
スプレッド融資とは、資金の仕入れコストに銀行のもうけを上乗せした水準で行う融資です。スプレッドとは、利回り差や利ざやを意味します。
スプレッド融資は適用される金利が非常に低いため、他の融資を利用する場合に比べて返済総額を抑えられます。
ただし、スプレッド融資は利用のハードルが極めて高く、中小企業が利用するのは難しいのが現状です。
まずはスプレッド融資を受けるために必要な条件や、自社に必要な要素について理解を深める必要があるでしょう。
今回はスプレッド融資の特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
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CONTENTS
スプレッド融資の概要

はじめにスプレッド融資の概要を紹介します。
スプレッド融資とは
スプレッド融資とは、資金の仕入れコストに銀行のもうけを上乗せした水準で行う融資です。
スプレッドは利回り差や利ざやを指し、融資における銀行の収入源となります。
スプレッド融資における金利の決め方
スプレッド融資では、基準金利であるTIBORレートに銀行側の儲けとなるスプレッドを足した金利が適用されます。
TIBORレートは銀行間での融資に適用される金利です。Tokyo Inter-Bank Offered Rateの略称で、東京銀行間取引金利を意味します。
一般的な融資に適用される金利のうち最も優遇された「プライムレート」と比較しても、TIBORレートは圧倒的に低く設定されています。
2024年4月時点で比較すると、短期プライムレートの最頻値は1.475です。
一方、融資期間12ヶ月のTIBORレートは0.3%前後と、短期プライムレートよりも1%以上低く設定されています。
※短期プライムレート参照元|日本銀行公式サイト、TIBORレート参照元|全銀協日本円TIBOR
その上、プライムレートがそのまま適用されるのは信用度が高いと判断された優良企業に限ります。
実際はプライムレートに上乗せ金利を適用した金利を適用するケースがほとんどです。
スプレッド融資の借入金利と、プライムレートを基準にした融資の借入金利を比較すれば、より大きな差となるでしょう。
つまり、スプレッド融資は基準金利が非常に低く最低限の儲け分のみを上乗せするため、他の融資と比べて圧倒的な低金利になるのです。
なお、TIBORレートの設定は1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月の5種類です。
TIBORレートの最長が12ヶ月、すなわち1年間である以上、スプレッド融資も原則として1年以内の短期融資となります。
スプレッド融資のメリット

スプレッド融資のメリットを2つ紹介します。
低金利で融資を受けられる
スプレッド融資の最も大きなメリットは、低金利で融資を受けられる点です。
前述のように、多くの融資はプライムレートを基準とし、申込者の業績をはじめとした様々な要素を考慮した利率を上乗せした金利を適用します。
スプレッド融資も基準金利に銀行のもうけを上乗せする方法であり、基本的な仕組みは同じです。そのため、基準金利の低さが融資で適用される金利に強く影響します。
前章で紹介したように、スプレッド融資の基準金利であるTIBORレートは、一般的な融資に適用される金利よりも1%以上低いです。
金利が低いため利息総額が小さくなり、結果として、返済総額も他の融資を利用する場合より小さくなります。
優良企業として評価された証拠になる
スプレッド融資は適用される金利が非常に低い分審査基準がかなり厳しく、少しでも懸念事項があれば融資を受けられません。
言い換えると、スプレッド融資を受けられると認められた事実は、優良企業として評価された証拠になります。
一度でもスプレッド融資を利用できれば、その後も他の金融機関から信用を得やすくなるでしょう。
スプレッド融資のデメリット

続いて、スプレッド融資のデメリットを2つ紹介します。
利用のハードルが極めて高い
スプレッド融資の最大のデメリットは利用のハードルが極めて高い点です。ハードルが高いために、そもそもスプレッド融資を利用できないケースも多いです。
スプレッド融資のハードルが高い理由を3つ紹介します。
必要な融資額が最低でも1億円以上と高額
スプレッド融資の最低額は銀行によって異なりますが、ほとんどの場合で最低1億円以上と非常に高額です。
スプレッド融資は金利が低いため、融資額が少ないと銀行側の手元に残るのがごく僅かとなってしまいます。
スプレッド融資である程度まとまった額の利益を得るために、最低融資額がどうしても高額になってしまうのです。
中小規模の金融機関はスプレッド融資を実施していないケースが多い
スプレッド融資を実施しているのは、大口の資金需要に対応できるような規模の大きい金融機関がほとんどです。
地方銀行や信用金庫のような小規模の金融機関では、資金力や収益性の理由からスプレッド融資はあまり実施されません。
中小企業が取引する金融機関の多くは中小規模です。取引相手となる金融機関でスプレッド融資を実施していない以上、スプレッド融資を受けられる機会自体があまりないといえるでしょう。
懸念事項がないと判断した企業に対してしかスプレッド融資が行われない
金融機関が低金利で融資を実行するのは、信用度が高く貸し倒れリスクが低いと判断した場合のみです。
つまり、有利な条件で融資を受けるには厳しい条件をクリアする必要があります。
スプレッド融資はかなりの低金利であるため審査基準が非常に厳しく、少しの懸念事項も許されないといえるでしょう。
返済期間が短い
「スプレッド融資における金利の決め方」で紹介したように、スプレッド融資の適用金利はTIBORレートを基準に決定されます。
基準となるTIBORレートの最長が1年のため、スプレッド融資の融資期間も最長で1年程度と短いケースがほとんどです。
そして前述の通り、スプレッド融資による融資額は最低でも1億円以上となります。
短い返済期間で高額の返済をする必要があるため、規模の小さい企業には難しいといえます。
仮にスプレッド融資を受ける条件を満たしていても、融資期間が短いため自由度が低く、使いにくさを感じる可能性があるでしょう。
スプレッド融資による資金調達を検討するべき?

前提として、スプレッド融資を利用できるのは以下のような企業に限られます。
- ・1億円以上の借入ができる力がある
- ・金融機関からの信頼を得ている
- ・短い返済期間で高額の融資を返済できるだけの事業規模(売上規模)である
このように条件が非常に厳しいため、中小企業がスプレッド融資を利用するのは難しいのが事実です。
中小企業でスプレッド融資を利用するのが現実的とはいえない以上、資金調達手段としてスプレッド融資を検討するのはおすすめできません。
ただし「スプレッド融資を受けられるだけの実力を身につける」ことを目標にするのは良いでしょう。
企業としてどのような姿を目指すか、財務状態や業績を向上させるにはどうすれば良いか等を考える上での明確な指標になり得ます。
まとめ
スプレッド融資は、資金の仕入れコストに銀行のもうけを上乗せした水準で行う融資です。
スプレッド融資の基準金利であるTIBORレートは、一般的な融資の基準金利よりも低めに設定されています。
基準金利が低いため、銀行のもうけ分となる上乗せ金利を加えた借入金利も低めの水準になります。
低い金利で融資を受けられる点は、スプレッド融資最大のメリットといえるでしょう。
ただし、スプレッド融資は利用のハードルが非常に高く、特に中小企業にとっては現実的とはいえない融資です。
そのため、資金調達手段としてスプレッド融資はおすすめできません。
スプレッド融資は事業規模が大きくなり、金融機関から信頼されるような企業になってから検討するのが良いでしょう。
スプレッド融資を今すぐ利用するのではなく、長期的な目標として考えるのがおすすめです。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士