創業融資は創業のタイミングだけでなく、創業から数年であれば申し込める制度が多いです。
そして1期目の決算を終えて以降に申し込む場合、事業実績や財務状態を示す決算書を提出する必要があります。
創業融資に限らず、融資を成功させるには審査でチェックされるポイントを押さえ、適切な対策を行うことが大切です。
決算書についても同様で、担当者にチェックされるポイントや審査に向けての注意点を知っておく必要があります。
今回は創業融資で提出する決算書について、ポイントや注意点を詳しく解説します。
なお、設立したばかりで事業実績がない場合、審査には決算書ではなく創業計画書を使います。
創業計画書については以下の記事で解説していますので、こちらをご覧ください。
追加融資については、こちらをご覧ください。
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CONTENTS
【前提】融資審査で使う決算書とは
はじめに、決算書の概要について解説します。
決算書の概要
決算書とは、事業者の経営成績及び財務状況を表す書類です。
法人の場合は、以下4つの帳票を決算書と呼びます。
- ・貸借対照表
- ・損益計算書
- ・株主資本等変動計算書
- ・個別注記表
個人事業主(青色申告)の場合は、以下の書類が青色申告決算書と呼ばれます。
- ・損益計算書
- ・損益計算書の内訳
- ・貸借対照表
※白色申告の個人事業主には決算書と呼ばれる書類がありません。収支内訳書が近い性質を有します。
融資審査で用いる決算書は、厳密には決算申告書一式を意味します。
法人の場合は、創業融資の申し込みに際して以下の書類が必要です。
- ・決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)
- ・勘定科目内訳明細書
- ・法人事業概況説明書
- ・各種税務申告書
- ・税務代理権限証書
個人事業主が申し込む場合は以下の書類が必要となります。
- ・所得税や消費税の確定申告書
- ・青色申告決算書(損益計算書・損益計算書の内訳・貸借対照表 青色申告の場合)
- ※白色申告の場合は収支内訳書が必要です。
- ・各種控除関係書類等
決算書を確認するのは事業実績がある場合のみ
最初に少し触れましたが、融資審査で決算書を確認するのは事業実績がある場合のみです。
創業融資では、1期目の決算を終えた後の申し込みで決算書が必要となります。
創業直後で事業実績がない段階で申し込む場合は、決算書の代わりに申込者の経歴や借入状況、創業計画などの資料を用います。
様々な要素から返済能力に影響する懸念事項の有無や返済能力を判断し、融資を行うか否かを審査する仕組みです。
融資審査 決算書でチェックされるポイント
創業融資の審査において、決算書でチェックされるポイントを詳しく解説します。
損益計算書の経常利益
損益計算書の経常利益は、決算書の中でも早い段階でチェックされるポイントです。
前提として、損益計算書に記載される利益には以下の5種類があります。
- 売上総利益
売上から仕入等の原価を引いた利益で、粗利ともいいます。 - 営業利益
- 売上総利益から販管費(販売費及び一般管理費)を引いた利益です。
- 経常利益
- 営業利益から雑収入などの営業外収益を足し、支払利息などの営業外費用を引いた利益を指します。
- 税引前当期純利益
- 経常利益から売却収入等の特別利益を足し、固定資産除却損等の特別損失を引いた利益です。
- 当期純利益
- 税引前当期利益から税金を引いた利益で、基本的に損益計算書の最下部に表示されます。
このうち金融機関が重視するのは経常利益です。支払利息を引いた後の利益がプラスであれば安心と判断されます。
経常利益の次に重視するのは営業利益です。
本業による利益のため。営業利益のプラスは審査を受ける上での大前提となります。
特別損益は特殊なケースでのみ発生する損益のため、税引前当期純利益は黒字が理想ではあるものの特別重視はされません。
経常利益が黒字であれば好印象になる可能性が高いです。
実態財務
決算書のうち、財務状況を表す貸借対照表の内容が実態を表したものであるかを確認します。
特に重視されるのが資産の部です。
現預金・売掛金・棚卸資産は粉飾決済で使われるケースが多いため、内容が正しいか入念に確認される部分といえます。
仮払金・貸付金は、お金が返ってくる可能性があるかという観点でチェックされます。
もし将来的にお金が返ってこないとみなされる場合は資産としてカウントされません。
このように、実態を正しく表した数値であるか、現金化できる資産であるかをチェックされます。
なお、現預金は月商2~3ヶ月分以上あるのが理想です。
もし残高が少ない場合は、その理由を説明できるだけの用意が必要となります。
また、売掛金回収の可能性も重視されます。
長期間回収できずにいる売掛金がある場合はマイナス評価になる恐れがあるため注意が必要です。
純資産の部
純資産の部とは、貸借対照表における資産と負債の差額部分です。
資産が債務を上回った状態を資産超過、債務が資産を上回った状態を債務超過といいます。
資産超過が大きいほど、会社に体力があり安全性が高いと判断されます。
反対に債務超過の会社は危険と判断され、融資のハードルが上がる傾向です。
提出した貸借対照表の数値をそのまま用いるのではなく、前項で紹介したように実態財務のチェックによって出した数値に基づいてチェックします。
返済可能性
返済可能性は、以下の要素から総合的に判断されます。
- 1.現預金
- 現預金がなければ将来的に資金繰りが悪化する可能性があります。
- たとえ利益が大きくても返済能力が不十分とみなされる恐れが大きいです。
- 2.収益力
- 利益+減価償却費の簡易キャッシュフローを返済財源とみなします。
- この額が年間の融資返済額を下回ると決算書上は黒字でもお金が減っていきます。
- 3.債務償還年数
- 減価償却費を含む利益すべてを返済に充当したと仮定した場合の完済までの年数です。
- 債務償還年数がおおむね10年以内であれば良好と判断されます。
融資審査の決算書に関する注意点
創業融資の決算書に関する注意点を2つ紹介します。
実態を反映した決算書を提出する
創業融資の審査で決算書が求められた際は、必ず実態を反映した決算書を提出しましょう。
見かけの数値が悪いからといって、粉飾決済や架空計上は厳禁です。
これまで紹介したように、融資の審査では提出された決算書をそのまま使うのではなく、実態を調査した上で審査が行われます。
粉飾決済や架空計上を行い書類上は良好な数値になったとしても、審査で好印象にはなりません。
むしろ、実態との差が大きく数値を偽っている等のマイナスにつながります。
金融機関との信頼関係が崩れて以後の融資も受けられない恐れがあるため、粉飾決済や架空計上は絶対にやめましょう。
勘定科目内訳明細書の確認は必須
勘定科目内訳明細書は、融資審査に向けた準備で見落としがちでありながらも重要な書類です。
勘定科目内訳明細書の確認は必ず行いましょう。
融資審査では、貸借対照表の分析に勘定科目内訳明細書を用います。
勘定科目内訳明細書の内容が雑なケースや正確性に欠ける場合、貸借対照表の分析が困難なため審査で不利になりやすいです。
マイナスにつながる要因として、貸借対照表と数字が合わない・内訳ではなく合計のみが記載されている・名称が不正確等が挙げられます。
逆に、勘定科目内訳明細書の内容が充実しており、貸借対照表の分析に十分活用できるものであれば好印象を与えられる可能性が高いです。
また、勘定科目内訳明細書に関する質問に答えられる経営者は、信頼感や安心感を獲得しやすいともいえます。
創業融資の申し込みをする前に、勘定科目内訳明細書の内容を一通り確認しておきましょう。
まとめ
設立1期目の決算を終えた後に創業融資を申し込む場合、基本的には決算書の提出が求められます。
審査で決算書のどこをチェックされるか知っておけば、日頃の会社運営や決算書作成の段階から審査対策を意識できるでしょう。
また、「完璧な決算書だと思ったのにマイナス評価だった」「何が悪いのかわからない」等のギャップが起こるのも防げます。
なお、決算書の分析や情報の正しい把握には、会計に関する高度な知識が必要です。
疑問や不安があれば、自身ですべて対応しようとせず、専門家である税理士へご相談ください。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士