社用車の購入には多額の費用がかかります。
会社設立直後は様々な支出が発生するため、社用車の購入費用を自己資金でまかなうのが難しいケースも多いでしょう。
創業資金をすべて自分で用意するのが難しい場合、金融機関等の融資制度を利用するのが効果的です。
車の購入資金を調達する手段として、カーローンを思い浮かべる人が多いでしょう。
一方、創業資金の調達手段として人気の高い創業資金も、社用車の購入費用を調達する手段として利用できます。
今回は社用車の購入資金を調達する方法として、創業融資とカーローンどちらを利用すべきか、判断に役立つ情報を紹介します。
※本記事において、創業融資は日本政策金融公庫の制度に絞って解説します。
高級車の経費計上が可能かどうかについては、以下の記事をご覧ください。
起業時におすすめの創業資金については、以下の記事をご覧ください。
CONTENTS
創業融資とは
創業融資とカーローンのどちらが良いか比較するためには、それぞれの特徴を押さえることが大切です。
まずは創業融資について詳しく解説します。
創業融資の概要
創業融資とは、創業直後に利用できる融資制度の総称です。
起業・独立・開業時の資金調達手段として高い人気があります。
創業融資と呼ばれる制度には複数の種類がありますが、ほとんどは資金用途が設備資金と運転資金に限定されています。
設備資金は、文字通り事業を行う上で必要になる設備を購入するための資金です。
運転資金は、会社設立直後の売上が発生しない期間においてランニングコストとして充てるための資金を指します。
創業融資は創業に必要な資金の調達が目的であり、制度ごとの要件を満たしていれば申し込みが可能です。
社用車も設備資金に含まれるため、社用車の購入費用を調達する目的で創業融資を利用することもできます。
なお、社用車の購入資金として融資を申し込む場合、車の見積書等の資料を添付する必要があります。
社用車に限らず、設備資金は原則として見積書や根拠資料が必要です。
創業融資のメリット
社用車の購入資金を調達する手段として、創業融資を利用するメリットを3つ紹介します。
金利が低い
創業融資はカーローンに比べて金利が低めです。
そのため、借入額そのものが同じであっても創業融資を利用した場合の方が返済総額を抑えられます。
日本政策金融公庫の2023年8月1日時点における年利を紹介します。
- ・新創業融資制度:2.24~3.20%(基準利率)
- ・新規開業資金:0.99~2.55%(担保提供、基準利率)
- ・女性、若者/シニア起業家支援:0.59~2.15%(担保提供、特別利率A)
適用される利率は制度や申込者の状況によって異なりますが、後述するカーローンよりも低めの傾向です。
差額を他の用途に充てることができる
カーローンの場合、購入価額がそのまま借入額になるため差額が発生しません。
一方、創業融資の金額は見積額や必要な資金として予想される額を基に決定されます。
融資額と車の購入額に差額が出るケースも珍しくありませんが、差額部分は他の用途に充てることができます。
差額の大きさや状況に応じて柔軟な資金配分ができる点も、創業融資ならではの大きなメリットです。
ただし、融資額に資金用途が定められている場合、申し込んだ用途以外に使うと違反行為とみなされる恐れがあります。
別の用途に充てられるか・差額が出た場合にどうすれば良いか等、事前に確認する必要があります。
会社設立直後でも利用しやすい
創業融資は、名前の通り創業直後の人でも利用できる融資制度です。
融資制度やローンの多くは、返済能力を判断する材料として過去の事業実績を利用します。
申し込み時の必要書類として、過去数年分の決算書や確定申告書が求められます。
しかし、創業直後は事業実績がありません。申し込みに必要な資料が用意できないために融資やローンを利用できないケースが多く見られます。
しかし、創業融資は創業から間もない事業者が対象であり、返済能力は現況や事業計画から判断します。
そのため、会社設立直後で事業実績がない人でも利用しやすい資金調達手段です。
創業融資のデメリット
続いて創業融資のデメリットを2つ紹介します。
資金使途の変更には相談が必要
創業融資の大きなデメリットの1つが、資金使途の変更には相談が必要な点です。
前章でも紹介しましたが、創業融資は資金用途が定められているケースが多く見られます。
申し込んだ資金用途と異なる用途に使った場合は違反行為とみなされ、融資額の返済が求められる可能性もあります。
車の購入費用としての融資額と実際の購入額に差額が生じた場合、まずは公庫の担当者に相談しましょう。
別の用途に充てても問題ないと案内されるまで使わないように注意する必要があります。
必要書類が多い
創業融資の申し込みには、カーローンよりも多くの書類を提出する必要があります。
創業融資の申し込みに必要な書類として、以下の例が挙げられます。
- ・借入申込書
- ・創業計画書
- ・事業計画書
- ・本人確認書類
- ・履歴事項全部証明書(法人の場合)
- ・法人の印鑑証明書(法人の場合)
- ・資金用途が設備資金の場合は見積書
- ・通帳コピー
- ・許認可証
- ・ローンの支払明細書
上記はあくまで一部であり、より多くの書類が必要なケースもあります。
必要な書類が多いため、その分申し込みに時間と手間がかかります。
カーローンとは
続いて、カーローンについて詳しく解説します。
カーローンの概要
カーローンとは、文字通り車の購入資金を貸し付ける融資制度です。
カーローンは大きく以下の2種類に分けられます。
- ディーラーローン
- 車の購入先で契約するローンです。
- 購入手続きと一緒にローンの手続きも進められます。
- 銀行系ローン
- 金融機関が実施するローンです。
- 車の購入以外に限らず、免許の取得や車用品の購入資金に充てることができるローンもあります。
カーローンは創業融資と違い、車の購入価額がそのまま借入額になるため差額が発生しません。
カーローンのメリット
カーローンを利用するメリットを3つ紹介します。
創業融資に比べて必要書類が少ない
カーローンの申し込みに必要な書類の例を紹介します。
- ・会社の登記簿謄本
- ・代表者の身分証明書
- ・代表者および会社の借り入れ状況がわかる書類
- ・会社の財務状況がわかる書類
利用するディーラーや金融機関によって異なるため一概にはいえませんが、創業融資に比べて申し込み時に必要な書類が少ない傾向です。
なお、紹介したように多くのカーローンでは「会社の財務状況がわかる書類」の提出が求められます。
該当する書類として財務諸表や確定申告書が挙げられますが、会社の設立直後はこれらの書類がありません。
他の書類で代用できる可能性もありますが、申し込みを断られてしまうケースも考えられます。
カーローンは必要書類が少ないとはいえ、創業直後の会社では用意できない書類を求められる可能性がある点に注意しましょう。
車の購入先でローンを組むのであれば一緒に契約できる
ディーラーローンであれば、車の購入手続きと一緒にローンの契約を進められます。
手続きを一度に済ませることで手間を抑えられる点は大きなメリットです。
審査期間が創業融資よりも短い
カーローンの審査期間は創業融資の審査期間よりも短めです。
創業融資は、担当者との面談から融資の結果が出るまで、2~3週間程度かかります。
一方カーローンの場合、ディーラーローンであれば結果が即日出ることも多いです。
銀行系のカーローンでも、審査は1週間程度で済みます。
カーローンのデメリット
続いて、カーローンのデメリットを2つ紹介します。
会計処理が複雑
創業融資による借入金が振り込まれた時、借方は普通預金、貸方は借入金などの勘定科目を使って仕訳をきるのが一般的です。
一方、カーローンは購入額と借入額がイコールであり、現金が振り込まれるわけではありません。
貸方はローン残高として借入金または未払金を使い、借方は項目別に適切な勘定科目を設定する必要があります。
車の購入価額には、本体価格だけでなく保険料・税金・手数料・リサイクル預託金など様々な費用が含まれています。
使う勘定科目が多いため、慣れていない人は会計処理に戸惑うかもしれません。
ローンと車購入が同時に発生することで仕訳が複雑になる点は、人によっては大きなデメリットとなるでしょう。
会社設立直後で実績がない状態では審査に通過しにくい傾向
前章で紹介したように、多くのカーローンでは「会社の財務状況がわかる書類」が必要です。
該当する書類として財務諸表や確定申告書が挙げられますが、いずれも会社設立直後には用意できません。
他の書類で代用できる可能性もありますが、設立直後の会社は信用度が低いと判断されてローン契約ができない可能性があります。
利用するローンによるため一概にはいえませんが、会社設立直後で実績がない状態では審査に通過しにくい傾向があります。
車の購入 創業融資とカーローンのどちらが良い?
創業融資とカーローンの特徴について詳しく解説してきました。
それぞれに異なるメリット・デメリットがあるため、車の購入資金を調達する手段としてどちらを選ぶべきかケースによって異なります。
個々の状況を照らし合わせた上で、自身に合う方を選ぶことが大切です。
あくまで一例ですが、創業融資とカーローンのどちらを選ぶべきか判断基準を紹介します。
- ・返済総額をなるべく抑えたい
- 金利が低い創業融資がおすすめです。
- ・審査通過率が高い方が良い
- 会社設立直後はカーローンの審査に通過しにくい傾向です。
- 創業直後でも利用しやすい創業融資が良いでしょう。
- ・審査結果が出るまでの時間が短い方が良い
- カーローンの方が創業融資よりも審査結果が早く出るケースが多く見られます。
- ・申し込みの手間を最小限に抑えたい
- 必要書類が少ないカーローンの方が手間を抑えやすいです。
- ただし、必要な手続きは申し込む制度によって異なります。
- そのため個々に確認する必要があります。
まとめ
創業融資とカーローンには、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットがあります。
創業直後でも利用しやすい制度は創業融資の方でしょう。金利が低いため返済総額を抑えやすい点も大きなメリットです。
一方、カーローンは審査期間が短く必要書類も少ないというメリットがあります。
ただし、創業直後は利用できないカーローンも多いため注意が必要です。
創業融資とカーローンそれぞれの特徴を押さえた上で、自身に合う方を選びましょう。
経営判断を迅速にサポート
創業融資・補助金申請はBIZARQにお任せください。
全国オンライン対応・ご相談は無料です。
記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士