創業融資とは、文字通り創業時に申し込みができる融資制度を意味します。
個人事業主として事業を始める場合や、会社員を辞めて会社を設立する場合などに多く利用される制度です。
そんな創業融資ですが、制度によっては法人成りをする際には利用できない可能性があります。
個人事業主時代の事業経歴が引き継がれ、創業からの年数に関する要件を満たせないケースが多いためです。
とはいえ、法人成りの場合に全ての創業融資制度が利用できないわけではありません。
個人事業主として事業を行っていた年数によっては、法人成りの際に何らかの創業融資制度を利用できる可能性があります。
今回は、個人事業主が法人成りをする場合の創業融資について詳しく解説します。
創業融資の概要については以下の記事で詳しく解説しています。こちらもぜひご覧ください。
CONTENTS
法人成りの際に創業融資の利用は可能なのか
はじめに、個人事業主が法人成りをする際に創業融資を利用できるか否かについて解説します。
そもそも|創業融資とは
大前提として、創業融資とは創業時に利用できる融資制度の総称であり、創業融資という名前の制度はありません。
独立・開業・起業などの際に利用できる融資制度をまとめて創業融資と表現するイメージです。
事業者向けの融資制度では、審査において過去数年分の決算申告書や直近の財務諸表を用います。
過去の事業実績から財務状態や経営成績をチェックし、返済能力の有無を判断するためです。
しかし、創業前後のタイミングでは事業実績がないため、決算書や財務諸表から返済能力を測ることは出来ません。
創業融資と呼ばれる制度は、過去の事業実績を証明する書類の代わりに事業計画書や創業計画書を用います。
そのため、創業直後で事業実績がない人でも創業融資に該当する制度であれば申し込みが可能となります。
一般的な創業融資制度は利用できないことがある
結論として、個人事業主が法人成りをする場合は創業融資を利用できないケースがあります。
特に日本政策金融公庫の創業融資は、要件を満たせないケースが多いでしょう。
創業融資と呼ばれる制度は、創業から一定の年数以内という要件を定めているものがほとんどです。
新たに独立・開業・起業をする場合は創業からの年数がゼロのため、問題なく創業融資の申し込みができます。
すでに創業した後であっても、創業直後であれば年数要件についてはほとんど問題ありません。
一方、個人事業主が法人成りをした際は、個人事業主時代の事業経歴が引き継がれます。
個人事業主として事業を長く続けていた場合、創業からの年数という要件を満たせない可能性が大きくなります。
特に新創業融資制度は「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方」と要件が厳しいため、利用できないケースが多いです。
ただし、創業融資と呼ばれる制度の中には、創業からの年数を長く設定しているものもあります。
例えば、新規開業資金および女性、若者/シニア起業家支援資金は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」が要件です。
先ほど紹介した新創業融資制度よりも要件が緩く、利用できる人の範囲が広くなっています。
創業直後といえない時期であっても、事業開始からの年数が要件を満たしていれば申し込みが可能です。
法人成りで創業融資を利用する方法
法人成りで創業融資を利用する方法を2つ紹介します。
①日本政策金融公庫 新創業融資制度以外の制度を使う
前章で紹介したように、日本政策金融公庫の新創業融資制度は創業からの年数が厳しく設定されています。
そのため、個人事業主の法人成りでは利用できないケースが多いです。
法人成りの際に日本政策金融公庫の創業融資を利用するのであれば、新創業融資制度以外の制度を使うことをおすすめします。
新創業融資制度以外の選択肢を3つ紹介します。
新規開業資金
新規開業資金は、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人を対象とした融資制度です。
新創業融資制度に比べて創業からの年数に関する要件が緩いため、法人成りでも利用できるケースが多いでしょう。
新規開業資金の資金用途は、開業資金・設備資金・運転資金に限定されています。
融資限度額は7,200万円、うち運転資金は4,800万円です。
設備投資の返済期間は20年以内、運転資金の返済期間は7年以内に設定されています。
利率は、基本的に日本政策金融公庫で共通する基準利率が適用されます。
基準利率は時期によって異なるため、日本政策金融公庫の公式サイトで最新情報をご確認ください。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、以下の要件を満たす人が利用できる融資制度です。
- ・新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人
- ・女性または35歳未満・55歳以上に該当する人
適用される利率は日本政策金融公庫の特別利率で、基準利率よりも低く設定されています。
資金用途は開業資金・設備資金・運転資金に限定されており、融資限度額は7,200万円、そのうち運転資金が4,800万円です。
設備投資の返済期間は20年以内、運転資金の返済期間は7年以内となっています。
基本的な内容は、前項で紹介した新規開業資金と同じです。
新規開業資金よりも対象者の範囲が狭く、利率が低い制度といえます。
中小企業経営力強化資金
中小企業経営強化資金は、中小企業の経営力や資金調達力の強化を支援する目的の融資制度です。
以下のいずれかに該当する人が利用できます。
- 1.以下2つの要件を満たす
- ・経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等による市場の創出・開拓を行う計画である
- ・事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けている
- 2.以下2つの要件を満たす
- ・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している、もしくは適用予定である
- ・事業計画書の策定を行う
融資限度額は7億2千万円で、資金用途は設備資金および長期運転資金に限定されています。
適用利率は基準利率、返済期間は設備投資が20年以内、運転資金が7年以内です。
創業からの年数について定めがないため、個人事業主としての事業実績が長くても利用できるケースが多いでしょう。
②自治体や民間金融機関の制度を使う
日本政策金融公庫ではなく、自治体や民間金融機関の制度を使うのも1つの選択肢です。
自治体や機関の融資は制度によって要件の違いが大きく、中には創業から年数が経っていても利用できる制度もあります。
自治体や民間金融機関について、それぞれの特徴を紹介します。
制度融資
制度融資は、地方自治体・金融機関・信用保証協会の3者が連携して実行する融資です。
創業直後に利用できるものから、創業から一定の年数が経過した場合に利用できる制度まで幅広い選択肢があります。
制度融資は一般的な金融機関の融資制度と比べて金利が低い傾向です。
ただし、地方自治体・金融機関・信用保証協会のそれぞれで審査が行われるまで、融資実行までに時間がかかることがあります。
制度融資の種類や要件は窓口である自治体によって大きく異なるため、ご自身が会社設立をする自治体の制度をご確認ください。
銀行
銀行が行う融資の多くは、創業から一定年数が経過していることを要件としています。
そのため、銀行から創業融資を受けるのは容易ではありません。
しかし、個人事業主からの法人成りであれば、年数要件を満たせる可能性が高いです。
民間銀行の融資は、法人成りを行う場合に利用しやすい制度といえるでしょう。
銀行の融資の特徴として、申し込みから実行までのスピードが比較的速い点が挙げられます。
融資限度額や利率等は、利用する銀行・制度によって異なります。
信用金庫
信用金庫は、地域住民や中小零細企業の支援を目的とした非営利の金融機関です。
基本的に市町村単位で分けられており、信用金庫担当者と会員の距離が近い点が特徴として挙げられます。
きめ細やかなサービスを受けられる一方で、人的要素に左右されやすい部分もあります。
前項で紹介した民間の銀行よりも、さらに機関によって特徴・制度の違いが大きいです。
まとめ
創業融資に該当する制度の多くは、創業からの年数について要件を定めています。
個人事業主から法人成りをする場合は個人事業主時代の事業経歴が引き継がれるため、年数要件を満たせないケースもあります。
言い換えると、年数要件さえ満たしていれば法人成りの場合でも創業融資の利用が可能です。
法人成りの際に創業融資を利用するのであれば、年数要件が緩い制度を利用するのが良いでしょう。
今回紹介した融資制度は、いずれも年数要件が緩く、法人成りの際に利用できる可能性が高いものです。
創業融資の利用を検討している人は、ぜひ本記事を参考にしていただければ幸いです。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士