ペーパーカンパニーを設立して節税を試みることは、一見魅力的に見えるかもしれません。 しかし、それは違法行為や脱税のリスクを伴う危険な選択肢なのです。
本記事では、ペーパーカンパニー設立の問題点を明らかにし、それに代わる適切な節税対策をご紹介します。 サラリーマンの方々が、賢明な判断を下すための指針となれば幸いです。
サラリーマンの節税について以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
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CONTENTS
ペーパーカンパニーの概要
ここでは、ペーパーカンパニーの概要についてお伝えします。
ペーパーカンパニーの定義
ペーパーカンパニーとは、登記上は存在するものの、実際の事業活動を行っていない会社のことを指します。 売上がなく、会社としての実質的な活動がないものが該当します。 実体がなく、書類上だけで存在している会社がペーパーカンパニーと呼ばれているのです。
ペーパーカンパニーの分類
ペーパーカンパニーは、主に以下の4つのタイプに分類することができます。
休眠会社
事業活動を行っておらず、放置された状態の会社です。 ゴースト会社や幽霊会社という呼び方もされています。
事業活動は終了したが、解散や清算の手続きが面倒なため放置しているケースもあるようです。 節税・脱税目的での経費申告をせず、単に放置された塩漬け状態の会社であれば、それほど問題視されないでしょう。
ダミー会社
特別目的会社
主にタックスヘイブンに設立され、金融取引や資産保有を目的とする会社がこれに該当します。 タックスヘイブンとは、日本と比べて法人税率が極端に低い国々の総称です。
反社会的組織
暴力団や犯罪組織が、一見すると健全な事業者であるかのように見せかけるために、ペーパーカンパニーを設立するケースも少なくありません。 反社会的組織にとって、ペーパーカンパニーは違法活動を隠蔽するための重要なツールなのです。
サラリーマンがペーパーカンパニーを利用して節税を図る方法
ここでは、過去にペーパーカンパニーが節税目的で利用されていた仕組みについて解説します。
租税回避地にペーパーカンパニーを設立することによる節税
租税回避地、いわゆるタックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立することで、税負担を軽減することができました。
タックスヘイブンとは、法人税や所得税等の税率が低く設定されている国や地域のことを指します。
例えば、ケイマン諸島では株式等の売却益や配当に対する課税がなく、所得税や不動産税も発生しないという極端なケースがあります。
しかし現在、日本ではペーパーカンパニーを利用した節税は厳しく規制されています。 これは、タックスヘイブン対策税制が制定されたことによるものです。 詳細は後述いたします。
複数の会社を設立し、所得を分散させる方法
設立した複数の会社に所得を分散させることも、ペーパーカンパニーによる節税手段の一つでした。
売上高が1,000万円以下であれば消費税の免税事業者となるため、1,000万円以上の売上を分散させる目的でも利用されていました。
ここでの問題点は、実体のない会社に所得を分配していることです。 実体のある会社であれば、法人の節税対策として有効な手段となります。
ペーパーカンパニーを利用した節税対策
ペーパーカンパニーを利用した節税には様々な方法がありますが、ここでは身近で実行しやすい2つの方法を紹介します。
利益を分散し、税額を抑える
ペーパーカンパニーに利益を分散させることで、法人税と消費税の軽減を図ることができます。
日本の法人税率は原則23.2%ですが、資本金1億円以下の普通法人は軽減税率の適用対象となります。 軽減税率が適用される場合、利益が年800万円以下の部分は15%、年800万円超の部分は19%の税率となります。
つまり、資本金1億円以下で年間利益が800万円以下であれば、法人税額を大幅に抑えられるのです。 この仕組みを利用して、ペーパーカンパニーに利益を分散させ、法人税を抑える手法がよく見られます。
また、ペーパーカンパニーを利用した消費税の軽減も一般的な手法です。 特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税の免税事業者となる点が前提となります。
消費税の納付額は、売上に係る消費税から仕入れや経費等に係る消費税を差し引いた額となります。 支払った消費税が、売上として預かった消費税よりも大きい場合は、消費税が還付されるのです。
この仕組みを利用して、本社の課税売上高の一部をペーパーカンパニーの売上に移し、本社の課税売上高を減らす手法があります。
ペーパーカンパニーに移す売上高が1,000万円以下であれば、ペーパーカンパニーは免税事業者となり、消費税の納付は不要です。 一方、本社側は課税売上高が減ることで売上に係る消費税も下がるため、結果的に消費税の納付額を抑えられるのです。
利益の分散による消費税の軽減は、ペーパーカンパニーを利用した節税でよく用いられる手法なのです。
交際費を多く計上する
交際費は税法上特殊な扱いがなされており、事業に関係する支出であっても原則として損金不算入となります。
しかし、資本金1億円以下の中小企業の場合、年間800万円まで、または接待飲食費の50%までは、特別な要件なく経費として計上できるのです。
この仕組みを利用して、中小企業のペーパーカンパニーを設立し、交際費をペーパーカンパニーの経費として計上する方法もあります。
損金算入できる金額が大きくなるため、結果的に法人税の額を抑えることができるのです。
ペーパーカンパニーは違法となるケースが多い
悪質な商法や資産保有等を目的としたものに限らず、ペーパーカンパニーは違法となるケースがほとんどです。 特に問題のないペーパーカンパニーは、利益の分散や経費計上をしていない休眠会社のみと言えるでしょう。
この章では、ペーパーカンパニーを利用した節税方法を2つ紹介しましたが、いずれも税金逃れを目的とした悪質な行為と言えます。
経費として計上できるのは、売上を上げるために必要な、事業に関係する支出のみです。 事業活動を行っていないペーパーカンパニーでは、経費として計上できる支出が発生し得ないのです。
利益の分散についても、法律の抜け穴を突いた手法であり、限りなく黒に近いグレーゾーンと言えます。
何よりも、これまで紹介した手法は節税を越えた税金逃れと呼ぶべき行為であり、脱税は明らかに違法とされています。 ペーパーカンパニーを利用した節税は、正確には脱税行為に該当し、違法とみなされる可能性が非常に高いのです。
サラリーマンに限らず、ペーパーカンパニーの設立は違法・脱税となる恐れがある
サラリーマンに限定されず、ペーパーカンパニーを設立すると、不正行為や税金逃れと見なされるリスクが非常に高まります。
脱税と判断された場合、重加算税が適用され、最大で50%もの多額な税額負担を強いられることになるのです。
また、法人設立だけでなく、実体のない個人事業主として開業届を提出し、経費計上を行っている場合も、脱税とみなされる恐れがあります。
いずれにせよ、現代社会においてペーパーカンパニーを設立することは、賢明な選択とは言えません。 是非とも、後述する代替案を活用することをおすすめします。
違法性の高いペーパーカンパニー設立によって生じる可能性のある事態
ここまでお読みいただいた方は、ペーパーカンパニーが節税の範疇を超えて、脱税のリスクを孕んでいることをイメージできたのではないでしょうか。 それでは、サラリーマンがペーパーカンパニーを設立して節税を図った場合、実際にどのような事態が起こり得るのか、見ていきましょう。
タックスヘイブン対策税制の適用
経済的な実体のないペーパーカンパニーをタックスヘイブンとされる国や地域に設立し、税負担の軽減を図ろうとした場合、「タックスヘイブン対策税制」が適用されます。
タックスヘイブン対策税制の下では、経済実態を伴わない、いわゆる受動的所得は、タックスヘイブンに設立したペーパーカンパニーではなく、日本の本社(個人の場合は個人)に合算して課税の対象となるのです。
つまり、日本の税制に従って、所得税や法人税を納税しなければならないということです。
合算の対象外となるためには、その国や地域において、自ら事業の管理・運営を行っていることや、経済的実体があることを示す書類を提出し、それが認められることが必要です。
実体を伴わない名目上のペーパーカンパニーは、合算対象外となることはありません。
参考:ジェトロ「タックスヘイブン対策税制:日本」、国税庁「我が国タックス・ヘイブン税制と租税条約の関係」
ペーパーカンパニー悪用による摘発事例
悪質性が高いと判断された場合、当局の摘発対象となり、逮捕やその事実の報道に直面するリスクが急増します。以下は、最近報道されたペーパーカンパニーに関連する事件の例です。
・給付金8千万円詐取か、容疑の男2人逮捕 ペーパーカンパニー悪用?(2021年11月15日、朝日新聞)
・海外会社を使い脱税容疑 不動産会社ら告発 税理士グループが指南か(2021年12月23日、朝日新聞)
・【独自】2億円を医薬品関連会社に流出か…日大背任事件、ペーパーカンパニー?(2021年9月11日、読売新聞)
安易にペーパーカンパニーを使って節税を試みるのは非常に危険です。これは、会社員としての生活に悪影響を及ぼし、最悪の場合、人生そのものが大きく狂う原因になる可能性があります。
とはいえ、手元に残るお金を増やしたいと考えるのは、当然のことです。 日本の税法のルールの範囲内で安全に実行できる対策を、次の章でご紹介します。
サラリーマンがペーパーカンパニー設立に代えて行える適切な節税対策
ここでは、ペーパーカンパニー設立の代替となる、合法かつ合理的な節税対策についてご説明します。
控除を最大限活用する
副業に取り組む
副業に取り組むことで、収益を得るだけでなく、節税効果も得られます。 これは、経費計上を行える範囲が拡大するためです。 主な副業ごとに計上可能な経費は、以下の通りです。
- ・動画編集:編集ソフトなど
- ・Webライティング:取材費など
- ・プログラミング:開発環境(プログラミングソフト、サーバー代)など
- ・Webデザイン:イラストレーターなどのソフトなど
もちろん、副業による収益が入り、さらに一定の要件を満たして青色申告を行えば、最大65万円の控除を受けられるため、本業と副業を組み合わせた節税は非常におすすめです。
ただし、1ヶ月だけ物販を行ったというように、事業的な規模で取り組めていない場合は、雑所得として扱われ、損益通算はできません。
また、会社の規則で副業が禁止されているケースもありますので、注意が必要です。
副業については以下の記事でも詳しく解説しています。
プライベートカンパニーを設立する
まとめ
ペーパーカンパニーを設立して節税を図ることは、違法行為や脱税とみなされる可能性が極めて高く、おすすめできません。
タックスヘイブン対策税制の適用や、悪質な場合は摘発・逮捕のリスクもあります。 一方で、控除の活用、副業への取り組み、プライベートカンパニーの設立など、合法的かつ効果的な節税対策は存在します。
自分に合った方法を選択し、適切に実行することが重要です。 安易にペーパーカンパニーに手を出すのではなく、日本の税法のルールの範囲内で、賢明に節税に取り組むことをおすすめします。
節税は大切ですが、それ以上に、健全な経済活動を行うことが、社会人として求められる姿勢なのです。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士