創業融資に限らず、融資制度による借入金は返済計画表に基づいて返済する必要があります。
しかし、経営状況の悪化や何らかの事情により、計画表通りの返済が難しくなる可能性もゼロではありません。
このような状態を放置し返済遅延が生じると、より大きなトラブルにつながる恐れがあります。
創業融資が返せない可能性が出たら、なるべく早く対処を行うことが大切です。
今回は創業融資の返済遅延によって起こり得る事態や、融資が返せないときの対処法について解説します。
なお、創業融資の返済負担は毎月の返済額によっても大きく左右されます。
無理なく返済を行えるよう適切な返済期間を設定することも大切です。
創業融資の返済期間については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
CONTENTS
創業融資が返せないとどうなる?
はじめに、創業融資の返済が滞った時に起こり得る事態を5つ紹介します。
信用情報に記録が残る
創業融資に限らず借入金の返済が期日通りに行われなかった場合、返済遅延が起きた旨が信用情報に記録されます。
信用情報から返済遅延の記録が削除されるまでの期間は最長で5年です。
返済遅延が生じたという事実は返済能力の懸念を示す要素であり、新たな融資契約を結ぶ際に悪影響となります。
信用情報に記録が残っている間は、審査の通過率が下がってしまう恐れがあるでしょう。
支払い督促の連絡が来る
返済期日を過ぎても入金が確認できない場合、金融機関の担当者から支払い督促の連絡が来ます。
督促の連絡が来るタイミングについて一概にはいえないものの、返済期日の翌営業日、またはその翌日に電話が来るケースが多いようです。
電話での連絡を無視し続けると、郵送で督促状が送られてきます。
支払い督促の連絡を無視し続けて返済が遅くなるほど、信用情報が悪化していきます。
また、金融機関からの心証が悪くなり、後の対応に悪影響を及ぼします。
遅延損害金を払う必要性が生じる
返済計画として定められた返済期限を1日でも過ぎてしまうと、遅延損害金が発生します。
遅延損害金とは文字通り、返済の遅れに対する損害賠償金です。
遅延損害金の額は以下の計算式で求めます。
遅延損害金=借入残高×遅延損害金の年率×滞納日数÷365日
遅延損害金の年率は借入先や借入時期によって異なるため、金融機関の案内をご確認ください。
例として、日本政策金融公庫による令和5年4月1日から令和6年3月31日までの貸付けの場合、適用される年率は8.70%です。
債務残高の一括返済が求められる
支払い督促の連絡を無視し続けて返済をせずにいると、債務残高の一括返済が求められます。
融資による借入を受けた債務者は、期日までに定められた額の返済を行えば、債務全額の請求はされない・請求されても断れるという権利があります。
このような債務者の利益は期限の利益と呼ばれており、融資契約に際して、期限の利益を失う条件が定められているのが一般的です。
返済遅延を起こしてしまうと、「期日までに定められた額の返済を行えば全額の支払いは必要ない」という前提が崩れます。
つまり、期限の利益を喪失した状態となり、債務残高の一括返済をされても拒否できません。
一括返済の請求が行われる時期はケースによって異なりますが、返済期日から約3ヶ月後が目安として挙げられます。
訴訟や差し押さえが行われる
一括返済の請求に応じない場合、訴訟や差し押さえが行われます。
法人口座の預貯金はもちろん、不動産や社用車といった資産も差し押さえの対象です。
経営者が創業融資の連帯保証人となっている場合は個人の資産も差し押さえとなるため、生活に支障が出る恐れがあります。
差し押さえまでの細かな流れはケースによって異なりますが、今回は日本政策金融公庫による創業融資を利用している場合を例にします。
- 1.債務者に代わり、信用保証協会や保証会社が債務残高の一括返済を行う
- 2.債権者が日本政策金融公庫から、返済を代わった信用保証協会や保証会社に移る
- 3.信用保証協会や保証会社から裁判所を通じて訴訟が起こされる
- 4.債務者に対して裁判への出頭が命じられる
- 5.債権者の言い分が全面的に認められると強制執行となり、差し押さえが行われる
4で裁判への出頭に応じず無視した場合、裁判は債権者の言い分で進みます。
つまり、債務者の条件は非常に不利となり、債権者の言い分が全面的に認められ強制執行となる可能性が高いです。
どのような状況であっても、裁判への出頭命令には必ず従いましょう。
創業融資を返せない時の対処法
前章で紹介したように、創業融資を返さずにいると状況は悪化する一方です。
借入金を返せないからといって何もせず放置するのは厳禁であり、なるべく早いうちに対処する必要があります。
この章では創業融資を返せない時の対処法を3つ紹介します。
追加融資や借り換えを行う
事業の性質や何らかの事情によって、収入よりも先に大きな支出が発生する場合に適した方法です。
追加融資や借り換えができるのは、事業の特性による一時的な支出以外に懸念がなく、財務状態や経営状況が良好な会社に限ります。
将来の返済能力を証明できる・決算書上しっかり利益が出ている場合、追加融資や借り換えが認められる可能性が高いです。
たとえ将来の返済能力が十分だとしても、すでに返済遅延が生じている場合は原則として追加融資や借り換えは認められません。
追加融資・借り換えといった手段を希望する場合、返済遅延が生じるよりも前に相談しましょう。
借入先に相談し返済計画を変更(リスケジュール)する
追加融資や借り換えができない場合、借入先に相談しリスケジュールの交渉を行いましょう。
返済額や返済日の変更により、返済までに余裕が生まれる可能性があります。
月々の返済額が減る、もしくは返済日が後ろ倒しになれば、その分利息が増えるため返済総額は大きくなります。
とはいえ、信用情報の傷や遅延損害金の発生といったデメリットは避けられるため、返済が難しい時に効果的な手段といえるでしょう。
ただし、返済遅延が起きてからリスケジュールの交渉をするのは難しくなります。
返済計画の変更が認められない、もしくは希望が通りにくくなることが多いです。
返済遅延が生じた後の相談も可能ではありますが、返済前に交渉した方が好条件になりやすいです。
いずれにせよ、創業融資の返済に懸念が生じた時点で、なるべく早めに担当者へ相談しましょう。
債務整理を行う
リスケジュールの交渉が上手くいかない、もしくはリスケジュールをしても返済が難しい場合、債務整理を検討する必要があります。
債務整理とは債務救済手段の1種であり、支払い猶予や借入額の一部もしくや全額の免除を受けるための手続きです。
債務整理には以下の4種類があります。
- ・任意整理
- 利息の免除や減額、元金のみの返済に切り替えるといった方法です。
- 債権者と直接交渉します。
- ・特定調停
- 裁判所に申し立てを行い、将来利息をカットする手続きです。
- 専門家を通さず債務者自身が行う点が特徴として挙げられます。
- ・個人再生
- 裁判所に申し立てをして行う手続きです。
- 住宅など生活に必要な財産の差し押さえを避けつつ、債務を減額して支払います。
- ・自己破産
- 財産の一部を処分する代わりに、借入金の全額を帳消しにする手続きです。
- 裁判所への申し立てが必要となります。
ただし、債務整理を行うと信用情報に記録が残り、融資はもちろんクレジットカードの契約が難しくなる恐れがあります。債務整理は最終手段としましょう。
まとめ
創業融資に限らず、融資の返済が滞ると後に様々な悪影響を及ぼします。
期日までに借入金を返せそうにない場合、早めに対処を行いましょう。返済せずに放置するのは厳禁です。
創業融資が返せない場合に、どのような対処をとるべきか・そもそもどのような方法を選べるかはケースによって異なります。
適切な対処を行うためには、返済が難しいことが分かり次第早急に専門家へ相談することをおすすめします。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士