法人が投資信託をすると節税になる?メリットと注意点について解説!

2024.02.19

法人の投資運用によって発生した運用損益は、本業の損益との相殺が可能です。

そのため、事業の赤字と運用益の相殺、もしくは事業の黒字と運用益の相殺により、損失を無駄にせず済みます。

本業と投資信託を上手く行えば、本業のみ・投資信託のみの場合よりも節税につながるでしょう。

 

法人の投資信託には運用損益の相殺以外にも様々なメリットがあります。

ただし、メリットだけでなく注意点も存在します。すべての法人に必ずしも投資信託が適しているとは限りません。

法人の投資信託について理解を深めた上で、投資信託を行うべきか否か慎重に判断する必要があります。

 

今回は法人の投資信託について詳しく解説します。

 

以下の記事では法人の節税テクニックを9つ紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

法人が投資信託で節税をする方法

はじめに、法人が投資信託で節税をする方法を3つ紹介します。

事業の赤字と投資の運用益を相殺する

1つ目は、法人が営む事業で生じた赤字と投資信託の運用益を相殺する方法です。

この場合、投資信託によって発生した運用益は事業の赤字と相殺されるため、投資だけをする場合よりも税額を抑えられます。

事業で発生した赤字が無駄にならない点もメリットです。

 

たとえば事業で50万円の赤字、投資信託で100万円の黒字になった場合、課税対象になるのは100万円-50万円=50万円となります。

事業の黒字と投資の運用損を相殺する

2つ目は、法人が営む事業で生じた黒字と投資信託の運用損を相殺する方法です。

この場合、事業の黒字と投資信託の損が相殺されることで、事業を営むのみの場合よりも税額を抑えられます。

前項で紹介した「事業の赤字と投資の運用益を相殺する」の逆といえるでしょう。

 

たとえば事業が200万円の黒字であり、投資信託で80万円の損が発生した場合、課税対象になるのは200万円-80万円=120万円です。

投資の分配金について益金不算入の適用を受ける

3つ目は、投資の分配金について益金不算入の適用を受ける方法です。

これまで紹介した2つと違い、ほかと相殺して利益を減らすのではなく、分配金にかかる税金そのものを減らす方法となります。

 

前提として、投資信託を含む投資商品にかかる分配金とは、会社の利益剰余金から支払われるものです。

つまり、法人税を支払った後の利益が財源となります。

分配金にさらに税金がかかると、1つの利益に対して二重に課税される状態になってしまいます。

このような仕組みを防ぐために益金不算入の制度が存在するのです。

投資信託に関する税金を最小限に抑えるため、益金不算入の適用を受ける必要があります。

 

ただし、投資信託の受取配当金のうち益金不算入になるのは分配金の20%相当額です。また、投資信託の種類によっては益金不算入にならないケースもあります。

受取配当金の全額が益金不算入になるわけではない点にご注意ください。

法人が投資信託をするメリット

法人が投資信託をするメリットを3つ紹介します。

リスクを抑えた投資ができる

法人が投資信託を行う大きなメリットの1つが、リスクを抑えた投資ができる点です。

 

投資信託には以下のような特徴があります。

 

  • 分散投資ができる
  • 分散投資ができるため、特定の銘柄や市場の変動から受ける影響を抑えやすいです。
  •  
  • 好きなタイミングでの売買が可能
  • 法人で資金が必要となった場合、投資信託の商品を売れば現金を容易に確保できます。
  • リスクを負いすぎず無理のない範囲で売却できる点もメリットです。
  •  
  • 商品の種類が豊富
  • 自社の財政状態や投資に対する考え方に合わせた商品を選べます。

 

以上の理由から、数ある投資手段の中でも投資信託は比較的リスクが低い方法といえるでしょう。

損失を最大10年間繰り越せる

法人ならではのメリットとして、損失を最大10年間繰り越せる点が挙げられます。

 

投資信託の運用自体は個人でも可能です。しかし、個人の場合は事業所得と投資信託の運用損益の相殺ができません。

また、個人が損失を繰り越せる期間は最長3年間となります。

そのため、個人の場合は損失を活用しきれない場合があります。

 

一方で法人の場合、損失を繰り越せる期間は最長10年間と、個人よりも遥かに長く設定されています。

前章で紹介したように事業で発生した損益との相殺も可能です。

 

以上の理由から、法人として投資信託をした方が赤字を無駄にせず活用できる可能性が高くなります。

個人よりも大きな運用ができる可能性が高い

法人として投資信託をする場合、個人よりも大きな運用ができる可能性が高いです。

理由として、以下の2つが挙げられます。

 

1.単純に個人よりも法人の方が投資に充てられる資金が大きい場合が多い

2.法人の場合、借入金を活用して投資ができるケースがある

 

投資信託で運用できる資金が大きいほど高額な利益も狙えるため、法人の方がチャンスが大きいといえるでしょう。

 

ただし、融資契約の内容によっては融資額を投資に充てられないケースもあるため、契約内容の確認が必要です。

また、運用額が大きければ、高額の利益が出る可能性だけでなく多額の損失が出る恐れもあります。

大きな運用ができるというのは、その分リスクが上がる要素でもある点に注意が必要です。

法人が投資信託をする際の注意点

続いて、法人が投資信託をする際の注意点を2つ紹介します。

個人と違い税制上の優遇措置がない

法人が行う投資信託には、個人と違い税制上の優遇措置がありません

 

個人に認められている優遇措置の代表例がNISAです。

NISA口座で投資信託の運用をすれば、非課税枠の範囲内であれば運用益が非課税となります。

 

一方で法人にはNISAのような制度がなく、発生した利益はすべて法人税の課税対象になります。

 

はじめに投資信託による節税方法の1つとして「事業の赤字と投資の運用益を相殺する」を紹介しました。

しかし法人には投資信託の優遇措置が存在しないため、もし事業と投資の両方で利益が出た場合、投資信託にかかる税負担が必ず発生してしまいます。

特定口座の利用ができず確定申告の手間がかかる

法人が投資する場合、特定口座を利用できません

そのため、発生した損益について手続きの必要性が生じます。

 

特定口座を利用する場合、投資による損益は証券会社側が計算してくれるため、取引について自身でまとめる必要がありません。

一方で法人は前述のように特定口座を利用できないため、確定申告の際に損益計算を行う必要があります。

個人よりも法人の方が、投資信託における手間が大きいといえるでしょう。

投資信託をおすすめできる法人の特徴

前提として、すべての法人に投資信託がおすすめできるわけではありません。

法人の投資信託には大きなメリットや実施できる節税方法が複数ありますが、同時に法人ならではの注意点も存在します。

法人によっては投資信託を避けるべきケースもあるため注意が必要です。

 

投資信託をおすすめできる法人の特徴として、以下の例が挙げられます。

  • ・本業での利益が大きい
  • ・余剰資金が大きい
  • ・投資に知見がある、投資に詳しい人が在籍している
  • ・資金調達能力が高い
  • ・資金、人員ともにリソースがある
  •  

「投資は余剰資金で行うべき」と聞いたことがある人も多いでしょう。こちらは個人に限らず法人にも当てはまる考え方です。

投資信託は、資金・人員といったリソースに余裕がある場合に行うのが大前提となります。

また、利益の出る可能性を上げるためには、投資に関する正しい知識やノウハウも必要です。

自社で投資信託をするべきか・自社にとって投資信託をするメリットがあるか慎重に検討した上で判断しましょう。

まとめ

法人が投資信託で節税する方法として、事業の損益と投資信託の損益を相殺する方法と、投資の分配金について益金不算入の適用を受ける方法が挙げられます。

節税テクニックを上手く活用すれば、個人で投資信託を行うよりも節税できる可能性があります。

また、個人よりも大きな運用ができる可能性が高い点も、法人が投資信託を行うメリットの1つです。

 

このように法人の投資信託には様々なメリットがありますが、同時に法人ならではの注意点も存在します。

また、投資信託はリソースに余裕がある場合に行うのが大前提です。すべての法人が投資信託を行うべきというわけではありません。

 

法人の投資信託について理解した上で、実施するか否か判断しましょう。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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