な内容を書くのは困難といえます。
それでも、なるべく具体的な内容を書くのが理想です。
創業計画書は審査で重視される書類と解説しましたが、より正確に表現すると、面談の時間を短縮するために利用されます。
創業計画書の内容からある程度の情報を読み取り、面談では内容の確認や補完のための質問が行われるイメージです。
創業計画書に詳しい内容が記載されていれば、面談の担当者が情報を把握しやすい・質問しやすい状態になります。
必要な情報をしっかり提供してくれる申込者は、それだけで好印象を得られると期待できます。
前述の通り欄が小さいため限界はありますが、なるべく詳しく、そして具体的な内容を記載しましょう。
嘘や誇張表現をしない
創業計画書に嘘の記載や誇張表現を行うのは厳禁です。
創業融資において、審査に有利になる要素や逆にマイナスになりやすい要因は存在します。
審査に通過する可能性を高くするために、プラス要素を多く、マイナス要素を少なくしたいと考えるのは自然です。
しかし、嘘や誇張表現は審査においてどのようなマイナス要素よりも不利に動きます。
実際のところ、創業計画書の内容だけでは嘘や誇張表現はバレないかもしれませんが、嘘や誇張を通し続けることは非常に難しく、面談で事実が露呈する可能性が非常に高いです。
そもそも審査を行う担当者は、これまで多くの申込者の対応をしてきたプロです。
不自然な個所があればすぐに気づき、強い指摘や深い質問をされると考えられます。
嘘や誇張表現はいずれバレて審査にかなり不利に働くため、絶対にしないようにしましょう。
たとえ不利な内容であったとしても、正直に書くことが大切です。
根拠や妥当性のある内容にする
創業計画書には、必要な資金や月の売上・経費の見通しなどを記載する欄があります。
事業を行う前の段階では実際の金額はわからないため、試算や想定による金額を記載します。
このように想定が必要な部分について、客観的な根拠に基づいていることも大切です。
根拠がない・主観が強すぎる内容では、事業に対するビジョンが不明瞭と判断される恐れがあります。
事業に対する知識や準備が不足していると捉えられるリスクも高いです。
想定に基づいた記載が必要な部分こそ、根拠や妥当性が強く求められます。
現実的な内容を記載する
「根拠や妥当性のある内容にする」と似ていますが、現実的な内容を記載することも大切です。
融資を十分に返済できるような事業見通しであっても、実現可能性が低ければ返済能力が十分とはいえません。
「実現可能性の低い内容であり、事業に対する十分な計画があるとはいえない」「あくまで希望的観測で実際の返済能力は低い」と、かえって低評価につながる恐れが大きいです。
売上や経費など、見通しが良ければ良いほど高評価になるわけではありません。
たとえ事業の見通しが理想通りでないとしても、実現可能性が高いことの方が大切です。
矛盾や漏れを起こさない
創業計画書の内容に矛盾や漏れを起こさないよう注意しましょう。
記載事項の漏れは大きなマイナスにはなりにくいとはいえ、すべての項目を漏れなく記載した方が良いのは事実です。
記載事項の漏れを防ぐ以上に、異なる項目同士の矛盾を起こさないことが大切です。
異なる項目同士に整合性がない場合、計画の曖昧さや準備不足といった悪印象を与えてしまう恐れがあります。
矛盾が起きやすい箇所の具体例が「必要な資金と調達方法」欄と「事業の見通し(月平均)」欄です。
必要な資金欄にはランニングコストである運転資金の概算を記載する部分があります。
そして事業の見通し欄には毎月の平均売上および主な支出、すなわちランニングコストの記載が必要です。
記載する箇所や名称に違いはありますが、実際に記載する内容はほとんど同じといえます。
ただし、必要な資金は創業資金として必要な資金を、事業の見通し欄は月平均を記載する部分です。
そのため完全に一致するとは限りません。
しかし記載内容に大きな相違があれば、見通しが甘く整合性がないという判断になり得ます。
創業計画書を書き終わったら全体を改めて読み直し、矛盾や漏れがないかチェックしましょう。
まとめ
創業融資と呼ばれる制度は、いずれも創業計画書の作成・提出が必要です。
創業者の経歴から事業の見通しまで、さまざまな内容の記載が求められます。
創業計画書や面談の内容は創業融資の審査に大きく影響します。
今回、創業計画書を作成する際のポイントを6つ紹介しました。
いずれも基本的な内容ではありますが、意識しなければ忘れてしまいがちな部分でもあります。
紹介した内容を押さえ、審査に有利となる適切な創業計画書を作成しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士