サラリーマンの給与と農家の仕事による収入は所得区分が異なり、損益通算が可能です。
農家の仕事による所得が赤字であれば、給与所得と損益通算をすることで課税対処となる所得を減らせます。
そのため、兼業農家という働き方はサラリーマンの節税テクニックの1つとして挙げられるでしょう。
サラリーマンが兼業農家で節税するためには、課税所得を減らすために節税のポイントを押さえる必要があります。
また、確定申告を正しく行うことも大切です。
今回はサラリーマンが兼業農家で節税するために押さえたいポイントや、兼業農家の確定申告について詳しく解説します。
副業の節税全般については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。
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サラリーマンの兼業農家が節税になる理由
サラリーマンの兼業農家が節税になる理由は、給与収入と農家の仕事による収入の所得区分が異なるためです。
サラリーマンの給与は給与所得、農家の仕事による所得は原則として事業所得(農業所得)に該当します。
そして、給与所得と事業所得は損益通算が可能です。農業所得が赤字であれば給与所得と損益通算をし、課税対象となる所得を減らせます。
なお「サラリーマンの兼業農家が節税になる」というのは、農業所得が赤字、つまり損益通算ができる場合のみです。
農業所得が黒字の場合は課税所得が給与所得単体の場合よりも高額になるため、かえって税負担は大きくなります。
サラリーマンが兼業農家で節税する方法
サラリーマンが兼業農家で節税する方法を3つ紹介します。
なるべく多くの経費を計上する
農業に限らず、サラリーマンの兼業で節税効果を得られるのは副業の所得が赤字の場合のみです。
給与所得との損益通算により課税所得が少なくなるため、給与所得のみの場合よりも税額が安くなります。
そして事業所得を最小限にするためには、なるべく多くの経費を計上するのが理想です。
仮に事業所得が黒字で税金が発生する場合でも、所得が少ないほど税負担が軽くなります。
兼業農家のサラリーマンが税負担を最小限に抑えるには、経費にできる支出をすべて経費にすることが大前提といえるでしょう。
兼業農家が経費計上できる支出として以下の例が挙げられます。
- ・水道光熱費や燃料代など動力光熱費
- ・農地等の固定資産税や不動産取得税、農業用車両の自動車税など租税公課
- ・種苗費、肥料費、農薬衛生費など作物の栽培にかかる費用
- ・防虫ネット、縄、針金など諸材料費
- ・農具の購入費用
- ・作業用衣料費
- ・農業共済掛金
- ・荷造運賃手数料
- ・雇人費
- ・小作料・賃借料
農業における経費は他の事業と勘定科目や区分に違いがあります。
農業で収入を得るためにかかった支出はほぼすべて経費計上できると考えて良いですが、正しい会計処理のためには専門家に相談するのが安心です。
青色申告にする
兼業農家に限らず、兼業で節税をするには青色申告が大前提となります。青色申告にするべき理由として以下の3つが挙げられます。
- 青色申告特別控除の適用を受けられる
- 青色申告特別控除は青色申告者のみが受けられる所得控除です。最大65万円の控除が適用されます。
- 家族への給与を経費計上できる
- 白色申告の場合、個人事業主が家族へ払う給与は経費計上ができません。
- 青色申告では一定の要件を満たした上で所定の手続きを行えば、家族への給与を経費計上できるようになります。
- 損失を最大3年間繰り越せる
- 損失を最大3年間繰り越せるため、翌年以降黒字が出た時の税負担を最小限に抑えられます。
青色申告にするためには、所得税の青色申告承認申請書の提出が必要です。
提出期日は開業のタイミングによって以下のように異なります。
- 1月15日までに開業:青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで
- 1月16日以降に開業:開業から2ヶ月以内
控除制度を最大限活用する
兼業農家に限らず、控除制度の活用は節税の基本です。
所得税にはさまざまな控除制度が存在しますが、要件を満たした場合に自動で適用されるわけではありません。確定申告の際に所得控除について申告する必要があります。
適用を受けられる可能性が高い・見逃しやすい控除制度として以下の例が挙げられます。
- 医療費控除
- 納税者本人および生計を一にする配偶者・親族のために支出した医療費が一定額を超える場合に利用できる制度です。
- セルフメディケーション税制
- ドラッグストア等で、自身で選択・購入した医薬品の合計額が一定額を超える場合に適用できます。
- 医療費控除との併用はできないため、どちらの方が大きな節税効果を得られるか検討が必要です。
- 生命保険料控除・地震保険料控除
- 生命保険料や地震保険料の支払いがある場合に適用を受けられる制度です。
- 寄附金控除
- 特定寄附金を支払った場合に適用を受けられます。
- 配偶者控除、配偶者特別控除
- 配偶者の所得が一定以下の場合に受けられる制度です。
サラリーマンの兼業農家 確定申告の方法
兼業農家のサラリーマンは原則として確定申告が必要です。
農家の仕事が赤字の場合でも、損益通算による節税効果を得るために確定申告を行う必要があります。
この章では兼業農家の確定申告の方法について解説します。
確定申告の必要書類
サラリーマンの兼業農家すべてに共通する必要書類として以下の6点が挙げられます。
- 確定申告書
- 税務署の窓口や国税庁の公式サイトで入手可能です。
- 青色申告決算書(農業所得用) 白色の場合は収支内訳書
- 農業による収入や経費を記載する書類です。
- マイナンバーを確認できる書類
- マイナンバーカードがある場合はマイナンバーカード1点で済みます。
- マイナンバーカードがない場合、マイナンバーを確認できる書類と本人確認書類の計2点が必要です。
- 農業による収入や経費がわかる書類
- 青色申告決算書や収支内訳書を作成するために必要です。
- 源泉徴収票
- 給与所得や給与から控除されている社会保険料、所得税を確認するために必要となります。
- 各種控除の適用に必要な書類
- 生命保険料控除や医療費控除などの適用を受ける場合、それぞれの適用に必要な書類も用意しましょう。
ケースによっては上記以外の書類も必要になるため、各々の必要書類について必ず確認しましょう。
所得の計算方法
前述のように、給与収入は給与所得、農業による収入は事業所得で所得区分が異なります。まずは区分ごとの所得額について計算が必要です。
給与所得は勤務先から受け取る源泉徴収票に記載されています。「給与所得控除後の金額」の欄に記載された金額が給与所得です。
農業所得は、農業による収入から農業に際して発生した経費を引いて計算します。
給与所得と農業所得それぞれを計算したら、両者を合算しましょう。合算した額から各種控除を差し引いた額が課税所得になります。
農業所得が赤字の場合、給与所得単体よりも、給与所得と農業所得を合算した額の方が低くなります。
確定申告書の提出方法
確定申告書の提出方法は以下の4種類です。
- e-Tax
- e-Tax(正式名称を国税電子申告・納税システム)は、所得税をはじめとした国税の各種手続きをオンラインで実施できるシステムです。
- 税務署や郵便局へ行く手間が省ける上、24時間いつでも好きなタイミングで申告書の提出が可能です。
- ただし、事前準備にやや時間や手間がかかるため、慣れないうちは余裕を持って行うことをおすすめします。
- 税務署の窓口へ直接持参
- 納税地を管轄する税務署の窓口へ直接持参して提出する方法です。
- その場で書類に不備や漏れがないかを確認してもらえるため、確定申告が初めての人や、確定申告に不安がある人に適しています。
- 税務署の時間外収受箱へ投函
- 税務署の営業時間中に訪問できない場合、時間外収受箱へ投函することも可能です。
- 税務署へ郵送
- 納税地を管轄する税務署に郵送する方法です。郵便や信書便で提出した場合は消印の日付が提出日とみなされます。
まとめ
サラリーマンの兼業農家で節税ができる理由は、損益通算の仕組みにあります。
給与所得と事業所得(農業所得)は損益通算ができ、農業所得が赤字であれば損益通算により課税所得が少なくなるため、税額が下がる仕組みです。
農業所得を赤字にする、もしくは黒字でも所得額をなるべく少なくするには、節税のポイントをしっかり押さえることが大切です。
また、正しい方法で確定申告を行う必要もあります。
サラリーマンの兼業農家で最大限の節税効果を得るため、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてください。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士