タワマン節税とは?仕組みと注意点、税制改正後の変更点について解説!

2023.09.03

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タワマン節税とは、タワーマンションの購入価額と相続税評価額の開きの大きさを活用した相続税の節税対策です。

相続税の節税対策として不動産を購入する人は多いですが、中でもタワマンは特に節税効果が大きいため人気です。

そんなタワマン節税ですが、税制改正によって2024年度以降は現行のような節税効果を得られない恐れがあります。

タワマン節税を検討している人は、税制改正の内容や今後の動向に注意が必要です。


今回はタワマン節税の概要や仕組み、税制改正後の変更点について解説します。


以下の記事でも不動産を活用した節税テクニックについて解説しておりますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

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CONTENTS

タワマン節税の概要

はじめに、タワマン節税の概要について解説します。

タワマン節税とは

タワマン節税とは、タワマン(タワーマンション)の購入価額と相続税評価額の開きの大きさを活用した節税対策です。

 

相続が発生した際、相続税の課税対象となる遺産総額を決定する必要があります。

相続財産には現金や有価証券のように金額が明確なものもあれば、不動産のように資産価値が不明瞭なものもあります。

後者については、一定の方法で財産価格の計算が必要です。

相続において、不動産は購入価額や販売価額ではなく、土地部分は路線価方式または倍率方式・建物部分は固定資産税評価額をベースに金額を決めます。

上記の方法で計算した金額を相続税評価額と呼びます。

 

相続税評価額のベースとなる固定資産税評価額は時価の7割を目安として設定されるため、不動産の相続税評価額は購入価額や販売価額よりも低くなるケースがほとんどです。

つまり、現預金そのままよりも不動産を購入した方が、元の金額が同じでも相続税の計算に用いる遺産総額を少なくできる可能性が高いのです。

 

このような不動産の購入による相続税の節税対策はタワーマンションに限らず多く行われていますが、マンションは土地部分を各部屋の専有面積に応じて按分するため、部屋数が多いタワマンは土地部分の評価額がより低くなります。

また、相続税評価額のベースとなる固定資産税評価額は階ではなく面積によって決定されますが、固定資産税評価額は同じでも高層階の方が人気で需要があるため、販売価額が高額になる傾向にあります。

結果として、高層階になるほど購入価額や時価と相続税評価額の差が大きくなりやすいといえます。

 

このような理由から、タワマンを活用した相続税の節税対策は大きな効果が期待できます。

タワマン節税が注目される背景

タワマン節税が富裕層に注目される背景には、相続税の課税強化があります。

2015年の基礎控除額引き下げにより相続税の対象者が拡大し、アベノミクスによる都心部不動産価格上昇も節税ニーズを高めました。特に高齢化社会の進展により相続対策の重要性が増している中で、不動産を活用した節税手法として広く普及しました。

 

しかし、過度な節税効果が税負担の公平性を損なうとして、国税庁が問題視するに至っています。

タワーマンションの購入によって節税できる税金

タワーマンションの購入・活用によって節税できる税金は2種類です。

相続税

前項で解説したように、タワーマンションは土地部分の評価額が低くなりやすいために、購入価額や時価に対して相続税評価額が低くなる傾向にあります。

そのため、相続税の節税目的でタワーマンションを購入するケースは多くみられます。

固定資産税

固定資産税には、200㎡以下の狭い住宅用の土地を対象とした特例制度があります。

 

通常、固定資産税は固定資産税評価額×1.4%です。

しかし例外として、200㎡以下の住宅用の土地にかかる固定資産税は通常の6分の1となります。

 

前述したように、マンションは土地部分を各部屋の専有面積に応じて按分します。

タワマンのように部屋数が多い不動産は必然的に所有者ごとの土地所有面積が小さくなり、ほとんどの場合において土地所有面積は200㎡以下となります。

したがって、タワマンは土地部分にかかる固定資産税がほぼ確実に通常の6分の1になるのです。

所得税(賃貸運用時)

タワーマンションを賃貸運用する場合、所得税においても節税効果が期待できます。建物部分の減価償却費を経費として計上でき、特に築年数の浅い高額物件では大きな償却額となります。また、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料なども必要経費として計上可能です。

 

ただし、賃貸収入がある場合は不動産所得として申告が必要で、他の所得と損益通算することで所得税・住民税の軽減効果も得られます。

24年度以降、制度改正によりタワマン節税に変化が

前章で、タワマンは高層階になるほど購入価額や時価と相続税評価額の差が大きくなりやすいため、相続税の大きな節税効果が期待できると紹介しました。

 

しかし、前章で解説した相続税の節税に関する内容は、2023年時点の制度に基づく情報です。

制度改正により、2024年度以降はこれまでのようなタワマンを使った相続税対策ができなくなる恐れがあります。

 

2024年度以降の税制改正によるタワマン節税の変化について解説します。

24年度以降の制度改正とは

現行制度では、マンションの固定資産税評価額は階の違いによる影響を受けません。

低層階と高層階であっても、部屋の面積が同じであれば固定資産税評価額も同額です。

 

しかし報道によると、今後は時価の高い高層階の部屋について、評価額が高くなるような算出方法を検討する方針とされています。

税負担の公平性の観点によって導入される仕組みです。

 

以前から、タワマン節税は相続税逃れとして指摘を受けるケースがありました。

タワマン節税を行った相続人が国税庁による追徴課税を受けて不服申し立てを行い、結果として相続人が敗訴した事例もあります。

 

2023年6月時点では制度改正の具体的な内容は発表されていませんが、今後の方針に注意が必要です。

タワマン節税に関して納税者が敗訴した判例

前項で少し紹介した、タワマン節税に関する裁判で納税者である相続人が敗訴した事例を紹介します。

 

2022年4月に最高裁判決が出された「タワマン裁判」と呼ばれるものです。

裁判や起きるまでの経緯や論点となった部分を簡単にまとめます。

 

  • ・被相続人が90歳の時に約8億3,700万円のマンションAと約5億5,000万円のマンションBを購入した。亡くなる直前(3年前)の出来事。
  •  
  • ・マンションの購入に際して、被相続人は購入費として約10億円の融資を受けていた
  •  
  • ・相続人は路線価方式によってマンションの相続税評価額を算出。マンションAは約2億円、マンションBは約1億3,400万円という計算結果に
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  • ・マンションの購入目的で融資を受けていたため、相続税を0円として申告
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  • ・申告内容を不当とした国税庁はマンションの実勢価格を調査、マンションAを約7億5,400万円、マンションBを約5億1,900万円と評価とした
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  • ・相続税0円として申告した相続人に対し、追徴課税約3億円を課した
  •  
  • ・更正処分に対して相続人は不服を申し立て、訴訟を起こす
  •  

1審となる地裁判決で国税局側が勝訴、その後2審でも1審の判決である国税局側の勝訴が維持されました。

相続人側は最高裁に上告して最高裁にまで発展しますが、2022年4月19日、最高裁判決で国税庁側が勝訴・相続人が敗訴となりました。

 

 

この判例において重要な論点として、以下の3つが挙げられます。

  • ・被相続人が90歳という高齢でマンションを購入していた
  • ・相続人は被相続人が亡くなったすぐ後、相続税の申告を行う前にマンションBを5億1,500万円で売却していた
  • ・マンション購入目的の融資について、貸出稟議書に「相続税対策」が理由であると明記されており、融資の利用が意図的な相続税対策であることが明らかになった

路線価方式での評価により時価よりも遥かに安価な評価額になった事実も大きな論点ではありますが、露骨な租税回避行為が存在した点も、相続人の敗訴につながった理由です。

最高裁判決が与えた影響と教訓

2022年4月の最高裁判決は、タワマン節税業界に大きな衝撃を与えました。この判決により、財産評価基本通達6項(総則6項)の適用基準が明確化され、「著しく不適当」な評価に対する国税庁の姿勢が厳格化しました。

 

判決の教訓として、①高齢時の購入は避ける、②相続直後の売却は控える、③借入目的を相続税対策と明記しない、④適度な節税に留める、などの対策が重要とされています。この判決を契機に、2024年の評価方法改正につながったとも言われています。

タワマン節税はできなくなる?

2024年以降の制度改正の具体的な内容が公表されていないため、今後どうなるか現時点では不明です。

報道の内容から、タワーマンションを活用した相続税対策について、これまでと同様の節税効果は得られなくなる可能性が高いと考えられます。

 

ただし、制度改正後も不動産を活用した相続税対策は十分な効果が期待できると思われます。

 

確かに、制度改正によって高層階の固定資産税評価額が高くなれば、結果として相続税評価額も現行制度の場合よりは高くなるでしょう。

しかし前提として、固定資産税評価額は時価の7割を目安として設定されます。

そのため、固定資産税評価額が時価や販売価額よりも高くなる可能性はほとんどありません。

固定資産税評価額をベースに算出される相続税評価額も同様に、時価よりも大きい金額とはならないでしょう。

 

以上の理由から、制度改正によってタワマン特有の節税効果は下がるものの、不動産を活用した節税としては効果的な手段であり続けると考えられます。

現金をそのまま相続するよりも、不動産を購入した方が、元の金額が同じでも相続税額を抑えられる可能性が高いです。

 

上記の内容はあくまで予測であり、正確な内容が報道されるまで断定はできません。

いずれにせよ、税制改正に関して今後発表される内容に注意が必要です。

2024年改正後のタワマン節税対策

2024年の制度改正後もタワマン節税は完全になくなるわけではありません。改正により評価額の下限が市場価格の6割に設定されましたが、現金相続と比較すれば依然として節税効果は残ります。

改正後の節税効果

2024年改正後のタワマン節税では、相続税評価額が市場価格の6割を下回る場合に補正が行われます。しかし、6割という水準は一戸建て住宅の評価水準と同等であり、現金で相続するよりも4割の節税効果は期待できます。

特に築年数が古い物件や低層階の物件では、従来通りの評価が適用される可能性もあります。

 

ただし、築年数が浅く総階数が多い高層階物件では、大幅な評価額上昇が予想されます。

タワマン購入時の注意点

改正後のタワマン購入では、より慎重な検討が必要です。購入タイミングは相続発生の3年以上前が望ましく、相続直後の売却は避けるべきです。物件選択では、立地・築年数・階数・管理状況を総合的に判断し、投資リスクも考慮する必要があります。

また、借入目的を明確化し、相続税対策である旨を書面に残すことは控えるべきです。

 

専門家への相談を通じて、適切な節税レベルに留めることが重要です。

代替の相続税対策

タワマン節税の効果縮小を受け、他の相続税対策との組み合わせが重要になります。小規模宅地等の特例は依然として有効で、居住用宅地では330㎡まで80%の評価減が可能です。

また、生前贈与の活用、生命保険の非課税枠利用、事業承継税制の適用なども検討すべき選択肢です。

 

不動産投資では、タワマン以外の収益物件や地方物件への分散投資も効果的な戦略となります。

タワマン節税についてよくある質問

タワマン節税に関する疑問や不安を解消するため、よくお問い合わせいただく質問をまとめました。制度改正後の現状を踏まえ、適切な相続対策の参考にしてください。

2024年の改正でタワマン節税は完全に使えなくなったのですか?

完全に使えなくなったわけではありません。改正により相続税評価額の下限が市場価格の6割に設定されましたが、現金相続と比較すれば4割程度の節税効果は残ります。

特に築年数が古い物件や低層階では従来の評価が適用される可能性もあります。

 

ただし、築年数が浅い高層階物件では大幅な評価額上昇が予想され、従来のような大きな節税効果は期待できません。

タワマンを購入するベストなタイミングはいつですか?

相続発生の3年以上前の購入がおすすめです。最高裁判決では、90歳という高齢での購入と相続直前のタイミングが問題視されました。また、相続開始後すぐの売却も租税回避行為と判断されるリスクがあります。

 

年齢的には60代前半までの購入が安全とされ、購入後は長期保有する意思を示すことが重要です。市場動向や制度改正の影響も考慮し、専門家と相談の上で適切なタイミングを判断しましょう。

どのような物件を選べば節税効果が高いですか?

築年数、総階数、所在階、敷地持分の狭小度が評価に影響します。一般的に築年数が古く、総階数が少なく、低層階の物件ほど評価額が抑えられます。

 

しかし、投資リスクも考慮する必要があり、立地の良さ、管理状況、将来性なども重要な選択基準です。高層階は節税効果が薄れる一方で、資産価値や賃貸需要は高い傾向にあります。総合的な投資判断として、節税効果だけでなく収益性や流動性も検討することが大切です。

購入資金を借入する場合の注意点はありますか?

借入目的を「相続税対策」と明記することは避けるべきです。

最高裁判決では、銀行の稟議書に「相続税対策」の記載があったことが問題視されました。借入理由は「資産運用」「収益物件取得」などの表現に留め、過度な借入による租税回避行為と判断されないよう注意が必要です。

 

また、借入額と物件価格、相続財産全体のバランスも重要で、極端な債務超過状態は税務当局の注意を引く可能性があります。

改正後もタワマン投資は有効な相続対策ですか?

改正後も一定の節税効果は期待できますが、リスクとリターンのバランスが重要です。現金相続と比較すれば依然として有利であり、賃貸運用による収益も見込めます。

 

ただし、不動産価格変動リスク、管理コスト、流動性の低さなどのデメリットも十分検討する必要があります。他の相続対策との組み合わせや、複数の不動産への分散投資なども含めて、総合的な相続対策として位置付けることが重要です。

まとめ

タワマン節税は高い節税効果が期待できるテクニックとして人気があります。

もともと不動産購入は相続税対策として多く使われている手法ですが、タワマンは特に節税効果が大きい物件です。

 

しかし、税制改正によって2024年度以降は従来のタワマン節税はできなくなる恐れがあります。

不動産を活用した節税テクニックは今後も有用と考えられますが、タワマン節税の効果は弱まるでしょう。

 

2023年6月時点において、税制改正の詳細は発表されておりません。

今後公表される内容や動向に注意が必要です。

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吉岡 伸晃

記事監修
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