中小企業経営力強化資金とは?融資条件とメリット・デメリットについて解説!

2024.02.03

中小企業経営力強化資金は、日本政策金融公庫による融資制度の1つです。

創業直後で実績がない時期でも要件を満たせば利用できるため、創業融資の1つとして挙げられます。

 

中小企業経営力強化資金は融資条件が厳しい分、融資限度額や利率等の面でメリットがあります。

一方、他の創業融資に比べて申し込みおよび融資実行後の手間がかかる点がデメリットです。

中小企業経営力強化資金を申し込む前に、同制度のメリット・デメリットの両方を把握する必要があります。

 

今回は中小企業経営力強化資金について詳しく解説します。

 

日本政策金融公庫によるその他の創業融資については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

※中小企業経営力強化資金には国民生活事業と中小企業事業の2種類がありますが、本記事では国民生活事業の方について解説します。

CONTENTS

中小企業経営力強化資金の概要

はじめに、中小企業経営力強化資金の概要を紹介します。

中小企業経営力強化資金を受けられる人の要件

中小企業経営力強化資金は、以下の要件をすべて満たす人のみ利用できます。

  • 1.新たに事業を始める人、もしくは事業開始からおおむね7年以内の人
  • 2.「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を
    適用済、もしくは適用予定
  • 3.自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関
    による指導および助言を受けている

中小企業の会計に関する基本要領とは、中小企業の実態を考えて作られた中小企業向けの会計ルールです。

基本的な会計処理の仕方や考え方、財務諸表の記載に関する注意事項等がまとめられています。

中小企業の会計に関する基本要領は、中小企業庁の公式サイトで確認できます。

 

中小企業の会計に関する指針は、日本公認会計士協会・日本税理士会連合会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4団体が主体となった委員会によって公表されている指針です。

中小企業が会計書類を作成する際の拠るべき会計処理や注記が示されています。

こちらは、日本税理士連合会の公式サイトで確認可能です。

 

要件のうち「2」は簡単にいうと、中小企業の会計ルールに則った正しい会計処理を行うことと表現できます。

 

3の中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関は、中小企業庁の公式サイトで確認可能です。

中小企業経営力強化資金は支援機関によるサポートを受けた場合のみ申し込みができる制度であり、事業者単独での申し込みはできません。

中小企業経営力強化資金の特徴

中小企業経営力強化資金の基本事項を紹介します。

  • 資金用途
  • 開業費、事業開始後に必要となる設備資金および運転資金
  •  
  • 融資限度額
  • 7,200万円 うち運転資金4,800万円
  •  
  • 返済期間
  • 設備資金20年以内 運転資金7年以内 いずれも据置期間2年以内
  •  
  • 利率
  • 特別利率A ※基準利率よりも低め
  •  
  • 担保・保証人の有無
  • 相談しながら決定

 

中小企業経営力強化資金は条件を満たせば事業開始時にも利用できる制度のため、創業融資の1種といえます。

特徴的な要素は、前項で紹介した利用要件の厳しさです。事業者単独での申し込みができず支援機関によるサポートが必須な点が最も特徴的な部分といえます。

その他の要素について、他の創業融資制度と比較して目立つ部分は特にありません。

中小企業経営力強化資金を申し込む際の流れ

中小企業経営力強化資金を申し込む際の大まかな流れを紹介します。

 

  • 1.サポートを依頼する認定支援機関を選定する
  • 2.認定支援機関に、中小企業経営力強化資金について相談をする
  • 3.融資に申し込むための必要書類を作成する
  •  認定支援機関によるアドバイスやサポートに沿って作成します。
  • 4.公庫に必要書類を提出する
  • 5.公庫の担当者と面談を行う
  • 6.融資審査が行われる
  •  結果が出るまでの期間は一般的に2~3週間程度です。
  • 7.融資契約、融資実行
  •  審査に通過したら契約し、その後融資実行となります。

 

融資実行までの流れは以上です。

 

なお、中小企業経営力強化資金は年1回の報告が義務付けられています。

融資実行後は返済だけではなく、調査・報告義務についても期日に遅れないよう注意して進める必要があります。

中小企業経営力強化資金のメリット

この章では、中小企業経営力強化資金のメリットを3つ紹介します。

創業融資の中では融資限度額が高め

中小企業経営力強化資金は、創業融資と呼ばれる制度の中では融資限度額が高めです。

 

中小企業経営力強化資金の融資限度額は7,200万円、うち運転資金が4,800万円と設定されています。

創業時に多額の資金が必要な場合、かなり有用な資金調達手段になり得るといえるでしょう。

 

ただし、融資限度額が高いからといって、必ずしも高額の融資を受けられるわけではありません。

融資額は事業計画の内容や申込者の経歴・現況などの様々な要素によって決められます。

高額の融資を受けるためには、それ相応の準備や対策が必要な点にご注意ください。

特別利率の適用を受けられる

中小企業経営力強化資金の利率は、特別利率Aと定められています。

 

日本政策金融公庫は複数の利率区分を設けており、申込者の現況や融資制度の種類によって異なる利率を適用しています。

一般的に適用されるのは基準利率です。担保を提供する融資を利用する場合の基準利率は、令和6年1月4日現在で1.10~2.80%となっています。

一方、中小企業経営力強化資金で適用される特別利率Aは0.70~2.40%と、基準利率よりも低めです。(担保を提供する融資を利用する場合の特別利率A)

適用される利率が低いため、基準利率が適用される一般的な融資制度よりも返済総額を抑えられます

自己資金要件がない

中小企業経営力強化資金には、自己資金要件がありません

そのため、理論上は自己資金が少ない場合やゼロの場合でも申し込みが可能です。

参考として、創業融資の代表的な制度である「新創業融資制度」は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要です。

 

ただし、自己資金要件がない場合でも自己資金が多い方が融資審査で有利なのは事実です。

自己資金なしでも申し込めるとはいえ、なるべく多くの自己資金を用意するのが理想と言えます。

中小企業経営力強化資金のデメリット

中小企業経営力強化資金のデメリットは、他の融資制度に比べて手間がかかる点です。

具体的な内容を紹介します。

認定経営革新等支援機関による指導および助言を受ける必要がある

中小企業経営力強化資金に申し込むためには、事前に認定経営革新等支援機関による指導および助言を受ける必要があります。

すなわち、事業者・経営者が単独で申し込むことはできません。

融資に申し込むために必要な工程が多いため、ハードルが高いと感じる人も多いでしょう。

 

ただし、創業融資の申し込みを事業者や経営者がすべて1人で行うのは容易ではありません。

実際のところ、審査の通過率を高めるには創業支援に強みを持つ専門家のサポートが必要不可欠となります。

中小企業経営力強化資金は専門家のサポートが必須である分、質の高い書類作成や効果的な対策が確実にでき、自身が負う負担は軽く済むともいえるでしょう。

融資を受けた後の報告義務がある

中小企業経営力強化資金は融資を受けた後、年1回の報告義務があります。

返済期間が長くなるほど報告の回数も増えるため、より負担が重くなります。

報告義務を怠るとペナルティが課せられるため注意が必要です。

まとめ

中小企業経営力強化資金は要件さえ満たせば創業直後でも利用できる、創業融資制度の1つです。

特徴として、中小企業の会計ルールへの準拠が前提条件である点と、支援機関によるサポートを受ける必要がある点が挙げられます。

 

中小企業経営力強化資金のメリットとして、融資限度額が高い・利率が低め・自己資金要件がない点が挙げられます。

デメリットは、他の創業融資に比べて手間がかかる点です。

特に報告義務は怠るとペナルティが課されるため注意する必要があります。

 

中小企業経営力強化資金の特徴やメリット・デメリットをしっかり押さえた上で、申し込むかの検討をしましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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