NPO法人は一般的な会社と大きく異なる性質を持ちますが、NPO法人も創業融資を受けられます。
かつては信用保証協会の保証対象外で融資利用が難しい時期もありましたが、今はNPO法人も保証制度を利用可能です。NPO法人を対象とした融資制度も複数存在します。
ただし、NPO法人が利用できる創業融資は、一般的な企業向けの融資制度とは異なる点にご注意ください。
NPO法人が創業融資を利用する際は、NPO法人向けの融資を選ぶ必要があります。
今回はNPO法人におすすめの融資制度や、NPO法人が創業融資を利用する際の注意点を解説します。
一般企業向けの創業融資については、以下の記事で詳しく解説しています。
CONTENTS
NPO法人も創業融資を利用可能!
結論として、NPO法人も創業融資を利用できます。
かつて NPO法人は信用保証協会の保証対象外でしたが、現在はNPO法人も保証制度の利用が可能です。
融資制度の多くは信用保証協会の保証を前提としているため、保証対象であるか否かは利用できる融資の選択肢を大きく左右します。
そのため、保証対象外だった時期に融資の選択肢が少なったのは事実です。
保証制度を利用できるようになった現在は、NPO法人が利用できる融資制度の選択肢が広がったといえるでしょう。
また、NPO法人を対象とした融資制度も多く存在しています。
特に日本政策金融公庫はNPO法人を含むソーシャルビジネス事業者への融資に積極的です。
日本政策金融公庫のニュースリリースで、令和3年度のソーシャルビジネス関連融資の実績が公開されています。
同制度において、NPO法人を対象とした融資実績の件数は以下の通りです。
- ・平成30年度:件数1,381件、金額87億円
- ・令和元年度:件数1,155件、金額71億円
- ・令和2年度:件数1,803件、金額196億円
- ・令和3年度:件数821件、金額70億円
引用元|日本政策金融公庫 2022年5月30日 ニュースリリース
なお、NPO法人も創業融資を利用できるといえますが、NPO法人が利用できる融資制度は一般的な企業向けの融資制度とは異なります。
NPO法人向けの融資制度を選ぶ必要がある点にご注意ください。
NPO法人向け融資制度の具体例
この章ではNPO法人向け融資制度の具体例を紹介します。
ソーシャルビジネス支援資金
ソーシャルビジネス支援資金は、日本政策金融公庫が運営する融資制度です。
以下のいずれかに該当する事業者を対象としています。
- ・NPO法人
- ・NPO法人以外の場合、以下のいずれかに該当する
- ①保育サービス事業、介護サービス事業等を営む
- ②社会的課題の解決を目的とする事業を営む
NPO法人とNPO法人以外で適用利率に違いがあります。
NPO法人に適用される利率は以下の通りです。
- ・保育サービス事業、介護サービス事業等を営むNPO法人:特別利率B
- ・認定NPO法人(特例認定NPO法人を含む):特別利率A
- ・社会的課題の解決を目的とする事業を営むNPO法人:原則として特別利率A
- ※一定の要件を満たす場合は特別利率B
- ・その他のNPO法人:基準利率
また、NPO法人のみ、利率の上乗せにより代表者保証が不要になります。
その他の条件は、NPO法人とそれ以外の事業者で共通の内容です。
- ・融資限度額:7,200万円 うち運転資金4,800万円
- ・返済期間:設備資金20年以内、運転資金7年以内 いずれも据置期間2年以内
西武コミュニティローン
西武コミュニティローンは、西武信用金庫が運営する融資です。
融資の使い道として複数の項目がありますが、その1つに「起業に向けた必要な設備資金および運転資金」が含まれています。
西武コミュニティローンは以下のいずれかに該当する事業者が利用できます。
- ・特定非営利活動法人に該当し、かつ、主たる事務所が西武信用金庫の営業地区内に所在する
- ・認証保育所に該当し、かつ、認証保育所が西武信用金庫の営業地区内に所在する
- ・主たる事務所が西武信用金庫の営業地区内に所在し、コミュニティビジネスの創出や充実を目的とした事業を行う者
- ・地域の商店会等の団体
- ・西武信用金庫の営業地区内で起業予定または創業5年以内で、一定の要件を満たす事業者
融資限度額は無担保の場合は1,000万円、有担保の場合は原則として担保評価の範囲内です。
融資期間は条件によって以下のように異なります。
- ・手形貸付:1年以内
- ・証書貸付:担保無は5年以内、担保有りの場合は20年以内
融資利率は西武信用金庫所定の利率が適用されます。
ろうきんNPO事業サポートローン
ろうきんNPO事業サポートローンは、ろうきんが運営するNPO法人専用の融資制度です。
ろうきん(労働金庫)は全国に13拠点あり、各ろうきんでNPO向け融資制度を運営しています。今回は中央ろうきんの制度について紹介します。
融資を利用できるのは、以下のすべてを満たすNPO法人です。
- 1.中央ろうきんの事業エリア内に主たる事務所が所在する
- 2.原則として、融資を受けようとする事業を3事業年度以上継続している(法人格取得前も含む)
- 3.法人格取得後1事業年度以上の決算が確定している
2、3の要件が存在するため、創業直後は利用できません。NPO法人向け融資制度のため紹介しておりますが、創業融資ではない点にご注意ください。
融資限度額は担保の有無によって以下のように異なります。
- ・無担保:1,000万円以内
- ・有担保:5,000万円以内かつ担保価値の範囲内
- ・預金担保:1億円以内かつ担保とする定期性預金残高の範囲内
返済期間は以下の通りです。
- ・手形貸付:1年以内
- ・証書貸付:運転資金は原則1年以内、設備資金は原則10年以内
中央ろうきん所定の融資金利が適用されます。
保証付き融資も選択肢の1つ
現在はNPO法人も信用保証協会の保証を受けられるため、保証付き融資を利用するのも1つの手段です。
保証付き融資は特定の融資ではなく、信用保証協会の保証がついた融資の総称であり、融資の条件や対象者は制度によって異なります。
金融機関や信用保証協会で扱っている融資制度を確認し、自身に合いそうな制度を選びましょう。
信用保証協会については、以下の記事をご覧ください。
NPO法人 創業融資に関する注意点
最後に、NPO法人の創業融資に関する注意点を3つ紹介します。
適切な融資額を申し込む
創業融資を利用する際、適切な融資額を申し込むよう注意しましょう。
融資額が少な過ぎれば資金不足に、融資額が多過ぎれば返済負担が重くなる恐れがあります。
また、適切といえない融資額で申し込んでしまうと「資金計画が不十分である」「融資について理解が浅い」といったマイナス評価につながる可能性も高いです。
事前にシミュレーションを行い、適切な融資額を算出した上で申し込むのが理想です。
希望条件通りになるとは限らない
NPO法人や創業融資に限らず、融資において借入額や融資条件が希望通りになるとは限りません。
後述する審査の結果によっては、希望よりも融資額が少なくなったり、あるいは融資そのものを受けられないケースも有り得ます。
つまり、融資ありきで事業計画や資金計画を立てるのは危険といえます。
希望通りの融資を受けられない可能性がある点を考慮しましょう。
融資を受けるには審査が必要
融資を受けるためには審査に通過する必要があります。
審査でチェックされる要素は制度によって異なるため、申し込む制度に合わせた対策が必須です。
創業融資の審査でチェックされる要素は以下の例が挙げられます。
- ・事業計画の根拠や実現可能性
- ・創業に向けた準備の程度
- ・創業予定の事業に関する知識や経験
- ・申込者の人間性
- ・懸念点の有無
まとめ
NPO法人が利用できる創業融資には複数の種類があります。
現在はNPO法人も信用保証協会の保証を受けられるため、以前よりも融資の選択肢が広がった状態です。
一口に融資といっても制度によって条件が大きく異なるため、自身に合った融資を選ぶ必要があります。
また、創業融資に申し込む前に注意点の確認をすることも大切です。
今回紹介した3つの注意点は、NPO法人に限らず、創業融資に申し込むすべての事業者が押さえるべき内容といえます。
注意点を含め、創業融資について十分に理解を深めた上で申し込みをしましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士