見せ金は違法?会社設立の資本金準備前に知っておくべき注意点を紹介

2023.05.17

会社設立を考え、資本金をどのように用意すべきか検討中の方は、「見せ金」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
何となく違法らしいことは知っているが具体的にどういうものを見せ金と言うのか定義は知らない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「見せ金」とは何か、会社設立に利用することができるのか、資本金準備前に知っておくべき注意点も踏まえて詳しく解説します。

会社設立時に役立つ助成金や補助金について解説した記事も是非ご覧ください。

CONTENTS

見せ金とは何か?

見せ金とは、会社設立時に十分な自己資金を用意できなかった場合に、多くの資本金があるように見せかけるために他所から一時的に借り入れてきたお金を指します。

現在は法改正により、1円からでも会社設立が可能となりました。
しかし、資本金は会社の信用と体力を証明するために極めて重要であり、実際には適切な額の確保が求められます。
会社設立時に用意する資本金は自己資金を貯めたり投資家から資金を調達したりするのが一般的ですが、必要額を工面できない場合にこのような見せ金が度々使われてきました。

あくまで一時的に資金があるように見せかけるだけなので、会社設立完了後に即返済され、実際に資本金として活用されることはありませんが、貸主への返済後も「役員貸付金」として会社から代表者に貸し付けられた状態となります。

【参考】見せ金と似ている「預け合い」とは

見せ金と同じように十分な資本金があると一時的に見せかける手法に、「預け合い」というものがあります。

 

見せ金は個人間で行いますが、預け合いは設立者と金融機関の間で行われます。
会社設立完了まで引き出さないことを条件に金融機関からお金を借り、それを出資金として申告し会社設立完了後に返済するという手法です。

見せ金は違法になる?

結論から言うと、見せ金も預け合いも違法です。

会社法第52条「出資の履行を仮装した場合の責任」において、見せ金を使って出資金額を仮装した払い込みについて発起人はその全額を支払うという義務を規定しています。

この支払いをしなければ発起人は株主の権利を与えられませんが、明確に違法と定義されている訳ではありません。

しかし、刑法157条1項「公正証書原本不実記載罪」において、公正証書である登記簿に見せ金で虚偽の記載をすることは違法である旨が規定されています。
これを犯した場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

このように、見せ金は法律で違法であると明確に規定されています。
十分な出資金が集まらず苦慮している場合であっても、絶対に行わないようにしましょう。

見せ金はバレる?

会社設立時の見せ金は明確に違法とされていますが、ビジネスや政治の世界では取引先の信用を得るために度々使われてきた手法です。

取引先が見せ金かどうか調べるようなことは基本的にはないため、バレなければいいのではと思う人もいるかもしれませんが、融資の審査などでは必ず指摘されます。

この章では、見せ金がバレる原因について解説します。

通帳への高額な入金

創業融資を申し込む場合などに、通帳のコピーの提出が求められます。

会社員の場合は、毎月給与が振り込まれているでしょう。

そこに数百万の大きな収入があった場合には、融資担当者にその出所について説明する必要があります。

それがもし親からの援助資金ならば、そのことをきちんと説明出来て尚且つ証明書類も用意できていれば問題ありません。
しかし、出所を説明できなかった場合、融資担当者からは不自然な入金=「見せ金」と判断され、当然融資を受けることはできなくなります。

個人からの入金

高額でなくても、法人ではない個人名義での入金は融資担当者からチェックが入り、振込人との関係性を確認されることがあります。

業務関係などを証明することができれば問題ありませんが、個人からの借金の可能性を疑われることもあるため注意が必要です。

 

通帳コピーは一般的に直近6ヶ月分を求められるため、その期間に説明ができない不明な振り込みがないか事前に確認しましょう。

見せ金を行うリスクとは?

見せ金は違法で刑罰対象であるということ以外にもリスクがあります。
ここでは、見せ金を行うことにおいて生じるリスクについて解説します。

融資が審査落ちしてしまう

前項で解説した通り、日本政策金融公庫やその他の金融機関では、融資の審査の際、創業者の通帳コピーで資金源のチェックを必ず行います。
虚偽の申告をしても、不明な入金があれば即座にバレてしまい融資を受けることができなくなります。

見せ金に対して所得税が課せられる

「見せ金は違法になる?」の章で解説した通り、見せ金を使った場合、発起人がその全額を支払わなければならないと会社法第52条で規定されています。

つまり、貸主への返済後であっても発起人が会社に返済しない限り、役員貸付金として会社が代表者に貸し付けているという状態になります。

この貸し付け状態が続くと、会社から代表に報酬を支払っていることと同義と見なされ所得税が課せられます。

また、創業間もないうちから会社が役員に多額の貸付を行なっているという状態になることで、会社の信用も大きく失墜してしまいます。

会社設立が無効になる可能性がある

会社法では見せ金そのものを直接禁止する条文はありませんが、過去には見せ金が原因で会社設立が無効となった事例もあります。

見せ金を差し引いた出資金が会社設立要件を満たす金額を満たしていないという判断によるものです。
この考え方が有効ならば、今でも見せ金が原因で会社設立が無効とされる可能性があります。

見せ金と言われないための資金調達方法とは?

ここでは見せ金と言われないための資金調達方法について解説します。

株や不動産・債権などの利益を資金にする

株、不動産、債権などの資産は、自己所有している場合事業の自己資金として活用することができます。

ただし、資産を売却した際には売却したことを証明する書類を残しておく必要があります。

銀行などで融資を受ける際に担当者から指摘を受けることもありますが、用意した証明書類を提示すれば問題ありません。

タンス預金は定期的に口座に入金する

タンス貯金はその性質上、出所の証明が困難です。
こつこつ貯めたタンス貯金を自己資金とする場合は、まとめてでなく定期的に口座に入金するようにしましょう。
月1回など一定のペースで振り込みを行うことで通帳に履歴が積み上がり、自己資金であるという妥当性をより強固にすることができます。

 

タンス預金については下記の記事で詳しく解説しています。

 

宝くじの当せん金や親からの援助金は証明書類を用意する

親から援助金をもらったり、レアケースではありますが宝くじの高額当選でまとまった金額が入ることがあるかもしれません。
その場合は、必ず証明書類を用意しましょう。
融資の審査の際、高額の入金については必ず指摘が入りますが、見せ金ではないことを証明できる根拠があれば問題ありません。

まとめ

見せ金がバレると、銀行や投資家から信用を失うだけでなく、罰則を受けたり会社設立自体を無効とされるリスクがあります。
刑法上も違法であると明確に定義されています。

違法行為は行わず、法令を遵守した上で健全な会社設立を目指しましょう。


会社設立をワンストップでサポート
税務相談や節税対策もBIZARQにお任せください。
全国オンライン対応・ご相談は無料です。

Picture of 吉岡 伸晃
吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

03-6709-9216【営業時間】9:00~18:00 LINEで問い合わせ