近年、サラリーマンとして働きながら副業をしている人は大勢います。
副業による利益は所得税の対象です。所得税は所得が大きくなるにつれ税率も高くなる累進課税のため、利益が大きい場合は法人税の方が税額を抑えられます。
そのため、個人事業である程度の利益が出たら法人成りをするケースも多いです。
サラリーマンとして働いている人でも、副業の事業に関する会社設立ができます。
ただし、サラリーマンに限らず会社設立にはデメリットもあるため注意が必要です。
本記事ではサラリーマンが副業で会社設立をするにあたって押さえたい内容を詳しく解説します。
以下の記事で個人事業主と会社設立それぞれのメリット・デメリットについて解説しています。
副業の会社設立に悩んでいる人は、ぜひこちらもご覧ください。
会社にバレずに副業をする方法については以下の記事で解説しています。
CONTENTS
サラリーマンが副業で会社設立をする流れ
前提として、サラリーマンが働きながら副業で会社設立をすることは可能です。
創業者の本業や所得といった情報は、会社設立の手続きに影響を与えません。会社設立の流れは誰であっても基本的に同じとなります。
この章では会社設立の流れを簡単に解説します。
会社設立の流れの詳細は以下の記事で解説していますので、こちらもご覧ください。
会社概要を決める
まずは会社概要を決めます。
会社運営の方向性を決める土台となり後の定款作成にも関係する部分のため、時間をかけてしっかり準備しましょう。
決めるべき事項として、以下の6つが挙げられます。
- ・商号
- 会社名です。
- ・本店所在地
- 会社の住所を意味します。
- ・資本金の額
- あまりにも少ないと金融機関の審査で不利になる恐れがあります。
- そのため、ある程度の額を用意するのが理想です。
- ・会計年度
- 決算日は会社設立日から1年以内の日に設定する必要があります。
- ・設立日
- 法務局に会社設立の登記申請書を提出した日が設立日となります。
- 設立日の希望がある場合、設立日から逆算して作業を進めましょう。
また、会社概要が決まった時点で法人の実印を注文するのがおすすめです。
法人の印鑑については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
定款を作成する
続いて定款を作成します。
定款は会社の基本情報やルールを記載した書類です。「会社の憲法」「会社のルールブック」と表現できます。
定款は会社設立時に必要な書類の1つであり、記載事項や書き方について細かな決まりが定められています。
会社設立に必要な書類の中でも特に重要性が高く、作成に時間と手間がかかる作業です。
株式会社の場合、法務局で登記申請をする前に公証人役場で定款認証を受ける必要があります。
定款については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
資本金の払込を行う
会社設立には資本金の払込も必要です。
会社設立が完了する前の段階では法人口座を持っていないため、一般的には発起人の口座に振り込みます。
資本金の振込が終わった後、通帳の以下のページをコピーしましょう。資本金の払込を証明する書類として必要です。
- ・通帳の表紙
- ・支店名・口座番号・口座名義人などが記載されたページ(通帳表紙の裏面)
- ・振込金額が確認できるページ
法務局で登記申請を行う
会社設立登記の申請は、本店所在地を所轄する法務局で行います。
会社設立登記には以下の書類が必要です。
- ・登記申請書
- 登記申請書は法務局の公式サイトでダウンロード可能です。
- 窓口で受け取って記載することもできます。
- ・定款
- ・資本金の払込証明書
- ・法人の印鑑届書
- ・発起人の決定書
- ・代表取締役の就任承諾書
- ・取締役の印鑑証明書
- ・「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R
- ・登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
- 株式会社の場合:15万円または資本金の0.7%のいずれか高い方
- 合同会社の場合:6万円または資本金の0.7%のいずれか高い方
サラリーマンが副業で会社設立をするメリット
続いて、サラリーマンが副業で会社設立をするメリットを3つ紹介します。
個人事業主として副業するよりも節税につながる可能性が高い
副業である程度の利益が出ている場合、個人事業主として副業するよりも法人成りした方が節税につながる可能性が高いです。
個人事業主の所得に対して課せられる所得税は超過累進課税を採用しています。
超過累進課税とは所得が一定を超えた部分に対し、より高い税率を適用する仕組みです。
一方、法人税は所得の額に関係なく税率が一定です。
そのため、副業による所得が一定を超えると法人税の方が所得税よりも税額が少なくなります。
また、個人事業主よりも法人の方が経費にできる範囲が広いです。
経費が大きくなればその分利益を抑えられるため、結果として節税につながります。
ほかにも、法人の方が節税につながる理由として以下の3つが挙げられます。
- ・法人から受けとる役員報酬が給与所得控除の対象となる
- ・消費税が2年間免税される
- ・赤字の繰り越し控除が可能
- 法人の場合、最大10年にわたって赤字を繰り越せます。
- 繰り越した赤字は翌年以降の黒字と相殺が可能です。
社会的信用が上がる
法人成りをすることで、社会的信用を得やすくなります。
会社設立には様々な手続きが必要な上に、運営においても個人事業主よりも細かなルールが設定されています。
個人事業主よりも厳しいからこそ、法人として事業運営をしている事業主は社会的信用を得やすいということになります。
以下のような傾向からも、個人事業主よりも法人の方が信用を得やすいことがわかるでしょう。
- ・金融機関の融資が個人事業主よりも通りやすい
- ・取引先を法人のみと限定している企業が多い
- ・得意先から法人成りを求められるケースがある
社会的信用が上がることで、以下のようなメリットを得られます。
- ・新規案件や取引先を獲得しやすくなる
- ・融資審査に通過しやすくなる
- ・従業員やスタッフを集めやすくなる
決算のタイミングを自由に設定できる
個人として副業をしている場合、所得税の確定申告時期として決められた期間が存在します。
1月から12月の所得にかかる税金について、翌年の2月16日から3月15日までに申告および納付が必要です。
年末・年度末のタイミングであり、確定申告の負担が大きく時期をずらしたいと考える人も多いのではないでしょうか。
法人の場合は、会計年度を自由に設定できます。
サラリーマンの仕事が落ち着いている時期に決算を合わせれば、余裕を持って副業の決算申告を進められるでしょう。
サラリーマンが会社設立をする際の注意点
サラリーマンが会社設立をする際の注意点を3つ紹介します。
会社設立に手間・コストがかかる
会社設立には手間とコストの両方がかかります。
会社設立にかかる手間の一部は「サラリーマンが副業で会社設立をする流れ」で紹介した通りです。
会社概要の決定から法人登記の申請まで様々な作業が必要であり、必要書類も多岐にわたります。
登記申請が終わった後も、年金事務所や税務署など様々な場所への届出が必要です。
また、会社設立には以下のように様々な費用がかかります。
- ・定款用収入印紙代
- 電子定款の場合、定款用収入印紙代は発生しません
- ・定款認証手数料
- ・謄本手数料
- ・登録免許税
- ・専門家報酬
- 会社設立代行を専門家に依頼する場合に必要です。
必要な手続きが増える
法人成りをすることで、個人事業主として副業する場合よりも必要な手続きが増えます。
会社ならではの必要な手続きとして以下の例が挙げられます。
- ・社会保険関係手続き
- すべての会社には社会保険の加入義務があるため、手続きが必須です。
- ・法人税の申告、法人ならではの会計処理
- 法人税の方が確定申告や会計処理のルールが複雑で、必要な作業も多いです。
- ・各種届出
- 税務署・都道府県税事務所・市区町村・ハローワーク等、様々な手続きが必要です。
赤字でも税金の支払いが必要
個人にかかる所得税は、所得が赤字の場合は課税義務が生じません。
一方、法人に課せられる税金の中には、赤字でも支払いが必要なものがあります。
赤字でも支払いが必要となるのが、法人住民税です。
法人住民税は法人税の額を基に算定される法人税割と、資本金や従業員の数に応じて一定額が発生する均等割の2つから構成されています。
法人税割は法人税が発生しない、すなわち赤字の年には納付義務がありません。
一方で均等割は、利益の有無に関係なく毎年決まった額を納付する必要があります。
法人には法人住民税の均等割の納付が義務付けられているので、赤字でも税金の支払いが必要となります。
まとめ
サラリーマンの副業でも、必要な手続きを行えば会社設立が可能です。
会社設立をすることで、節税できたり社会的信用を得やすくなるといったメリットが期待できます。
副業である程度大きな利益が出ているのであれば、法人成りを検討しても良いでしょう。
ただし、会社設立には手間やコストがかかる上に、法人成りをすることで必要な手続きが増えてしまいます。
メリット・デメリットの両方を押さえた上で、法人成りをするべきか検討しましょう。
会社設立をワンストップでサポート
税務相談や節税対策もBIZARQにお任せください。
全国オンライン対応・ご相談は無料です。
記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士