オペレーティングリースは節税に効果的?仕組みと注意点を解説!

2023.11.07

オペレーティングリースとは、リース契約の対象となる資産の価格から残存価格を差し引いた額をリース料の計算基礎とするリース取引です。

計算方法の仕組み上リース料は低くなりやすいものの、リース満了時に資産を売却する前提のため、リース資産の購入費用の回収が可能です。

日本型では複数の投資家が出資した資金で資産を購入するため、単独では購入が難しい高額で大型の資産を取り扱うケースが多いです。

 

オペレーティングリースは性質上、出資者である投資家が節税効果を得やすい取引といえます。

ただし必ずしも節税効果を得られるとは限らず、タイミングによってはかえって税負担が大きくなる恐れもあります。

オペレーティングリースが節税につながる仕組みだけでなく、節税対策を行う上での注意点についても深い理解が必要です。

 

今回はオペレーティングリースについて、節税という面から詳しく解説します。

 

なお、オペレーティングリースで節税効果を得られるのは法人投資家のみとなります。

法人の節税テクニックについては以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

節税効果を見る前に|オペレーティングリースとは

節税効果について見る前に、まずはオペレーティングリースの概要を紹介します。

 

なおリースとは、器具備品などの資産を貸し付け、利用者(借り手)がリース料を払って資産を利用する取引です。

レンタルとの違いとして、取引の期間や金額の大きさが挙げられます。

オペレーティングリースは、名前の通りリース取引の一種です。

オペレーティングリースの概要

オペレーティングリースとは、リース契約の対象となる資産の価格から残存価格を差し引いた額をリース料の計算基礎とするリース取引です。

残存価格を差し引いてからリース料を計算するため、利用者から受け取るリース料はファイナンスリースと比較して低くなります。

しかし、リース満了時に資産を売却する前提のため、リース料が低くても資産の購入費用の回収が可能というスキームです。

 

日本型オペレーティングリース取引では、複数の投資家が出資した資金でリース資産を購入します。

そのため、単独では購入が難しい高額で大型の資産を取り扱うケースが多いです。

 

なお、前述のようにリース取引の終了後に資産を売却する前提のため、中古市場が確立された物件のみが対象となります。

リース契約期間の満了後、リース先がそのまま購入するパターンも多くみられます。

 

また、資産の購入および運用をするのは、出資者ではなく出資金を集めた匿名組合です。

出資者はリース取引については委任する形となり、投資のみが可能です。

 

リース資産の利用者から見た特徴として、以下の2つが挙げられます。

 

  • 中途解約が可能
  • オペレーティングリースは、基本的に中途解約可能(※)です。
  • リース資産を売却して現金化すれば購入費用の回収が可能で、貸し手側にとって中途解約によって損するリスクが低いためです。
  • 中途解約不可であるファイナンスリースと比較すると、この点は利用者にとってメリットです。
  • ※中途解約不可の場合や、解約手数料がかかるケースもあるため、必ず契約内容を確認しましょう。
  • 修理やメンテナンス等の対応は貸し手であるリース会社が行う
  • 借り手である利用者にはメンテナンスの手間や費用の負担が発生しません。

オペレーティングリース 出資者が利益を得る仕組み

日本型オペレーティングリースでは、利用者から受け取るリース料が収入源となります。

そして、リース料から匿名組合の運営費用を差し引いた残額は、出資金の額に応じて出資者(投資家)に分配されます。

 

オペレーティングリースは、大型の資産を扱うためリース期間が長くなりやすい傾向です。

リース期間中はリース料を計算基礎とした分配金が入り続けます。

つまり、出資者にとって長期間安定した収入が期待できる取引といえるのです。

【参考】ファイナンスリースとの違い

リース取引は、今回取り上げているオペレーティングリースと、ファイナンスリースの2種類に大別できます。

 

ファイナンスリースならではの特徴は以下の2つです。

  • ・ファイナンスリース取引は原則として中途解約が不可能
  •  ※中途解約をする場合は違約金が発生します。
  • ・修繕費等のコストはリース資産の利用者である借り手が負担する仕組み

また、ファイナンスリース取引は以下の2種類に分けられます。

  • ・所有権移転ファイナンスリース
  • ・所有権移転外ファイナンスリース

名前の通り、リース期間の終了後に所有権が移転するか否かが大きな違いです。

どちらに該当するかによって減価償却における償却期間の計算方法が異なりますが、本記事のテーマとは逸れるため今回は割愛します。

オペレーティングリースが節税につながる理由

オペレーティングリースが節税につながる理由を紹介します。

なお、本記事では出資をする投資家が得られる節税効果に絞って解説します。

高額の特別損失を計上できるため税引前利益を抑えられる

節税につながる理由の1つが、高額の特別損失を計上することで税引前利益を抑えられることです。

 

投資家から匿名組合への出資金は金融資金として扱われます。

そして、出資先が損失を出した場合、出資者である法人は出資持分に応じて特別損失を計上します。

 

高額の備品を購入した際は、購入した年に全額を費用計上するのではなく、耐用年数に応じて減価償却が必要です。

オペレーティングリースでは匿名組合がリース資産を購入し、リースの貸し手である匿名組合側で減価償却費を計上します。

リース期間の最初の方は減価償却費がリース料を上回るため、オペレーティングリース取引は赤字となります。

したがって出資者にとっては、出資先で赤字が出たというイメージです。

 

出資先である匿名組合側で損失が発生するため、出資した法人側も損失を計上する必要があります。

高額の特別損失を計上するため、税引前利益を大幅に抑えられます。

法人税の計算基礎となる税引前利益を抑えられるため、法人税の節税につながるのです。

事業承継対策に活用できる

オペレーティングリースは、事業承継対策としても効果的です。

 

非上場会社の株価は会社の資産価値で決まります。

前項のように、リース期間の最初の方は赤字になるのが一般的です。

リース期間の最初の方は会社の経営状態が書類上一時的とはいえ悪化するため、会社の資産価値が下がります。

 

事業承継において後継者に会社の株式を渡す場合、生前贈与の場合は贈与税、死亡後であれば相続税の対象です。

会社の資産価値が低い状態であれば株式の評価額が低くなるため、発生する贈与税や相続税も抑えられます。

オペレーティングリース期間の最初の方は会社の資産価値が下がっている状態のため、事業承継の直前に投資をすることで会社の資産価値が低くなり、結果として節税効果を得られます。

オペレーティングリースで節税をする際の注意点

最後に、節税をする際の注意点を3つ紹介します。

節税効果を得られるのは法人投資家のみ

オペレーティングへの出資で節税効果を得られるのは法人投資家のみです。

 

オペレーティングリースによる節税対策は、税務上の損失が発生する仕組みを活用したものとなります。

法人投資家であれば、分配金は会社の利益、減価償却による赤字は特別損失として計上できるため、税引前利益の圧縮が可能です。

一方で個人投資家の場合、分配金は雑所得の対象になります。

雑所得は他の所得と損益通算ができないため、個人投資家は節税効果を得にくいといえます。

リース期間の後半になると節税効果は低くなる

オペレーティングリースはリース期間の最初の方は節税効果が大きいものの、リース期間の後半になると節税効果は低くなります

 

オペレーティングリースが節税につながるのは、多額の減価償却費を計上することで税務上の損失が発生するためです。

リース期間の後半は減価償却費が低くなるため、計上できる特別損失の額も低くなります。

結果としてリース期間の後半は、得られる節税効果が少なくなってしまうのです。

リース資産の売却時は税負担が大きくなる恐れがある

リース資産の売却時は、節税効果を得るどころか税負担が大きくなる恐れがあります。

 

リース資産の売却時に発生した売却益も分配金の計算対象です。

利益が大きくなる分、発生する税額が高くなってしまうのです。

リース期間の最初の方は節税効果を得られるものの、リース期間の修了時にはかえって税負担が重くなる可能性があることはあらかじめ認識しておきましょう。

まとめ

日本型オペレーティングリースでは、複数の投資家から集めた出資金を使ってリース資産を購入します。

そして匿名組合の運営費用を差し引いた残額が、出資金の額に応じて出資者に分配される仕組みです。

 

出資者は、リースの分配金だけでなく出資先が出した赤字も特別損失として計上します。

リース期間の最初の方はリース料よりも減価償却費の方が大きいため、リース取引は書類上赤字となります。

赤字が発生し特別損失を計上できるため、税引前利益を抑えることができて節税につながる仕組みです。

 

ただし、大きな節税効果を得られるのはリース期間の最初の方のみとなります。

リース期間の後半は節税効果が小さくなる上、リース資産の売却時にはかえって税負担が重くなる恐れがあります。

大きな節税効果を得られる時期が限られているため、タイミングに注意が必要です。


法人・個人事業主の節税対策は
BIZARQにお任せください。
全国オンライン対応・ご相談は無料です。

Picture of 吉岡 伸晃
吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

03-6709-9216【営業時間】9:00~18:00 LINEで問い合わせ