税務調査とは?基礎知識と5つの対策について解説!

2024.05.21

税務調査は、いつ自身が対象になるかわかりません。税務調査で申告内容の誤りが判明した場合、修正申告や追徴課税を求められることがあります。

しかし、税務調査が入ったからといって必要以上に怖がる必要はありません。日頃から帳簿や書類を整理し、税理士とも連携しながら正しい申告を心がけていれば大丈夫です。

万が一税務調査で指摘を受けても、適切な対処を速やかに行えば大きな問題にはなりません。

 

本記事では税務調査の基礎知識や対策について、わかりやすく解説します。

 

節税対策については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

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CONTENTS

税務調査とは

税務調査は、国税庁や税務署が行うもので、個人や法人の収入、所得、納税額に関する申告が税法に基づいて適正に行われているかどうかを確認する一連の調査手続きを指します。
この調査は、事業者の税務申告に第三者による監査を導入することで適正な申告の実施を担保し、国の税収を適正に確保することを目的としています。

 

税務調査で間違いや不正が発覚した場合は、それらを修正し適切な納税額に訂正するよう指示・指導がなされ、状況によってはペナルティが科されることもあります。
調査の対象となる税金は、法人税や所得税だけでなく、消費税、固定資産税、印紙税なども含まれます。

税務調査の種類

税務調査は主に「任意調査」と「強制調査」の2つに分類されます。
それぞれの調査の特徴を見てみましょう。

強制調査

強制調査は、国税局査察部が裁判所の令状を持って強制的に行う税務調査のことを指します。

この調査の対象となるのは、脱税の疑いがある納税者で、具体的には「脱税額が1億円を超える」「脱税の隠蔽工作が悪質」などの場合に実施されます。

強制調査では、納税者は税務調査を拒否することはできません。

任意調査

一方、任意調査は、脱税の疑いがない多くの法人・個人を対象とした税務調査です。

任意調査の場合、税務署から電話で訪問日時などの連絡が入るため、突然の訪問はありません。電話での事前通知が難しい場合は、通知書が送付されます。

調査官(税務署の職員)には「質問検査権」が与えられているため、正当な理由なく帳簿書類の提示などの要求に応じない場合には、罰則が科されることになります。

税務調査の時期

税務調査の実施時期については明確な規定やルールは定められておらず、年間を通じて行われる可能性がありますが、特に8月から11月中旬にかけての実施件数が多くなる傾向が見られます。

その理由として、以下の2点が考えられます。

 

・税務署の年度が7月から翌年6月までであること
税務署の年度は7月に始まり、翌年の6月に終わります。

つまり、7月初めに人事異動が行われ、新たな組織として動き出します。

そのため、組織が平常を取り戻しお盆休暇が終了した8月中旬ごろから、その年度の税務調査が本格化していくのが一般的な流れです。

 

・日本では3月決算の会社が非常に多いこと

原則として、法人の決算月が2月から5月の場合は7月から12月が税務調査の時期となり、決算月が6月から翌年1月の場合は1月から6月が調査の時期となります。

日本では3月決算の法人が多いため、税務調査が7月から12月に集中する傾向があると考えられます。

税務調査の流れ

税務調査(任意調査)は、一般的に以下の流れで進行します。ただし、顧問税理士の有無によって流れが異なる点には注意が必要です。

ここでは、税務調査の主な流れについて順を追って見ていきましょう。

事前通知

税務調査が行われる際は、調査実施の約10日前を目安に、会社とその顧問税理士に電話連絡が入ります。通知内容は、調査日時、場所、対象税目、課税期間、調査目的などです。指定された日程等に不都合がある場合は、この時点で調整を依頼するようにしましょう。


ただし、以下の3つのパターンに該当する場合は、事前通知なしで調査が行われることがあるので注意が必要です。

 

・脱税などの不正行為が疑われる場合

・不特定多数の取引先と現金取引を行っている場合(小売業・飲食業など)

・従業員や関係者から不正取引の通報があった場合

事前準備

税務調査の事前通知を受けたら、調査に対応できるよう次のような書類を準備しておくことが重要です。これらの書類は、通知された調査対象期間分を用意する必要があります。

 

・納品書
・領収書(控え)
・請求書
・契約書
・総勘定元帳
・稟議書
・議事録
・補助元帳
・現金預金出納帳
・賃金台帳・年末調整書類
・棚卸明細表
・預金通帳
・見積書・納品書
・販売契約書
・賃貸借契約書
・経理規定
・会社のパンフレット・組織図
・タイムカード・勤怠管理表

実地調査

実地調査は通常2日間にわたって実施されることが多く、企業の規模によってはさらに期間が延長されるケースもあります。

ここでは、調査初日と2日目に分けて、一般的な税務調査のスケジュールを説明します。

調査1日目

午前10時頃、2名の調査官が事務所を訪れます。午前中は、世間話やインタビューを行いながら書類チェックを進めていきます。調査官は世間話を通じて、後の調査で不正につながる情報を見つけ出そうとしているため、不用意に話しすぎないよう注意が必要です。


インタビューでは、設立目的や会社の概要、各担当者の職務など企業に関する基本情報を尋ねられるケースが多くあります。これらの質問は、再調査の際に会社の状況に変化がないかを確かめるために、何度も繰り返されることが予想されます。


昼休憩をはさみ、午後は売上に関する調査が行われ、売上請求書、納品書、売上帳などをもとに、売上の計上漏れや架空仕入れについてチェックされます。1日目の調査は午後4時半頃に終了します。

調査2日目

2日目は、1日目の調査に加え帳簿関係の調査が行われます。午前中は従業員の給与や賞与の処理が適切に行われているかを精査し、午後からは経費処理に不備がないかどうかを重点的に確認します。これで実地調査は終了です。

質問回答

税務職員の実地調査が一段落しても、税務調査自体はまだ継続します。
実地調査を経た後、税務署からの指摘や質問に対し関連資料の準備や回答などのやり取りが行われます。
顧問税理士がいない場合は事業者自らが、顧問税理士がいる場合は税理士が税務署との交渉にあたります。

また、追加資料の提出を求められたり、実地調査や反面調査(取引先への調査)が入ることもあります。交渉が終わり、調査結果が決定するまでには、通常1か月以上の期間を要します。

調査結果通知

税務調査の結果には、「申告是認」「修正申告」「更正」の3つのパターンがあります。

申告是認とは申告内容に問題がないことを指し、修正申告は税務署の指摘を認めて自分で申告することを意味します。

一方、更生とは、税務署の指摘に納税者が納得せず修正申告を出さない場合に、税務署側が各税法の規定を根拠に行う課税処分のことを指します。

税務調査の対象となりやすいケース

税務調査の対象は法人も個人事業主も含まれますが、対象になりやすいケースはそれぞれ異なります。以下の条件に該当する場合、税務調査が入る可能性が高まります。

 

しかし、これらの条件はあくまで一般的な傾向であり、必ず調査対象になるとは限りません。また、条件に当てはまらないからといって、税務調査を受けないということではありません。

法人の場合

法人で税務調査の対象となりやすいケースは以下の通りです。

過去に税務調査で税務の誤りや不正を指摘されている

税務調査において過去に申告漏れなどの指摘を受けたり、不正を指導されたりした経緯がある場合、その後の申告が適切に行われているかどうかを確認するために再度調査の対象となる可能性が高いと考えられています。

売上や利益の変動幅が大きい

直近の事業年度や課税期間と比べて売上高や利益の変動幅が著しく大きい場合、その原因を確かめるために税務調査の対象となる傾向があります。

売上高が大幅に増減した際は、その理由を論理的に説明できるよう準備しておきましょう。

事業規模が大きく売上や利益が多い

事業規模の大きな法人も税務調査の対象となりやすい傾向にあります。

売上高や利益が大きい企業は、それに応じて納税額も多額になるため、売上管理や申告における誤りや脱漏が税額に大きな影響を与えることになります。

そのため、特に疑いがない場合でも確認のために税務調査の対象となることがあります。

黒字から赤字になった

赤字決算となった場合、法人税など一部の税金の納税負担額が軽減または免除されます。

前期に黒字を計上していた企業が赤字に転落した場合、納税額を抑えるための不正行為が行われている疑いが持たれることがあります。そのため、赤字の実態を確認し不正の兆候がないかどうかを検証するために税務調査が行われる可能性があります。

不正がよく見られる業種

道路貨物運送業、建設業、飲食サービス業、美容関連業などの業種では、実地調査の結果不正が発覚するケースが多いとされています。そのため、たとえ適切に申告を行っていたとしても、これらの業種は税務調査の対象になりやすい傾向にあります。

 

また、海外と取引を行う事業や、個人・未届の事業者で税務申告をしていないケースも増加しています。上記の業種の多くは現金取引が中心であるため、売上を隠蔽しやすいことが原因とされています。

個人事業主の場合

個人事業主で税務調査の対象となりやすいケースは以下の通りです。

税務申告をしていない

税務申告を行っていない個人事業主の中には、「業務に追われている」「税務に関する知識が不足している」などの理由から申告を怠っているケースが見受けられます。「申告しなければ大丈夫だろう」と高をくくるのは危険です。

取引先に税務調査が入れば自身との取引金額が明らかになるため、税務署から申告漏れを疑われる可能性があります。

売上が大きく増加している

売上が大幅に伸びている個人事業主の申告内容に誤りがあった場合、本来納付すべき税額よりも少ない金額を申告している可能性があります。

税務署も人員に限りがあるため、売上が著しく増加しており修正申告の可能性が高い個人事業主を優先的に調査する傾向があります。

申告内容に不審な点がある

税務調査の対象となりやすい個人事業主の特徴として、申告内容に疑わしい点が見受けられることが挙げられます。

例えば、「確定申告書と取引先の支払調書の取引金額に不一致がある」「売上に対して経費が過大である」などのケースが当てはまります。疑わしい点があれば確認が必要となるため、税務調査の対象となる可能性が高まります。

新しい分野のビジネスを行っている

国税庁は、市場規模が拡大している新分野の取引を行う個人に対して、積極的に税務調査を実施しています。令和3年度のデータによると、インターネット取引を行う個人への税務調査を積極的に行うことが公表されました。
具体的には、以下のような経済活動が該当します。

 

・民泊
・カーシェアリング
・クラウドソーシング
・配達代行業
・アプリ作成・配信
・有料メールマガジン
・インターネット通販
・インターネットオークション
・ドロップシッピング
・アフィリエイト

 

今後は、ChatGPTなどの人工知能を活用したビジネスが、積極的な調査対象になる可能性が高いと考えられています。

多額の経費を申告している

事業と無関係と思われる経費を多額に申告するなど経費の内容に疑わしい点があると、税務調査の対象となるおそれがあります。例えば交際費が多額の場合、私的な支払いを経費に計上しているのではとの疑いを持たれかねません。

特に、個人事業主は私的な支出と事業経費の区分けが不明確になりがちなため、注意が必要です。

税務調査でよく確認されるポイント

税務調査でよく確認されるポイントは以下の通りです。

申告内容で不審な点があった場合は厳しく調査されるため、常に正確な申告を心がけることが重要です。

売上および仕入金額

売上は税務調査で必ず確認される項目です。計上漏れや過少申告の有無を主に精査するため、預金通帳と帳簿・決算書の内容が一致しているかどうかが検証されます。

また、仕入金額も税務調査官が必ず確認するポイントです。これは、税負担を軽減するために仕入金額を水増し計上するという不正行為がしばしば行われるためです。

 

仕入金額の確認では、主に売上高との整合性が精査されます。前年と比較して売上高や仕入金額が著しく増減している場合はその原因について説明を求められるため、明快で論理的な説明ができるよう事前に準備しておくことが重要です。

期ズレ

期ズレとは、本来計上すべき事業年度とは異なる期間の売上や経費を計上することを指します。期ズレが生じると本来納付すべき税額が変動するため、税務調査において重点的に確認されます。したがって、特に事業年度の開始時と終了時の取引処理には細心の注意を払い、発生主義に基づいて正確に計上することが重要です。

発生主義とは、売上や経費の発生した時点で計上する会計処理の方法を指します。

損金の振り分け

損金とは、法人税法上、法人の資産を減少させる費用、経費、損失のことを指します。会計上は損金として扱えるものでも、税務上では損金にならないものがあります。

 

そのため、損金に該当するものを正しく算入・不算入に分けられているかどうかが確認されやすい傾向にあります。

 

損金として認められないものには、以下のようなものがあります。

・不当に高額な役員報酬
・限度額を超えた交際費
・限度額を超えた寄付金

辻褄の合わない領収書など

税務調査で精査される書類は通常、決算書や帳簿類ですが、状況によっては領収書まで確認の対象となります。

例えば、交通費の架空計上がないかどうか、頻繁に利用されている飲食店の領収書が不適切なものでないかといった点で検証が行われます。

 

特に交通費は、金額次第では領収書なしでも経費計上が可能なため、帳簿の記録から目的や日付を正確に回答できるよう準備しておくことが求められます。頻繁に利用される飲食店などは、私的な利用である可能性が疑われやすい傾向にあります。交際費や会議費として計上する場合は、その目的や相手方との関係を明確に示すことが大切です。

 

また、時系列の整合性にも注意が必要です。例えば、出張などで不在の従業員数と社員旅行や忘年会の参加者数に著しい不一致がある場合、経費の不正計上などの疑いがかけられるおそれがあります。

棚卸資産

棚卸資産については、「評価方法の適切性」「実地棚卸の実施状況」「計上漏れの有無」などの点が精査されます。棚卸資産は課税所得に与える影響が大きく、不正の手段として用いられることがあるため、帳簿や棚卸表を基に確認が行われ、事業内容によっては倉庫などの現地確認が実施されることもあります。

経費

経費に関しては、特に事業者の私的な支出が紛れ込んでいないかどうかが重点的にチェックされます。対策としては、事業として必要な経費であることを説明できるようにしておくことが重要です。

高額な経費については、領収書の裏面などに「取引先名称や参加人数、目的(従業員の歓送迎会など)」を記入しておくことをおすすめします。

税務調査の対象になったときの対策・備え

ここでは、事前に行える税務調査の予防策について紹介します。

税務調査を受けないようにするためには、どのような点に気をつければよいでしょうか。以下に説明していきますので、参考にしてください。

税務調査を過度に恐れる必要はない

故意に不正を行っていない限り、税務調査を必要以上に恐れる必要はありません。

申告内容の誤りを指摘された場合でも、悪質な違反でない限り処罰の対象とはならず、通常は修正申告を行うだけで解決します。

顧問税理士と事前に打ち合わせをしておく

必要書類や税務調査の進め方、対応策などについて、事前に顧問税理士と綿密に協議しておくことが重要です。顧問税理士は事業内容や経理・納税の実情に精通しており、税務調査に立ち会った経験も豊富なため、的確な助言を得ることができます。

調査当日は、質問内容によっては回答を税理士に一任することもできます。

質問には正直に答え、曖昧な回答をしない

税務調査で質問されたことには、正直に回答することが重要です。

その場で回答できない場合は、しっかりと調査した上で後日回答しても差し支えありません。曖昧な返答をすると、調査官の不信感を招くおそれがあるため注意が必要です。

質問されたことにのみ答える

税務調査では、尋ねられた事項についてのみ回答することもポイントです。

聞かれていない事柄まで話してしまうと、その内容から何らかの疑念を抱かれるおそれもあります。不必要な情報は話さないよう注意が必要です。

留置きに備えて重要書類をコピーしておく

留置きとは、税務調査において必要な場合に、調査官が納税者の同意を得た上で帳簿書類などを一時的に預かることを指します。

業務に不可欠な書類を税務署に預けることになれば、業務の遂行に支障をきたすことになります。重要な書類は、あらかじめコピーを取っておきましょう。

税務調査で指摘を受けた際の対処方法

税務調査の結果、申告内容の誤りが指摘された場合、修正申告または更正の請求を行う必要があります。

修正申告は、本来申告すべき金額よりも少なく申告していた場合の手続きであり、更正の請求は、本来申告すべき金額よりも多く申告していた場合の手続きです。

それぞれ詳しく以下で解説します。

修正申告を行う

修正申告とは、一度提出した申告書の内容を正しく修正する手続きのことです。

税務調査の結果、本来よりも少ない金額で申告していたことが発覚した場合、修正申告を行った上で不足分の税金を納めることになります。

ただし、税務調査後の修正申告は既に納期限を過ぎているため、ペナルティとして過少申告税や延滞税等の附帯税がかかることがあります。

なお、申告期限内に自ら誤りに気づいて修正申告を行った場合には、附帯税は課されません。

 

また、確定申告などの税務申告が必要であったにもかかわらず怠っていたことが指摘された場合、指摘を受けた後に行う税務申告は「期限後申告」として取り扱われます。

期限後申告の場合、無申告加算税がペナルティとして科されます。

しかし、税務調査開始前に自主的に申告した場合、このペナルティの割合が減額されるため、申告漏れの所得があったりそもそも税務申告自体を行っていなかった場合は、速やかに申告しましょう。

更正の請求を行う

更正の請求とは、本来納付すべき税額よりも多く納税していた場合に、差額分の還付を求める手続きのことを指します。税務調査の結果、税金の納めすぎが判明した場合、更正の請求を行うことで正しい納税額を超えた分の税金が返ってきます。

なお、更正の請求が可能なのは、原則として法定申告期限から5年以内に限られています。

ただし、税務調査によって更正の請求が必要になるケースはあまり多くありません。

まとめ

税務調査は、国税庁や税務署が行う正しい申告の実施を担保するための調査です。法人・個人事業主ともに対象となる可能性があり、様々なケースで調査対象となりやすい傾向があります。日頃から帳簿や書類を整理し、税理士とも連携しながら正確な申告を心がけることが大切です。

 

万が一、税務調査で指摘を受けた場合は、修正申告や更正の請求などの適切な対処を速やかに行いましょう。税務調査を恐れる必要はありませんが、日頃の備えを怠らないことが重要です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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